東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。
それでもいいという方は第二十一話をお楽しみください。


東方繋華傷 第二十一話 刺す

 私は立ち上がって三十メートル程になった人間型の花の化け物が、体の一部と変わらない武器を持ち上げ、振りかぶって私に上から振り下ろしてきた。

 だが、補強されているとはいえ刀のように固いわけではなく、弓のようにしなったことで手元と得物の先端とでタイムラグがあり、そのうちに何とか花の化け物の懐に潜り込むように空中に逃げた私には攻撃が当たることはなかった。

 全力で振り下ろしたらしく、その威力に地面がめくりあがって爆音で鼓膜が破れそうになるが、何とか怪我もなく逃げ切ることができた。

 花の化け物を改めて観察すると初めて行う人間形態らしく、余分に作りすぎた部分の岩石と岩石がぶつかり合って削れ、割れた岩石が地面に落ちていく。

 真上にある花の化け物の腕をお祓い棒で破壊し、手首から切断させてからさらに奴の方向に進んでわき腹の一部をお祓い棒で削り取り、そのまま背中側へと飛びぬけて攻撃を受けないようにした。

 私が殴り壊した岩石が地面に落ちていくのと、花の化け物がこちらを向けない状況なのを視界の端に捉えてから上昇しようとするが、四足歩行の時と同じように背中側にある花を破壊して一時的に目を潰そうと霊力を凝集させた弾幕を浴びせようとしたとき、背中側から大量の蔓が先端を尖らせ、私を突き刺そうとやりのように伸ばしてくる。

 お祓い棒と身体を霊力で強化し、普通の人間では認知する前に串刺しになっているだろうという速度で伸縮してくる蔓を私は叩き落した。

 お祓い棒を覆っている霊力が蔓と接触するごとに役目を果たした霊力が塵や雪の結晶のように周りにはじけ飛んでいく。よく見ればかなりきれいな光景なのだろうが、見とれている暇などはなく、本数が多くなっていく蔓に比べて私の持つお祓い棒は一本しかない。数で圧倒されそうなこの状況は非常に良くない。

 一度状況を変えようと蔓の射程圏内から出ようとしたが、すぐ下の足元の近くでひゅっと空気を切りさく小さな音が耳に届いてくる。

 視線だけを下に向けると花の化け物の足から地面に入り、地中を移動してきた根が蔓と同様に私を突き刺そうとものすごい速度で突っ込んできているのが見える。

 だが、空中にいて助かった。地面にそのまま立っていたら気が付かないうちに突き刺されていただろう。

「っ……!!」

 蔓と根っこの数を総合すると三十以上にもなり、これを同時に相手にするのはどんな人物でも不可能だろう。

 しかし、魔理沙が作戦を遂行するために村に向かっているため私がここで倒されるわけにはいかない。お祓い棒と妖怪退治用の針を駆使してできるだけ多くの蔓と根っこを撃ち落としていく。

 だが、圧倒的な数の差や後方からの見えない攻撃に、針を扱っていた左手に蔓が突き刺さり、蛇が得物を絞めあげるようにして、肘のあたりにまで巻き付いて私の左腕を拘束してきた。

「くっ…!?」

 私が右手に握っているお祓い棒で引きちぎろうとするが、左手に気を取られているうちに右手にも蔓が巻き付き、拘束されてしまう。

 拘束を振り切ろうともがくが、鉄みたいに強固に硬直している蔓は私のことを開放してくれない。

 動けなくなったその隙に私の心臓に向けて正確に、超高速で蔓が伸びて来た。

「っ…!」

 背中に氷柱を入れられた時に感じるような悪寒が走り、このままでは死ぬという言葉が脳裏を横切った。

 私が逃げようとする間もなく、胸に霊力操作で強化されたことにより鋼よりも固くなっている蔓が突き刺さる。

 そのコンマ一秒前、私にギリギリで当たらない位置を複数のナイフが上空から落ちてきて、私を拘束していた蔓や根っこ、突き刺そうとしていた蔓を切断していく。

「霊夢さん!」

 聞き間違えることがないぐらい大きな声が聞こえ、銀ナイフで切断できなかった私を拘束している残りの蔓を弾幕でハチの巣にして、私を蔓から切り離した。

 腕や足を貫通している蔓を無理やりに引き抜くと、あまりの痛さに腕が痙攣してしまうが、なんとか体に刺さっている全ての蔓を引き抜くことができた。

 傷口からは血が漏れ出し、真っ赤で独特な匂いのある血は曲げていた肘から水滴となって地面に落ちていく。

「大丈夫ですか!?」

 蔓を引き抜いたことにより、傷口から大量の血が流れ出てしまうが霊力で少しだけ応急処置をすることができて、流れ出す知の量が少しだけ減った。

「…えぇ……何とかね」

 私が拘束を解いてくれた早苗に言うと、上の方向から切断された蔓などがさらに追加で落ちてくる。

「二人とも、話しているのもいいんですが、まずはこっちを手伝っていただけませんか?」

 私がいる位置よりも上の方で両手に持った銀ナイフを振るっている咲夜がそう言いながら、槍で突くように伸ばしてきている蔓を切断していく。

「…わかってるわ」

 私は返事をしてさっそく動き、後方から飛んでくる蔓と前方から向かってくる蔓をまとめて弾幕で消し飛ばす。

「途中で魔理沙さんに会って話を聞きました。どうにかして時間を稼ぎましょう!」

 魔理沙の使う星形の弾幕とは違う、線で描いた絵のような五芒星の弾幕を早苗が飛ばし、地面から次々と出てくる根っこなどを吹っ飛ばした。

 このまま武器を持って戦うよりも根っこや蔓の数を増やした方が闘う効率がいいと判断したらしく、花の化け物は武器として使っていたお祓い棒に似たものを解体し、こちらを向きながらさらに数十本にもなる根っこや蔓を私たちに向かわせる。

 しかし、攻撃方向がさっきとは違い、突き刺す単調な動きではなく。花の化け物は蔓を鞭を振るうようにして薙ぎ払ってきた。

 鞭でも使いようによっては刃物並みに危ないものでもあり、一撃が重くて当たらないよりも、一撃は軽いが当たれば徐々に疲弊させることができる方がいいと考えたのだろう。それに薙ぎ払った方が攻撃する範囲が大きく増える。

 奴の攻撃範囲が広くなれば、その分私たちの行動範囲が狭くなる。本当に厄介な相手だ。

「アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 奴の咆哮が耳を押さえないと鼓膜が破れてしまうのではないかというほどに大きく、地面の砂を舞い上げるほどだ。

 だが、私たちは耳をふさぐことはできない。耳を塞いでいればそのうちに鞭のようにしなって周りを動いている蔓に切り裂かれてしまうだろうからだ。

 各々は霊力で耳という器官全体を強化し、音が聞こえなくなることを防ぐ。

 それと並行して三人で武器を振るって何とか蔓などを凌いでいたが、花の化け物が武器として使っていた岩石を一つだけ拾い上げ、こちらに向けてぶん投げた。

「くそっ…!…岩が飛んでくるわ!」

 軌道的には咲夜の方向に向かっているが、咲夜自分に向かってくる数十本の蔓などを切り裂いていくので精いっぱいであり、岩石を跳ね返したりする余裕はなさそうだ。

 直径は一メートルもある鏃状の岩石が弾丸が飛んでくるように回転して向かってきていて、咲夜に当たりそうになるが私がすんでのところで岩石と咲夜の間に滑り込み、真正面から力で対抗するのではなく、岩石の角度をわずかに変えてやった。でないと岩石を破壊した際に、飛び散った破片に後の戦闘に支障が出る。

 ガリガリガリ!!

 鉄が多く含まれているのか、弾丸に回転している岩石にお祓い棒を打ち付けると、まぶしいぐらい火花が散っていく。

 半ば無理やりに岩石の軌道を変えたことで咲夜にも早苗にも岩石は当たらなかったが、強い力ということで空中であるその場にとどまることができず、後方に吹っ飛ばされてしまった。

 花の化け物が二足歩行になり、身長が高くなった。それによって上方向から斜めに飛んできていた岩石に引っ張られて地面に落とされてしまった。

「うぐっ!?」

 強い衝撃が地面から背中に加わって肺から空気が抜け、ほんのわずかな時間だけ呼吸ができなくなってしまう。

 土だらけとなり、柔らかい土をまき散らしながら十数メートルの距離を転がりそうになるが、受け身を取ったことで体がどのようになっているのかをなんとなくで察し、地面にお祓い棒を突き刺したことで、地面との摩擦力で減速して大きなけがなどを負うこともなく立ち上がることができた。

 すぐに咲夜たちの方に戻って戦闘に参加しようとしたが、地面の中からまた根っこが飛び出してきて私のことを逃がすかと言わんばかりに締め上げてくる。

「いっ…!?」

 ギチッ…メキメキ…ッ!

 体の中から骨に異常なまでに圧力がかかった時に聞こえる軋み、折れないように元に戻ろうとする音が聞こえてきたが、私は霊力で体をさらに強化して引きちぎって振り払う。

 地面のあちこちから出てくる根っこに向けて弾幕を放ち、消し飛ばしていくが再生能力が高いというのと、数が多くて撃っても撃っても意味がほとんどないことで数に圧倒され、私の動きが花の化け物に劣り始めたときにチクっとした痛みを頬に感じた。

「…くっ……!」

 一人で相手にするには数が多すぎる蔓から逃げようとした時、薙ぎ払う動きに気を取られていた私に正面から回り込んできていた他の蔓が針に糸を通すように飛んできて、さっきとは違って本当に私の胸に突き刺さった。

 




五日後から一週間後に次を投稿します。
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