それでもいいという方は第十八話をお楽しみください。
期間が開いてしまい申し訳ございませんでした。リアルがとりあえずひと段落したので、投稿を再開しました。
花の化け物が口を閉じたことで、光が閉ざされて霊夢の姿が見えなくなってしまった。
岩石などが蠢くことで、シュレッダーと同様の働きをしていた喉の壁面で引き裂かれると思ったが、そんなことは起こらずに口の中が大きく動き、私はどこかへと送り込まれてしまう。
ゴロゴロと転がった後、数メートルほど重力方向に落下して硬い岩石の上に倒れ込んでしまった。
辺りはさらに暗闇に包まれたのと、こいつが何をしたいのかが私には全く読めず、ただただ恐怖だけが募って動くことができない。
花の化け物の体内にいるということはわかるが、暗闇で何も見えずどこにいるのかはわからないが一定の間隔で響く地鳴りに似た衝撃は花の化け物が歩いている物だろう。
そして、その合間に聞こえてくる打撃音などは霊夢が外から化け物を攻撃している音だとすぐに推測できる。
そして、口の中よりももっと体の奥に送り込まれたということが、外界から聞こえてくる霊夢の打撃音が遠いことからもわかる。
思っていたよりも岩石と岩石の間には隙間などはなく、外から差し込んでくる光などもないせいで一寸先すら見渡すことができない。
時々、花の化け物がわずかに口を開くことがあり、その時の数秒間だけ蝋燭よりも頼りない光が差し込んでくる程度であったが、なんなんとなくだが自分のいる位置を把握することができた。
私が現在いる位置、正確かはわからないが口から入って来る光が極端に少ないことから、食道の先にある胃にいるのだろう。
現在私がいるのは口の中や嚥下されて運ばれていたときの食道よりも大きな空間で、そこにシュレッターで殺されずに送り込まれたということは、殺すことが目的ということではなく、捕まえることが目的ということだろう。
それならば幽香の言っていた、運ばせてもらうという言葉も理解できる。私を殺さずに誰かに引き渡すつもりなのだ。
そして引き渡された時点で、私は死ぬことになるだろう。幽香のことを無理やり従わせているような奴で、これだけの異変を起こしてまで私を捕まえようとしてるのだ。殺されないわけがない。
であるため、このままおとなしく連れていかれるわけにはいかない。
しかし、解せないのがなぜそれだけの力を持っていて直接私に戦いを挑んでこないのかというところだ。
少し考えようとしたがこんなところで考えをまとめようとしてもまとまるわけがなく、それについて考えるのは脱出してからでもできるため、花の化け物の中から脱出することにした。
人間やほかの動物を模倣しただけなのか胃という形はあるが器官の本来の役割はないらしく、胃液などが分泌されてはいない。
それにかなりこの中は広くて動けないわけではないため、凹凸のある壁を登って食道を通って口の中に戻り、口を破壊して外に出ることもできるだろう。こいつが霊夢に殺されて体を支えることができなくなる前に。
レーザーなどで穴をあけて外に出ようかとも考えたが、胃が2,3メートルという大きさに対して全長は十数メートルはあるため、もし胃という器官しかないのならば外にでるまでに大きな岩石などが複雑に絡み合っていると考えられ、穴をあけるにはかなりの量の魔力を消費しかねない。それだと後の戦闘にも影響が出るだろう。
それに、理由はもう一つあり、花の化け物の異常に高い再生能力だ。ほかの人間型の小さな奴らとは違い。かなり高い再生能力を備えていて、さらに体の約七十パーセントは材料のいくらでもある岩石だ。穴をあけたそばから修復されてしまうのが関の山だろう。
それならば地道に壁を登って口から逃げる方が、いくらかは現実的ではあるのだ。
私はさっそく動くために倒れていた状態から上体を起き上がらせると、私がさっきまで寝ころんでいた位置に、上から何かが高速で横切って岩石の床に突き刺さった。
「…っな…!?」
私は体勢が悪いが襲撃により飛びのくと同時に、誰が飛ばしたのかわからないが上方向をレーザーで薙ぎ払う。
わずかに暗闇に目が慣れていたせいで、ライトよりも少し弱い程度の光量を発しているレーザーがひどくまぶしく見えるが、そのおかげで私を襲ってきていた者の正体がわかった。
背中に花が咲いていたが、それの根っこと蔓だ。
原理はわからないが物体の動きに反応するようになっているのか、天井から垂れ下がってきていた蔓や根っこが飛びのいた私に何本かが反応し、こちらに向かって突っ込んでくる。
逃げるために飛びのいたのは失敗だった。今更になって私は自分の行動に後悔した。
蔓を切断するのにはレーザーはかなり効果的ではあるが、魔力で体を再生させることのできるこの花の化け物には、効率はかなり悪いだろう。
であるため、もっと広範囲で他の蔓や根っこも攻撃をしなければならない。
垂れ下がっている位置や反応してから攻撃に移るまでの時間、私がいる位置によって蔓と根っこがここに到達する時間にはバラつきがあり、様々な方向から私を串刺しにしようと向かってくる蔓をギリギリでかわしていき、魔法を発動するためのスペルを間違えないように確実に唱えていく。
横に転がり、時には跳んで、あらゆる方向から飛んでくる蔓や根っこに刺さらないように動き回る。
あと少しで魔法が発動できるようになるというところで、太ももに魔力で強化されてナイフのように鋭利で鉄のように固くなった蔓が突き刺さり、太ももを貫通した。
「うぐっ…!?」
蔓を引き抜こうとしたが、貫通した蔓はそのまま床の岩石に深々と突き刺さり、私が引っ張ってもピクリとも動かなくなる。
「ぐっ…!」
私は歯を食いしばって異物が体内に抉りこんだ痛みに耐える。しかし、そう簡単に痛みというものを克服することはできず、涙腺から分泌された涙が瞳に溜まり、溜まった涙が目じりから零れ落ちた。
だが、十数秒もかけて唱えていた魔法が無駄にならないように、私は叫びたいのを我慢してスペルを唱え続ける。
体を動かさないようにしていたが、強い重力を感じたあと、体が浮かび上がるような浮遊感が私を襲い。動かないようにしていたが、バランスを崩してしまった私の体がガクッと動いてしまう。
「…っ!!」
蔓や根っこの一部が大量に私に向かって突き進んでくるが、スペルを唱え終えた私は十数本にもなる蔓と根っこをまとめて炎で燃やし尽くす。
「vebrennen(焼却)!」
掌の上にオレンジ色に淡く光る球体が作り出され、こちらに向かってくる蔓に向かって凝集された炎を開放する。
炎の熱気が強く、吸い込む空気がむせ返るほどに熱くなるが、私は発動させた炎の魔法が解除されないように魔力を送り続けて蔓や根っこを焼き払う。
だが、焼き払ったそばから蔓や根っこは魔力で再生をはじめ、三歩進んで二歩下がるといった状態だ。火炎放射器などとは比べ物にならないほどの威力で、一センチ程度の蔓などならば内部まで炭にするのに五秒もいらない火力だが、炎の火力を再生能力が上回ってきているらしく。
魔力を魔法につぎ込んで炎の火力を上げようとしたとき、炎をかき分けてきた一本の蔓が私の脇腹に突き刺さった。
「あぐ…っ…!?……かはっ……!!」
痛みに気を取られてしまい、私は魔法に魔力を送って発動の維持を続けることができなくなってしまう。
皮膚や皮下組織、筋肉、臓器を次々に貫通した炎で表面が焼け焦げている蔓を炎を出していた手とは逆の手で掴もうとしたとき、鋭い蔓や根っこが一気に畳みかけて来た。
「あああああああああああああああああっ!!?」
撃ち落とす間もなくわき腹や足だけではなく、肩やお腹の周辺、首に次々と鋭い蔓や根っこが突き刺さった。
「はぐっ……う…ぅ……っ………!!」
血管や組織が傷つけられたことで体のあちこちから血が溢れ出てきて、服を赤く濡らしていく。体外から体内へ異物が抉りこんでくる感覚は形容しがたいものであり、これは体験した物にしかわからない感覚だ。
気絶しそうなほどの痛み、それが情報として神経を伝わって一気に頭の中に流れ込んできて、痛みという情報を処理することができず、頭がパンクしそうになってしまい。気絶に向かって行く私は体から力が抜けてしまう。
しかし、新たに飛んできた蔓が私の胸に突き刺さり、肋骨を砕いて肺を貫通し、再度背中側の肋骨を砕き、皮膚を突き破って背中側にまで簡単に貫通してしまった。
「うぐ……っ…!?……げほっ……!!…ごぼ……っ………!!?」
臓器や肺、首に刺さっている蔓のせいで気管で出血が起こり、私は喀血して暗闇と壁面の根っこなどに燃え移った炎の光で妙に赤黒く見える血を吐き出した。
「……は…ぐ……っ…!」
口の中が強い鉄の味がして、口から垂れた血液が顎から垂れて首を貫通している蔓に血が滴り、黒く焼け焦げた緑色だった蔓の表面を赤く染める。
胸に新たに蔓が刺さったことで、途切れかけていた私の意識が繋ぎ止められ、気絶しなくて済んだが、右手の平の上でチラチラと小さく燃えていた炎が魔力を送り込む前に小さくなって消えてしまい。魔法が完全に解けてしまった。
身動き一つとれず、絶望的な状態に陥っている私は、肺にたまった血液を再度、せき込みながら吐き出した。
五日後か三日後に投稿します。