東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。
こんなことができたらいいなーって感じの話です。

それでもいいという方は第十六話をお楽しみください。


東方繋華傷 第十六話 食い殺される

 私の体重と花の化け物の吸い込む力に耐えきれず、掴んでいた木が根元からへし折れ、奴に向かって体が進み始めてしまう。

「うわぁぁぁっ!!」

 魔力で体を浮き上がらせて空中にいるわけでもないのに体が宙に浮かび、勝手に進んでいく感覚には違和感があり、魔力で制御をして花の化け物から離れるように空を飛ぼうとするが、吸い込む力の方が強くて花の化け物に向かう速度はあまり変わらない。

 時間稼ぎのつもりで掴んでいた木を花の化け物の方向に投げつけると、開かれていた口に吸い込まれて体の奥、元々はのどの当たる部分で蠢いている岩石に砕かれ、すり潰されて細かく切り刻まれていく。

「っ…!」

 このままいけば待っているのは死だと悟った私は、全力で逃げるために魔力を操作を行って、どうにかして逃げようとするが近づけば近づくほど強くなる吸い込む力にどうすることもできない。

「魔理沙!!」

 霊夢の叫び声が聞こえ、吸い込まれかけていた私が顔を聞こえた横方向に向けると、吸い込まれて花の化け物に向かっている私を彼女は何とか止めようと向かってきているのが見えた。

 霊夢が足元に魔力の足場を作り出し、魔力で強化された跳躍力と浮遊力を掛け合わせ、風の影響をできるだけ受けないように高速でこちらに向かって跳躍した。

「霊夢…っ…!」

 私はわき目も振らずに霊夢がこちらに伸ばしてきている手に向かって、ズタズタに引き裂かれた古傷のある右腕を伸ばす。

 霊夢の指先と私の指先がくっ付くかくっ付かないか、そんなところでお互いの伸ばしていた腕は伸びきってしまう。

「魔理沙ぁぁぁぁぁぁっ!!」

 霊夢の焦りや驚愕などが入り混じった表情が段々と離れていき、彼女の絶叫だけが私の耳に届き、その頃になるとすでに体は奴の口の中に到達していた。

 蠢く大小様々な大きさの岩石にすり潰されてただの肉塊になると思った寸前、花の化け物が口を閉じたらしく、辺りが真っ暗闇となり何も見えなくなった。

 衝撃を感じ、私は自分の死を覚悟した。

 

 

 私の絶叫が魔理沙の耳に届いているのかわからないうちに彼女は花の化け物に飲み込まれ、その姿は見えなくなってしまう。

 花の化け物が口を閉じて空気を吸い込むことをやめたことで台風の数倍は強く、吹き荒れていた風が止み、木から千切れて飛んできていた木の葉っぱがひらひらと舞い落ち、花の化け物に向かって舞い上がっていた砂埃が自然に発生した風に吹かれて霧散していく。

「…魔理…沙……」

 私は伸ばしていた手を呆然と見つめたまま、吸い込まれて消えていった彼女の名前を呟いた。

 あと数センチもあれば、彼女の手を掴んで逃げることができていたかもしれない。掴めなくても軌道が変わり、魔理沙は助かったかもしれない。そんな思いが次々に頭を横切り、私は自分の弱さに腸が煮えくり返っていた。

 花の化け物は私には興味がないのか、魔理沙を食うと別の方向を見てそのままゆっくりと歩きだす。

 私は持っていたお祓い棒を握りしめると、ギチッと軋むような音をお祓い棒が発し、どこかに歩き出している化け物に向けて怒りに身を任せて私は走り出した。

 自分の弱さを他人、もしくは他のものに当たり散らすのは間違いではあるが、そんなことすでに私の頭の中にはない。

 大切な人を殺したこの花の化け物は、殺さなければならない。頭に血が上っている私はそれしか頭になく、冷静になれば気がついていただろうということも見落としていた。

 犬のように四足歩行で走る花の化け物の前足を霊力で強化されているお祓い棒でぶん殴る。

 岩石が砕け、岩石を包んで絡んでいる根っこごと、殴った衝撃に耐えきれずに千切れ、右足が回転しながら小さな岩石などをまき散らして飛んでいく。

 弧を描いて飛んでいく前足は見上げるような最高高度に達すると、今度は地面に向かって降下をはじめてすさまじい速度で私から百メートル以上離れた地面に衝突した。 前足が半分にたたき割れ、ボールが地面でバウンドするようにしてもう一度、二つになった足は空中に投げ出された。

 衝撃に耐えきれなかったらしい砕けた岩石や千切れた根っこが足から少しずつ剥がれていき、前足だったものはだんだん小さくなって転がっていく。

 花の化け物が大きくバランスを崩して無くなった右側の方向に倒れそうになるが、千切れた前足から垂れ下がっている根っこが魔力で生産されて伸び、一時的な前足として体を支えた。

 しかし、その状態では歩くことはできないのか、地面に埋まっていた岩石を掘り出して自らの腕にくっつけて不格好な前足を作り出し、体を完璧に支える。

 どこに目といえる器官があるのかわからないが、花の化け物は顔と思われる岩石でできていた顔を私の方向に向けた。

 しかし、化け物はまた何もせずに歩いて行っていた方向に視線を戻すと、何もなかったようにまた歩き始める。

 花の化け物は巨体で一歩一歩が大きいが、正直なところは全力で走れば追いつける歩行速度であり、霊力操作で宙に浮きあがった私は花の化け物の正面に回り込み、奴に向かって大量の弾幕を撃ちまくった。

 白い光を放つ大量の弾幕が岩石でできている皮膚を削り取り、進もうとしていた花の化け物の行進を止めた。

 奴は私が邪魔な存在で、どこかに行くには私を排除してからの方が効率がいいと判断したらしく、左前脚を持ち上げて私を殴り殺そうとする。

 しかし、右前脚を吹き飛ばしたときのように強化したお祓い棒で容赦なく左前脚を粉々に砕いた。

 腕がはじけたことで大量の岩石が空中に投げ出され、雨のように降り始めるが関係なく私は花の化け物の顔に接近し、再度お祓い棒でぶん殴った。

 バガッ!!

 鋭い打撃音が響き、花の化け物の顔が大きく横に逸れた。それに続くようにして左前脚がなくなって体のバランスを取ることができなくなっていた化け物の体は地面を転がり、奴の動きが一時的に停止した。

 こちらが有利であるが、私は奴の賢さに少し驚かされていた。私のお祓い棒が当たる寸前に顔を傾けて衝撃を少しだけ逃がしたらしく、顔は右半分を大きく損傷しているが左前脚ほどではない。

 地面に倒れている花の化け物に近づき、追撃を食らわせようとしたとき、砕けた腕からまた根っこが伸びて私に砕かれた岩石を掴んだ。

 また腕を再生させる気なのかと思い、急いで接近しようとしたとき、岩石を掴んだ根っこが私に向けて岩石を投擲した。

 思った以上に速度の速い投げられた岩石に横に飛びのいてかわすと、私がさっきまでいた位置の地面を紙一重でぶつかり、後方に猛スピードで転がっていく。

 根っこは周りにある岩石や自分の体の一部を使って、私に近寄らせないように大量の岩石を投擲してくるが、投げられることさえ分かっていれば対処は容易い。

 飛ばされてくる岩石をすべて砕くか、受け流すかでやり過ごせばいいだけだ。

 飛んできた大きな岩石を上段から振り下ろしたお祓い棒で真っ二つにたたき割り、次の岩石を振り下ろした状態から振り上げ、優しく側面を押して軌道を変えて受け流す。

 二つ同時に来たのならば単純に体の位置を変えて片方だけを処理すればいい。

 そうして岩石を処理しながら花の化け物に近づこうとしていたとき、いきなり私の周りが影となった。

「っ!?」

 上から岩石が飛んできたのかと思ったが、違う。体からはがされて投げられた岩石にしては大きすぎるのだ。

 私が上空を見上げると、どうにかして跳躍した花の化け物が私に向かって降下して来ていた。

 奴の体重は軽く数百トン。どう頑張っても踏みつぶされればほぼ即死するだろう。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 ゆっくりにも高速にも見える速度で奴は私に向けて突っ込んできた。

 




一週間後ぐらいに投稿します。
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