リト デビルーク王への道 作:童貞中学生
新しく3人が俺の彼女になってくれてからは偶に4人とデートしている以外では普通の生活が続いている。美柑との時間のために4人といる時間が減ってしまっているのは申し訳なく思っているが、まだ美柑は小学2年生なのでできるだけ一緒にいてあげたい。その気持ちを分かってくれた4人には感謝をしている。その代わりデートの時は存分に甘えさせてあげるという約束をさせられたがもともとそのつもりだったのでなんの問題もなかった。
「リト。最近西蓮寺たちと特に仲良くねーか?」
「まあ、色々あってな。仲良くなったんだよ」
夕暮れの教室、下校しようとしていた俺に猿山が話しかけて来た。なんだよ、色々って、と言いながら肩を組んでくる猿山にごまかしながら訳を話す。同時に複数の女の子と付き合ってる現状は十分おかしいと思うが、疚しいところはないので隠してはいない。それでも言いふらすことでもない、と自然にバレるまでは言わない方向で彼女達との間で決まっている。
猿山の追求を躱して下校の待ち合わせをしていた美柑が待っている校門へと向かう。玄関を出ると既に待っていた美柑を見つけて歩き出す。夕陽のさす校門に寄り添いながら物憂げな表情をしている美柑は兄の贔屓目を抜きにしても可愛らしかった。
「待たせてごめんな、美柑」
俺が声をかけると先ほどまで沈んでいた顔を輝かせ走り寄って来て、俺の腕に抱きついた。俺が彼女達と過ごす時間が増えて来てから美柑はよく俺に甘えてくるようになった。
前までは恥ずかしがって外で抱きつくなんてことはしなかったのだが、最近は一緒にいる時は常に手を握ったり、今のように抱きついてくる。彼女達の事は美柑には話してないのだが、美柑は何かに勘付いたのかもしれない。兄を取られると思ってくれているのだとしたら兄冥利に尽きるのだが、何時迄も兄離れをしていないと友達と過ごす時間が減ってしまうのではないかと不安にもなってしまう。
「美柑はいつも俺と帰ってるけど、偶には友達と遊んだりしなくていいのか?」
「心配しなくても大丈夫だよ。私友達付き合い上手い方だし。休みの日とかに遊んでるんだから。それよりも私はリトが心配だから一緒に帰ってあげてるの」
だから行こっ?と俺を引っ張る彼女を見ると本当に大丈夫そうだ。美柑はこの歳にしてはしっかりしているし、俺が心配することでもなかったかな。
日が落ちるのが早くなったとはいえ小学生が帰る時間はまだ明るい。美柑と話しながら帰っているといつも美柑と遊んでいた公園のベンチに俯いたまま座っている女子高校生を見つけた。彩南高校の制服じゃなさそうだ。賑やかな公園の中で彼女だけが浮いて見えた。
「美柑......」
美柑は俺の目線の先を見て察した表情をした後、やれやれしょうがないなぁ、と声に出した。これだとどっちが年上かわからないな。美柑が抱きついていた腕を離したのを見てそちらに歩いていく。
「こんにちわ、お姉さん」
「こんにちわー」
「えっ?」
彼女は俯いていた顔をあげてこちらを向いた。高校生にしては童顔の彼女は先ほどの雰囲気も合わさってひどく儚げに見えた。
俺たちが声を掛けると彼女は自分だとは思っていなかったのかキョロキョロと周りを見回した後、自分だと気付いたようで挨拶を返して来た。戸惑う彼女を尻目に失礼しますと断って美柑と一緒にベンチに座る。基本は美柑と話していたが偶に彼女に話しかけ会話をしやすい空気を作る。いきなり訳を聞いても見ず知らずの俺たちに話してくれるわけがないと思ったからだ。
「さっきはなんで俯いてたんですか?」
やっと笑顔を見せてくれ始めた彼女にそれとなく聞いてみた。
最初は悩んでいた彼女だったが、話して見るだけでも楽になるかもしれないと彼女に言うとおずおずと話し始めた。
どうやら彼女はまだ高校一年生なのだが、自分の進路が決まっていないらしい。周りが進路に向かって勉強を始めた中で夢も進路も決まっていない自分に不安を覚えていたようだ。
「私得意なこととかないし」
そういう彼女はまた俯いてしまった。
「焦ることはないんじゃないですか?」
ありきたりすぎて使い古された言葉だとは思うが、彼女は不安になるあまり気持ちが先を行き過ぎている。根が真面目なのだろう。
「夢を持つことって凄いことだし、カッコいいことだとは思うけど、焦って夢の持ち方を間違って、夢を限定しすぎてしまうといつか現実との違いにギャップを感じて挫折してしまったりするんです」
こんな小学生の言葉を彼女は黙って聞いてくれている。
「将来を決める上で必要なのは自分の幅を広げていって、自分が本当は誰の役に立ちたいのかをはっきりとさせることですよ。よく夢を持つ時に自分のやりたいことを思い浮かべる人がいるけど、仕事をしていく中で自分のためだけに始めた人はどうしても嫌な事や退屈な事が出て来た時にモチベーションが続かなくなっちゃいますからね」
前世でもこういった相談は苦手だったが、自分なりに話してみる。
「ネガティブにならずに今までの人生で一番楽しかった事を考えたり、その事に関係するボランティアだったり、アルバイトだったりをして自分の本当のやりがいを見つけていくといいんだと思います。それが見つかるまでは勉強あるのみですね、せっかく見つけたやりがいが勉強ができなかった所為で活かせないなんて悔しすぎますから」
「へぇ〜、なんだか凄いね。小学生なのにしっかりしてる。でも......うん、ありがとう。自分なんかなんて思わずに自分なりに色々考えてみるわ。」
彼女は感心したような視線を向けてくる。途中から今は自分が小学生だということを忘れてしまっていた。まあ、彼女がさっきの言葉で感じてくれることがあったらよかったのだが。
「そう言えば自己紹介とかもしてなかったわね。私の名前は新田晴子」
「僕の名前は結城リトです。こっちが妹の......」
「結城美柑です」
「それにしてもすごいわね。結城君は小学生なのに色々なことを考えてるのね」
「リトは凄いんですよ?」
「今までの人生で色々あっただっただけで」
「しょ、小学生でなんて重みのある言葉......」
世界中を探しても転生した経験のある人なんて俺くらいのもんじゃ無いかと思う。
それからは雑談したり、美柑との遊びに付き合ってもらったりした。
流石に小6の男子と女子高生がおままごとに興じる姿はどうかと思ったが、晴子さんは嫌な顔一つする事なく付き合ってくれた。彼女は子供の相手をするのが上手くて美柑が終始楽しそうにしていた。将来はそういう道も向いているんじゃ無いかとも思ったが、ここで言っても混乱させてしまうだろうと思ったので言わなかった。
「今日は色々とありがとう。おかげで元気もらったわ」
「いえ。お役に立てたならよかったです。こちらこそ一緒に遊んでくれてありがとうございます」
「それじゃあまたね〜、晴子さーん」
別れる時には最初見たときの憂鬱そうな表情は全く見せなかったので大丈夫だとは思うが、一応連絡先を交換して別れた。彼女には色々な人の意見を吸収して自分のものにしてもらいたい。
「じゃあ、帰るか! 美柑」
「うん!」
再び抱きついて来た美柑に苦笑しながら、家へと向かう。帰ったらさっきの事について両親にも聞いてみよう。彼女の悩みはまだまだ続くけれどより良い未来へと歩めるように心から祈っている。
「リト、晴子さん見る時、鼻の下伸ばしてたでしょ?」
「の、伸ばしてねーし!」
祈っている。
その日もいつものように美柑と下校していた。一つ違うのは春菜がいる事だろう。いつも利用している商店街で買わなければいけないものがあったので荷物持ちがわりについて行く事にした。
「結城君。重くない?」
「これでも結構鍛えてるからね。このくらいじゃ全然平気だよ」
一通りの買い物を終えた俺たちは春菜の家に向かっていた。両手には食材の詰まったビニール袋がある。今夜は久しぶりに家族全員が揃うらしいので豪華な夕食を振る舞うそうだ。それでも買いすぎな気もするけど西蓮寺家の普段の台所を取り仕切っている春菜が言うのなら間違いはないのだろう。正直言って結構重いが、男は意地っ張りな生き物なのだ。ここでそんな弱音は吐けない。
乳酸の溜まって行く腕と葛藤しているとどこからか何かの鳴き声が聞こえて来た気がした。
「? 美柑、春菜何か聞こえなかったか?」
「ん? 何も聞こえなかったけど」
「うん私も」
美柑と春菜が聞こえなかったのなら気のせいかと思い歩みを進めようとするとまた今度はさっきよりも幾分ハッキリとした鳴き声が聞こえた。
「ほら! また!」
「私も聞こえた!」
「犬の鳴き声かな?」
鳴き声のした方へ向かって見ると犬が一匹倒れていた。傍から見たら眠っているだけのように見えたが、近づいて見ると細かな傷を負っていることがわかる。この種類は確かボストンテリアだったはずだ。寒さのせいか体も震えている。そこからの判断に迷いはなかった。両手のビニール袋を一旦下ろすと来ていたジャンパーを脱ぎその犬を包んで抱きかかえる。抱きかかえると同時に今までかろうじて繋いでいたのであろう意識を手放してしまった。
「悪い! 春菜! 帰るの遅くなりそうだ! 美柑俺の携帯で近くの動物病院の場所を調べといてくれ!!」
「了解!!」
「私は全然平気! それよりワンちゃんは大丈夫?」
「俺じゃあ詳しい事はわかんないから、急いで連れて行こう」
買い物袋をそのままにはできないので春菜に犬を抱きかかえてもらう。さっきまでの疲れなんて嘘のように吹き飛んでいた。
美柑のナビに従って急いで行くと10分もしないうちに動物病院へとたどり着いた。
一息つく間も惜しんで先生に診てもらう。今頃になって何故あんなところであんな怪我をと疑問が思い浮かぶが、今はあの犬の無事を祈るのみだ。
先生が俺たちを呼んだ。長い間待っていた気がするが実際は10分もかかっていなかった。
「大きなキズはありませんでしたが、寒さと空腹からひどく衰弱していました。首輪は付いていたんですが、この街では野良犬は少ないですから、犬が逃げていた場合、すぐに見つかるはずなんですよ。この様子からして何日も何も食べずに彷徨っていた事は間違いないので、おそらく捨て犬だったんだと思いますよ」
きいてみるともうすぐ卒業シーズンが来るこの時期は新生活への足枷となってしまう飼い犬を捨ててしまうケースが多いのだそうだ。この犬の傷の中には明らかに人の手によるものもあったそうだ。その理不尽さに怒りがこみ上げて来るが今は関係ない感情だ。2人を見れば悲痛な顔をしている。
「ウチで飼います」
春菜が目を赤くして眠っている犬を見ながら言った。並々ならぬ決心をしているようだ。俺も飼い主がいなければ、自分の家で買うつもりで助けたのだが。
「大丈夫か?」
「うん、この子は私が面倒見てあげたい」
そのあと回復するまでは病院で預かっていてもらうという事で予定通り春菜の家まで荷物を届けて帰った。
数日後元気になったと病院から知らせを受けたので春菜と一緒に病院に向かった。
春菜は病院に着くとすぐにあの子の元へと向かった。よっぽど心配だったのだろう。
先生と少し話した後あの子を見つけた春菜は近づいていって抱きかかえようと手を伸ばした、その時ガブリと犬が春菜の手に噛み付いてしまった。
「春菜!!」
「大丈夫だよ。結城君」
春菜は噛まれて血がにじむ手を気にもせずにその子を抱きしめた。
「ゴメンね。いっぱい悲しい思いをしたんだよね。苦しい思いをしたんだよね。でも、これからは私といっぱい幸せになろうね」
春菜の言葉が通じたのか。それとも想いが通じたのか。春菜の腕の中でその子は鳴いた。それが俺には人の鳴き声のように聞こえた。辛かった思い出を洗い流すような鳴き声に。
こうして春菜に懐いた犬は「マロン」と名前を付けて貰って西蓮寺家の一員として無事に迎え入れられた。
俺もちょくちょくマロンと遊びに行くようにしているが、なかなか俺に懐いてくれない。春菜にひっつく悪い虫だと思われてるのかもしれない。いい判断力をしている犬だ。それでも春菜を守る騎士のような振る舞いのこの犬を俺は嫌いになれないのだった。
薄っぺらい人生を送る作者には悩み相談の話なんてハードル高すぎました。ネットに転がる話を噛み砕いて書いてみましたが、どうですかね。
中高一貫校に通う作者には将来なんてまだまだ未来の話だと思ってたのに、小説を書くために考える事になるとわ。
あと何文字くらいが理想なんでしょうね。平均1万5千とか余裕で行ってらっしゃる方々は本当に凄い。あのレベルの物書きになるには自分はどれくらい先の事か。