聖戦士ダンバイン・リの国の聖戦士様伝説   作:試行錯誤

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落下しました、ここはどこ?

 

 

 バイストンウェル。

 海と陸の間にある、人の、心の故郷。

 人が命を終えた後に帰る場所でもある。

 人は、記憶をなくしてバイストンウェルから地上に産まれる。

 覚えている者は幸せである……とかなんとか。

 

 世に戦乱のある時に現れ、悪を討ち平穏を取り戻す存在、聖戦士。バイストンウェルに伝わる伝説の一つ。

 

 正義の味方的なあれである。

 

 日本の青年―――シュンジ・イザワ。彼はオーラロードと呼ばれる道を通して、バイストンウェル西方にある、リの国へ召喚される事になる。

 正しき心を持つ、聖戦士として。

 伝説の通り、ならば。

 

 これは何故か、バイストンウェルに覇を唱える事になってしまう、スーパー聖戦士様のお話である。 

 

 

 

 

 

 

 獣の咆哮が空に響いた。同時に剣が振るわれる。

 人の背丈の数倍はある大きさの剣だった、それに切られた獣が落ちていく。

 空を飛ぶ鳥型強獣の頭を切り落としたのだ。

 それをやったのは同じく空を飛ぶ、巨大な人型の存在だった。

 

 昆虫をモデルにしたような格好の機械。

 オーラバトラー・ゲド。

 操っていたのはリの国の王、ゴートだった。

 

「……大したモノだな、オーラバトラーというものは」

 

 自分がやったとは言え、剣で強獣を仕留める事が出来るとは。

 本来なら数人がかりで銃や爆薬、相手によっては罠まで使わねばならないのが強獣である。凶暴で危険な存在だった。

 その強獣が近くの街などを襲う前に、定期的に数を間引くのは国や領主の仕事だった。

 

 危険はもちろんあるがバイストンウェルでは良くある光景、特に強獣の生息範囲が広いリの国では、日常の出来事だった。

 今回もその強獣退治だったが、ゴートが乗るのはいつもの飛竜ではなかった。

 借り物の《機械》を使ってみたのだ。

 威力は予想以上だった。

 

(アの国のドレイク・ルフト。地方領主でありながら、これほどの機械を作ってしまうとはな……)

 

 交易などで多少なり付き合いのあった縁から借り受けた機械の力に、思わず唸る。

 

「陛下、お見事でございました。お身体の方は大事ありませんか?」

 

 臣下であるザン・ブラスが飛竜に乗って近寄ってきた。

 騎士団の団長をする男だった。ゴートが特に信を置く重臣でもある。

 王に話すには気安さがある言葉遣いだが、それは長らく戦場を共にした絆から来るものだった。

 

「ああ。少し休むか」

 

 この辺りはそれなりの森や谷がある土地だが、ゴートは見晴らしのよい場所を選んでゲドを着地させた。

 

 騎士が取る礼のように片膝を立たせると、胸部にある操縦席から地面におりたった。

 思ったより疲労がある。

 飛竜を乗り回すのとも、剣を振るうのとも違う、力が抜けるような疲労だった。

 

 40歳も半ばを過ぎたとはいえ、戦で鍛えた体力はかなりの物のはずだった。

 ゲドには一時間も乗っていない。

 

「陛下?」

 

「力を吸いとられるような感覚がある……オーラマシンというものは。生体エネルギーであるオーラ力を動力として動くというのは分からん話ではないが、怖い物だ。

 ああ、心配するな。身体には問題はない、今までの機械とは違いすぎて、な」 

 

「地上から来た技術者が造ったと言っておりましたからな、我々コモンの機械とは、威力が違うのは仕方ないかも知れませんな……伝説やおとぎ話の類じゃあなかったんですなあ、地上世界ってのは」

 

「地上人か」

 

 バイストンウェルと地上には交流はない。

 地上からたまに迷いこむ者、流れてくる者が存在する位である。

 ただ、地上から来る者にはバイストンウェルでは幾つか伝説がついて回る。

 

 それらの中でも、世に戦乱がある時に現れるという物が最も有名だろう。

 悪い話がないではないが、総じて混乱を呼ぶのが地上人とされていた。 

 

(善き者であればよいが……)

 

 ゴートは地上から来て、このような機械を作ってしまう者に疑念を覚えた。

 リの国はどちらかと言えば名のある国だった。しかしそれは強国という程ではない。

 それなりに安定はした中規模国程度だろう。

 

 そのリの国の隣に、これを作る者が現れたのだ。

 戦くらいにしか使い道がなく、戦では多いに使えそうな、このオーラバトラーというものに不吉な予感が絶えなかった。

 今も隣の国で続々と造られているのだ。

 

「陛下?」

 

 思考の海に沈んだゴートに一瞬、ザンが気を取られる。周りへの警戒が緩んだ。

 血の臭いに慣れすぎて風上にいる事を失念した。

 

 それを見逃さない者が風下に存在した。

 

 自分の仲間を殺してくれた者へ攻撃をかけるために、息を潜めていた強獣だった。

 

 恐竜のような姿の強獣ガッター、それが物陰から飛び出し、ゴート、ザンに突っ込んできたのだ。

 

 規模の大きくないリの騎士にとって油断は許されなかった。

 今ここにいるのは二人だけ、手持ちの銃で止めるには相手は大きすぎた。

 自分達よりも大きいゲド、そのゲドよりも身長、質量共に上回るのがガッターだ。

 

 ゴートがゲドに乗り込むにも、ザンが飛竜に乗って飛び上がるにも、後手に回る状況にあった。

 

「しまった!?」

 

「ゴート王お下がりを! 自分が引き付けます! 早く!」

 

「待……くっ!」

 

 ゴートはザンを死なせるのが忍びないと、囮にするのを躊躇った。が、どうしようもない。 

 ザンが飛竜に乗りガッターに突撃しようとした瞬間、空から光の柱が走った。

 それはバイストンウェルの空から大地、そしてゲドを貫く強烈な光だった。

 ザンに食らいつこうとしていたガッターが驚いてゲドから離れる。

 

「うおっ!?」

 

「何だっ?」

 

 オーラロードが青年を一人、バイストンウェルへ誘ったのだった。彼が誰に呼ばれてここへ来たのか。

 リの国を救う事になるのか、滅ぼす事になるのか。それは誰にも分からなかった。

 しかし、後の歴史から紐解くと、ただ一つ言える事があった。

 

 

 

 ゴート王はもう、国の行く末とか隣国がきな臭いとか、色々あるけど、もはや何の心配とかもなく、ウハウハになってしまう事だった。

 

 

 

 

「うわー!」

 

 落ちるー! ぐえっ! 痛たた、何処だよここは!

 てか狭っ! 何これ? 椅子? 操縦席?

 俺は車を運転してたんですけど……自動車学校にいたんですけど。何これ?

 てゆーか、何か獣の声が聴こえるんですけど……。

 ん? ぎゃああ!? 目の前に怪獣がいる!

 来るなあー! 

 

 あら?

 

 うわ、凄い! 俺、避けたよ! 俺、何か空を飛んでるよ! いや違う、俺が乗ってる《何かが》飛んでるんだ。

 何これやだこれスゴいスゴい! 

 

 あ、こいつ剣を持ってるじゃん! 怪獣め、よくもびびらせてくれたな。おりゃー!

 

 うわ、一発かよ。……弱っ。

 な、何かわるい事をした気分なんですけど……。

 おや? あんな所に人影が……。スゴいビックリした顔してる。

 

 

 

 

 

「なんという動きだ……ガッダーを両断してしまうとは……」

 

 ゴートは自分の乗っていた時の動きとは、まるで違うゲドに衝撃を覚えた。

 

「ゴート王、ご無事で!?」

 

「ザン、見ているか。先程の光、それにあのゲドの動きは……もしや……伝説の」

 

「は、機械はよくわかりませんが、ただ者ではないない動きに見えました」

 

 ゴートとザン・ブラスは衝撃の最中に居た。

 ゲドの動きのあまりの鋭さと、ガッターを一撃で絶命させた剣激の威力にである。

 

 ゴートが操った時の倍以上は速く、剣は分厚い甲殻を叩き割り、筋肉、脂肪に至るまで両断してしまったのだ。

 

 そんな威力が出るとは聞いてないのだ。

 

 

「あのゲド、こちらへ参りますな……誰か乗っております」

 

「命を救ってもらった恩もある。城へご招待しよう。是非話をしてみなければ」

 

 

 

 

 

 

 わー。中世のお城みたーい。てか城だ。

 助けた亀さんならぬ、助けたおじさんに連れられてお礼に家にご招待されましたよ。

 王様と騎士団長なんだって、スゴいね。まじで中世?

 てゆーか、ここはどこなの? 誰か教えて。

 

「改めて、初めまして聖戦士殿、リの国の王、ゴートであります」

 

「聖戦士? いえ、違います。戦士じゃなくて学生です。 イザワ・シュンジです。はじめまして王様」

 

 マジの王様でしたか、ドッキリとかじゃありませんでしたか。こりゃ失礼を。

 ところで、こちらはどちらになるんでしょうか。

 え? バイストンウェル? 日本じゃないの? 海と大地の間? それ砂浜とかじゃないんですか?

 帰れないんですか、帰れないんだ。そうですか。困ったな。

 

 ご飯どうしよう。

 

 さっきの怪獣とか焼けば食べられるかなあ……。

 え? しばらくここに居てもいい? 本当ですか、よかったあ、放り出されたらサバイバルところでした。

 さすが王様、太っ腹。

 

 変わりに騎士みたいな仕事をしてくれ? 良いですよ。

 ただでご飯は食べられませんものね。

 仕方ないですね。よろしくお願いいたします。

 

 そんな訳で私ことイザワ・シュンジは、シュンジ・イザワになりました。

 リの国の居候です。用心棒です。

 

 





息抜きですから。
続きはいつか書くでしょう。
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