それでもいいという方は第十四話をお楽しみください。
膝が何十時間も走り続けたようにガクガクと笑い、幽香の蹴りを受けて立ち続けていることができなくなっていた私は地面に膝から崩れ落ちる。
「あぐ……っ………か……ふ……っ……!」
筋肉がひきつってうまく呼吸をすることができず、声にならないと息が喉から絞り出された。
まるで体の中にある内臓を引きずり出されて直接蹴られたような、体を抉る蹴りのダメージは早々に抜けるはずもなく、体をびくびくと痙攣させていた私は息を吸い込むことができなくて酸欠になり始めてしまう。
脳に酸素が回らず、クラクラしてきたことで思考が定まらない。
しかし、そんな状態でも幽香は私の事情などお構いなしに攻撃をしてくるため、何とか戦うために倒れた体を持ち上げようと地面に手をつき、土がつくのも構わずに握りしめながら足や腕に力を籠める。
「……魔理沙。あんたのせいよ」
そのとき、目の前でうずくまっている私の手を踏みつけ、幽香が唐突に呟く。
「…っ……?」
幽香の言っていることがわからず、息ができていないのも忘れて私は幽香のことを見上げる。そんな私を見下ろしている彼女はゆっくりとだが私を踏んでいる足に力を籠め始める。
「っ……!?」
めきめきと骨が軋み、砕けそうな音が手から響きだし、私は手を引っ込めようとするが幽香に踏みつけられている手は全く動かない。
手を固定されて動けなくなっている私を幽香は手に持っている傘で思いっきり殴った。
バキッ!!
わき腹にめり込んだ傘の衝撃に、筋肉が緊張して肺から空気を絞り出してせき込み、それによって息を吸い込むことができるようになって、ようやく呼吸することができた。
ゴホゴホとせき込み、わき腹を押さえて私は幽香に呟く。
「私…の……せい……って…なんの……こと……だよ…!」
呼吸ができない状況もあったせいでかなり息が荒くなり、ぜぇぜぇと荒く吸ったり吐いたりを繰り返して呼吸を整えようとする。
息を整えようとしていた霊夢がやばいと感じ取り、すでに私と幽香の方向に向かって走り出しているが、私が殺される前につくかわからない。
霊夢が走り出していることも察知しているが、幽香はそんなことは気にせずに静かに呟く。
「私はそれについては話すことはできない。……でも、なんとなく自覚はあるんじゃないかしら?」
幽香はそう言ったあと、特に心当たりがなくておそらく怪訝そうな顔をしている私の左手の甲をさらに強く踏みつけ、静かに続ける。
「あなたを引き渡せば、みんな助かる……だから、私たちのためにおとなしくしなさい」
幽香が傘を握りしめて私に振り下ろすために上段に構えると、鉄でできている傘の先端が太陽の光を反射してキラッと光った。
「……心当たり……か……そんなもん…ありすぎて絞り込むことなんかできないぜ……。紅魔館の図書館あら本を借りるっていう口実で盗んだことか?…早苗の神社に置いてあった酒を出来心で飲んじまったのを、バレないように水を入れておいたことか?……それとも、妙蓮寺の章を連れ出してあいつの能力を利用して宝を集めようとしたことか?……すまないが心当たりがありすぎて誰から恨みを買ってるか見当もつかないぜ」
若干あきれた表情をしている幽香を見上げて呟くと、
「そうかしら?」
幽香が意味ありげに言うが、まばゆい光が発生して太陽の黄色やオレンジ色ではない真っ白な光が、正面にいる幽香を跨いでその先の方向で輝いている。
霊夢の夢想封印だ。彼女は自分の足よりもこっちの方が速いと判断して、スペルカードを使うことにしたのだろう。
基本的には一方方向からの攻撃であるが、左右や上方向やした方向から夢想封印の球体が幽香に向かって行く。
さすがというか、霊夢が操るその大量の球体の中で私に当たるものなどは一つもなく、正確に幽香だけを狙い撃ちにしていく。
いくら幽香でも、様々な方向からやって来る光の玉を開いた傘で受け流すことはできないらしく、傘を閉じたまま振り回して夢想封印の魔力の玉を叩き落とす。
数十個にもなる光の弾丸は群れとなって一斉に幽香に襲い掛かるため、幽香の意識が私からわずかに逸れ、その機を逃さずに反撃に移る。
私を踏んづけている幽香の足首に手をかざして魔力を掌に集中させて凝縮し、高出力でレーザーを幽香の足にぶっ放した。
レーザーによって幽香の足首が覆われている魔力と一緒に融解し、わずかな時間で骨まで蒸発させて彼女のバランスを崩させる。
十センチも足の高さが下がれば振っている武器の角度もそれ相応にズレが生じ、十センチも軌道がズレれば半径がそれよりも小さい光の玉には当たることはないだろう。
幽香が打ち落とし漏らした光の玉は、彼女の胸に直撃してその大きさの十倍以上の大きさに膨れ上がって爆発する。
爆発の衝撃で私は地面に縫い付けられ、幽香は私を飛び越えて後方に吹っ飛ばされていった。
その途中にも残る球体は幽香を追って直撃すれば爆発し続け、私から幽香を何十メートルも引き離す。
相手はあの幽香であるため休む暇もなく私は手や服にこびりついた土を気にすることもなく立ち上がり、蹴られたときに落としてしまっていた帽子を拾ってきてくれていた霊夢から帽子を受け取った。
「危なかったわね」
「…少しな…」
短く言葉を交わし、すぐに立ち上がろうとしている幽香の方向を見る。
「…やってくれたわね」
光る球体が持っていたと思われるエネルギーにより、幽香の着ている服が少しだけ焦げたり溶けたりして穴が開いているのが見えた。しかし、派手に服が焦げていたりする見た目ほど大きなダメージを負っているようには見えない。
それを見せつけるように彼女は私に切断された片足を再生させ、何もなかったかのように軽快な動きで立ち上がる。
「さすがは花の妖怪だな」
私はそう呟き、霊夢と連携を取るために彼女に呼吸を少しずつ合わせて幽香をにらみつける。
「…魔理沙、あんた村に行ったってことは花の化け物を見たかしら?」
幽香は攻撃することもなくいきなり私に話を振って来きた。
「え…?…ああ…まあそうだな」
私は警戒態勢を崩さずに村の方向を見て、妹紅が炎を使っているのか村のあちこちで火災が起きているのが見える。
「その中に特別大きい個体がいたわよね?」
幽香の質問に対して、私は妹紅と一緒に戦ってマイクロ波で焼き殺したあの花の化け物だとすぐにわかった。
「…ああ、そいつなら殺したが…それがどうかしたのか?」
「…彼、が死んだからね……彼女がすごく怒ってるみたいだからね」
幽香が言っている彼女を見ていない霊夢はもちろんのこと、私も幽香の言いたいことがよくわからなかったが、すぐにわかることとなった。
どこから見たって気が付くだろう。私が倒したあの花粉を飛ばしていた大きな個体、それよりももう二回りも大きな花の化け物がこちらに向かってくるのだ。
しかし、こちらに向かってきているのが花の化け物だと私はほんの少しの間だけわからなかった。
なぜならその体は、村で倒した奴らのような茎や蔓で体を形成しているのではなく、複雑に絡み合っている強靭な根っこを使って地中にある岩石や土を絡み取り、それらを体として使っているからだ。奴の背中に巨大な花が咲いていなければ花の化け物だとは思わなかっただろう。
一歩歩くごとに岩石と土でできた体には負担が大きくかかるらしく、岩が砕けたり土が剥がれ落ちたりして花の化け物の道の跡には大量の土と砕けた岩が雨のように降り注いでいる。
しかし、岩がなくなったりしても材料は周りに腐るほどあるため、大した脅威にはなっていない様子だ。
「……やべぇ…」
十メートルは軽く超えている巨大な四足歩行の化け物に、私や珍しく霊夢にまで戦慄が走っていた。
一週間後か五日後に投稿します。
ゆっくりな投稿で申し訳ございません。リアルが忙しすぎてこっちをやっている暇がないのです。