それでもええで!
という方は第百二十九話をお楽しみください!!
胆嚢がやられたので、油抜きの生活を一カ月続けました、体重が7キロ落ちました。
鬼の形相というのは、こういう事を言うのだろう。目や眉は釣り上がり、眉間には深いしわが刻まれている。瞳孔は戦闘面で活性化する交感神経の作用により散瞳、砕けるほどにかみしめられた歯が、唇の間からずらりと並んでいるのが見える。
私に対する怒りから来るものもそうだが、その表情になるもう一つの要因は苛立ちだ。ただ苛立ちと言っても、何に対してが書かれていなければ、話の流れから私を痛めつけることができないから。そう言うことになる。
確かに苛立っている理由の半分は、私を痛めつけられないからだろう。しかし、残りの半分は違う。
彼女にとっても、ここ十年で初めての経験だろう。自分が逃げながら戦わなければいけないというのは。
「っち……!!」
私が投擲した銀ナイフを、異次元咲夜は跳躍した先に生えていた木を足場に、三角飛びの要領で脇へ避けた。
弓で飛ばされた矢、もしくはダーツを連想する軌道で、三本の銀ナイフが木肌に立て続けに突き刺さる。
魔力の浮遊力や強化された身体を駆使し、左右や後ろに飛びながら追う私から僅かに距離を放し、空中で体を反転させてこちらを向いた。
また懲りずに、スペルカードを放とうとしているようだ。手元に濃密な魔力が集まっていき、カードに刻まれた回路に魔力が注がれ、起動する。
始めに放ったスペルカードのように、ナイフを大量に生成するのではなく。たった二本の銀ナイフと、いくつもの斬性の性質を感じる。
近接に持ち込んだスペルカードで対抗しようとしているようだが、スペルカードであれば、いくらでも対抗できる。
こちらを向いたまま、スペルカードを起動した異次元咲夜が地面へと着地する。魔力や身体能力で、空中と地面を飛び回りながら高速で戦っていたのだ。すぐに止まれず、後方に三メートルほど砂煙を舞い上げてゆっくりと停止する。
スペルカードに受けて立つため、加速して奴の目の前に降り立てるように、浮遊の性質を調節した。
十数メートル手前で浮遊を切り、空中に体が投げ出される。姿勢制御はできていることで、体があらぬ方向を向くことは無い。
奴が使うスペルカードの性質を、手元や体になじませ、異次元咲夜が発動すると同時に、私も空中で発動した。
浮遊が無くなったことで落下し続ける体は、精密に調節したおかげで狙っていた場所に落ちてくれた。
ダンっと荒っぽく、力強く着地した私は、目の前に出現した二本の銀ナイフを、奴と同じタイミングで掴み取る。
他人が持つスペルカードの名前など、いちいち覚えていない。はずなのだが、自然と頭の中に浮かぶ、発動したスペルカード名を小さく呟く。
「「傷魂『ソウルスカルプチュア』」」
ガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!
無数に響く打性の金属音。大量の重たい金属物質を、硬い床に一気にばらまいたような騒音が当たりに響き渡る。
振った刃の先から、三日月状の形をした斬性の魔力が振るうごとに放たれるのだが、超至近距離で得物同士を打ち合わせているせいで、放たれたそばから同時に打ち消しあって魔力の塵となって消えていく。
赤い火花以上に青い塵と火花が大量に発生し、私たちを眩しいぐらいの光量で包み込む。暗闇に目が慣れていることで邪魔だと思う反面、奴の行動がよく見える。
遠くからなら、青く光る蛍が沢山いるだとか、ファンタジーでよく見る小さな妖精が沢山飛んでいるように見えただろう。中央の二人がナイフで切り合っていなければ。
合計で78回の斬撃を放つと、打ち込まれていたプログラムを全てやり終えたようで、カードの支配から体が解放される。
自分が思う体の体勢と、スペルカード終了直後本来の体勢に、若干の誤差がある。瞬時に修正しようとするが、修正までの時間が身体の硬直となり、ほんのわずかな時間私と異次元咲夜の体が止まるはずだった。
硬直して動くことのできない異次元咲夜に、数度スペルカードの斬撃を叩き込む。スペルカードの斬撃からわかるように、この攻撃に私の意志は反映されていない。
異次元咲夜のプログラムに、斬撃を数回余分に追加したのだ。攻撃が長引くと、硬直から解けた奴に攻撃を受けそうだが、確実にダメージを与えられるのはこのタイミングだけだ。
「ぐっ!?」
銀ナイフと魔力に切り裂かれたことで、異次元咲夜の体勢が大きく崩れるが、下がらずに踏ん張り、両手に持った銀ナイフを硬直が始まったこちらへと向かわせる。
右肩と、腹部、左腕を切り裂かれた斬創から、骨が見えるほどに深い傷を刻まれ、ハンダゴテでも押し付けられているような熱い錯覚を感じた。
腕の傷から血が溢れ出し、左手まで伝い落ちる。ナイフの柄を握る手と得物の間に入り込み、潤滑油となってしっかりと握り込まなければ、刃を打ち合わせた時に落としそうだ。
「っ……!!」
痛みは自分が生きていることを実感できる要因の一つであるが、それに耐えられなければならないことや傷が増えて動きを制限されてしまうことを念頭に置くと、進んでやるべき行為ではない。
「逃がしませんよ」
切られた傷には目もくれず、こちらに向かって異次元咲夜は銀ナイフを投擲してこようとしている。近距離でスペルカードを使用しない近接攻撃に戦法を切り替えられると、私は太刀打ちできない。
一度大きく下がろうとしていたが、投擲された銀ナイフをはじき返しながらとなると、慣れてない今は選択肢から消え失せる。
下がらせかけていた足をその場に縫い付け、血で滑る銀ナイフを手の届く範囲よりも、外側にいる異次元咲夜へと投擲する。
奴の後に銀ナイフを投擲しようとしていれば、当然ながら私の方が遅く投げることにはなる。
しかし、私を殺さずに生け捕りにしよとするあまり、正確に自分の狙っている位置へ投擲しようとしている奴は、投げるまでがほんの僅かに遅かった。おかげで一歩追いついた。
ほぼ同時に投擲された銀ナイフは、私と異次元咲夜の中間地点で空中衝突を起こす。火花を散らし、回転してお互いに伝わった運動エネルギーに従って、それぞれの方向へと飛んでいく。
その様子を見て、一つ間違いを修正しなければならなさそうだ。空中衝突を起こしたのではなく、起こされたのだ。私は直感的にそれを感じ取る。
十数年も前から銀ナイフを扱っている人物が駆け出しで、得物を武器としてほとんど使っていない魔女に、後れを取るはずがない。遅れていたのではなく、待っていたのだ。
私の視線から射線を割り出し、銀ナイフを側面から当てたことで、両方ともこちら側に飛んできた。
当たる場所や当人の力にもよるが、偶然衝突したのであれば、どちらもあらぬ方向へ飛んでいくだろう。だが、二本ともこちらに飛んできたことを考えると、狙ってやったようにしか見えない。
それらが頭の上を通り過ぎて行くよりも前に、異次元咲夜の第二射が投じられた。そして、新たな銀ナイフを生成して走り出してもいる。
得物を自身の肉体で受けていては、後に来る奴に対抗できない。走ってくる奴と対峙するのであれば、いなさなくてはならない。
これまでもナイフを投げられることはあったし、スペルカードの方が速度はずっと早かったはずだ。ただ投げられただけならばできないことは無い。
タイミングを逃さず、正確にその位置に得物を運べれば、受け流せないわけではない。目を開いて銀ナイフの軌道を見極め、腕を振るう。
空気中を高速で突き進む銀ナイフは殺さない為の最小限の配慮らしく、右胸を狙っている。ご丁寧にも静脈にも掠らない位置だ。
振った銀ナイフは、丁度切先同士が交わり、不快な金属の金切声を上げる。横からの攻撃により、投擲された得物は別の方向へと弾かれ、青とオレンジ色に光を反射しながら飛んで行った。
それで安心してはいられない。すぐ目の前に来ている異次元咲夜は攻撃態勢が整い、銀ナイフを横に振り抜こうとしている。
すぐさま攻撃に切り替えられる状況になく、ここは攻撃を受けるしかない。奴の振るう得物の軌道上に近かった銀ナイフを移動させ、横に薙ぎ払われた攻撃を受けきった。
ガツン!と肩まで響く衝撃がいつもよりも小さすぎる。その理由を確認するまでもなく、右手首から末梢にかけての感覚が消失した。
キラキラと輝く私の銀ナイフの破片が、空中に飛散する。角度的に飛び散った破片から目を守らなくてもいいが、奴の得物が砕けずに突き進めたことが解せない。
「っ!?…ああああっ…!?」
手首に発生した激痛が爆発した。右手が使い物にならなくなるが、転んだとしてもただでは起き上がらない。攻撃を受けたのであれば、やり返さなければ押される一方だ。
未だに砕けた銀ナイフを握る手が空中を縦に散歩している。拾うのには遅いし、拾う意味がない。
怪我なく回収できたとして、くっ付けられても神経などが損傷しているせいで、障害が残る可能性もある。これからまだ戦いを控えているのに、指先のコントロールができないのは困る。ならば、自分で生やした方がいいだろう。
体勢的に体の各部位で、今攻撃できる段階にあるのは切断された右腕だけだ。拳は無いが腕の筋肉と背筋を躍動させ、手のない腕で彼女の顔面に殴りかかった。
片腕を無くした状態で、私が突っ込んでくるとは夢にも思っていなかったようだ。目を丸くした奴の頬に、いつもの感覚よりも一拍遅いタイミングで攻撃が放たれた。
普通に殴るよりも水気の強い音が響く。腕を振り抜けたことで、奴の上半身を後方に仰け反らせることができた。
そのまま畳みかけ、銀ナイフで胸を掻っ捌こうとするが、右側の視界が突如暗闇に閉ざされ、何も見えなくなった。
「あ…?」
私が何が起きたのかを理解する前に、後ろに倒れ込むように下がる奴に引かれる形で、視界外から刺されていた銀ナイフがブツッと顔から引き抜かれた。
「っ……!?あああああああああああああああああああっ!!!」
殴れたのは殴れたが、頭突きができるような距離まで接近したことで、見えない横側から刺突を受けた。
骨を砕き、切り進んだ切先は、抵抗をほとんど受け付けずに眼球へと到達し、一捻りで中身をシェイクされた。
それに加えて私が殴った反動を使い、銀ナイフを切り裂く様に体から引き抜いた。眼球を瞳ごと抉られ、右側の視界を失った。
運の悪いことに、様々な組織が重なり合って形成していた眼という器官はかなり複雑だ。修復するのには、腕や足のようにすぐとはいかないだろう。
眼球と一緒に涙腺も一部破壊されたようで、涙が少し粘性を含む赤い体液に混じり、頬を流れて行く。それに含まれる塩味が傷口を刺激し、刃物が無くなったというのに痛みを脳に訴え続けている。
痛みに耐え、思考を巡らせる。なぜ私の銀ナイフだけが壊れ、奴のは壊れなかったのか。耐久能力が同じなのは、始めの攻防で分かっていることだ。
作り出した魔力の性質から見ても、何か特別なことをしたわけではない。何かしたとすれば、行動だ。
「……っ」
難しいことではない。物である以上は耐久能力が付いて回る。スペルカードが終わった後、私は一度も交換することなく切り合った。新品と中古であれば、よっぽどのことがない限り壊れるのは中古だろう。
次から切り合ったりするときにはそれも頭に入れ、銀ナイフを使って行かなければならなさそうだ。
視界は左目に残された義眼から来るもののみになったが、切られたのが右目で良かった。義眼を壊されれば、左側の視界はこれ以降は回復しないこととなる。
奴はまるで新体操をしている選手の様な、軽い身のこなしで後方に仰け反った体を利用し、ジャンプすると多少後方にさがったが、スタッと地面に着地する。
私が切断された腕で殴ったことで、頬には赤い体液がこびり付いているようだが、気にもしていない。血がべっとりと付着する銀ナイフで、どう切り刻むことしか頭にはなさそうだ。
残った右手で右目を押さえ、左目では奴を視界の中央で捉える。右側に逃げられないような立ち回りをしていなかなければならない。
それと、距離感を見誤るのも恐ろしい。奴がいるのが私の手の届く距離なのか、奴が投げた銀ナイフはどれだけ離れているのか。
異次元咲夜相手に、片目で戦いきるのは難しいだろう。魔力での治癒促進も八割ほど目に集中させ、できるだけ早く視界だけでも戻らねばならない。
目を抑えていた手を放し、銀ナイフを握り込む。数メートル先にいる異次元咲夜がどう動き出すか、用心深く睨んだ。視界外へと移動した方が奴にとっては有利で、私から見て右側へと走っていく。
これが異次元咲夜の通る予想ルートだったが、片目しかない私相手であれば、そんな小細工は奴にとっては必要ない様だ。
普通の靴よりも踵の高いハイヒールを入っている癖に、全力で走る私よりも速い速度で急接近してくる。
「っ…くっ…!」
近い方が、遠距離から物を投げられたりするよりはやりやすいという事はあるが、今の段階ではどちらも変わらない。
目の前で振られた第一撃は、いなす。奴の攻撃を二度目、三度目と受けるが、奴のターンは終わらないようだ。斬撃を受け流すことに精一杯な私は、反撃するタイミングを掴むことができない。
銀ナイフを交換する間もなく連続攻撃が続く。咲夜の記憶から銀ナイフに負担を掛けない扱い方を引き出し、即座に実践する。
記憶通りに体が動かないのは、既にわかり切っている。遠近が見定められていない私は、防御にばかり意識が行っていることもあり、これは気休め程度にしかならないだろう。
それでもやらないよりはマシなはずなのだが、刃がナイフの腹を火花を散らしながらなぞっていくごとに、金属がすり減っているような感覚に陥る。
何年も様々な世界で戦ってきただけはあるようで、壊れることに臆せず何度も銀ナイフを振るって来た。上手いこと私が何度も攻撃を受け流したことで、じれったくなったのだろうか。大振りに見える攻撃を繰り出して来る。
小回りの良い攻撃よりも軌道が読みやすく、攻撃を後方へと受け流し、大きく一歩進んで奴の懐に潜り込む。
個人的なハンデなのか、挑発しているのか知らないが、私と同じように一本しか銀ナイフを握っていない異次元咲夜の得物は、返ってくるまでには時間がかかる。
防御を繰り返し、耐久能力に限界が迫っている亀裂の入った銀ナイフで、奴の胸を切り裂いた。柔らかいバターを高温に熱したナイフで切るような、そんな感触を指先が感じる。
亀裂が入ったとしても切れ味のいい銀ナイフは、服ごと肉を断つことには成功したようだ。無視できる程度の弱い抵抗を感じたのも束の間、得物を振り切ると異次元咲夜の胸元が徐々に赤みを帯びていく。
このまま押し切ろうと、振った腕を引き戻そうとした時、私から受けた攻撃を無視した異次元咲夜の正拳突きが首を捉えた。
「がっ…!?」
外部からの圧力により気道が塞がって息が詰まり、奴を切り裂くことを忘れて殴られた首元を抑えてしまう。
咳き込みながらも奴に一太刀浴びせようとするが、再度矢のような速度で突っ込んで来た拳に、ボロボロの得物は砕かれた。
武器を砕いた異次元咲夜はそのまま拳を開き、私の頭部を乱暴に掴む。手で視界を塞がれ、振り放そうと手を伸ばしたころには、近くの木に後頭部を叩きつけられた。
「あがっ!?」
肉を切らせて骨を断つというのは、こういう事をいうのだろう。実際に、押し付ける力が強まるごとに頭蓋骨が歪み、脳を圧迫されて激痛が走りっぱなしだ。
叫び散らしたくても声も出せない、雷に常に撃たれ続けていると言っても過言ではない激痛に犯され、意識の混濁が生じる。
「うっ……づっ……ぁぁ…っ……!」
咲夜が頭の中で何かを言っているのが、おぼろげに聞こえてくる。声のトーンから気絶してはいけないと私を叱咤している。
わかっているのだが、頭一つ分違う体格差であれば、保有する筋肉量が違う。いくら私が魔力強化しても、元の筋力が豊かな異次元咲夜の掴みを腕力でふりきることはできない。
私に星熊勇儀が持っているような、怪力乱心を持つ程度の能力を保有していなければ、力関係が覆ることは無いだろう。
彼女の半分か、十分の一でも力を出すことができれば、この状況を脱することができ、場合によっては有利不利を逆転させることもできるだろう。
もう少し、もう少しだけ、勇儀のような力があれば………。
パキュっと何かが潰れる音が、朦朧とする意識の中ではっきりと聞こえた。私の頭蓋が割られ、死なない程度に異次元咲夜に頭を握りつぶされたのかとも思った。
違う。気を抜いたらそのままリンゴのように潰されそうだった圧力と、頭をめった刺しにされていたような激痛が綺麗さっぱりなくなった。
万力並みの握力を誇っていた手指から、くたっと力が抜けていき、顔を覆う形でなされていた鷲掴みから解放される。
私を失神させる絶好の機会を、みすみす逃す奴ではないだろう。気絶したと、勘違いしているわけでもないようだ。頭の上に力なく置かれている腕をどかそうとすると、異次元咲夜の咆哮ともとれる絶叫が耳に届く。
視線を少し奴の腕の方へ移すと、叫んでいる理由が目に入った。振り払おうと手首よりも肘寄りに掴んでいた手が、骨を粉々に砕き、筋肉をすり潰している。
皮膚を引き裂いた指は、血管などの組織を傷害し、肉を断裂させながら奥へと抉り込む。頭に乗っていた手が離れると、ダランと力なく地面の方向を向いている。
「ぐっ…ぁぁぁっ!!?」
絶叫する奴をよそに、潰れて太さが元の半分もない腕を軽く捻り、引っ張ると筋線維が裂かれる身の毛のよだつ感触と音がする。
骨が砕かれたことで、肉でしかくっ付いていなかった奴の手首は簡単に体から外せた。入れた力が余計だったようで、私の体が後方に傾いてしまう。
左手で右手を抑える異次元咲夜は、その機を逃さず私の顔面へ蹴りを叩き込んだ。尖ったつま先に力が集中し、普通に蹴られるよりも痛い。
冷静になっているつもりだったが、脳は混乱しているようだ。どういう状況だと理解ができていなに部分と、まあこんな物だと納得している部分が拮抗し、自分自身が何を思っているのかがわからない。
それに気を取られ過ぎていたようで、避ける動作に入る間もなかった。体がふわりと風船でも取り付けられたように浮き上がる。
吹っ飛ばされ、空中で体勢を立て直そうとするが、あと少しという所で腕を木に引っ掛けてしまう。またバランスが崩れ、後頭部を地面に打ちつけた。
街の中のようにコンクリートが敷き詰められている状態ではなく、柔らかい土であったことでダメージはあまりない。それでも全体重が首にかかり、体を強化していなければ最悪の場合は、脊髄に亀裂が入っていただろう。
寝転がる事無くグルンと体を捻って起き上がり、蹴られた頬に着いた湿った土を手の甲で落とす。今の攻防の内に左手が再生していたようで、その手で体を起こして立ち上がった。
奴の方向に向き直ると、どこからかタオルを取り出した。捻り千切られた腕に巻き付け、包帯の代わりに肌に食い込むほど強く締め付けている。
白いタオルは血管や組織から漏れだしてきた血液を、片っ端から吸水していく。純白に赤が混じ入り、新品の面影が無くなっていく。
いくら吸水性の良いタオルだとしても、上限は当然ながら存在する。傷口を圧迫したことで、出血量が減りはしたが、それでも多い様だ。吸いきれなくなった血液がチタリと地面に落ちている。
「やって……くれましたね……!!」
「お互い様だぜ…」
腕を切断された手法は違えど、やっていることは同じことだ。違う部分を上げるとしたら、潰されて千切られた腕は再生することは無いという所だろう。
思ったよりもスラッとした細い指の並ぶ、異次元咲夜の手を地面に投げ捨てた。刀やナイフで綺麗に切断したのではなく、潰したことでくっ付けられる可能性は絶望的だろう。
「いいでしょう……これは、代償とします。……最終的に、貴方の力を手に入れられればいいだけなのですから……」
「おいおい、力が入れられることが前提になってるぜ。お前がこの戦いで死ななければ、だろ?」
私はそう奴に言い放ちながら、新たに作り出した銀ナイフを投擲した。まだうまいこと投げられず、ヘリコプターのブレードのように回転し、飛んでいく。
軌道が見え見えで、大きく体を動かしてさける必要のない銀ナイフを、奴は空中でキャッチし、それを得物としてこちらに向かって走り出す。
私はさっき、勇儀みたいな力が少しでもあったらと思っていた。それを性質として、いつの間にか全身の魔力に含ませていたようだ。
正直な所、スペルカードや魔力を使った攻撃しかできないと思っていたが、性質として含ませればこういう事もできるらしい。自分の能力だというのに、知らなすぎている。恥ずかしい。
まあ、反省会は後でもいい。人間の肉体をひき肉にすることのできる力を手に入れられるのであれば、こういう事もできるだろう。
走り出した異次元咲夜との距離は、およそ五メートル。二秒もしないうちに到達することは確定している。
拳を握り、しゃがみ込む。イメージでは鬼たちの屋敷で、異次元萃香や異次元勇儀が見せたあの怪力だ。あの地面を捲る程の衝撃で奴の走力を削り、牽制が効いているうちに畳みかける。
月明かりで薄っすらと照らし出されている、草木が所々に茂る地面に力いっぱい強化された拳を叩き込んだ。
そこを中心に、地面の隆起と陥没を見せ、放射状に広がっていく。ゴムや柔らかい肌の様な物質であれば、波打った形状が元の形に戻っていただろうが、自然に存在する土にそんな柔軟性は無い。
波打ったそばからめくれ上がり、衝撃に煽られ中空へと舞い上がる。その衝撃をもろに受けた異次元咲夜の身体も同様である。
走っていた分、こちら側に向かいながら体が浮き上がった。位置関係と速度から、頭の上を通り過ぎて行く異次元咲夜に、銀ナイフを突き立てた。
「っ…!」
片目であることを考慮していなかった。手に伝わって来る肉を切り裂く感触が、弱すぎる。目測を誤った。致命傷を与える絶好のチャンスだったというのに。
銀ナイフの切先で、数ミリの深さしかない傷をつけられた異次元咲夜は、空中で身を翻した。通り過ぎた後方にいるこちらに向き直り、持ってきた銀ナイフを投擲。
それを撃ち落とそうとするが、攻撃を与えられなかった焦りからか、腕を振るうのが速すぎた。金属音を鳴り響かせる事無く、空気を切り裂く唸り声だけが耳に届いた。
その後に聞こえてきたのは、自分の腹部に深々と突き刺さる銀ナイフの音だ。筋線維などの肉体を断裂させる小さな刺突音。
「ぐぅ…!?」
まだ治らないのかと苛立ちが募るが、複雑な組織を切られただけであれば、修復は容易であっただろう。得物を引き抜かれた時に、奴には眼球そのものを持って行かれた。治るのには相当時間がかかりそうだ。
魔力調節で体勢を整えた異次元咲夜は、周囲に魔力を配置すると銀ナイフと真っすぐに前進する性質を与えた。
一息つく間もなくそれらが同時に射出される。異次元咲夜の周囲に配置された性質の魔力を同様に散布し、まったく同じ数、配置、角度、軌道の銀ナイフを放った。
オレンジと青色の火花を散らし、全ての銀ナイフが空中衝突する。時間を稼いだうちに、腹部から銀ナイフを引き抜いた。処置できるところでなければ抜かないのが一番だが、戦闘の邪魔になる。
それを投げ捨て、片手で腹部を抑えたまま、異次元咲夜へとまっすぐに走り出す。長期戦は奴が私の戦い方に慣れてくれば慣れてしまう程、こちらが不利となる。
片目を失っているが、ここで決める。
十メートル以上離れた場所に立つ、片手のない異次元咲夜の方向へ、地面に転がる銀ナイフに、足を取られそうになりながらも全力で駆け抜ける。
異次元咲夜が再度銀ナイフを生成、射出。こちら側も全く同じ弾幕を同時に射出。空中でぶつかった銀ナイフが落ちて行く中を走るため、足や腕、肩などを浅く刃に傷つけられてしまう。
その度に鋭い痛みを体験し、顔がしかまる。だが、刀で切られたりナイフで刺されたりするよりはずっとましだ。
残った片目に銀ナイフが当たって義眼に傷を付けぬよう、最小限の注意だけは払うのだが、弾かれて飛んでいく方向を予測できない。
不意に飛んでくる銀ナイフを躱しながら、数メートル前進するが、異次元咲夜が小分けにして、大量の銀ナイフを連続で生成し始める。困った。これでは、彼女が配置していない銀ナイフを追加して放つ余裕がない。
私の目論見を読まれている。私は片眼で、接近戦が不利だ。しかし、奴は片腕で、手慣れているとは言え、いつもと体の重心が違う状態では、満足に戦えない。今なら、近接戦闘に持ち込めば勝機はある。
だから接近しているのだが、銀ナイフを射出する攻撃が連続的であることで、今までの様にはいかない。いくら同じものを用意して相殺できるとしても、脳はコンピューターではない。連続で出される弾幕を瞬時に判断して、同じものを出し、攻撃を追加するだけの処理能力は無い。
「っ…!」
しかし、打つ手がないわけではない。追加の射出攻撃ができなくなっただけだ。間違えずに確実に同じ攻撃を放って行けば、接近する糸口を掴めるだろう。
大量の銀ナイフが放たれあう中で、異次元咲夜がスペルカードを発動する。この短時間で、私への戦い方がわかってきたようだ。その適応力の高さには、舌を巻かされる。
始めの頃に傷魂『ソウルスカルプチュア』に数度の斬撃を追加したが、連続的な攻撃は追加の対策で、こちらに攻撃する手段でもある。
銀ナイフを生成するのが遅れればスペルカードに体を貫かれ、スペルカードだけを生成しても硬直により他の銀ナイフに貫かれる。
連続で生成される銀ナイフを、頭がこんがらがりそうになりながらも撃ち返し、ギリギリ滑り込みでスペルカードを起動した。
「「幻符『殺人ドール』」」
百を余裕で越える数生成された大量の銀ナイフが、プログラムされた通りに正確に飛行し、空中で次々に同じ軌道を取る得物と正面衝突していく。
おびただしい数の耳をつんざく金属音を意識の外へと押し出し、スペルカードの硬直から抜け出した私は、山のように積み重なっている銀ナイフを跳躍で通り過ぎようとする。
「っち!」
まさか私がここまでついて来れるとは思っていなかったようだ。その証拠に、舌打ちが聞こえてくるほどに接近できている。目視で五メートル程の距離があるが、ここからは一層頭を回転させなければならないだろう。
空中に体を投げ出した私へ、異次元咲夜はあらゆる角度から銀ナイフを向け、射出する。
先ほどは走っていて、横軸ののみの調整で済んでいたが、今は横と縦軸のことを考えなければならない。
それに加えて連続的な銀ナイフの射出。一発でも当たればいい相手とは違い、完璧に模倣して返さなければならないこちらの身としては、頭が一つではついて行かない。
模倣することを一度止めた私に、百を超えるナイフが壁のように迫ってきている。これを切り抜けられるスペルカードの性質を全身に行きわたらせた。
「傷魂『ソウルスカルプチュア』」
目の前に出現した二本の銀ナイフを落ちる前に掴み取り、プログラムされた通りに高速で体が動き出し、手が二本とは思えない数の斬撃を放つ。
地上で放つのが通常の流れで、体をその高度に維持する魔力は存在していない。若干落下しながらも、向かってきた百十数本の銀ナイフを全て弾き落とす。
刃から放たれる斬性の魔力の助けもあり、体に到達した銀ナイフは一本も存在しない。刃の壁をやり過ごし、空中で硬直を済ませた私は、全身の筋肉を躍動させ、奴の首を切断しようと全力で銀ナイフを振るった。
着地の硬直を狙っていたのか、空中でそのまま攻撃に転じるとは思っていなかった顔だ。それでも反応し、しゃがんでかわすところが恐ろしい。
奴が避けたことで、真後ろに立っている木の幹を切断した。大量に集まった線維は中々断ち切ることができないが、腕力に物を言わせて刃で引きちぎる。木片が切断面から飛び散り、支えの無くなった木の上側がずるりと地面へ落ちていく。
異次元咲夜の目の前に着地すると、しゃがんでる奴と視線がちょうど合う。お互いに間髪入れず銀ナイフを振るうと、接触と同時に攻撃力が耐久能力をあっさりと上回り、どちらの得物もはじけ飛ぶ。
攻撃力を高めているおかげで、使い古して壊れる寸前だった銀ナイフでも、奴の武器を破壊することができた。
一撃が銀ナイフの壊れる威力であるならば、新古を気にする必要はない。魔力で両手に得物を作り出し、連続で奴に切りかかる。
こちらから切りかかれば、異次元咲夜はそれの処理に追われる。銀ナイフをふんだんに使用し、勝負をここで決めるために無理に切り進む。
打ち合わせた途端に柄しか残らない銀ナイフを捨て、新たに生成した武器で肉を切り裂くために振りかぶる。
肉体に休む間もなく鞭を打つ戦い方に、私の方が速く疲労が見え始める。汗一つかかない奴に対し、額に汗が滲み始めた。
一撃でお互いの武器が壊れることを想定した戦い方は今までしていなかったが、私よりも経験を重ねている異次元咲夜は適応が速い。
「っ…!?」
すぐさま私を上回り、体勢を整えて反撃に転じて来る。薙ぎ払われた唸る銀ナイフは、そのまま通り過ぎて行くが、咄嗟に体を後方に傾けていなければ、両腕を切断されていただろう。
皮膚を軽く裂いた程度に済んだのは、運がよかった。私が今の攻撃で防御に回ったタイミングを見計らい、後方に距離を置こうと異次元咲夜が足を踏ん張らせる。
苦労してここまで近づいたというのに、簡単に逃がしてなる物か。弾幕の打ち合いは、奴が弾幕に追加攻撃をさせない方式に切り替えたため、互角の状態にもちこまれ、勝利の匂いはしない。
銀ナイフで奴の頭を狙って投擲するように見せかけ、その足元に銀ナイフを投げつける。咲夜よりも投擲の精度が低く、当たるかどうか不安だったが、上手く足の甲へと刃が刺さってくれた。
「ぐっ!?」
踏ん張りを効かせていた足にそれを阻止する攻撃を受けたことで、飛びのくまでの時間を稼げた。多少の被弾を覚悟で一歩前へ進み、足に刺さった銀ナイフの柄を力いっぱい踏みつけた。
皮膚を突き破り、足の骨に食い込む程度で止まっていた銀ナイフが、力任せに押し込まれた。
一部の骨を砕き、肉をやすやすと切り進む。反対側まで貫通し、足の裏から飛び出した切先は、靴すらも貫いて地面に着き刺さる。
「がっ………っ!!」
切先にはアンカーの性質を加え、簡単には抜けぬよう地中で固定した。満足に銀ナイフを構えられていない異次元咲夜は、刃ではなくナイフの柄で私の頬を殴る。
柄が何の物質でできているなど、あまり考えていなかったが、かなり固い物なのはわかる。石で殴られたと思えるほどの衝撃が走り抜けた。
皮膚に裂傷を新たに付けられ、顔が大きく横に傾かされた。頭の中で鐘が鳴っているかのように、衝撃が頭蓋で反射して痛みが長引いている。
魔力で痛みを和らげ、その場に縫い付けている異次元咲夜に追撃を加えようとすると、奴は足を貫通している銀ナイフが、地面から引き抜けいないことに気が付いたようだ。
切先が数センチしか刺さっていないのに、抜けないことに困惑している。今のうちに、新たに生成した銀ナイフで突きを放つ。全体重を乗せた刃は、胸の中央よりも少しだけ左寄りに位置している心臓に向かって突き進む。
あとほんの数秒だけ足の方に気を取られれば、心臓に切り目を入れて出血多量で殺せたというのに、あと数ミリという所で銀ナイフを握る左手を掴まれる。
「そう簡単に、刺されはしませんよ」
腕力では私の方が勝っていたが、掴まれると同時に捻り上げられたことで、骨を折られてしまった。これではいくら力が強くても関係ない。
体の中を木の枝を折り曲げた時のに似た、乾いた音が鼓膜まで伝わって来る。
「あぐっ!?」
銀ナイフを持ち続けるだけの握力を失った左手から、月明かりに反射してキラキラ光る得物が零れ落ち、異次元咲夜がそれを掴み取る。
「お返しです」
体がくの字に曲がる程の威力で、そのナイフを腹部に叩き込まれた。殴るのとほぼ変わらない攻撃に胃がもろに影響を受け、中身が逆流しかけた。
「……おごっ…!?」
肉を切り裂かれた感触に続き、熱湯でもかけられたような熱を腹部に感じるよりも早く、私の腹部から手を放した異次元咲夜に、魔力が流し込まれて起動したスペルカードを投げつけられた。
こちらは腹部を刺されたことで、スペルカードを真似るだけの時間が全くない。顔に当たり、跳ね返ったスペルカードを発動される前に、私の魔力で不安定化させて回路の抽出を阻止しようとする。
右肩付近に落ちて行くスペルカードに手を伸ばそうとするが、異次元咲夜が新たに作り出した銀ナイフによって貫かれて破壊され、そのまま右肩に根元まで抉り込む強さで突き刺された。
「あがっ!?」
後ろによろけた私をよそに、異次元咲夜のスペルカードは発動してしまう。模倣するのには時間が足りない。だが、別のスペルカードを放つだけの間はある。
「幻符『殺人ドール』」
彼女の周りに銀ナイフの性質を持った魔力が大量に設置され、淡い光が武器へと具現化していくが、その数の多さから射出までには時間がある。
私は彼女がやって来たスペルカードを思い出し、その性質を全身に行きわたらせ、スペルカードを発動させる。
「速符『ルミネスリコシェ』」
たった一本の銀ナイフが手元に生成され、異次元咲夜へと向かって投擲される。それと同時に全ての銀ナイフを作り出し終えた異次元咲夜がスペルカードに乗っ取って、全ての得物を射出する。
ここまで来て、メイドの顔に焦りが生じる。殺人ドールは私に対して追尾機能が付いており、その分だけ速度が遅い。
それに対してルミネスリコシェは自分で狙いをつけて投擲する分だけ、速度に魔力を回すことができて早い。どちらが先に標的に着くかは、火を見るよりも明らかだ。
ナイフの扱いにも、片目での戦闘にも少し慣れてきた。あとは咲夜の知識から銀ナイフを投擲するだけだ。
プログラムに乗っ取り、濃密な魔力が含まれた銀ナイフを投げた。狙いは多少外れたが、スペルカードをキャンセルできるだけの怪我は負わせた。
「がああああっ!!」
右胸に銀ナイフが刃の三分の二程抉り込み、プログラムにない行動をさせたことで、奴のスペルカードがその効力を失った。
空中で誘導の無くなった銀ナイフのほとんどは地面に落ちて行き、残りもスペルカードの硬直にとらわれている私の体を掠る程度で済んだ。
目は未だに治らない。一度眼球に向けていた魔力を左手に向かわせると、折られて前腕に肉でくっ付いているだけだった左手が、数秒で意志を持って動かせるようになる。
右肩に刺さっている銀ナイフを引き抜き、逆手に持ち替えた。右胸を抑えて恨めしそうにこちらを睨む異次元咲夜へ、大きく前に前進し細い首へと銀ナイフを走らせた。
スペルカードをキャンセルされ、いつもと違う体勢で解放されたことで、通常よりも頭のイメージと体の体勢が大きく異なり、硬直が長い。
新たな能力に自惚れ、元の能力を異次元咲夜は使わなかった。それが奴の敗因だろう。時を操る程度の能力を使われていれば、おそらく私は手も足も出なかったはずだ。
「もう一つの能力とやらにかまけてるからこうなるんだぜ」
説教するように言い放ち、喉に刃を食い込ませる。
ジワリと赤い液体が滲み、周りの肉よりも固い喉ぼとけを切り進み、抵抗できない異次元咲夜の首を切断する予定だったが、寸前に異次元咲夜が頭を後方に傾けたことで、頸椎や動脈を切り損ねた。切れたのは気道部分だけで、ぱっくりと切れ目からは空洞が覗いている。
切れ目は抑えれば呼吸も可能だし、適切な治療さえすれば生命活動に支障はない。奴をこれ以上生かさないようにするには足りない。頸椎ごと首を叩き切るしかないだろう。
ゴボッと首と口元から血を垂れ流した異次元咲夜は、呼吸するごとにヒュウヒュウと音を鳴らす首元を抑えると、口元を綻ばせる。
「また……やり合いましょう?」
「……いや、次は無い……お前の顔なんて、二度と見たくないぜ」
私はそう言い放ち、嗤う異次元咲夜の首につけた切れ目にナイフを滑り込ませ、両断した。切った速度が速かったのか、首から離れ、頭部が宙を舞う。
ゆっくり回転して落ちて行く頭部は、殺されたというのに口元を緩めて笑っている。いかれているな。
地面に当たって跳ねていく頭を、罪悪感も感じず、簡単に人を殺せるようになった自分への軽蔑も感じず、ただ乾いた眼で見下ろした。
切断面から、血を溢れ出して崩れ落ちていく異次元咲夜の体には目もくれず、転がった銀髪の頭部に歩み寄る。
罪人の首をギロチンで落とした処刑人のように、私はその頭部を拾い上げた。
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