それでもいいという方は第二十話をお楽しみください。
膨れ上がった化け物の腹の隙間からまぶしい光が漏れてきたと思った直後、押さえ切れなくなった腹部が爆発音とともにはじけ飛び、岩石や千切れた根っこなどがこちらにまで飛んできた。
その中の一つに、私がよく知る少女が混じっているのが確認でき、低空を飛んでいた彼女が地面にぶつかってゴロゴロと転がっていく。
「魔理沙!」
私がいた位置よりもだいぶ前で地面に落ちて動きの止まった魔理沙に向けて叫ぶと、彼女は体のところどころから真っ赤な血を流しながらも何とか起き上がろうとしているのがわかった。
彼女に近くなるほど傷などが思っていたよりも重症そうで、中で何があったかわわからないが、肩で息をしてできるだけ空気を取り込もうと喘いでいる。
「…霊………夢……!」
走ってきた私に向けて魔理沙が手を伸ばそうとした時、爆発したことで開いていた腹の一部分から背中に生えている根っこと思われる物が伸びてきて、魔理沙の首や腕に巻き付いた。
「うぐ……っ!?」
魔理沙の首に巻き付いた根っこは相当な強さで巻き付いているのか、首や腕に深く食い込んでいて皮膚が赤く変色していく。
魔理沙をまた体内に引っ張り込もうとしているらしく、魔理沙の体が化け物に向かって引きずられようとしているところで、彼女にようやく追いついた私が回り込んで彼女に巻き付いている根っこをお祓い棒で殴って引きちぎった。
それを終えてから根っこを再生させて、また魔理沙を掴もうとしている根っこや蔓に向けて大量の弾幕を放つと、撃ち落されたり途中で千切れたりして私たちに全く近づけなくなったことで諦めがついたらしく、開いた腹の中に戻っていった。
「…霊夢…は……大丈夫か……?……すまねぇ…足を引っ張っちまって………」
魔理沙は首や腕に巻き付いている根っこを血で濡れている手で剥ぎ取り、体中の傷が痛むのだろう苦しそうな顔で呟く。
「こっちは大丈夫よ!…それよりもあんたの方が重症じゃない!」
私は立ち上がろうとしても立ち上がることのできていない魔理沙を抱き寄せ、思いっきり抱きしめた。
魔理沙が無事でよかった。その思いだけが爆発し、花の化け物がいることも忘れて魔理沙のことを抱きしめ続ける。
「霊…夢…?」
一時的にとはいえ私は魔理沙が本当に死んでしまったと思いこんでいたが、ようやく彼女が生きていると実感することができているが、それを知らない魔理沙は首をかしげている。
「…何でもないわ……それよりも…あんたは大丈夫なの?だいぶ怪我をしているみたいだけど?」
「この傷なら大丈夫だ…見た目は派手に見えるけど、運よく動脈とかの血管とか臓器には当たってない……だから、まだ戦えるぜ」
魔理沙はそう呟いて自分の体のどこに怪我を負っているのかを、目で見てよく確認をしながら呟く。
「…わかった……でも、危なそうなら一人で逃げて」
私は抱きしめていた魔理沙から離れ、彼女を捕まえようとしていた根っこと花の化け物が攻撃をしてこないように弾幕で牽制していたが、一度弾幕を撃ち終えて化け物がどう動くのかを注意深く観察した。
「ああ……、わかってる」
魔理沙はそう呟くと、応急処置程度にしか魔力で回復させることができなかった腹を強く押さえつけて花の化け物を見上げる。
花の化け物が腹に開いた穴を修復させながら咆哮をすると、地中に根っこを伸ばして大量の岩石を掘り出し、自らの体にくっつけていって奴の体が直接見なくても巨大化していくのがわかった。
「……。これ、……だいぶやばくないか?」
魔理沙が花の化け物を見上げて何とも言えない、少しだけ焦った表情を見せている。
「そうね、でも魔理沙…あなたが知っていることを私に教えてくれれば、この化け物を倒せる見込みがつくかもしれない」
私は巨大化していく花の化け物から目を離し、魔理沙の方向を見ると魔理沙は同じように私の方向を見て首をかしげている。
「私が、知ってること?」
「幽香がさっき言ってたじゃない。魔理沙が彼を殺したから、彼女が怒ってるって……この花の化け物をどうやって倒したの?」
私が聞くと、魔理沙はどんどん大きくなっていく花の化け物を再度見上げ、自分がどうやって彼と呼ばれていた花の化け物を殺したのかを説明を始めた。
「私が化け物を倒した方法は、強力なマイクロ波を照射して自然発火させて内部から体を焼いて倒したんだが、あいつの大きさはこの花の化け物の三分の一もなかったし、それに私が倒した奴は余計な異物が体に使われていなかった……あの大きさの奴には大した効果は望めないと思うぜ?……私の魔力を使い切っても無理だろうな」
魔理沙はそう断言して、魔力を掌に集めてレーザーをいつでも撃てるように準備した。
「…そう……じゃあ他に知ってることはない?」
私がそう聞くが魔理沙は特に思い当たるふしはないらしく、うーんと唸っている。
「じゃあ、私から気になったことで一つ聞きたいことがある」
花の化け物は体を作っているときには攻撃をすることができないのか、今のうちに私は魔理沙から情報を引き出すことに専念した。
「あんた、吸い込まれる前にこいつらに増えて貰っても困るって言ってたわよね?…それってどういうこと?」
私がそう魔理沙に聞くと、魔理沙は少し考え込むと思いだしたらしく言った。
「うーん、奴らはそうは見えないけど…もともとは花だ……その性質を一部引き継いでいるらしく、花粉で雌花が受粉すると種を形成して増える……多分こいつもだと思うが爆発植物で人間サイズは十数メートルの範囲にかなりの量の種をまき散らしてた」
「……なるほど。…なら、種をまき散らした時点で、その花の化け物たちはどうなってた…?」
私が聞くと、魔理沙は記憶を正確に思い出すために目を閉じて、記憶を探っている。
「…どうなってた…ね。…私もよくは見てなくて覚えてはいないけど、多分動いてはいなかったと思うぜ?」
「…つまり、それは死んでいたってこと?」
「…たぶんな……近づいて確認したわけじゃないから、わからんが」
それを聞いて、私は自分が考えていた予想の大部分が当たっていることを確信し、こいつがどういうやつなのかの説明を魔理沙にすることにした。
「…おそらくだけど、こいつは体のどこかにコアのようなものを隠し持っている化け物で…こいつはそれを破壊しないと死なないはず。……そして、花粉を受粉して種をまき散らして増えていたって言っていたけど…それは、体のどこかにコアを隠していて外敵に破壊されないようにしているけど、花粉で受粉をしたときに魔力でコア、…つまりまき散らすための種(コア)を増やしてまき散らし、増えていたんだと思う」
「…じゃあ、種をまき散らしてから動かなくなったのは、体からコアを出したことで花の化け物が死んだからってことか?」
私が続けて言おうとしていたことを魔理沙が言い。なるほどとうなづく。
「なら、それを利用して倒すことはできないと思わない?」
彼女にそう言うと、魔理沙はすぐに私の言いたいことを察したらしく、不安そうに大丈夫なのかと言いたげに呟いた。
「大丈夫なのか?…あのバカでかい図体をしている奴の体の中からどの程度の大きさの物かもわからないコアを探し出すのは無理だろう。だから、奴に意図的に花粉で受粉させ、コアの位置を割り出して破壊する。効率がいいように聞こえるが、一歩間違えればこいつが大量に増えて幻想郷がやばいことになるぜ?」
「チャンスは一度きりで、ミスは許されない作戦でしょうね。でも、今も大きくなっていっている花の化け物を消し飛ばすことができる?」
私がそう聞くと、魔理沙は確かにと言いたげにバックの中に入っているミニ八卦炉を見下ろした。
怪我の治療やレーザーの攻撃、体内から脱出するためにだいぶ魔力を消費してしまっている今の魔理沙では、奴を消し飛ばすことは不可能だろう。
「…わかった…お前の作戦で行こう」
「…ありがとう。…魔理沙、さっそくだけど花の化け物が出したっていう花粉をどうにかして持ってくるってことはできない?それとも、花粉を出す奴を連れてくるとか」
私がそう聞くと、魔理沙はそろそろ体の構築が終わりに向かっている花の化け物を睨み付けてから言った。
「花粉を出す奴を連れてくる必要はない…。彼って呼ばれてたやつは大量に花粉を出して、地面とかにこびりついてたから花粉はあることにはあると思うぜ。私が村に花粉を取りに行っている間は、あの花の化け物を一人で相手にすることになるが…大丈夫か?」
魔理沙が全長が三十メートル程度にまで巨大化している花の化け物を見上げ、心配そうに私に呟く。
「…こっちの心配はしなくてもいいわよ……それとまだ残ってるやつがいるかもしれないから油断せずにね」
私がそう魔理沙に言うと、彼女はわかっていると強くうなづいて見せ、村の方向に空を飛んだ。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
さっきよりも数倍は大きくなっている奴の声に、私は耳を塞いで花の化け物の叫び声が収まるのを待ってから大量の札を左手に持ち出し、右手のお祓い棒に霊力を込めて強化して握りしめる。
大きくなったが戦闘のスタイルは変わらないだろうと思っていた私は、どう戦うか頭の中でプランを練っていたが、花の化け物の体が四足歩行から段々と変形していくのが見てわかった。
「…え…?」
確かに、前足や後ろ足の形、体の骨格が四足歩行向きではないのではないかと思ったが、やはりその通りだったらしい。
腕や足の形が変わり、四足歩行から二足歩行へと変わっていき、自分の根っこなどで体の構築の際に余った余分な岩石を使って補強を済ませた即席の得物を、花の化け物は私がお祓い棒を使う時のように構えて見せる。
「驚いた……こんなことまでできるの…!?」
少しでも知性があると対策や今までとは違うことをしてきてとても厄介だということを、このときに私はあらためて思い知った。
一週間から五日後に次を投稿します。