東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっております!

それでもええで!という方は第百十五話をお楽しみください!


今回は時間があまりとれず短めとなってしまいました。

次の投稿もいつになるかはわかりませんが、気ままに待っていただければ幸いです。


東方繋華傷 第百十五話 四天王奥義

「……さ……!……りさ…!」

 断続的に何かが聞こえる。聞き覚えのあるその声は、誰かを呼んでいるようだ。意識が朦朧として、途切れ途切れに聞こえる声は雲がかっている。

 眠るとはまた違う意識の混濁は、残っていたそれすらも奪って行くことは無いが、脳を回転させられるほど弱い物でもない。

 呼び声の主と、呼ばれている人物を特定することができない。

「……」

 閉じたままの目では周りの状況などわからないが、分かることと言えば暗明だけだ。明るすぎる夏の日差しが瞼をじりじりと照らしている。角度から察するに上を見上げているようだ。

 投げ出された四肢が、掘り返された湿った土に触れているのだろうか。日差しにより暖められた地面の熱気はあまり感じない。

 私は、何をしているのだろうか。

 ぼんやりしていても、不意にその疑問が脳裏をよぎった。自分が何をしていたのかを段々と思い出してきたのだ。

 ズキッと頭の奥底に頭痛を感じた。それは思い出していく記憶が近しい物になる程に、痛みが増していく。

「っ……」

 そうだ。私は、異次元勇儀を倒そうとある作戦を建て、決行しようとして……。

 一番新しい記憶を辿ろうとした時、頭蓋の内側に発生していた激痛はいつの間にか表面に姿を現し、頭全体に広がっていく。

 それは強さを増し、遂には頭を抱えなければそのまま頭部がぐしゃりとはじけてしまうのではないか、と思うほどにまで到達する。

「っ……あああああああああああああああああっ!!」

 真上で光を産生し続けている太陽のように、痛みが朧げだった意識を照らし、完全に意識を覚醒させた。

 頭が弾けてしまう錯覚に陥っている私は、無意識のうちに両手で頭を押さえ込み、狂ったように叫び散らす。

 そうでもしていなければ、本当に痛みで頭の中がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられ、内側から弾けてしまいそうだった。

 十秒か、二十秒か。五分か十分かわからなかったが、頭の痛みが引いてきた頃、倒れ込んでいる私は衝撃を受けた。

 例えるならそれは重たい岩石のようにも感じたが、服越しの感触がもっと柔らかく、体温が伝わって来る。

 さらに言えば蹴りやパンチの攻撃ではなく、体を使ったタックルなどでもない。もっと優しく倒れていた体を抱え上げられた感覚だ。

 頭痛を押さえ込もうとしている私には他のことを考える余裕がないが、痛みで訳が分からなくなっている脳をフル回転させ、抱え上げてくれた人物を真っ赤な視界で見上げた。

 茶色に近いオレンジ色の鮮やかな髪が風に靡いて後方に流れている。両側頭部から伸びている大きなツノ。

 抱えてくれている人物が敵でないことが確認できると、なんだか少し安心することができた。

「魔理沙!大丈夫か!?……全く動かないから死んだかと思ったぞ」

「……っ……痛……どれだけ、倒れてた…?」

 風邪をこじらせた時とは比べ物にならない程、頭痛で頭がガンガンするが、何とかしゃべることができた。

「さあ、三分ぐらいだ」

 そう呟くと身を翻したようで、ぐんっと体に重力がかかる。異次元勇儀からの攻撃だろうと予想がつく。

 岩石を投擲してきていたようで、異次元萃香が動く音とは違う空気を切る音が高速で横を通り過ぎて行く。

「……もう、大丈夫だ……」

 慣れて軽いぐらいだった体が、骨を全て金属に置き換えられているような重量感があるが、体に力が籠らないわけでない。

 意識を無くす前後で記憶があやふやだが、確か私は頭部を殴りつけられたはずだ。

記憶を頼りに殴られた部分に手を伸ばすと、普通の皮膚に指先が触れるがその表面には粘度が汗よりも高い、生暖かい血液が付着した。

 これが目に入って、視界の色をおかしくしてしまっていたようだ。手のひらは頭を抱えていたことで血でまみれているため、手の甲で額と目元を拭った。

「大丈夫には見えないが?鬼に頭を殴られたんだ。生きている方が凄い…障害の一つがあってもおかしくはないぞ」

 確かに、これまでは幾度となく攻撃を受けて来たが、その直後に意識を失ったのは初めてだ。

 体に異常がないか意識を向けてみるが、指がもげていたり、足先の触感が消えているなんてこともない。問題はなさそうだ。

「本当に大丈夫だ。心配ない」

 私がそう言うと彼女はそうか、とだけ呟いた。ある程度異次元勇儀から距離を取ったようで、斜めに倒れかけている木の影に私を下ろしてくれた。

「あいつと、まだ戦えそうか?」

「ああ…」

 抱えられていた時はそこまで感じなかったが、いざ自分の足で地面に立ってみると強い倦怠感に包まれる。

 膝が小さく笑ってしまっていて、体に疲労とダメージが溜まっているのがわかる。早いところケリを付けてやらなければならなそうだ。

 拳を握り、異次元勇儀がいた方向に向き直ろうとした時、すぐ近くから奴の荒々しい魔力を感じた。私たちが隠れているこの木のすぐ裏からだ。

「萃香!」

 私の方が速く感づいたが、動き出したのは彼女の方が速かった。突き飛ばして一緒に横に飛びのこうとしていたが、胸に伸ばされていた手に突き飛ばされ、反対側に飛ばされる。

 直径が三十センチを超える樹木の幹が、私たちがいた方向に大きく湾曲したと思うと、樹皮が衝撃で剥がれて宙に弾かれた。

 しなる力を持つ木でも異次元勇儀の攻撃には耐えられないようで、幹に横方向に稲妻状の亀裂が入ると、上下に裂けていく。

 砕かれ、線維が千切れていき、木の内部で爆発が起こったかのように中身が異次元萃香の方向に雪崩れ込んでいく中、木片とは違った動きをする大きな塊が幹の中から飛び出した。

 大小不同の木片が押しのけられ、おかしな軌道で飛んでいく。それをさせている人物は握った拳を構えた体勢で迎え撃つ異次元萃香に叩き込んだ。

 奴が来ることがわかっていた彼女の体は、既に疎の性質をもつ魔力に覆われており、攻撃が当たり次第霧散して消えていった。

「…ちっ…」

 攻撃が当てられないことに苛立ちを覚えているらしい。眉間にしわの寄った異次元勇儀は攻撃の当てられる私に目標を切り替えたようで、着地したばかりのこちらに顔を傾ける。

 だが、奴の後方に密の性質を持った異次元萃香の魔力が集まっている。彼女が攻撃しやすいように私は奴の注意を引いた。

 途切れていたとある性質を持った魔力を右手にもう一度産生し、攻撃をするような体勢へと移った。

 口の端を吊り上げた奴がこちらに向かおうと一歩踏み出すが、獣並みの感が働いたのだろう。無理やり踏ん張り、方向転換して体の向きを変え、後方に出現した異次元萃香へ拳を叩き込む。

 予想外の攻撃だったのだろう。回避等に移る準備をしていなかった彼女の腹部に拳が抉り込み、奴へ向かっていた拳は頭を捉えた。

 二人から驚異的なほどの拳圧が発生し、同じ極を向け合わせた磁石のようにそれぞれが後方へ吹き飛んだ。

 こちら側に吹き飛んできた奴へ向け、左手に溜めていた魔力をエネルギー弾へと変換し、不意を突くために真横に来たタイミングでぶっ放した。

 中々のスピードだったが、一直線で飛んできているのであればそこまで難しいことは無い。正確に飛んでいくと奴の腹部で小さくはじけ飛んだ。

 爆竹を爆ぜさせた時よりも小さな破裂音がした途端、膨大な運動エネルギーがその体にかかったようで、急に飛んでいく方向が切り替わり、崩れた屋敷の中へと転がっていった。

「萃香!」

 奴を見送る事無く視線を外し、奥へと飛んで行った仲間の元へと走り寄る。青あざが広がる腹部を押さえた彼女は、ゆっくりと起き上がろうとしていた。

 苦悶。を現す表情の異次元萃香は、見ているこっちが辛くなりそうだ。立ち上がろうとしている彼女に手を貸し、今度は私が立たせてやった。

「私よりもきつそうだぜ。大丈夫か?」

「……こっちの心配よりも、その作戦とやらの心配をしろ。上手くいくかわからないんだろう?」

「まあ、そうするとするか。」

 私は異次元勇儀の方に集中しようとすると、奴の性質を持つ魔力が移動していることに気が付いた。

 吹き飛ばした場所から離れているはずだが、もうすぐそこにまで迫っているのだ。屋敷は半壊しているとは言え、まだ建物の機能が生きている所はある。その中を移動してきていたようだ。

 私が奴のことを吹き飛ばしていたのを異次元萃香も見ていたようで、奴を飛ばした付近に注意が向いている。

「萃香、こっちからだ!」

 私たちがいる場所から最も近い瓦礫の山が爆発したと思うと、そこから光り輝く物体を持っている異次元勇儀が飛びだした。

 その体格と比較すると非常に小さく見えるスペルカードを持っていた奴は、組まれてある回路に魔力を流し込み、起動させた。

 起動した回路を抽出するためスペルカードを握り潰すと、青白い半透明の結晶が周辺に散らばり、発動の合図となった。

「本当のスペルカードってもんを見せてやるとするよ!」

 飛んでくる木材の対処をしているうちに、異次元勇儀がすぐ近くへと着地した。右手の拳にとんでもなく強力な身体強化の魔力が集中している。

 もし人間で同様のことをしようとすれば、肉体が力に追いつけず、攻撃と同時に身体が崩壊するだろう。異次元勇儀だからこそできる荒業だ。

 彼女の足にはこちらに接近しようと進む性質が含まれており、目測を誤って少し離れた位置に着地したわけではないようだ。

 こちらにまっすぐ突っ込んで来ようとする彼女に対して、こちら側も対応するために自分のやりやすい位置に陣取ろうとすると、異次元萃香は真正面から受けきるつもりなのか、奴の射線上に陣取った。

 私が下手に動いて奴の注意を引いてしまうことを阻止する為であるが、無謀すぎる。確かに作戦の要である私が死ねば、残った彼女には打つ手がない。

 しかし、彼女が犠牲になったところで、私一人でも攻撃を受けきれず、打つ手がなくなる可能性も大いにある。

 ドンッと歩み出した一歩目の衝撃が骨の髄にまで響き渡る。前方へ移動するのには過剰すぎる力で足を蹴り出し、二歩目へと進もうとしている。

 やはり裏切られたというのが精神に来ているせいで、異次元萃香も冷静ではないのだ。私の考え的にはお互いに奴から距離を取るのが最善だと思っていたが、私以上に好戦的である彼女は正面から捌くことを選んでしまったようだ。

 さっきよりも近づいたからだろう。地面を踏みしめた振動が強まり、奴の体が一回り大きく見えた。

 同様程度の身長がある異次元萃香はどけるつもりがないようで、拳を握り、構えようとする。保険としてわずかに疎の能力を少し感じるが…、

 これはまずい。私は移動しようとした体を無理やり引き留め、目の前に立って構えを取ろうとしている異次元萃香に向け、横から最大まで身体強化した蹴りを食らわせた。

 中途半端な強化では踏ん張りが強くてどかすことができないと思っていたが、思ったよりもあっさりと彼女の体は奴の射線上から消えた。

 ここからもわかる通り、異次元萃香は予想外の攻撃に弱い。疎と密の能力で攻撃を避けられるとは言え、予想外の場所やタイミングで攻撃されると、体を疎の能力で分散することができず攻撃を食らってしまう。

 彼女のスペルカードを食らわせた後に蹴りを食らったことや、先ほどの踵を返しての攻撃に対処することができなかった事、今の攻撃を食らったことがそれを証明してる。

 更に、彼女は体の一部分だけを粒子状化させたり、一部分だけを粒子状から元の肉体へ戻すことができないことも、なんとなく予想ができる。

 できるのであればもっと効率のいい戦い方をするはずだからな。

 そう言ったことから彼女を奴のスペルカードの範囲からどけさせたが、理由はほかにもある。一応疎の能力を体に通わせていたとしても、先ほど言ったように彼女は予想外のことに弱い。

 奴のスペルカードの中には、拳を突き出すスピードを上げる性質を持った魔力が感じられた。これがあると今までの鈍い攻撃とは打って変わり、豪速の拳がこちらに向かって来ることになる。

 その予想外の攻撃を、異次元萃香がとっさの判断で避けられるとは思えない。ならば、私が代わりに受けなければならないだろう。

 移動するはずだった時間を全て、異次元萃香に対する時間に使ってしまったため、これから範囲外へ逃げることはできないだろう。

 私の身長の1.5倍はありそうな巨体が三回目、地面を踏み込んだ衝撃で亀裂を生じさせた。

 身長差や表情はさることながら、醸し出している殺気や凄みなど、その迫力に尻込みしてしまいそうになる。

 それはそうだ。普段の攻撃とは比べ物にならない威力を持っている技に、向かって行かなければならないのだから。

 震える手足を気迫で抑え込み、自分の目の前に魔力で結界を形成させた。

 そのタイミングで犬歯の見える口が開き、握った拳をこちらに打ち出す直前に、奴は嬉しそうに声帯を震わせて轟かせた。

「四天王奥義『三歩必殺』」

 今までしてきていた攻撃とは雲泥の差がある程に早すぎる。三歩目とほぼ同時に、打ち出された拳は、コンマの差で形成が終了していた結界をガラスのごとく打ち破る。

 ガラスと表現したが、そこには何もなかったのと変わらない程、呆気なく結界は魔力の塵となって消えていく。

 その結界には、表の世界にあるチタンと呼ばれる鉄よりも固い物質の性質を組み込んでいたはずだが、それでも奴のスペルカードには耐えられなかったようだ。

 複数枚張っていたはずの結界を全て止まることなく突き破った。砕けたガラス片の様な結界の破片が空中で魔力の塵となって消えていく。

 それらがキラキラと空中を淡青色に染め上げている中で、死期を悟るよりも早く。防御力を強化した身体に拳が伸びてくる。

 攻撃力があまり強化されていない段階であれだけのダメージを負っていたのに、強化されたらどれだけのダメージを受けるのだろうか。

 おそらく一片の肉すらも残らないだろう。

 この考えすらも浮かぶ前に、奴の拳が私の胸を貫いた。

 




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