東方繋華傷   作:albtraum

32 / 203
自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第三十二話をお楽しみください。


異次元からの来訪者
東方繋華傷 第三十二話 戦いじゃない ①


 注意、ややこしくなるので異次元から出て来た霊夢を異次元霊夢と表記します。

 

「十年ぶりねぇ……死ぬほど探し回ったわぁ」

 異次元霊夢が舌で唇をベロリと舌なめずりし、ガタガタと震えている私を見て嬉しそうに呟く。

「その右手から肘のあたりまである古傷、私にこの怪我を負わせたときに負った傷があるのは、あんたしかいないわよねぇ?」

 異次元霊夢は左手を私に見せつけるために自分の顔に前に掲げて見せると、私の右腕についている古傷とよく似た傷が彼女の右腕にもあり、それが肘のあたりまで続いている。

 ズキッと今までにないぐらい右腕の古傷が痛み、左手で右腕を握りしめて痛みを和らげようとするが、逆に痛みが大きくなっていってまるで現実を受け止めろと言っているようだ。

「さてと…魔理沙以外はどうでもいいし…殺しちゃってもいいんだけど……でも、その前に」

 異次元霊夢はそう呟くと、幽香の口元に触れていた手を離し、その手を背中側に回した。

 グチュッ

「あああっ!?…があぁっ…!?」

 骨を砕き、肉を抉る音が十数メートルも離れている私たちにも聞こえてきて、異次元霊夢の腕が背中側と胸側の肋骨を貫いて幽香の胸から現れる。

「うっ…!?」

 早苗が口を押え、幽香の方向から目を逸らす。私が逸らさなかったのはこんな状況でもいまだに現実を受け止めることができていなかったからだろう。異次元霊夢の手には拍動して血管から血を吹き出している幽香の心臓が握りしめられていた。

 心臓の拍動に合わせて肺動脈と上大静脈と言われる心臓の千切れた動脈から真っ赤な血が噴き出し、そのうちの数滴が私の頬に飛び散る。

「…っ……咲夜!」

 霊夢の顔が引きつり、今の疲弊している体力と魔力がかなり減っている状態では勝てないと幽香の言った通り察知した霊夢は、咲夜に呼びかけた。

「えぇ、わかっています」

 咲夜は手短に返事をし、時を操作して止めたらしく姿が見えなくなる。おそらく、幽香が言っていたあの妖精たちを開放氏に向かったのだ。幽香が私を突き飛ばして助けた借りを返すためだろう。

 ビクビクと時折痙攣し、動物的な意思のある動きをしなくなっている幽香を異次元霊夢は横に投げ捨て、こちらにゆっくりと歩き始める。

「霊夢さん!下がってください!」

 霊夢が異次元霊夢からの今行われようとしている攻撃に、幽香に突き飛ばされた私を抱えている状態では受けきることができないだろうと早苗が私たちの前に降り立ち、五芒星の弾幕に札を混ぜ込んだ弾幕を異次元霊夢に向けて飛ばす。

 五芒星の弾幕一つ一つの間にはほぼ隙間もなく、あっても札などが配置されていて、進むには避けるにもどれかしらの弾幕を叩き落とさなければならないだろう。

 だが、異次元霊夢は本当にそこに存在しているのかと錯覚するほどに、札にも五芒星の弾幕にも触れることなくすり抜け、早苗に向けて嗤いながら飛び付いた。

「せぇい!!」

 十メートル程度の距離があったため、早苗も飛び付いてきた異次元霊夢の弾丸みたいな速度にも反応でき、お祓い棒と体を魔力で強化し、下の方向から振り上げる。

 お祓い棒が空気が切りさく鋭い音が私にまで聞こえてくる。そして、響いた音はお祓い棒同士がぶつかり合う甲高い音や、お祓い棒がどちらかの体にめり込んだ鈍い音でもない。

 この音は木の枝を折るのに似ている乾いた音で、後ろから見てもわかるほどに早苗のお祓い棒を握りしめていた右腕が、肘のあたりから逆方向にぐにゃりと曲がっている。

「~~~~~~~~~~~~~っっ!!?」

 得物通しがぶつかったのであればわずかに早すぎると思ったが、早苗がお祓い棒を振る寸前に異次元霊夢が加速し、手首などに攻撃を加えて彼女の腕を関節からへし折ったのだろう。

 後ろに下がろうとした早苗の胸倉を掴んだ異次元霊夢は彼女に片手では数えきれないほどの回数お祓い棒を叩き込み、十数回目で早苗のことを吹き飛ばした。

「…あ…がっ……!?」

 息をつく暇もないほどの連撃に、早苗は一瞬のうちにボロボロになり、糸の切れた人形のように地面に転がり落ちる。

 早苗という小芸を排除した異次元霊夢は、私たちに向けて一発の弾幕を放つ。

 それ自体は普通のことだ、自分が目的地に着くまでの時間稼ぎで、精神的にも準備をする暇を与えない目的もある。だが、問題なのはその弾幕の威力なのだ。

 普通の弾幕に見えるというのに、異次元霊夢の物は触れたらただでは済まないという雰囲気、プレッシャーを強く感じる。

「…っ!?」

 私よりも早く危機を察知した霊夢は私をわきに突き飛ばし、かなりの速度で飛んできていた弾幕にお祓い棒を叩きつけて押し潰す。

 霊夢が異次元霊夢の弾幕を完全に打ち消す寸前に弾幕が何の前触れもなく爆ぜ、爆発の衝撃で飛んできた魔力の結晶や魔力の炎、それらにさらされた霊夢の顔や体に小さな切り傷などができていく。

 そんなことを気にすることもなく、霊夢は弾幕を飛ばした異次元霊夢に向けて弾幕を放つが、異次元霊夢は早苗の時にも見せたが、まるで幽霊かと錯覚するほどに弾と弾の間に体を滑り込ませて器用にかわしていっている。

 霊夢はすぐ急上昇すると懐から一枚のカードを取り出し、魔力を流してそのカードに刻まれているスペルカードを発動させた。

「霊符『夢想封印』」

 霊夢が弾幕勝負でよく使うスペルカードだ。大量の光輝く魔力の玉が彼女の周りに形成され、異次元霊夢に向かって飛んでいく。

 それに対して応戦するかと思ったが、異次元霊夢はにやりと笑うとわざと弾幕にぶつかって霊夢に向かってかき分けて進み、彼女につかみかかろうとする。

 夢想封印の爆発を食らっている異次元霊夢が、全く怯む様子を見せないことに霊夢は面食らった顔をしている。

 それも仕方のないことだ。今までは戦っている最中に技を構築して、その状況にあったものを作っていた。

 だが、スペルカードというものができてからは、事前に作っておいてそれを戦闘中に使うことで技の構築という負担をなくし、戦いを円滑に進められるようにした。一見メリットしかないように見えるが、デメリットも当然存在する。

 スペルカードを一から構築せず、前もって作っておくことで負担を減らしたということは、前もって設定して置いた威力、弾幕の速度、配置、数にしかできないということを示し、敵や状況に合わせて様々なことを調節することができない。ということは、

 今使っている霊夢のスペルカードは敵を殺すものではなく、敵を倒すスペルカードだということだ。その手加減されたスペルカードでは異次元霊夢には傷一つつけられないだろう。

「霊夢!正面から戦っちゃだめだ!逃げろ!」

 まだショックから抜け出せていない私は、向かってきた異次元霊夢に向けて正面から打ち合おうとする霊夢に警告をするが、すでに異次元霊夢の射程圏内にいて逃げられる距離ではない。

 ガッ!!

 たったの一撃で霊夢の手から離れたお祓い棒が上空に向けて飛ばされ、彼女が眉をひそめていることから衝撃が腕に伝わり、それが痛みとなって感じているようだ。

 だが、それよりも異次元霊夢に攻撃されそうになっている方が重要で、霊夢もそれはわかっていて、懐から取り出していた針を痺れた手で何本かは取り落としながらも、持った針を彼女は異次元霊夢に投げつける。

 数本の針を向かってくる異次元霊夢の各急所に一ミリのずれもなく配置するが、異次元霊夢は笑うと、体を軽くひねっただけでそれらをかわして見せた。

「っ!?」

 次の針を取り出し知恵る暇もなく、異次元霊夢が霊夢のもとにたどり着き、持っている古びたお祓い棒で霊夢の頭をたたき割った。

 




時間がなくて書いている暇がないのでしばらくは短くなってしまうかもしれないです。

次は五日から一週間後に投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。