東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第二十二話をお楽しみください。


東方繋華傷 第二十二話 落下

 私の胸に蔓が突き刺さったは刺さったが、刺さった直後に根っこはぐったりと力をなくし、なぜか結果的に皮膚の薄皮一枚を貫いたところで根っこは動きを止めた。胸のあたりを見下ろしていた顔を上げると、蔓が半ばから断ち切られているのが見え、その断面は鋭利なものや鈍器などを使ったものではなく、高エネルギーのレーザーを照射されたことによる熱線で切断されている跡だ。

「え…?」

 驚く私をよそに、白く輝く光の線が私の周りの地面を根っこごと焼いていき、その光の線がなぞっていった地面が溶岩のように融解し、その熱で根っこが燃えて地面から飛びだせないようにしていく。

「霊夢!待たせちまったな!」

 空を飛んでいる魔理沙が上空から布の袋を掲げているのが見え、目が合った彼女に瞳でお礼を告げ、咲夜たちのところに戻りながら偏差射撃で他の根っこを撃ち落とした。

「魔理沙!奴を転ばせるから背中にある花に花粉をかけて!」

 三十メートルはある花の化け物よりも高い位置に上昇している魔理沙に大きな声で伝えると、白色の袋の口を握っている手でグッと親指を立てて了解と私に言ってくる。

「咲夜…私と早苗が両足を破壊するから、あんたは私たちが走り出したら時を止めて花の化け物が出してる根っこをすべて切り落として」

 ある程度の根っこを魔理沙が上空からレーザーで切断してくれていたおかげで、わずかにできた時間を使ってどう花の化け物に攻めるかを二人に伝えた。

「早苗は奴が攻撃をしてきたと同時に根っこを無視して奴に向かってちょうだい。こっちからみて花の化け物の右足を破壊して、私は左足を破壊するわ」

「…わかりました」

 咲夜が太ももに巻かれているベルトに取り付けてあった銀ナイフを引き抜いて取り外し、両手に三本ずつ銀ナイフを掴んだ。

 銀ナイフを構えた昨夜と、私が持っているお祓い棒とは少し形状の違うお祓い棒を握りしめて深呼吸をした早苗が花の化け物に視線を移し、奴が減った蔓や根っこを再生させて次に襲ってくるタイミングを見計らう。

 撃ち落としておいた根っこの最後の一本が再生し、完璧に治った根っこや蔓がすべて私たちに向かって薙ぎ払われた。

「『咲夜の世界』」

 私たちの皮膚を刃物と同じぐらいの切れ味がある根っこが切り裂こうとしたとき、何の前兆もなくすべての根っこが根元から銀ナイフでぶった切られて地面に雨のように落ちていく。

 私と早苗が大きく踏み出して進みだし、根っこを切断するのに使っていた銀ナイフの回収をしている咲夜を視界の端からはずして、花の化け物の足を破壊することだけを考え、お祓い棒と身体能力を霊力で最大にまで強化する。

 奴は四足歩行時よりも二足歩行時の時のほうが体を大きくしているため、体重が元の1.5倍から2.0倍かそれ以上に多くなっているはずだ。それを支えるために足が太くなっていて破壊するのにはかなりの力を加えなければならないだろう。

 だが、二足歩行になったことでこちらに有利なこともある。四足歩行の時のように四本の足に全体重が分散しているのではなく、二本の足に体重がかかっているためどちらかか、もしくは両方を破壊すれば奴は簡単に倒れる。

 花の化け物が根元から切断された根っこや蔓を再生させ、私たちに向かって薙ぎ払う攻撃をしてこようとするが、その時間が圧倒的に足りず、何の抵抗もされずに私は左足の中心に大穴を開けた。

 ボゴォッ!!

 岩石が砕け、根っこが引きちぎれて花の化け物の左足に大穴が開き、私はそこから後方へと進んで通り抜ける。

 中心部だけを破壊しても穴の両側は足と体に繋がっていて、そこから根っこが伸びて岩石などをくっつけて再生させようとするが、私が通ってから一秒もたたないうちに支えていた片側が体の体重に耐えきれず、ぐしゃりと潰れると辛うじて体をさせていることができていたもう片方も潰れ、花の化け物の片足が大きく崩れる。

 その隣では、早苗が初めに小指側の脛のあたりを通り過ぎざまに強化したお祓い棒でえぐり取るように破壊した。

 脛の半分ほどまでをお祓い棒で破壊し、一度は右足を通り過ぎた。

 空中に霊力で進んでいる方向に足場を作り、そこに位置調節をして着地すると、それを踏み台にして花の化け物の方へ跳躍する。

 一回目で破壊した側とは反対側を早苗がお祓い棒で完全に破壊すると、花の化け物は治す間もなく両足をほんの数秒の間に失った。

 早苗が二回目の攻撃をしている間に私は上昇し、花の化け物の腰のあたりを後方から蹴り飛ばしたことで奴の体が傾くが、倒れまいと突き出した手で完全に倒れるのを防ぎ、元の四足歩行のように地面に這いつくばらせた。

「魔理沙!」

 私が言うころには魔理沙は動き出していて、花の化け物の背中に生えている花に向けて急降下を始めている。

 花の化け物が魔理沙の急降下を察知して、蔓などを急激に成長させて彼女に向かわせようとするが、私が成長を始めたそばから弾幕で撃ち抜く。

 撃ち漏らした蔓を左右上下に動いてかわした魔理沙が雌花の近くに到着し、その手に持った白い布の袋に入っている花粉を花の雌花に向けて振りかけると、黄色い粉と地面にこびりついたものを無理やり抉り取って来たらしく、多少の土も交じっているが雌花に受粉すると急速にその形を変えていく。

 形を変えた雌花が球状に実を形成していき、その中では細胞分裂をするようにして核という名の種子を分裂させ、破裂するために実を巨大化させる。

「早い…!?」

 一度は種子の形成を目の前で見ている魔理沙が目を見開いて驚いているのだから、あれは相当な早さなのだろう。それか巨大な実であるため、破裂するのにもその分だけ大きくなければならいことから種子の分裂が速く見えるのだろう。

 実が完全に膨らみきるまでは衝撃を与えても爆発はしないため、私が急いで実を体につなげている茎をお祓い棒で殴って引きちぎろうとしたが、花の化け物が自分の弱点に群がる私たちを振り払おうと、四足歩行に近い状態だった体を膝立ちするように体を持ち上げ、私たちに攻撃をして来ようとする。

 だが、受粉したことでコアが分裂に力を注いだためか、花の化け物の動きがその状態で停止した。

 花の化け物の動きが止まったのはいいが、奴が私たちを振り払おうとして立ち上がったことで大幅に時間が遅れてしまい。種子を大量に蓄えている実がパンパンに膨れ上がり、今にも破裂してしまいそうだ。

「やばいっ!!」

 花の化け物が体を持ち上げたことでかなりの距離が開いてしまった実に向けて進もうとした時、花の化け物の背中にくっ付いている茎が、規格外の重量だったのだろう。実の重さに耐えきれずに千切れてしまう。

「あっ!?」

 破裂寸前の風船のように膨らんでいる直径二メートルはある実が、重力にひかれて空気の抵抗で若干減速されながらも、加速して地面に向かって落ちていく。

 1輪のホウセンカはおよそ十数個から数十個の種を周りにまき散らすと聞いたことがある、こいつの種がどれぐらいの大きさなのかは知らないが、それがあの球体にぎゅうぎゅうに押し込まれていると思うとぞっとする。

 それに、あの小さなホウセンカでさえ、種をかなりの距離を飛ばすと聞く。このサイズの実であればどれだけの距離を飛ぶのかも計り知れず、幻想郷中にこいつが出現するという事態になりかねない。

 魔理沙はレーザーを撃つ準備などはできておらず、昨夜も時を止める準備はできていない。とっさのことで早苗の奇跡にも期待はできない。

 霊力を使って落ちていく実に向かって全力で降下を始めたが、実とは手を伸ばしても届かないほどの距離が離れている。

「…くそ……っ!!」

 私はすべての霊力をスピードにつぎ込むつもりで速度を最大にまで上げると、数メートルあった実との距離が少しずつ近くなっていき、私が花の化け物の体から千切れた茎を掴めそうになる。

 もう少し、と落ちていく茎に向かって腕を伸ばそうと身を乗り出した私に、誰かの切羽詰まっている声が聞こえてくる。

「霊夢!!」

 この焦って聞き取りづらい声ではあるが、おそらく魔理沙の声だ。

「逃げろ!!」

 魔理沙が私に叫ぶが、巫女という職業上、私は幻想郷を守るためにもどうにかして間に合わせないといけない。だから、ここで引くわけにはいかない。

 さらに前に出ようとしたところで私は追うのに夢中で、実が落ちるということはその先には地面があるということを忘れていた。

「くっ!!」

 焦って掴み取ることばかり考えていた私は、パンパンになっている実が地面にぶつかる寸前で、それの目の前にいるということが頭から抜けていたのだ。

 今更防御に霊力を回したところで防御力など高が知れ、掴むにも慣性の法則が働いて実の重さに引っ張られて地面に落ちるのは確実であり、他のことをしている間もなく私は実が地面にぶつかるのを目の前で見ているしかなかった。

 




五日後から一週間後に投稿します。
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