初投稿が2017年、最終話が2023年。ほぼ六年かかり、自分の中ではかなりの大作になりました。
三日か四日に一度の投稿が、一週間に一度、二週間に一度と伸びてしまいましたが、何とか完結させられました。
完結させることができたのは偏に読んで下さった方々、評価やコメントをして下さった方々のお陰です。
長らく彼女たちの物語に付き合って頂き、誠にありがとうございました。引き続き最終話をお楽しみください。
泣いていた。
目の前に立つ白と黒を主調とする魔女の服を着た見知った女性は、濁った瞳を涙で一杯にしていた。彼女は私の放った一言で、傷を負ってしまった。
何かを言い返す事もしない彼女は、弁解の余地も無い言葉を放ってしまった私が自責の念に苛まれ、謝罪しようとしたところで涙を零した。
彼女が涙を見せた途端に、私は何も話すことができなくなってしまった。奥底にわずかながらに憎悪がチラつく瞳をしていても、言葉一つで泣いてしまう女性だった。そこまで考え至っていなかった私は、心も強靭であると勘違いし、本人が一番わかっているであろうコンプレックスを軽々しく踏みにじってしまった。
謝りたかった。悪い事をしたと理解し、その場で謝ることができれば、私もここまで後悔して引きずることはなかっただろう。しかし、言ってしまったことは取り消せない。
その時、悪い事をしたと思っていなかったわけではない。だが、そんなことを言ってしまった自分にもショックを受け、頭が混乱してしまっていたのだ。
自分よりも相手の方がショックを受けて深い傷を負っているというのに、私は言い訳ばかり考えてしまっている事で、罪悪感ばかりが膨らんでしまう。
心の病気のように、時間が解決してくれるわけではない。時間が経てば経つほど謝りにくくなり、謝る勇気を必要とする。
それがわかっていてもあの時見た涙が忘れられず、自分の中にある罪悪感を増幅させ、謝ろうと息巻く私の決意を挫く。
舌が喉に張り付いたように動かせず、私は言葉を発せられない。夢の中でぐらい勇気を持って謝罪しようとするが、私は1単語も発することができなかった。意気地なしの自分に対する情けなさに、怒りすら覚える。
膨れ上がる怒りに助長するように、夢が醒めていく感覚がした。まただ、また、私は謝ることもできず、逃げようとしている。
「ごめんなさい……」
覚醒する直前にその言葉が思い浮かんだが、思い浮かぶだけで言葉を発することはできなかっただろう。
目覚めの悪い私を蔑むように見慣れた木製の天井と、快晴であろう陽光が襖を通り抜けて出迎えた。
「…はあ」
発達しきった入道雲が、遠くに見える村に夕立を届けている。激しく嵐のように雨が降り注ぐ様子は、夏の風物詩とも言える。風の流れから、こちらに来る可能性もある為、既に洗濯物は家の中へと取り込んだ。
神社には今は私一人しかいないため、何度目かわからないため息をついた。あの夢を見た後は、大抵一日中引きずる。さっさと謝ってしまえばいいが、ただ軽々しく謝ったとしても逆に悪化させてしまうと思い、どう謝るかずっと悩んでいた。
縁側に座ったまま当時の事を思い出し、憂鬱な気分に包まれていた。視線のずっと先で土砂降りとなっている景色を見ていると、気分の落ち込みがさらに加速する気がした。
また、意味もなくため息をついた。ため息をついたところで、解決策など見つからないというのに。今度のは一際大きなため息で、遠くから聞こえてくる雷鳴も掻き消すほどだ。
「あら、そんなため息なんてついて、どうしたのかしら?」
「うわっ!?」
ずっと一人だと思っていた為、急に第三者から声をかけられたことで、声を上げて肩を震わせて飛び上がってしまった。
声の主は縁側に座って項垂れていた私の丁度後ろで、肩越しに振り返ったところには、薄紫色を主調とした洋服を身に着け、右目に眼帯を付けた長身の女性が立っている。
「…なんだ…紫か…」
「驚かせてしまったわね。どうかしたのかしら?」
別に。ただそう答えて視線を正面に戻そうとするが、後ろに立つスキマ妖怪はそんな回答では引き下がらない。
「別にってことはないでしょう?あんな、家じゅうに聞こえそうなため息をついてるんだから」
そう呟きながら私の左側へ腰かけた。足音は聞こえなかったから、おそらく能力でここまで来たと思われた。思考に没頭していた為、足音を聞き逃した可能性もあるが。
「…誰も座っていいなんて言ってないんだけれど」
「良いじゃない。それで、どうしたのかしら?」
友人に相談するにも相談しずらい事であるため、誰にも話せずにいた。けれども、彼女らにとっても、保護者のような立ち位置で常に見守っているように見えた紫であれば、相談するのに適しているかもしれない。
幸いなことに今現在、博麗神社には私しかいない。相談を持ち掛けるとしたら、今しかない。夕食の食材を買いに行っていることで、あと一時間もしない内に戻ってくるからだ。
「…母のこと…」
縁側に座ったまま内容を伝えた紫の方を見ると、何かを察したように息を漏らした。二人のうちどちらから聞いたのか、それとも、回りまわって聞いたのかはわからない。もしかしたら、聞かなくとも何となく予想はできたという事なのだろうか。
私には母が二人いる。しかし、私は養子で博麗神社に招かれたわけではなく、歴とした血筋で繋がった親子だ。どうやって子供ができるのか知らない年ではないが、どうやって子供を作ったのかはこの際どうでもいい。
「多分、魔理沙の事よね」
「…うん」
反抗期だったわけではない。決して、巫女と魔女の母どちらの事も嫌いなわけでもない。むしろ、大好きな位だ。
けれど、幼いころからずっと気になっていた。どうして、母はこうも巫女の母とはこれだけ違うのか。
先ほども言ったが母が嫌いなわけではない。巫女の母や他の人よりも年の割に子供っぽい所もあるが、芯が強くてつらい事があってもやり切る所は尊敬できる。
けれど、その母の瞳は周りの人達と僅かに違っていた。厳密にどう違うか、何が違うのか、説明することはできない。
言語化が難しく、その程度の小さな違いであったが、何かが違うと母譲りの勘が私に囁いた。
その時は、人それぞれの違いなのだと思っていた。鏡を見た際の自分の瞳とも違う感じがするのは、巫女の母と目が似たのだろうと。
多少瞳が違うだけなのは、そこまで気にならなかった。慣れてしまえばそれも普通になる。しかし、年を重ねて行動する範囲が広がっていくことで、様々な人と出会うことが多くなった。
人と触れ合う頻度が増えていく中で、どちらが普通の瞳であるのかは一目瞭然だった。母のような瞳をした人など人間の里にはおらず、数百人の中に一人として見つけることはできなかった。
それに加えて、時が経つにつれ勘が冴えて来たのか、今まではあまり気になっていなかった魔女の母の瞳の奥にある違和感の正体が普通ではないのだと何となく気が付いてしまった。だから、それの正体や母と母の違いが余計に気になってしまった。
こんな所に気になってしまったのが、そもそもの間違いだったのだと今になって気が付く。どうせなら、気が付けない位に鈍感の方が良かった。
「母の目…。どうして…あんな目をしてるの?……目つきとかじゃなくて、瞳の奥っていうのかな…」
ついこの間、巫女の母に釣れられて妖怪退治へ向かった。もう一人の母にはまだ早いんじゃないかと言われたが、歴代の巫女達の世代交代の年に近づいているため、妖怪や保有している固有の能力に慣れるための訓練のつもりだったのだろう。
まだ若いがどちらの母も、戦う上で肉体の全盛期は過ぎてしまっている。それでも未だに勝てる気がしないが、怪我や病気で自分が動けなくなった時の事を考えて物だ。
紫や鈴仙以外の妖怪と初めて対峙した。十数年の人生の中で、一番緊張したのを覚えている。人食いの、人間を何人も殺めてきているような者にあったことが無かったため、身の危険を感じたからと言うのがある。
しかし、理由はそれだけではない。それによる緊張は全体の二割程度だ。妖怪に食い殺された、妖怪に殺されたという話は珍しくもなんともない。
なら、人生最大の心拍数と緊張を要したのはなぜか。臓物を食い散らかし、血の気のない腕を齧りついている所を目撃してしまっても尚、そんなのがどうでもよくなっていた。その理由は、その人食い妖怪がこちらに向けた瞳の色と、魔女の母の瞳がよく似ていたからだ。
妖怪を前に全く動くことのできなかった私に対し、巫女の母は初めて妖怪と会ってまともに戦いに迎える方が少ないと励ましてはくれたが、私は混乱してそれどころではなくなっていた。
「そうね。そう思うのも無理はないと思うわ。まあ、理由があるのよ」
「どんな理由?人殺しとか人食いの妖怪と似た目をしてるのなんて」
思わず母の地雷を踏み抜いてしまった私に、巫女の母は訳は後で話すと言われたが、そこから五日間程時間が経過している。
早く話して欲しい反面、聞きたくない気持ちもある。もしかしたら、恐ろしい話を聞かされる可能性もあったからだ。母たちもどう話すべきなのかわからないから、これだけ時間をかけていると思わずにはいられなかった。
二日か三日だろうか、あまりにも不安でろくに眠れなかった。あの優しい母が、人殺しなんかするわけが無いと。しかし、思い出せば出すほど、母と人食い妖怪の目は似ていた。
「………。十年前に大きな異変があったというのは聞いた事はあるかしら?」
「うん、皆あんまり話したがらないから詳しくは知らないけれど」
話したがらないのはそれ程に悲惨な戦いだったのかと思ったが、今回の事で言いたくなくなるような事をしていたのかもしれない。そう思えてしまった。
「あなたが思ってるような事はしてないわよ。…魔理沙は、ちょっと頑張り過ぎちゃっただけ」
それだけの大きな異変だったとしたら巫女の母や他にも紫や鈴仙、永遠亭の人だって戦ったはず。なぜ魔女の母だけなのか疑問が残る。
紫が私に返してくれた返答では、当然納得していない。それを彼女もわかっているらしく、悩みながら頭を少し掻いた。母達の問題であるため、自分が言うべきではないと思っているのだろう。
それもそうか。家庭の話に部外者が首を突っ込むものでもないだろう。
「話しは母たちに聞くから、無理して言わなくてもいいよ」
「まあ、それが一番いいわよ。私が話しちゃったら、余計にこじれると思うから。……けど、私や鈴仙だって同じ目をしてると思うけど、どうなの?」
いざそう言われると返答に詰まった。外の人間がそんな目をしていてもなんとも思わないが、身内であったため目についてしまっていたのだろう。
改めてこちらを覗き込む紫に目を向けると、その左目には母と同じものが多少チラついているが、母ほどではない。
「紫は同じ感じがするけれども、そこまででもない。鈴仙は知らない、髪長いし…いっつも俯いてるから目が合ったことが無い」
「ふーん。…じゃあ、確認してみましょうか?」
私が返事をする前に能力を発動させた。私たちが座っている所よりも横の中空に一筋の線が描かれる。縦向きに伸びると丁度人一人分程度の高さとなり、両端はそのままに線は瞳が開かれるように大きく膨らんだ。
真っ黒で奥の背景には何もないように見えたが、開き切ると同時にそこから光が差し込んで来ると、あまり聞き慣れない鈴仙の声が聞こえて来た。
「何か急用ですか?」
スキマを境に別の場所へと繋がっており、そこには鈴仙の姿がある。紫の家のキッチンに立つ彼女は、夕食の支度をしているようで腰にエプロンを巻き、片手には包丁を握っている。
「ちょっと来て」
そう言って手招きする紫に、首を傾げながら鈴仙が重い足取りで歩み寄って来た。やはり目元まで伸びた髪で瞳の様子はうかがえない。それに加えて歩が遅いのは、片足が義足のせいだろう。
左足は普通の足音だが、右足は義足であることを示す樹脂の軋む音がする。そのお陰で姿勢が前かがみとなり、目が合わせにくい原因となっている。
「何ですか?」
スキマを跨いで来た鈴仙の顔に手を差し出し、目元を覆っている薄紫色の髪の毛をたくし上げた。何がしたいんだと言いたげな表情をしているが、私にとってはそんなことはどうでもいい。
髪の毛の奥にある彼女の真っ赤な瞳は、色が違うだけで母と全く同じ系統の目をしていた。狂気の目で波長を探らなくとも、私の表情が変わったことで何かしら勘づいたらしい。
「満足ですか?」
彼女はそう呟くと重い足取りでスキマを潜って家へと帰っていった。夕食の調理に戻ったあたりで紫はスキマを閉じて、こちらに向き直った。
「どうだったかしら?」
「母と…同じ目をしてた」
本当に同じような目をしていて、正直なところ驚いた。母と鈴仙は同じ目はしているのは、彼女も過去に人を殺したことがあるのだと、わかってしまった。
しかし、ここで違和感も同時に沸き上がっていた。二人の目と、この間遭遇した人食い妖怪の目は似てはいるが、なんだか少し違う気がした。
「でも、なんか…この前妖怪退治に行った時の奴とは違う感じがする…」
「それは、多分だけれど…状況や認識の違いだと思うわ」
どういうことかわからず、彼女がどういった話をするのか耳を傾けた。重い話であるのは予想が付き、身構える。
「……私と魔理沙で目が違う。鈴仙と魔理沙は同じ。けれど、人食い妖怪と魔理沙たちの目も何となく違う。これらの違いって、なんだと思う?」
さっきの、状況や認識の違いと言う奴か。殺した相手が人間か妖怪かという認識の違いだろうか。それとも、もっと異なる状況から来るのだろうか。
「人を殺したか、妖怪を殺したかの違い?」
「あってる部分もあるかもしれないけれど…ちょっと違うわ」
戦いに出たことの無い私には思いつかない。大人しく紫の話すことを聞くとしよう。
「まず、私と魔理沙たちの違いだけれど、手を下したか、手を下さなかったかの違いだと思うわ」
そう呟く紫の表情は、苦い思い出を振り返るようだった。隣に座っている紫の右腕に視線が向いてしまう。二の腕あたりから腕が収まっていないのを示唆するように、髪が少しなびく程度の風でも袖がゆらゆらとはためいた。
「腕と目を負傷したせいでまともに戦えなかったから、私は直接手を下したわけじゃないわ。不本意ながらね」
紫とは弾幕勝負で戦ったことがあり、本気ではなかったというのに、ものすごく強かった覚えがあった。その彼女がそこまでの負傷をするというのは考えられなかった。
だが、戦いとは無縁の人間とも違い、母たち未満の目をしていると思っていたが、それで合点がいった。母と鈴仙の目が同じである理由は、二人が直接自らの手で人間か妖怪かを殺めた。
「じゃあ、ただの人食い妖怪と母たちが違うのはなんで?」
「おそらくだけれど、認識の違いよ。対象を食料とみているか。それとも、仇を討つための敵とみているか」
彼女の言っている事に正しさを感じた。まだ、人食い妖怪を一人しか見たことが無いからわからないが、憎悪、怒りなどの混じらない淡泊な印象を受けていた。それに比べて、母や鈴仙の目には複雑な感情が渦巻いている。
「まあ、当時の魔理沙が何を思って、何を感じて戦っていたのか。私にも詳しい所はわからないわ」
彼女にならできない事は無いだろうが、幻想郷でも上位に君臨している紫でさえも死にかける程の敵がいたのだ。四六時中、ずっと見ているわけにはいかなかったのだろう。
「何が魔理沙を突き動かしたのかはわからない。もしかしたら、復讐心かもしれない。戦う喜びを見つけてしまった部分があるかもしれないわね」
「でも、自分の欲を優先させすぎたり、逆に無欲である行動は長くは続かないわ。苦しいいばらの道であるなら特に」
誰だってそうだ。望んで苦しい道に進むことはしないだろう。苦しくない方に、楽な方へと流れてしまうのが人の常だ。痛みを生じるならもっとだろう。
幼いころに一緒にお風呂に入る機会があった。母の体には無数の傷が残っており、いくつもの戦場を駆け抜けて来たのだと想像できた。どう楽観的に見ても、修羅の道だ。
「魔理沙があえてその道を行ったのは、守るべきものがあったから」
楽な方に身を薙がすことを抑止させるには、それ相応の強い意志が必要になる。その意思の源はどこから来たのかは、考えるまでもなく分かった。
「そう…だね」
そこらの人食い妖怪と違って、意味もなく母がそんな目をしているわけがない。それも知らないくせに、母にあんなことを言ってしまった。
けれど、負に堕ちない部分もある。
「母がただ意味もなく人を殺したんじゃないのはわかった。でも、なんですぐに訳を言ってくれなかったの?それって、私には話せない悪い事をしてたからじゃないの?」
「言える訳ないじゃない…」
「………っ…」
やはり、私はまだまだ思考が子供だと言わざるを得なかった。そんな単純な話では無いに決まっている。言える訳がない。自分が生きるためだったとしても、どれだけ正当化してもしきれない。
自分がどれだけ軽々しい発言をしていたのか。それを考えるだけで嫌になってくる。
不安なことが的中しなかったことで安堵はした。しかし、同時に申し訳ない気持ちが沸き上がり、悲しくなってきた。それに、話をするのにもどう話していいかわからなくなってしまった。
「どうしよう…お母さんに、あんな酷い事を……」
深く木津ついているのは、本当に泣きたいのは母のはずなのに、私が泣き出してしまいそうになってしまった。母がそうなってしまった理由を、そうならざるを得なかった訳を、考えることも無く軽々しく発言してしまった。本当に取り返しのつかない馬鹿なことをした。
「大丈夫よ……今回の事で、ショックを受けたのは間違いないだろうけれど……。ちゃんと謝ればわかってくれるわ。……今回のはどっちの言い分もわからなくは無いから、そこまで怒っていたりはしないと思うけれどね」
ため息をつく私に、紫は大丈夫と励ましてくれるが、どう話すか悩む。後悔に苛まれるが先も思った通り、言ったことは取り消せない。だからこそ、誠心誠意謝らないといけない。
「うん…。頑張る」
村に買い物を買いに行った母たちがそろそろ帰ってくる頃だが、村では夕立で大雨が降っている。傘を持っていった様子はなかったため、ずぶ濡れで帰ってくることだろう。
タオルの準備でもしておくか。縁側に座っていたが、立ち上がって寝室へと向かう。
「謝るの、手伝うかしら?」
「大丈夫……自分で謝るから」
どう謝るかを、脳内で何度もシュミレーションしてみるが、あまり上手く言葉を紡いでいけない。寝室にあるタンスの中からバスタオルを取り出し、縁側へと戻ってくると紫の姿は無くなっていた。
彼女が去る足音が聞こえてこなかったため、能力で帰ったのだろう。何もすることが無いため、再度縁側に座ろうとした時、村の方向から見慣れた二人の輪郭が見えて来た。
まだ、何にも考えていなかったのだが、もう帰ってきてしまったようだ。しかし、いつまでも悩んで事態を先延ばしにするわけにもいかない。
縁側で自分の靴に履き替え、庭先へと出る。庭の一部、あまり人の出入りが頻繁ではない場所には雑草や花が生え、咲き乱れている。切れ込みのある長く黄色い花弁が緑の雑草の中で良く映える。
その上を飛んできた母たちが庭に降りて来た。びしょ濡れとなっている二人にタオルを渡そうと差し出した。
「…ありがとう」
巫女の母はいつも通りの表情で受け取っていく。かなり雨足が強かったのか、服を絞れるぐらいにはびしょ濡れだ。
魔女の母にタオルを渡そうとすると、あんなことを言ってしまった後で、何となくお互いに気まずい雰囲気が流れていたのを思い出す。少しぎこちなくなりながらも、見上げると、母もそれを感じているのかはにかんだ表情を向けている。
私は母が嫌いなわけではない。前のように、あの屈託のない笑顔が見たい。待っているだけではやはりだめだ、失態の尻ぬぐいは自分でしなければならない。
体が冷えているため、今はお風呂に入ってもらうとしよう。風呂から上がってきたら、しっかり誠心誠意謝ろう。
楽しそうに夕食の話をしながら家へ向かっていく母たちの背中を目で追い、私も二人の後を追った。
これで本当に完結となります。
ちょっとした設定を箇条書きに。
魔理沙が特殊な存在になった理由は、ネットにある魔理沙の紹介記事を見た時です。
二次設定でありますが、他のキャラクターが使う弾幕に酷似するスペルカードを使用する。パクると書かれていた為、それが普通でなければどうなるかと考えたのが物語の始まりです。
鈴仙はしばらくの間は永遠亭で過ごしていましたが、異次元の者という事で悪評が立ってしまったことと馴染めなかったことで出て行き、紫に拾われました。
波長を見分けることを買われ、結界の管理を一部任せられ日々結界の管理をしています。
フランドールの設定は、過去に自分の正気を能力で壊してしまったことで地下に閉じ込められていました。
異次元の者に殺されかけた時、レミリアが庇ったことで難を逃れ、彼女の血を吸い尽くして魂を取り込んだことでレミリアを自分の中に生き永らえさせます。
一度失った正気を、レミリアが肩代わりする形で理性を保持することに成功します。
血のつながった姉妹であったとしても、二つの魔力が共存することは難しいため、フランドールがその法則を、自分に限定して壊している事で不可能を実現しています。
なので、フランドールは作中ではあまり能力を使用していなかったと思います。多分。
大妖精の設定は、昔からやりたかった設定です。
弱いキャラクターが実はクソ強い設定がめちゃくちゃ好きなので。
異次元ナズーリンは、異次元鵺を使う時の人質として意図的に無視されていました。
なので、異次元咲夜達が魔理沙を追ってきた時に、「ああ、ここか」と言ったのはそういう事です。
異次元妖夢に壁に縫い付けられた異次元ナズーリンは、魔理沙が去った後に辛うじて意識を取り戻し、転がった四肢をどうにか焼き繋いで崩れ落ちる地下から逃げました。
異次元の河童たちは天狗のようなスピードも無ければ、力も鬼たちには圧倒的に劣る為、科学技術を発展させることでなんとか地位を保っていました。
異次元ニトリとの戦いは、正直なところトランスフォーマーにハマっていた時期なので、完全に趣味が全開でした。
(拳銃のところはその時にハマっていたアクション映画やゲームの影響)
異次元幽香と異次元勇義
自分のイメージではどちらもただ暴れたいイメージだったのですが、それだけ同じ感じになってしまうので、異次元幽香に少し思想の違いを与えました。
異次元勇義は強い奴と戦いたいので、不利な鬼側の陣営に。
異次元幽香は勝利に重点を置いているため、有利な異次元霊夢側の陣営に属しています。
異次元幽々子は、異次元正邪に存在を反転させられて一時的に消えました。
しかし、異次元幽々子としての核は白玉楼の桜の下にある為、時間の経過で再度現れます。
自分を殺してくれる庭師を待ち、数百年、数千年もただ待ち続ける事でしょう。
魔理沙が途中で生成したワンコは異次元紫の隙間の中に閉じ込めているので、未だに脅威として存在しています。
作中では別に重点を置きたかったので、描写してませんでした。(忘れていただけ)
守矢神社は巫女も神もいなくなってしまいましたが、村の献身的な信者が遺体や物を神聖視し、一部では数百年はマイナーな宗教として残り続けました。
いろいろと設定を盛り込んだことで原型がほぼなくなり、これ東方でやらなくてもよくね?と思われそうですが、それを楽しむのも二次創作の楽しみとして、目を瞑ってやってください。
これで終わりとなります。少しでも暇つぶしで楽しんでいただけたのであれば幸いです。
読みやすいように少しづつ努力したつもりでしたが、読みづらい中でも付き合って頂き、重ねてありがとうございました。
まだ練っている途中ですが、次の話も思いついてはいるので、書くことがあり、皆さんの性癖に刺さることがあったらまたお会いしましょう。
一話から、いったい何人の方が最後までたどり着いたんでしょうか。(汗)
最初はこの話を四十話で完結させられるだろうと考えていました。阿保ですね。