東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第二十三話をお楽しみください。


東方繋華傷 第二十三話 重症

 音は無かった。目を閉じた私の耳には実が爆発したような音は聞こえてこなかったが、至近距離すぎて鼓膜が破れたのかと初めは思ったが、衝撃すらもないためそれも違うとすぐにわかるが、そもそも物事を考えることができている時点で私は死んでいないだろう。

 それに、私はすぐ下にあった地面に当たることなく前に進み続けているのが証拠だ。進んでいるというよりも、落ちている。が近いが、

 目を薄っすらと開けた私は、現在自分がどこまでも暗闇が続いていて何もない空間の中にいるということが視界から得られた情報からわかる。

 重力が存在せず、宇宙空間のように上下左右の概念がなく。どこが正面というわけではないが、体が向いている正面方向に顔を向けると私が減速したことによりかなり距離が開いているが、私が掴もうとしていた実がどこかに進んでいっているのが見えた。

 引き返そうにも、どこをどう進んでいるのかすらわからない私がどうしようかとしていると、

「それよりも先に行かない方がいいわ…私でも探し出せないわよ…霊夢」

 私の死角からいきなり出て来た紫が、落ちて行っているのか上っていっているのかわからない私を抱え込み、進んでいた方向とは反対方向に進みだす。

「紫がいるってことは……ここはスキマの中?」

 私が聞くと、紫は小さくうなづいて向きを変えた前方に見える外の景色の見えるスキマへと向かって行く。

「危機一髪だったみたいね」

 いまだに落ちて行っている実は、もう私からは見えないぐらいには離れていて、紫はそれを見下ろして呟いた。

「…えぇ……今までの異変でもやばいときはあったけど……今回は本当に死を覚悟したわ…」

 緊張がほぐれた私は脱力し、私を抱えている紫にもたれかかって言うと、彼女の心拍が大きな胸を伝って聞こえてきた。紫の鼓動は少し早く、余裕ぶってはいるがかなりギリギリの危険な状況だったのだと改めて知った。

「何言ってるの、異変は始まったばかりでしょう?シャキッとしなさいな。霊夢が異変を解決しなくてどうするのよ」

 紫にそう言われて私はハイハイと気の抜ける返事を返すが、今までの異変で平和ボケした感覚を治すために気を引き締め直す。

 幽香が何をしたいかは不明であるが、ここまでやる彼女も本気ということだ。しかし、いくつか腑に落ちないところもある。

 まあ、その腑に落ちない部分は異変を解決するのと同時進行で疑問を解決していけばいいだろう。

 私がそう思って紫にスキマから出るのを任せていると、ついに出ることができて強い日差しが目に入って顔をしかめた。

 やはりスキマの中というのは矛盾の生じている不思議な空間だ。重力という概念が存在せず、光もあるかわからないが物が見える。しかし、周りは真っ暗闇で一寸先も見えないほどだ。

 まぶしい光をさえぎるために眉のあたりに光が目に入らないように手を添え、目に入る光の量を少しだけ減らしたとき、前方斜め上方向から声が聞こえて来る。

「霊夢ぅぅっ!!」

 光で見えずらいが心配そうな顔をしている魔理沙が、私の姿を確認すると一目散にこっちに飛んできているのが見えた。

「魔理沙、こっちは大丈夫よ」

 そう言って目の前にやってきた魔理沙をなだめようとするが、彼女は私の両肩を掴むとガクガクと前後に揺らしながら大きな声で言った。

「大丈夫だよな!?死んでないよな!?」

 魔理沙が勢いよく私の体を揺らすせいで、頭が振り回されて脳震盪を起こしそうになるが、それほど心配してくれているんだと彼女の表情から伺える。

「…それにしても、幽香の奴…こんな化け物なんか作り出すなんて…何考えてるのかしら」

 すぐに状況を把握した紫はコアを失って完全に沈黙している花の化け物を見上げて言うと、いつも使っている傘をスキマの中から取り出して日傘として傘を開いた。

 私たちもつられて花の化け物を見上げると岩石を絞めつけている蔓の崩壊が始まっているのか、砕けて不格好な形の石が花の化け物の体から剥がれ落ちていく。

「…花が背中から生えているから、もしやとは思っていましたが……やはり風見幽香でしたか」

 咲夜がちょうど足元に刺さっていた自分の銀ナイフを引き抜きながら私たちに言った。魔理沙から作戦の有無は聞かされたが、誰がこんなことをしたかは話さなかったらしい。

「そういうことですか…でも、その本人はどうしたんですか?もう倒しちゃいましたか?」

 こいつを作り出した幽香が戦いに参加していないため、もうすでに倒してしまったのかと早苗が周りを見回すが、当然幽香の姿は確認できずに私たちを見た。

「…いや、あいつはこんな短時間で倒せるようなやつじゃないわ…」

「…そうですよね…風見幽香は幻想郷では上から数えた方が速いぐらいに強いですもんね…。…じゃあ、居場所はわかりますか?」

「奴の居場所はわからん…この花の化け物に気を取られてるうちにどっかに行っちまってたんでな」

 魔理沙が私の代わりにそう早苗たちに説明をしていると紫が少し考え込んでから、私たちに言った。

「これだけの異変だし、私も睡眠時間を削って手を貸すことにするわ。藍にも幽香を探すように言っておくわ」

 紫はそう言うと足元にスキマを作り出し、何もない空間が広がるスキマの中へと落ちて行った。

「…咲夜に早苗、二人とも手を貸してくれて助かったわね」

 紫がスキマの中に消えていったのを見届けた私は2人に言ってから、崩壊が始まって腕や胴体から岩石が剥がれ落ち始めた岩石の塊から離れるように歩き出す。

「一つ貸ですよ。…と言ってもたまたま通りかかっただけなので、礼はいりません」

 咲夜がスカートの下の太ももに巻いてある革のベルトにある銀ナイフを装着する部分に銀ナイフを差し込み、私に言ってくる。

「お互い様ですし、私が困ったときに手を貸してくれればいいですよ」

 早苗が足元に転がってきた小さな石を軽く蹴飛ばして言った。

「…そう」

 私はとりあえず、無くなった分の札や針を補給するために神社に向けて飛ぼうとした時、魔理沙がだいぶ重症であるはずの怪我を負っていたのを思い出した。

「…魔理沙…そういえばあんた怪我してなかった?」

 私が後ろを振り返ったタイミングで、腹を押さえながら歩いていた魔理沙の体から力が抜け、意識がないのかゆっくりと崩れ落ち、受け身も取らずに地面に倒れ込んだ。

「魔理沙!?」

 私が早苗と咲夜の脇を通り過ぎて走り寄り、彼女を抱き上げると魔理沙の顔は真っ青で医療に全く知識のない私にでもすぐにわかった。これはやばいと。

「これは…血を失いすぎたことによるショック状態ですね…これ以上放っておくとまずいことになりますね」

 咲夜が咲夜が腹を押さえていた力の入っていない魔理沙の手をどかすと、今もなお傷口が広がってしまっているらしく、真っ赤な血が服を汚していく。

「霊夢さん!!急いで永遠亭に行きましょう!」

 早苗と咲夜が空を飛び、私も魔理沙を抱えて二人に続いた。

 




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