俺の許嫁と幼馴染が同じバンドメンバーの件について   作:羽沢珈琲店

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テストに追われているのに、ついついアニメやモンハンに逃げてしまうΣ5です。

今回はハロハピメンバー再登場です。展開的にはそこまで動きはありません。では、どうぞ。


ハローハッピーワールド、再び

 前回までのあらすじ

 

 翼、捕まる。

 

「もうツッコミを入れる気が無くなってきた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 帰宅途中だった奥沢美咲は一つの大きなため息を吐く。

 

「大丈夫?美咲ちゃん」

 

 それを心配の声をかける松原花音。

 

「あぁうん。大丈夫だよ。でも、こころの突発性には毎度の事ながら疲れるなって」

「そ、そうだね。で、でも今日のこころちゃんちょっと必死だったように思えたけど……」

「そうかな?」

 

 今朝のこと。花咲川女子学園に通っている奥沢美咲はいつものように学校に来ていつものように授業を聞き、いつものように一人で帰るはずだった。だが、こころが急遽家に集合してほしいと言ってきたのだ。美咲達はハローハッピーワールド、略してハロハピというバンドを組んでいる。主にその活動は地域の子ども達に聞かせたりや老人ホームや病院と言った公共施設でのライブを行うもの。だが、それをするのにも許可がいる。そしてその許可を取るのはいつも決まって美咲なのだ。

 

(ホント、私の苦労を考えてほしいもんだよ……)

 

 話を戻すが、ハロハピには美咲が許可を取ってきて報告する曜日が決まっている。そして、その曜日にまた次のライブなどを決めている。所謂定例会議みたいなものだ。だが、今日はその報告の日ではない。と言うことは、緊急で召集してきたということになるのだ。

 

(まあどうせくだらない内容だろうけど……)

 

 こころとは数ヶ月しか一緒にいないが、それでも分かる。こころがまともな話をする事などないからだ。未だに私の存在も半信半疑で私がミッシェルということも分かってないし。

 

「でも、花音さんの言う通りこころの様子がおかしかったのなら、何かあったのかもね」

 

 その時、ふと翼のことが頭に浮かんでしまった。もしかすると、翼と何かあったんじゃないか。こころとは許嫁って言っていたし、昨日も家に泊まるぐらいの仲だし。喧嘩でもして、その相談ってところ?

 

(うわ〜……なんかこの召集の意味が分かったような気がしてきた)

 

 喧嘩の仲直りってどうやってするのかしら?とかいつもの笑みを浮かべながら聞いてくるんだろう。うん、それだ。それしかない。

 

 はぁ……、ともう一度ため息を吐く美咲。しかし、その心とは裏腹に別の深い部分がズキズキと言っていた。

 

(私達を集める理由もあまりないし、私には関係ない。なのに、何で胸が痛むの?)

 

 まだその正体を知るのは先である美咲だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、弦巻家専用リムジン車では翼がまたもやM男に変身していた。

 

「ナレーション!最近扱い酷くね!?ただ、ぐるぐるに縄で縛られてるだけだよ!!」

「翼様、お静かに」

「あ、すみません」

 

 冷静な口調で言われたので思わず謝ってしまった。

 

「いやいや、すみませんじゃないですよ!何で俺連行されてるの!?」

「こころ様のご要望です」

「え、こころが?」

 

 こころが俺を呼び出したのか?絶対昨日の事について何だろうけど、ぐるぐる巻きにするほど怒ってるという事か!?

 

「安心して下さい。こころ様は怒っておりません」

「あ、そなの?」

 

 よ、良かった〜……!え、じゃあ何で俺縛られて……。

 

「私達の独断で縛られさせて頂きました」

「何で!?」

「大丈夫です。何もせず動かない限り、今は命までは取りません」

「今はって言ったよね!?いずれは刈り取る事だよね!?」

「翼様、お静かに。今すぐ首が吹っ飛ぶことになります」

 

 腰ポケットからナイフをちらりと見せてきた黒服の人達の行動を見て俺は直ぐに黙った。いやもう銃刀法違反だよ?一般人……ではないと思うけど、警察に捕まるよ?俺、裁判に訴えても勝てると思うよ?弦巻家の権力でどうにでもなるか。弦巻家すご〜い。

 

「ご安心を。本当に命までは取りません。そんなことをすればこころ様が悲しみます」

「は、はぁ……」

 

 じゃあまずこの縄を解いてくれたら嬉しいんですけど。

 

「ですが、我々もまだあの行為を完全に許したわけではありません。こころ様から自分のせいだと言っていましたが、言わされてるとも考えにくい。よって拘束させてもらっているということです」

「ご丁寧な説明どうもありがとうございます……」

 

 黒服の人達って若干過保護な部分あるよね?

 

「過保護ではありません。主人様のご命令でこころ様のお身体をお守りするのが我々の役目なので」

「もう俺、喋らなくてよくね?」

 

 何なの?俺の周りには心を読む能力でも持ってるの?さっきも触れなかったけど、さらっと説明してきたからね!?

 

「持ってません」

 

 さらっと言ってこないで!!

 

「………」

 

 黙るのかよ!!

 

 何故俺は心の中にまでツッコミを入れなければならないのだろう。いつもの倍は疲れるよ……。

 

「翼様。もうすぐ到着です。後、「もし、こころに二度も不埒な事をすれば唯ではすまない」と、主人様から手紙を預かっておいたので一応報告を」

「ホント、報告してくれてありがとう!!」

 

 もう俺、社交パーティーとかには出席出来なさそう……。

 

 兎にも角にも、黒服の人達に囲まれながら俺はこころのいる部屋へと案内された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の前に来た俺と黒服の人達はコンコン、と黒服の人達がドアを二回叩く。

 

「こころ様、翼様を連れて来ました」

「わ、分かったわ!入っていいわよ」

「では、翼様どうぞ中へ」

 

 黒服の人達の手によってドアを開かれ、そこで目にした光景とは気まずい雰囲気を作ってしまったこころも愛しのみーちゃんと、他3名がいた。

 

「つ、翼?何でここに……。それにその格好は何?」

「つ、翼君って確かこころちゃんの……」

「おや、こころのフィアンセも呼んでいたのかい?」

「何で縄で縛られてるの?」

「えっ?はっ?これどういうこと?」

 

 何でみーちゃんがこの場にいるの!?というか、オレンジの子、一番触れて欲しくない部分に触れないでくれ!

 

「い、いらっしゃい翼!早速だけど、私のバンドメンバーを紹介するわ!」

「しょ、紹介?」

「そ、そうよ!まだ翼にはみんなを紹介してなかったもの。新しく仲間になるみんなを知るのは当たり前でしょ?」

 

 若干声が裏返ってて変な感じになってるこころだが、俺はそんなことが気になったのではない。

 

「な、仲間ってどういう事ですか?こころさんや」

「私達がバンドを組んでいるのは知っていたでしょ?そのメンバーに翼も入るのよ。だから、メンバーの紹介は必要でしょ?」

 

 え〜と、つまりこういう事?またこころの身勝手行動が出て来たという事?そもそもこころがバンドしてたなんて知らなかったし。公園のやつだって単なる余興でやっていたものだと思ってたし。

 

(やっぱりこころは弦巻こころだな)

 

 改めて再確認したところ、俺はこころに対しての感情が原点に戻りかけていた。てっきり二人で昨日の話をするために呼んだのかと思ったが、違うのならこころは昨日のこと全く気にしていないって事だよな?何だよ、俺だけ超不安になって責任取らなきゃとかその他諸々考えてたのがバカみたいじゃねぇか。やっぱり俺はみーちゃん一筋だな。

 

「はぁ……。俺が仲間になるって言っても俺は何をすればいいんだよ。みんなの手伝いとか雑用的なやつか?」

「翼も楽器を持って演奏するのよ!」

「………one more please?」

「翼も楽器を持って演奏するのよ!」

 

 同じセリフを二度も言ってくれてありがとう。いやいや、俺が聞きたいのはそういうことじゃなくて、俺演奏出来ないし。楽器なんて生まれてこのかた持ったことないし。

 

「み、美咲ちゃん……one more pleaseって……あれであってたっけ?」

「多分、違うと思います。二人ともバカなんで……」

 

 そこに触れないでくれお二人さん!!

 

「あのな、こころ。そもそも俺は楽器を持ったことが……」

「ならまずは薫からね」

「話を聞け!!」

 

 くそっ。もう知らん。こころなんてもう知らん!!

 

「おや、私の紹介からでいいのかい?こころのフィアンセと会うのはこれで二回目かな?私の名前は瀬田薫。よろしく頼むよ」

「瀬田……薫……。あ、うちの学校で有名な演劇部の!?」

「おや、フィアンセにまで知れ渡っているとはね。ますます私の美しさが儚い」

「は、儚い?それってどういう意味ですか?」

「つまり……そういう事だよ」

「は?」

「だから、そういう事だよ」

 

 あ、ダメだ。俺、この人と仲良く出来る感じがしない。というか、理解が追いつかない。

 

「翼、薫さんに何言っても無駄だよ。一見常識人っぽいけど、全然バカだから」

「そ、そうなの?」

 

 そんな人が学校の有名人で人気者って……。確かに顔だけなら男の俺から見てもカッコいいとは思うけど。

 

「次ははぐみね!」

「分かったよこころん!えっと、こころんのお嫁さんになる人だっけ?」

「いやいや!俺、男だし!それを言うならお婿さんだろ……」

 

 そもそもなると決まったわけじゃないし。

 

「あ、そっか!ごめんね。えっと、はぐみはね、はぐみだよ。よろしくね!」

 

 自己紹介という自己紹介をしてなくね?この子も女の子というより少し男の子っぽいよな。所謂ボーイッシュというやつか。間違えられたのは少しイラっとしたが、ちょっと可愛いかったから許そう。それでも、みーちゃんには到底叶わないがな!!

 

「次は花音ね!」

「う、うん……。えっと……、花咲川女子学園の……二年で……ま、松原花音です……。そ、その……よろしくお願いします……」

 

 あ、この人はいい人だ。間違いなく断言できる。

 

「こちらこそよろしくお願いします……ってまだ俺このメンバーに入るって決めたわけじゃないんだけど!?」

「ふえっ!ご、ごめんなさい……!」

「あ、松原先輩は悪くないですよ!というか声を荒げてすみません!」

「う、ううん。大丈夫だよ……。ちょっとビックリしただけで……」

 

 ホント、この人いい人だな!俺の周りの奴ら(みーちゃん以外)はホント、いらん事しかしてこないから先輩みたいな人がいてホントに幸せだ!

 

「それじゃあ次は美咲……じゃなかったキグルミの人ね!」

「いやいや合ってますからね?何で反対にしちゃうかな……」

 

 そうだぞこころ!!みーちゃんをキグルミの人呼ばわりなんぞ俺が許さん!!

 

 と、言える自分になりたい。

 

「というか、私、翼のこと知ってるし。翼も私のこと知ってるから」

「え……?」

 

 その時、こころの顔が驚いた表情へと変わる。

 

「どうした、こころ?」

「い、いえ!何でもないわ……」

 

 やっぱりなんかおかしい。いつものこころじゃないというか、元気が足りないというか……。

 

「じゃ、じゃあ最後に翼!」

「俺もやるの!?まだ俺入ると決めたとは」

 

 その瞬間、俺の頬を何かが掠め通った。恐る恐る後ろを振り向くと黒服の人達がナイフを片手に目で訴えってきた。

 

『次は外しません』

 

 ねぇ、俺絶対裁判に訴えったら勝てるよね?勝てる裁判だよね!?

 

 けどまあそんな勇気が俺にあるわけでもなく、仕方なく自己紹介する形に。

 

「えっと、羽丘学園一年神童翼です。不本意ながらバンドメンバーになりましたけど、よろしくお願いします……」

 

「「「よろしく(だ)(……)!」」」

 

 こう言っちゃあれだけど、よくよろしくって言えるよね五人とも。あ、みーちゃんは別だよ?

 

「それより……翼、いつまでその格好でいるわけ?」

「あ、」

 

 みーちゃんに言われて気づく。俺まだ全身縛られたままで何故か死刑の前で命乞いする人みたいな座り方になってたわ。有名漫画のあの座り方に似てると言えば分かるだろう。というか、分かってくれ。




次回、「こころが大胆な行動に!?」「翼、遂に処刑か!?」「美咲の心の内に変化が!?」の三本でお送りします。

それと、あこ。誕生日おめでとう!!

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