それでもいいという方は第十一話をお楽しみください。
二人の攻撃が激しさを増していく中、横から薙ぎ払うお祓い棒の攻撃をすり抜けて幽香は手を伸ばし、汗だくの霊夢の胸倉を掴むと地面に向けて思いっきり投げ飛ばした。
だが、薙ぎ払うという行動をしたというのに、それでも霊夢は寸前でお祓い棒を使い、幽香の掴んでいた手を離させることには成功するが、その隙に反対側の手に持っていた傘に肩をたたかれることとなってしまう。
霊夢の体が衝撃で地面に向かって降下をはじめ、結果的には幽香の思惑通りに事が進む形となってしまった。
霊夢が追撃されないよう、落ちていく彼女を見下ろして次の行動に移ろうとしている幽香に向けて手の中で凝集させておいた魔力を弾幕のエネルギーとして放出してレーザーを放つ。
音速に達するかそれ以上の速さで超高速移動をするレーザーを幽香は頭を傾けただけでかわた。それに私は若干驚かせられながらも、第二射を撃つ準備をレーザーを撃ちながらもう片方の手で始める。
幽香が上体をわずかに下げて足元に魔力を使って足場を作り出し、私の方に向かって跳躍した。
幽香は歩いたり空を飛んだりなどの動きは極端に遅いが、魔力強化での筋肉増加によるこうした移動に関してはかなりの速度となる。
ガラスを地面に投げつけて、たたき割ったように幽香が足場として使っていた魔力の塊が砕け散った。
魔力を使って光の玉をいくつか自分の周りに作り出し、向かってくる幽香に向けて一斉掃射を試みるが、傘をこちらに向けて開いているためすべてのレーザーを受け流されてしまう。
「っち…!」
無意識のうちに舌打ちを漏らしてしまうが、思っていた以上に私は落ち着いており、幽香の到達時間を稼ぐために後ろに下がって鞄に右手を伸ばした。
幽香が傘を開いてレーザーを受け流すのは簡単に予測できた。であるため、鞄の中に何か役に立つものがないかと右手を這わせてみたが、今日は特に弾幕勝負をする予定もなかったということで、鞄の中にはマジックアイテムなどという便利なアイテムなどは置いてはいない。
レーザーを撃つために左手に魔力を集中させていたが、レーザーを撃つためではなく魔力を爆発的に放出することによる推進力で逃げながら攻撃することにし、早速魔力を幽香に向けて開放した。
手先から放出された魔力が膨れ上がり、私特有の青白い魔力の炎が放出される。
開放した魔力の爆発が幽香に襲い掛かろうとした寸前、幽香は万力のような握力で私の腕を掴み、向けていた方向を捻じ曲げられる。
「うぐっ…!?」
握られただけで腕がしびれるように痛み、幽香の手を離させようともがこうとしたとき、無表情の彼女は小さな声で私の耳元で囁いた。
「魔理沙、私は弱いのかしら?」
「あ…!?……何言って…」
私はこの至近距離で幽香に向けてレーザーを放って腕を切断してやろうとしていたが、ここからどうにかして霊夢が起き上がるまでの時間稼ぎができるかもしれないと思い。彼女の質問に答えることにした。
「……決して弱くはないだろ……あの霊夢がああやって地面にたたき落とされているんだからな」
私は言って下に落とされて、そこからようやく立ち上がることができそうでいる霊夢をちらりと見る。
「…かもね、でも…それでは足りないわよ。私程度に手こずっているようじゃ、この先で起こる異変には対応できないわよ」
「…これから起こる異変…?……また誰かが異変を起こすのか…?」
「ええ、まあ……そういうことよ」
幽香は自分のことを私程度と言った。幻想郷ではかなり強い方である幽香がここまで言うということは、誰が異変を起こしたのかはだいぶ絞ることができる。
しかし、腑に落ちない。私よりも頭一つ分も背の高い幽香を見上げて、そう思った。
いくら相手が強くてもこの風見幽香はいつも余裕でいて実力の奥底が見えず、本気を出させれば危険度は幻想郷で右に出る者はいないかもしれない。そんな奴だ。
そんな幽香をここまで言わせることができる奴が、幻想郷にいたとは考えられない。
でも、幽香が博麗神社に来たときに、言っていたこちらの事情というのも気になるが、それが関係してるのだろうか。
幽香が異変を起こさなければならない理由というのが見つからない。彼女のことを深くは知らないが、いつも自由気ままで凶暴とはいえ異変とは程遠く生きていたからだ。
何か誰かに従わないといけない理由があるのだろうか。そこまで考えて私はその考えを否定した。
誰かに従わないといけない状況というのは二種類ある。一つは誰かを人質に取られていて仕方なく従っている場合などだ。しかし、幽香に限ってこれはあり得ない。周りとつるむこともなく、花と常に過ごしている彼女に人質にできるほどの人物がいるとは思えないからだ。
二つ目は圧倒的な力でねじ伏せたというものだが、そんなことができる奴が幻想郷か外の世界から幻想入りして来たとは考えにくい。幽香が抵抗もせずにそいつの言いなりになっているということは、そいつは私たちの常識に当てはなるのか定かではないほどの実力者ということになるからだ。
わずかに可能性があるとしたら、鬼かスキマ妖怪の紫、もしくは聖とかだが、そもそも異変を起こす理由がないだろう。
紫は幻想郷の結界の管理をしている人物でもあり、異変を起こす側というよりもバランスの乱れを治す私たち側であるため、異変を起こすとは考えにくい。
スイカも鬼で戦い好きとはいえ、年中酒で酔っ払っていて陽気な奴だ。好き放題やっているときもあるが、こんな回りくどいやり方をする奴でもないだろう。
聖もだ。自分の広めている宗教が関わっているならば、こんなマイナスになるようなことはしないだろう。
そうなると、やはり外の世界から強い力を持った奴、もしくは奴らが幻想入りしたと考えるのが妥当だろう。それを踏まえて、従っている奴がいるのかを確認するために私は幽香に聞いてみることにした。
「…なあ幽香、なぜこんな異変を起こしたんだ?…お前は好戦的ではあるが、人を殺して回るようなことをする奴でもないだろう?…それに、事情があるといったが誰かに従わないといけないとか。そういう理由もあるのか?お前がそう簡単に誰かに従うとも思えないが…」
私の後方にある村、幽香が花の化け物を大量に送り込んだ村が彼女には見えたらしく、少しだけ視線をずらす。
「神社で言ったでしょう?…言えないけど少しこっちにも事情があるって」
幽香はそう言って私の腕を掴んでいた手をいきなり離し、そのまま掴んでいた手を少しだけ伸ばして私の胸倉を掴む。
「…おしゃべりはもう終わり」
私は反射的に見下ろしていた胸倉を掴む幽香の手から目を離し、彼女のことを見上げた。
「来てと言われてあんたはおとなしく来る奴でもない。気絶させてから運ばせてもらうわ」
幽香がそう言って足を持ち上げて私の腹部に添え、私のことを地面に向けて蹴り落とした。
三日後か五日後に投稿します。