片翼天使と白銀の騎士   作:夜月 桜

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初投稿の小説、第二章です!
少し短いですがよろしければご覧ください!



第二章 魔剣

きちんと整理整頓がされた部屋。全体的に物は少ないがベッドには可愛いクマのぬいぐるみが一つ置かれていた。

 そんな部屋の中。この部屋の主、クラリス・レーグルはベッドに腰かけ、先ほどの試合を振り返っていた。

 クラリスは一切の手加減をしていない。正々堂々と全力で戦った。なのに、負けた。純粋にルアナのほうが強かったのだ。クラリスはこれまで最強の騎士だといわれて育ってきた。クラリス自身もそう思っていた。

 私は強い――と。

 それだけがクラリスの誇れることだったというのもある。しかし、ルアナに負け最強ではなくなってしまった。

(なのに、なぜだろう。負けたことは悔しいはずなのに、それよりも……)

 さっきからルアナのことを考えると胸のあたりが痛む。

(最強でない私でも、あいつは受け入れてくれるだろうか?)

 そんなことを考えていた時だった。

「クラリス、いる?」

「殿下?はい、空いております」

 その答えると彼女、ティアナ・クラージュが入ってきた。

「何か御用ですか?」

「学校の中では普通にしてって言ってるでしょ?まぁいいや。それより、お兄ちゃんが目を覚ましたって」

「彼は今どこに?」

「保健室よ。心配してたでしょ?行ってきたら?」

「ああ。ありがとう、ティナ」

 そう答えるとすぐに部屋を出ていくクラリス。

 そんな彼女を見て、ティナは溜息をつくのだった。

 

ルアナはむくりと起き上がった。

「ん、ここは?」

 周囲を見渡すと、どうやら保健室のようだ。カーテンでベッドの周りが囲われていて、わずかだが薬品のにおいがする。

「また倒れたのか」

 ルアナが独り言を呟いた、次の瞬間。

 目の前のカーテンが勢いよく開けられる。

「うわっ!?」

 驚きの声を開けるルアナ。

「な、そんなに驚かなくてもいいではないか」

「あ、いやごめん。いきなり空いたからさ」

「うむ。まぁいい。もう大丈夫なのか?」

「え?ああ、大丈夫だ。ちょっとした貧血だからな」

「それは、代償のか?」

 クラリスがルアナの右手を見る。

 そこは先ほどの試合で魔剣を握っていた手だ。今は包帯がまかれていた。

「気づいてたか」

「まぁな。魔剣など、存在していたことすら知らなかった。た(、)だ(、)一(、)つ(、)を除いては」

 魔剣。それは、はるか昔の天魔大戦時。魔界勢力が天界の勢力に対抗するために作った武器だと伝承では伝えられている。

「ブルーム家。聞いたことあるか?」

「ああ。魔剣を代々継承していた、中級貴族。たしか、反乱の時に滅びたと聞いたが?」

「そうだ。両親は死んだ。けど、俺は生き残った」

「そうか。あの家の生き残りだったか。なら納得がいった」

 ルアナの家は代々魔剣を継承していた。その魔剣は血液を代償に持ち主の《願い》を叶えると伝えられてきた伝説の剣だ。また、魔王が聖王《ルシフェル》を打ち取ったのもこの件だと伝えられている。

「まぁ、魔剣の話はこの辺にして。その、決闘の前の約束を覚えているか?」

「約束?」

「その、私が勝ったらお前は退学。もしお前が勝ったら願いを一つ聞くという、あれだ」

 と、クラリスはなぜか顔をほんのり赤くし、もじもじしながら言ってくる。

「んー、別に願いなんかないぞ?」

「本当に?それでもお前は男か!?」

 そう言いながら現れたのはサークレイだった。

「もう体は平気そうだな」

「おかげさまで」

「で?本当に願いはないのか?やろうと思えばクラリスを自分のものにだってできるのに?」

「じ、自分のもの?」

「そうだ。お前が望めばあんなことやこんなことだってできるんだぞ?」

「あ、あんなことやこんなこと」

 ルアナは頭の中で様々なシチュエーションを妄想する。

(あー、いいかもしれない)

「何考えてるの?お兄ちゃん」

「ティ、ティナ!?いたのか!」

「うん。で、なに考えてたの?鼻の下伸ばして」

「い、いやこれは違うんだ!」

 ティアナの凍えるような声にルアナは背筋を震わせる。

「あ、ルア。ちょっと耳を貸せ」

 サークレイはルアナの返事を待たずに、スッと口を耳元に寄せてくる。

「さっきはあんなことを言ったが、友達になってもらえばいいじゃないか。お前、ともだちいないだろ?」

 それだけ言うとサークレイは離れた。

「ま、願いを何に使うかはルアの自由だ。じゃ、あとは若い二人に任せて、ティナついてきな」

「へ?う、うん」

 そう言うとサークレイとティアナは出て行った。

「で、その願いは決まったか?」

 ルアナは先ほどのサークレイの言葉を思い出す。

 ルアナはこれまで修行ばっかしてきたせいで友達がいない。サークレイはそれを心配していたし、ルアナ自身友達は欲しかった。

「ああ、決まった」

「な、なんだ?」

「俺と、友達になってくれ」

「友達?そんなことでいいのか?」

「俺、友達いないからな。なってくれたら嬉しい」

「そ、そうか。わかった」

 そう言ったクラリスはコホンと咳払いをした後。

「クラリス・イーグルは貴公の入学を認める。そして、これからは友達だ。よろしく頼む」

 クラリスは左手を差し出してくる。ルアナの怪我を気遣ったのだろう。ルアナはそんなクラリスの手を握り返した。

「こちらこそ、よろしくなクラリス」

 ⊛

 

 クラリスは部屋のベッドで枕を抱きしめながらゴロゴロ転がっていた。

(最強じゃない私でも必要としてくれた)

 小さいころ、ある出来事をきっかけにクラリスは「失う」ということを恐れていた。

 昔、まだ小さかったころ。よく実家の屋敷に遊びに来た男の子がいた。当時のクラリスにとってその少年は心のよりどころになっていた。しかし、ある時を境に姿を見せなくなったのだ。心のよりどころだった少年を失ったクラリスは毎日のように泣いていた。唯一の友達といってもよかった少年がいなくなったのはクラリスにとって、とてもショックな出来事だったのだ。

(今までは強かったから周りが付いてきてくれた。でも、今回負けて一人になったら……)

 クラリスは不安だった。また「失う」のではないかと。でも、さっきルアナは言ってくれたのだ。「友達になってくれ」と。こんな私と友達になってくれと。その時、クラリスは救われたのだ。

(ああ、嬉しいな)

 さっきからルアナのことを考えると胸が痛い。

(さっきの決闘で負けた時も感じた。でも、まぁいいか)

 クラリスがこの胸の痛みの正体に気が付くまではまだかかりそうだった。

 

 翌日。

 ルアナは理事長室へと呼ばれていた。なんでも部屋に案内してくれるらしい。

「失礼します」

「入れ」

 サークレイの声に従いルアナは入室する。

 そこには深く椅子に腰かけたサークレイとティアナがいた。

「おはよう、お兄ちゃん」

「おはようティナ。なんか眠そうだな?」

「うん。昨日なんか眠れなくてね」

「なんか悩み事か?」

「え、なんでわかるの?」

「昔、ティナが寝れないときはなんかしら不安なことがあっただろ?だからそうかなってな」

「覚えてたんだ……」

 ティアナは微かに頬を赤く染める。

「もういちゃつくのは終わったか?」

 サークレイは半眼でこちらを睨んでくる。

 ルアナとティアナは途端に背筋を伸ばす。

「よろしい。それじゃ、ここに案内してくれティナ」

「ここ?使われてないはずじゃ?」

「この間まではな。私が可愛い弟子のために改装に改装を重ね豪華な部屋を用意したのだ」

「あー、学院の費用の一部を使ったのか」

「まぁ、そんなところだ」

 サークレイは悪気もなく言ってのける。

 そんなサークレイにティアナは頭を抱えていた。

「あ、そうだルア。その部屋にサプライズを用意しておいたぞ」

「サプライズ?なにそれ」

「行ったらサプライズにならんだろう。ま、行ってみろ。ティナ頼んだぞ」

「はーい」

 というわけでティナの案内でルアナの部屋へ向かうことになったのだった。

 

「ここのはずだけど……」

 今ルアナたちの前にはあまりに豪華な扉があった。

「これが、俺の部屋?」

「みたいだね。王族専用の部屋より豪華な気がするけど……」

「と、とりあえず開けてみようか」

 と、ルアナが扉に手を賭けようとした時だ。内側から突然開き、ルアナは勢いそのままに頭から突っ込んだ。

「うわ!?」

「キャっ!?」

 ルアナは扉を開けた人物を下敷きにしていた。

 ルアナは早く離れるため起き上がろうとして……

 ムニュン。

 とっても柔らかい二つの塊を鷲掴みにしていた。

「もう、ルアエッチだなー」

 と、その時頭上から聞こえた声にルアナは顔を上げる。

 そこには――

「ガヴ!?」

 金髪の超絶美少女が優しい笑みを浮かべてこちらを微笑んでいたのだった。

 




第二章、いかがだったでしょうか。
楽しんでいただけたら幸いです。
短くてすいません(´;ω;`)。
では、また次回も読んでいただけたら幸いです!
 
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