それでもいいという方は第二十四話をお楽しみください。
私はぐったりと体に力がこもっていない魔理沙を背負って永遠亭がある方向に顔を向け、霊力を使って飛行速度を最大にまで上げた。
永遠亭がある迷いの竹林は、魔理沙が花粉を取りに行った村のもっと先に位置していて、この場所から直線距離で迷いの竹林までは四キロはある。
血が怪我をした部分から流れ出し、体の中にある体液が減っていっていることで魔理沙の体温が急激に下がっていくことから、迷いの竹林で迷っていては永遠亭につくまで彼女は持たないだろう。
「…っ…」
私が魔理沙を背負って空を全力で進んでいたが、魔理沙が意識を取り戻したらしく体重移動をしてわずかに彼女の体が軽く感じる。
「魔理沙?大丈夫!?」
肩越しに振り返って魔理沙に言うが、彼女からの返答はない。意識を保つのが精いっぱいで私の質問に答えている余裕がないのだろう。間に合うか間に合わないかギリギリであるのが前方を飛んでいる二人にもわかるらしく、焦った顔をして飛んでいる。
「…近くにてゐでもいてくれれば何とか間に合うかもしれないのに…!」
てゐの能力は誰かを幸運にする程度の能力を持っていて、迷わずに永遠亭に行ける可能性が高く、魔理沙も幸運の効果が備わって何とか持つかもしれないからだ。
村に差し掛かった私は迷いの竹林の方向を睨みながら苛立って呟いていると、前方で誰かが小さな花の化け物と戦っているのが見える。
特徴的な青と紫色の中間に近い色と赤色を織り交ぜた帽子を被り、紙のように真っ白な髪に、青を主体とした袖のあたりが真っ白い布でできた服を着ていて見間違えることはない。慧音だ。
もう一人は赤いもんペのズボンを履いていて、炎を扱っているのは藤原妹紅だろう。
…ん?妹紅…?
「二人とも、慧音を援護して!私は妹紅に道案内を頼むわ!」
前方で飛んでいた二人はすぐに慧音のいる方向に向かい。私は花の化け物を燃やそうとしていた妹紅の腕を通り過ぎざまに掴んで持ち上げた。
妹紅は迷いの竹林を迷わずに歩くことができる数少ない人物の一人だ。いきなりで戸惑うとは思うが魔理沙が死にそうなのだ、地面に降りて一から説明している暇はない。
「うお!?おい博麗の巫女!何すんだ!?」
私が掴んだことで花の化け物に定めていた標準が大きく外れてしまい、火炎放射器から発射されたような炎が空中を燃やし、戸惑った妹紅が私に叫ぶ。
「…悪いわね!でも死人が出そうなのよ!永遠亭までの道案内を頼むわ!」
私がそう言うと、背負われている魔理沙がぐったりと力なく私にもたれかかっているのを見て状況を察したらしくわかったよと呟き、掴んでいた私の手を振り払うと家の屋根に着地し、永遠亭の方向に向かって屋根を飛び移って走っていく。
後方では咲夜たちが自分たちに花の化け物を引き付けるために暴れだしたのか、派手に弾幕をぶっ放し始めた。
村の外に近づくごとに家の数が少なくなっていき、村の外と内を区切る木で作られた柵を飛び越え、妹紅が私と同じ高さを飛んで並走する。
「だいぶ血を流してるみたいだが、魔理沙はくたばってはいないよな?」
さっきまで私の肩をしっかりと掴んでいた魔理沙の手は、重力にあらがうことなくだらりと垂れ下がり、風に揺られている。
私の背中に顔をうずくめている魔理沙はまだ呼吸をしているらしく、口から吐き出された息が背中の一部分に当たり、ほんのりとその部分が温かい。
「…まだ、大丈夫だけど……それも時間の問題。できるだけ急いで頂戴」
私が言うと妹紅は小さくうなずくと、迷いの竹林に差し掛かって減速していたのを逆に早めて先導を始める。
「ああ、わかった…だが、遅れるんじゃあないぞ!」
空を飛ぶよりも地面を走った方が小回りが利くらしく、一度地面に降りた妹紅はものすごい速度、まるで馬のような速度で駆けていく。
私も妹紅に倣って霊力で身体能力を最大まで引き出して地面に着地し、彼女の後を追って走る。
筋力だけを強化しても骨など他の器官に大きなダメージを負いかねないため、他の器官も同じく強化して土を後方にまき散らしながら走る。
風のように竹の間を猛スピードで突っ走る私たちは、岩や通れないほどに生い茂っている竹などの障害物があっても、回り込んだりせずに破壊してスピードを落とさずに走り続けた。
しばらく走り、前方を左右にグニャグニャと曲がって進んでいる妹紅があと五百メートルと私に叫んだとき、横方向から何かが接近してくるのに私は気が付いた。
「…右方向から何か来るわ!」
初めは音だけだったがその方向に視線を向けると、何かが近づいてきてるのが影で見える。
初めはウサギか何かが集団で歩いているのかと思ったが、そいつはウサギたちよりも素早くてもっと重くて大きい。
竹林の細い木や竹、人間の身長ぐらいある草などが邪魔になっているせいで正体はわからないが、予想はすぐにつく。
ダダダダダダダダッ!!
地面をたたく音を響かせている足音は、普通の人間や動物では考えられないほどの速さで足を動かしているらしく、マシンガンでも撃っているような連続した音が聞こえてくる。
「っち…こんな時に…!」
妹紅が舌打ちをし、掌に炎を作り出して花の化け物がこちらにやってくるのを待ち構え、竹や木をなぎ倒してやって来る花の化け物がついに私たちの目の前に姿を現した。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
果たしてこいつは生物と言えるのだろうか。大量の茎がラグビーボールのような楕円でいて球場の体を形成し、一部は触手らしく私たちを威嚇するように蔓の先端がこちらを向いている。
太鼓を連打していたような音の原因は、花の化け物のラグビーボール状の体を支えるために出てきている大量の足のせいだ。
足は根っこで形成されており、私が闘った岩石を体として戦っていた花の化け物のひげ根ではなく主根が存在するタイプで、体を支え得るのに適しているのだろう。
それが数十本も体から生えており、それぞれが独立して勝手に動いるため、規則的ではないあのような足音になっていたのだ。
こいつはいったいどんな生物を模倣したのだろうか、見当がつかない。唯一似てるとしたら百足ぐらいだろう。
花の化け物のラグビーボール状の体の先端には口があり、そこからこすり合わせた金切り声を発していて、目の前に回り込んできた花の化け物の背中には花が咲いている。
奴はぐばぁっと口を開けて牙が大量に並ぶ口で私たちに噛みついてきた。
「くらえっ!」
私が左に避け、妹紅は右に移動し、私は通り過ぎざまに花の化け物の頭にお祓い棒を振り下ろしてやると口のすぐ上の部分が陥没し、殴られた衝撃に地面が耐え切れずに地面が割れ、奴の体が地面にめり込んだ。
攻撃をした私は空中に逃げると、右に避けていた妹紅が花の化け物に炎を浴びせかけている。
しかし、分厚い茎や蔓の集合体である花の化け物の体は効率よく焼却することができないらしく、薄皮一枚が焼けたといった程度にしか焼けない。
奴が動けないうちに私たちは奴の横を走り抜けて一気に距離を離すが、花の化け物は体が燃えているままこちらに向かって走り始め、蔓を触手のように使って攻撃を仕掛けてきた。
「っ!」
右から一つと左から二つ。左の二つは私の行く先を回り込んでいる感じでもないため、左の二つはただ単に逃げ場をなくすための物だろう。つまり、攻撃の本命は右側からくる蔓だ。
左側から来ていた蔓は思っていた通りにわきをかすめていくだけで終わり、右側から来ていた蔓が私の心臓に向けて一直線に来ていたが、妖怪退治用の針を正確にその先端に打ち込み、霊力の作用で蔓をはじけ飛ばす。
だが、花の化け物の蔓は使おうと思えば無限に使える。本番はここからだ。
私は頭の奥にあるスイッチを入れ、戦闘に集中する。
視覚から花の化け物が伸ばす蔓などの情報が入ってきて、その情報量に頭がパンクしそうになるが何とか処理をしていって奴と蔓の行動を先読みしていく。
そして、先読みした攻撃に当たらないように最小限の動きで向かってくるすべての蔓を走りながら叩き潰した。
永遠亭まで、残り三百メートル。
五日後か一週間後に次を投稿します。