片翼天使と白銀の騎士   作:夜月 桜

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小説初心者で、初投稿です。
初めてなので色々間違っているところもあるかと思いますが読んでいただければ幸いです。
よろしければ、感想お願いします!



第一章 いきなり決闘!?

 少年は迷っていた。

「この学園、広すぎるだろ」

 と、何度目とも知れない溜息をこぼす。

 少年の名前はルアナ・ブルーム。ここ、クラージュ王国内に存在する王立士官学校の理事長から手紙で招集を受けたのが2日前。

 そこに書かれていたとおりに学園へ来たのはいいのだが、学園が思った以上に広く、かれこれ一時間ほど迷子になっているのだ。

「あー、知り合いの一人でもいないかね」

 そんなルアナがうつむきながら歩いていると、ちょうど曲がり角を歩いてきた人影に気づかなかった。

「うわっ!」

「キャっ!」

 二人はぶつかり、ルアナは尻餅をついた。

「いてて。君、大丈夫?」

 立ち上がったルアナは目の前で同じように尻餅をついている少女に手を差し出す。

「ええ。大丈夫よ」

 ルアナの手を取り立ち上がったのは燃えるように紅い髪の少女だった。長い髪の毛が風に吹かれ、女の子特有の甘い香りがルアナの鼻腔をくすぐる。

「って、もしかしてお兄ちゃん?」

 と、目の前の少女はルアナの顔を見て目を見開いている。しかし、ルアナに妹はいない。ましてや、他人の女の子にお兄ちゃんと呼ばせる趣味を持っているわけでもない。

「えっと?」

 ルアナは首をかしげる。自分のことをお兄ちゃんと呼ぶ存在に心当たりがなかったのだ。

 しかし、そんなルアナの態度に目の前の少女は頬を膨らませた。

「もう!覚えてないの?私だよ。ティアナ・クラージュ!」

 その名前を聞き、ルアナはハッとする。思い出したのだ。自分のことをお兄ちゃんと呼ぶ少女のことを。

「もしかして、ティナなのか!?」

「うん!やっぱりお兄ちゃんなんだ!久しぶり!」

 そう言うと少女、改めティアナはルアナの胸に飛び込んできた。

「お、おいティナ!?」

「うーん。やっぱりお兄ちゃんだー」

 と、ティアナは周りの目も気にせず頬をスリスリと胸に擦り付けてくるのだった。

 

 

 ルアナが無事知り合いを見つけ、理事長室まで案内してもらっている途中で。ティアナが尋ねてきた。

「そういえばお兄ちゃん?ずいぶん前に王宮出て行ってからどこにいたの?私寂しかったんだよ?」

 ティアナは頬を膨らませてこちらを見つめてくる。

 ルアナはそんなティアナの顔にドキッとして慌てて顔をそらす。

「そ、それはごめんな。ちょっと師匠の手伝い?的なのしてたんだよ」

「理事長の?」

「ああ。それと、俺の修行かな」

 ルアナは手紙で招集を受けるまで昔から交流のあるこの学園の理事長、サークレイの指示で修行をしていた。修行といっても山奥で野生の動物と格闘したりするわけではなく、魔術の修行だ。

この世界には魔術と呼ばれるものを扱うことができる人間がいる。国家同士の取り決めで魔術の使い手としてのレベルをランクで分けている。ランクはⅠ~Ⅶまで存在し、現存する最高ランクの魔術師はランクⅥ。その魔術師の名はサークレイ・シュテルクスト。この学園の理事長にして、クラージュ王国の大英雄である。

「お兄ちゃん、まだ強くなるの?私どんどん差を広げられてる気がするよ」

「そんなことないだろ。今ランクいくつだ?」

「こないだの昇格試験でランクⅣになったよ」

「お、じゃあ固有魔装具使えるようになったのか」

「うん!学院の中だと許可なしで出せないけど、今度見せてあげるね」

「ああ。楽しみにしとくよ」

 そうこう話しているうちに二人は一つの大きな扉の前に着いた。

「ここ?」

「うん。ここが理事長室だよ」

 するとティアナが理事長室の扉をノックする。

「ティアナ・クレージュです。ルアナ・ブルームをお連れしました!」

「おお!入っていいぞ」

 と、中から声が聞こえ俺たちはそれに倣う。

「失礼します」

「し、失礼します」

「ティナ、ご苦労だったな。ルアも、久しぶりだな」

 中に入ると一番奥の椅子にサークレイは腰かけていた。

「うん。師匠も元気そうだね」

「ああ。まだピンピンしてるよ」

「ピンピンしすぎてる気もするけどね」

 ティアナがそう口にする。その気持ちもよく分かる。なにせこの理事長、今年で70になるのだ。なのに肌にはしわの一つもなく、美貌も健在だ。何も知らない人が20代と言われれば信じてしまうかもしれない。

「まぁ、それもこいつのおかげだよ」

 と、サークレイは口笛を吹く。すると一羽の小さな赤い鳥がサークレイの肩に舞い降りた。

 精霊《鳳凰(フェニックス)》。この鳥が彼女を最強足らしめんとする理由だ。

 基本、人間は精霊と契約することができない。しかし、ごくごく稀に精霊と契約する魔術師がいる。その例が目の前にいる世界最強の魔術師。《伝説の魔女(レジェンドオブウィッチ)》の二つ名を持つ彼女だ。

 そんな彼女が精霊の頭を優しくなでてやると、気持ちよさそうにキューと鳴いた。

「あー、話がそれたな。今日ルアをここに呼んだのには理由がある。ルア、この学院に入れ」

「は?」

「え?」

 サークレイのその言葉にルアナもティアナも間抜けな声を漏らす。

「いや、理事長?ここは女子校ですよ?」

「ああ、それがどうかしたか?ルア一人の入学くらい私の権力でどうとでもなる」

「ま、まぁそうだろうけど……」

 最初、この国の王に指名されたのはサークレイだ。しかし彼女は「柄じゃない」と辞退した。ただ、この国を作った大英雄であるのは事実なので、実際この程度の問題はどうにかなるだろう。その程度の権力は持っているはずだ。

「ルアは嫌か?ここには素質の高いやつが多く集まっている。お前のためになると思うぞ?それに、素質の高いやつは貴族に多い。貴族は美女が多いからなー。そんな中に男が一人。ハーレムも夢ではないぞ?」

「は、ハーレム!?」

 それは、もうあんなことやこんなことを?あー、悪くないかも。

 なんて妄想の渦に使っていると、左の頬を思いっきりつねられた。

「いって!」

「お兄ちゃんが鼻の下伸ばすのが悪い!」

 と、ティアナは怒るがこの歳の男子なら仕方ないと思う。

「相変わらずだな、二人とも。で、ルア。どうだ?」

 バンッ。

 ルアナが返答を口にしようとした直前。理事長室の扉が勢いよく開けられる。

「そんな入学、この私が認めません!」

 そう言いながら現れたのは軽装の騎士甲冑に身を包んだ銀髪の少女だった。

 

 騎士甲冑に身を包んだ少女はカツカツと鉄靴の音を部屋に響かせながらサークレイの前まで歩いてきた。

「クラリスか。ノックもせず何の用だ?」

「はい。丁度理事長に用事があったので伺ったところ、扉の隙間から声が聞こえてきました。聞いていたら、この健全な女子の学舎にこのような男が入学するなどという声が聞こえたのです」

 クラリスと呼ばれた少女は指でこちらを指し、睨んでくる。

「つまりは盗み聞きしていたと。感心しないな、クラリス?」

「その点につきましては謝罪します」

 と、サークレイに頭を下げるクラリス。

「しかし、私はこのような男が入学するなど許せません!」

「ちょっと、クラリス!このような男とか言わないでくれるかしら?この人は私の兄さんなんだから」

「殿下の兄上?殿下に兄上がいたなど初耳ですが?」

「それは……。と、とにかくこの人を侮辱するのはこの私が許さないわ!」

「まあまあ落ち着け二人とも」

 そんな睨みあう二人をサークレイはいったん落ち着かせる。

「そんなに嫌なら自分の望みを勝ち取ればいいじゃないか、クラリス?君はこの学園の序列一位の騎士だろう?」

「理事長!?」

 サークレイの言葉に反応したのはティアナだった。しかし当の本人であるはずのルアナは完全に話に置いていかれて何が何だかわからない。

「あの、さっきからいったい何の話してるんだ?それに、勝ち取るって?」

 そんなルアナにクラリスはビシッと指を突きつける。

「ならば教えてやろう。私、クラリス・レーグルは貴様に決闘を申し込む!」

「決闘!?いや、なんでそんな物騒な話になってるんだ!?」

 ルアナはサークレイに目をやる。しかしサークレイはこの光景を面白そうに眺めているだけだ。

「私が決闘に勝ったら貴様にはこの学園を去ってもらう。万が一貴様が勝てばなんでも願いを一つ聞いてやろう」

「いや、だから……」

 言い返そうとしたが、目の前にいる女の子がなんでも一つ願いを聞くといっている。それはつまりあんなことやこんなこともしていいわけで。

 なんてルアが邪な妄想をしていると――

「話はまとまったようだな。その決闘、理事長である私が許可する。場所と時間は追って通達しよう。ルア、今お前が頭の中で妄想したことを実現するためにも精々頑張れ」

「師匠!?」

かくして、ルアナの入学をかけた決闘が決定したのだった。

 

「大丈夫、お兄ちゃん?」

 ルアナは理事長室を出て、とりあえず落ち着こうというティアナの提案で、寮の部屋まで案内してもらっていた。

「いや、もう何が何だか。それに、あのクラリスだっけ?相当強そうだったぞ?」

「それはそうだよ。何といってもこの学園唯一のクラスⅤだし」

 そういうティナの表情はなんだか悔しそうだ。

「でも、お兄ちゃんなら勝てるよ」

「どうしてそう思うんだ?」

「だって、私の尊敬するお兄ちゃんだし」

「なんだよ、それ」

 なんてとりとめのない話をしているうちに、いつしかティナの部屋の前に着いていた。

「はい、入って」

「お邪魔しまーす」

 中に入るとなんだか甘い、女の子のにおいがした。今まで女の子の部屋になど入ったことのないルアナは緊張した。

「あ、あんまりジロジロ見ないでね?見られて困るものは置いてないけど、やっぱり恥ずかしいから」

「あ、ああ。ごめん」

 二人の間に沈黙が流れる。

「お、お茶入れるね?」

 そんな沈黙を破ったティアナはお茶を入れようとルアナの背後のキッチンに向かおうとして――

「キャっ」

「危ない!」

 敷いてあったカーペットに躓いたティアナが倒れる寸前、ルアナが下敷きになることでティアナを庇う。

「いたた。ティナ、大丈夫か?」

「う、うん。怪我はしてない、けど。お兄ちゃん、手」

「手?」

 ルアナはティアナに指摘された手に目を向ける。すると――

「あ……」

 ルアナの両手は見事にティアナのまな板、もとい胸を触っていた。

「いや、その気づかなくて」

「き、気づかない。そ、そうだよね。こんなペチャンコじゃ気付かないよね」

「あ、いやそういうわけじゃ……」

「もういい!お兄ちゃんのバカ!!」

 次の瞬間ドカッっと、ルアナの顔にティアナの鉄拳が炸裂したのだった。

 

 鉄拳が炸裂した顔をさすりながらルアナはティアナとお茶を飲んでいた。

「なあ、そろそろ機嫌直せよ」

「ふーんだ」

 と言ってそっぽを向くティアナ。よっぽどご立腹らしい。

 はぁ、とため息をついたルアナが窓のほうに目をやると、そこには一羽の赤い鳥が止まっていた。

「ん?あれ、鳳凰(フェニックス)か?」

「え、どれ?」

 ティアナもルアナにつられて窓のほうを見る。

「あ、手紙持ってる」

 ティアナはそっと鳳凰を撫でると咥えていた手紙を受け取り中を確かめる。

「あ、決闘の時間が書いてある」

「何時だって?」

「今から一時間後。第一訓練場に来いだってさ」

 ティアナは心配そうな顔でルアナを見る。しかし、ルアナはそんなティアナに不敵に微笑んで見せた。

「任せとけ。俺はこんなところで負けてる場合じゃないからな」

「うん。お兄ちゃんを信じるよ」

 コクっと、ルアナとティアナはお互いに頷いたのだった。

 

 一時間後。ルアナは訓練場の舞台に立っていた。

 上空は夕方のオレンジ色の雲が浮かんでいる。そして、目の前には学院最強の騎士、クラリス・レーグルが静かに立っていた。

「で、なんで観客席が埋まってるんだ?」

「余興だ。そっちのほうがおもしろいだろう?」

 ルアナは二人の中間に立つサークレイのその一言に溜息をつく。

「さて、では始めるとするか。形式は通常のもので行く。各自、武器を展開せよ!」

 サークレイの言葉に観客の学生たちのボルテージが一気に上がった。

「凍てつく氷河よ。絶対零度の剣よ。我が手に力を。ブリューナク!」

 クラリスは素早く召喚術式(サモナルキー)を唱える。すると彼女の右手が眩い光に包まれ次の瞬間、青く輝く剣が出現する。

「氷属性の剣か。厄介だな」

「ほら、ルアも展開しろ」

「了解」

 ルアナはサークレイの言葉に頷くと右手を突き出す。

「闇を切り裂く破魔の剣よ。聖なる光をまとい顕現せよ、聖剣カラドボルグ!」

 クラリスと同じくルアナの右手に光が集まる。目をくらますほどの光を放った後、ルアナの手には一本の聖剣が握られていた。

「クラスⅣ以上か。ならば、こちらも本気で行かせてもらう」

「レディ、ファイト!」

 サークレイが試合開始を宣言すると会場は熱気と歓声の渦に包まれるのだった。

 

 試合開始直後。クラリスが突っ込んでくる。

「はぁぁっ!」

 剣を横に凪がれる。ルアナは紙一重でそれを躱す。

「まだまだ!」

 クラリスは高速の突撃を繰り返す。

「クソっ!」

 ルアナは聖剣でクラリスの刃を弾く。しかし、氷の剣と交わった部分が凍り付いた。

「これがその剣の能力か」

「そうだ。触れたものを凍り付かせる能力。これが私の固有魔装《ブリューナク》だ」

 固有魔装。クラスⅣ以上の魔術騎士が持ち、持ち主本人以外は扱えないが通常武装に比べ何倍もの力を持つ武器。

 クラリスはその武器の特性をしっかりと把握し使いこなしている。

(学院最強っていうのは伊達じゃないな……)

 ルアナは胸中で吐き捨てる。

「なんだ?怖気づいたか?」

「いや、なかなかやるなと思っただけだ。行くぞ!」

 ルアナが地を蹴り跳躍する。

 そして大上段に振りかぶった剣を真上から叩きつける。

 しかしそれをクラリスは難なくかわす。

「隙だらけだ!」

 クラリスは振りかぶった直後の一瞬の隙を見逃さず、剣で振りかぶってくる。

 ルアナはそれを同じく剣で弾く。

 クラリスはその勢いを利用し後ろに下がり、次の瞬間――

 バンッ。

 乾いたピストルの音が訓練場に響く。

 ルアナは撃たれた弾を剣で受け止めた。

「変形タイプの武器か。厄介だな」

「今のを防ぐとはやるな。だが、私の本職はこちらでな。覚悟してもらうぞ」

 クラリスは高速でルアナの周囲を駆ける。そしてあらゆる方向から魔弾を放ち始めた。

「チッ!」

 ルアナはかろうじて剣をさばいて防ぐがそれが精いっぱいだ。

 やがてクラリスの嵐のような攻撃が終わった時には全身傷だらけだった。

「ふん。その程度か?理事長の推薦というからもっとやれるのかと思ったんだがな」

「いや、こっからだ」

 ルアナはボロボロの身体で立ち上がると、口端を釣り上げた。

「俺の力は、こっからだ!」

 ルアナは左手を突き出し、唱えた。二(、)つ(、)目(、)の召喚術式を。

「我求めるは力なり。すべてを破壊する力なり。すべてを破壊する闇の剣よ。我が血を代償に顕現せよ。《魔剣ダーインスレイヴ》!」

「なに!?」

 クラリスが驚愕に目を見開き叫んだ直後。

 ルアナの手には漆黒の魔剣が握られていた。

 

 クラリスは驚愕に目を見開いた。

(二つの固有魔装など、聞いたことがない。しかも、あれは魔剣。魔剣が実在していたなど聞いたこともないぞ……)

「ここからが、本番だ!」

 先ほどまでとは段違いの速さでルアナは突撃してくる。

 クラリスは咄嗟に銃から剣に戻し弾くがなにしろ相手は二本。攻撃の手数が違いすぎる。

「ハァァァァァッ!」

 ルアナが叫ぶ。すると先ほどまでの二刀流の乱舞が激しさを増す。それと同時にクラリスは自身の魔力が減っていることに気づく。

 その証拠に青く輝いていた剣の輝きが鈍くなっている。

(クッ!まさか、あの魔剣が私の魔力を吸収しているのか!?)

 クラリスのそんな仮説を決定づけるように魔剣の輝きが増していく。

「これで、終わりだー!」

「なっ!?」

 激しい乱舞に魔力の吸収。それに耐えかねたクラリスに剣はとうとう砕けた。

 そして、砕いたのとは別のもう一つの魔剣がクラリスの喉元に突き付けられたのだった。

 

「そこまで!」

 サークレイの声に、会場は静まり返っていた。まさかクラリスが負けるとは思ってなかったのか。はたまたルアナの攻撃に圧倒されたのか。

「勝者、ルアナ・ブルーム!」

サークレイがルアナの名を叫んだ瞬間。会場は今日一番の歓声に包まれる。

「はぁ。勝ったか」

 ルアナはそれを聞き遂げた後、目の前が真っ暗になり気を失った。

 こうしてルアナの入学を賭けた決闘はルアナの勝利で幕を閉じたのだった。

 

 




いきなり始まった女子だらけの学園生活。
この手の物語が好きなので自分で書いてみました(笑)
初めての小説で不安がいっぱいです。
読んでいただいた方、ありがとうございます。
これからも定期的に更新しますので読んでいただけたら幸いです!
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