私の行く道は?   作:まもる

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生まれ変わる四万十

 

 私は四万十を連れてワシントンと一緒に明石のところに向かっていた。

 

 どうしても、あの美声が聴きたかった。

 

 ワシントンと一緒にお話相手に・・・・

 

 工廠では既に輸送船から降りて状態の悪い艦娘からドック入りしていた。やっぱり、四万十より状態の悪い艦娘が多くてドックはいっぱいになっていたのだから・・・・・・

 

 それでも、ワシントンはインディアナポリスを見捨てたくなかったのだ。

 

 そんな時、後ろから妹に声を掛けて来たのは霧島だった。

 

 「やっぱり、ワシントンなの?」

 

 霧島の言いたい意味は判る。

 

 「ワシントンですが、霧島さんが思っている私じゃないです」

 

 霧島さんには悪いけど否定する

 

 「どういう事よ!」

 

 霧島はワシントンの胸倉に掴み掛かるが手を払う。

 

 「私達は霧島さんが思っている戦艦じゃないよ。私とお姉ちゃんは開戦直後に日本海軍によって鹵穫され改装された世界の戦艦だよ。もちろん、日本名である富士と白根と言う名前があるよ」

 

 「例えそうだとしても、私は貴女をワシントンとしてしか見られない!」

 

 「それでも、私にはアメリカの戦艦ではなく、日本の戦艦としての矜持があるの!」

 

 「お前なんかに!?」

 

 「!?」

 

 スッパァァァァァァァン

 

 そのまま、霧島はワシントンを睨み平手打ちをしようとしたがワシントンと霧島の間に庇うように入ったのは四万十だった。四万十は霧島に降り出された平手打ちを受けてワシントンの胸に倒れ込んだのだ。

 

 「インディちゃん!?」

 

 霧島は平手打ちをしたことを謝るつもりは無い。インディアナポリスをまるで娼婦を見るかのように呟く。

 

 「叩いたその子、『私は日本艦よ!』だと最後まで提督に噛み付いていたアメリカ艦の娘ね。確かに武装は秋月型と航巡最上を合わせたようだったわ。あんなの私達が認められる訳が無い。秋月型様に対空に秀でて、水上機でも対潜哨戒も駆逐艦達よりもこなせるって・・・・・だから、提督は認めたくないから武装を全て奪った。そして、服も全て脱がせたら確かに重巡洋艦の体つきだったから強制的に性処理をする為だけに裸のまま提督の自室に監禁したわ・・・・・」

 

 「外道がっ!・・・・・貴女も、インディアナポリスをゴミと見てるのかな?回答によっては斬るわよ・・・・・」

 

 お姉ちゃんがレイピアの柄を握り、霧島にした事に怒りに煮えたぎりながらも確認する。

 

 「個人的になら優秀な防空航空巡洋艦ね」

 

 冷や汗を額に流しながら霧島は答えた。そう、個人的には認めていたらしい事が判る。

 

 「そうよ。彼女は高い熟練度を必要とする第一機動艦隊の防空担当艦よ。そして、責任が最も重いとされる前衛での護衛艦だったわ。霧島なら第一艦隊の意味が判るわよね?」

 

 「判るわ!戦闘ではひ弱なくせに防空と対潜では味方を護る事だけは私達より、何もかも上だった。だから、認めたく無いのよ!」

 

 これが、霧島の本音だった。

 

 醜い嫉妬だった。

 

 だから、嫌味を混ぜて話す。

 

 「そうよね。霧島達は大艦巨砲主義に取り残された日本だものね。私達は航空機主兵論に基づいて、対空や対潜に至る全てが航空機に代わる事を示唆して実験的に改装されたのが私であり、ワシントンでもありインディアナポリスでもあるの。それに・・・・」

 

 「それに?」

 

 「彼女の弾幕射撃から抜ける事は不可能な位に濃いわよ・・・・・」

 

 話しに割り込んで来たのはドックから出てきた尖鳳だった。

 

 「四万十の話しは全て聞かせて貰ったわよ。あの子に、私は返せない位の借りがあるのよ。それにね、貴女には分からないと思うけど・・・「尖鳳教官!?」」

 

 私はあの苦しみを話されると思い叫ぶ。一応、私も大和と言われたから叩き潰しただけだが・・・・良く考えればサウスダコタ級は義理でも妹なのだ。

 

 「富士、白根・・・・いえ、ノースカロライナとワシントンはね、自分の妹を手に掛けたのよ。それは今でも悔やんでも悔やみきれない。でも、姿が余りにも変わり過ぎていたから沈むまでは自分のお姉ちゃんだとは知らずに沈んだわ。霧島、貴女にその苦しみ判るかしら?それはね、四万十・・・いえ、インディアナポリスにも言える海外艦の鹵穫され日本艦として改装されたから意地と覚悟だと私は教官だったから言えるんだと思うわ」

 

 「ワシントン、本当なの?」

 

 「うん、本当だよ。南太平洋海戦の夜戦で私とお姉ちゃんで準同級のサウスダコタとミズーリを撃沈したよ。サウスダコタは最後まで、私達の事をノースカロライナ級だと気付かないで大和型戦艦だと思い込んだまま沈んだよ・・・・・」

 

 「そう、でも彼女を叩いた事は謝らない。否定しなければ、私達、戦艦の存在意義に関わるから・・・・・」

 

 霧島はそれだけを言うと寮へと歩いて行ったのだ。

 

 「・・・・・・・私も同じよ・・・・ただ、戦艦の立てる舞台は昼間のヒロインから夜のヒロインに替わっただけ・・・・そして、電探を積まなければ生きて行けない常闇の世界よ・・・・・」

 

 「お姉ちゃん・・・・・・」

 

 順番を待ち、ようやくインディアナポリスの番が回って来たのだが、明石さんは通院治療で直ると断言してくれた。少量だが、高速修理薬を飲む事で少しづつだが声帯への回復が見込めるらしい。

 

 武装だが、最早お手上げ状態でちまちまと開発して武装していくしか無いらしい。

 

 「ねぇ、四万十って今は武装が無い状態よね?」

 

 それを聞き出して来たのは夕張だった。

 

 「そうよ?」

 

 「尖鳳さんの遠征部隊に入れたらどうかな?それなら、後部甲板の航空機駐機スペースは大発を乗せて輸送型巡洋艦に出来るわ。それに、武装が揃うまでなら駆逐艦の武装が代用出来るわ。横須賀鎮守府から救助された駆逐艦は半数は復帰が不可能だったの。だから、駆逐艦の武装なら大量に在るわ」

 

 「遠征部隊に組ませる前にインディアナポリスの声帯の治療が先よ。それで代わりの武装は何を詰ませるの?」

 

 「12.6cm連装C型砲塔と25ミリ機銃かな。あとは・・・・・・」

 

 「それなら、高角砲は無いの?」

 

 「無いわ」

 

 そんな時、インディアナポリスは夕張さんが書いていたノートに書いて私達に見せる。

 

 『そんな物はいらない。なら、機銃だけ在れば構わない。その代わり、ノースカロライナ姉さんとワシントンちゃんの40ミリ連装機関砲を一基づつ貸して欲しい。艦橋下の二基は元々給弾の関係から撤去だったよね?』

 

 「判ったわ。ワシントン、良いわよね?」

 

 「うん、良いよ」

 

 「なら、予定通りに25ミリ三連装機銃に替えるわ。駆逐艦の余りが在ったわよね?」

 

 四万十はドック内に本体を召喚して、ノートで書きながら夕張さんや明石さんと打ち合わせて特設輸送艦に仕上げていく。主砲だった場所は兵員待機所にして波避けを造りその上に40ミリ機関砲二基を設置。25ミリ三連装機銃を設置個所を指示して決めて行き、機銃座は駆逐艦からのを加工して取り付けて艦橋の周りには四基が設置され、煙突周りには十基を設置したのだった。

 

 取り付けに大変だったのは艦載機収容用のクレーンを一基から二基にしようとしたが、バランスが悪くなるからと夕張に反対されて断念したのだ。それでも、特設輸送艦としての能力は一流で艦載機を持たない代わりに後部甲板は大淀の様な航空機格納用の格納庫があるが広い格納庫を設けた為に十回の遠征をしても全て入る容量だった。そして、次に設けたのは艦娘の休憩室や食堂を新たに造り直した為に数ヶ月の遠征が可能になったのだった。

 

 報告を聞いた提督は驚くが、出撃は四万十の声帯治療を優先された為にまだ先になる。

 

 そして、四万十は防空航空巡洋艦四万十から特設輸送艦四万十へ艦種変更をしたのだ。

 

 四万十が防空航空巡洋艦として道を諦めたのは、全ての武装が手に入らない訳ではなく単に皆をサポートする側に為りたかったらしい。そして、最初から最後まで護衛対象だった尖鳳教官と居たいらしい。

 

 そして、声帯治療をしてしばらく経った頃には四万十は歌を歌えるまで回復する。

 

 「ラ~ラ~ラ~♪♪」

 

 木陰の下では尖鳳に膝枕された四万十が綺麗な歌声を尖鳳に聞かせている。尖鳳も耳を傾かせて静かに四万十の髪を撫でながら静に聴いている。ただ、残念なのは尖鳳は英語が分からない。

 

 そう、四万十が歌うのは当時アメリカで流行ったラブソングだった。

 

 その歌声は尖鳳に向けられた物で、周りには二人しかいない。

 

 甘い空気を漂わする中、空気を壊す音がしたのだ。

 

 パッシャリ

 

 「「!?」」

 

 「青葉見ちゃいました!明日の特集は『尖鳳さんと四万十ちゃんの禁断の恋実る?』で決まりです!」

 

 青葉の一言に顔を真っ赤にする四万十に何だそれと思い、キョトンする尖鳳。

 

 「それでは、夕刊には出したいの・・・・ヘッェ!?」

 

 ズッドン

 

 しかし、青葉が逃げるよりも先に青葉が持つカメラが砕けたのだ。

 

 放ったのはピストル型の14cm単装砲を握りながら顔を真っ赤にした四万十だった。

 

 青葉も在ることを失念していた。

 

 四万十は元は重巡洋艦でもあり、防空航空巡洋艦だった事を忘れていたのだ。

 

 そして、今日も青葉の悲鳴が鎮守府内を木霊していた。

 

 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 




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