それでもいいという方は第三十三話をお楽しみください。
今回も少し短くなってしまいました。申し訳ないです。
私の目には異次元霊夢のお祓い棒が霊夢の頭をかち割った。そんな風に見えた気がしたが異次元霊夢はなぜかお祓い棒が霊夢に当たる寸前で、ピタリとその動きを停止させた。
その理由は異次元霊夢の目の前にずらりと並べられた銀ナイフがいきなり現れたからだろう。
普通ならば反応するまもなく銀ナイフが異次元霊夢に突き刺さるだろう。もし、目の前三十センチに現れて飛んでいた銀ナイフに反応することができたとしても、避けきることは不可能だ。
しかし、奴は私の予想の上をいく。異次元霊夢は咲夜のナイフに一本も当たることなく作り出した魔力の足場を蹴って投げられた銀ナイフと同じ速度で後ろに飛び、すべての銀ナイフを避けた。
「なっ!?」
すぐ近くに現れた咲夜が驚いている。投げた銀ナイフのタイミングや配置は完璧だったのだろう。かわすことは絶対とは言わないがほぼ不可能と思っていため、余計に驚いている。
だが、そのおかげで霊夢の打ち上げられてしまっていたお祓い棒が落ちてきて、それをキャッチして立て直すことができた。
だが、その霊夢がお祓い棒をキャッチした途端に急にがくんと体の体勢を崩し、自分のいる高度を保っていられなくなって地面に向かって落下し始める。
「霊夢!」
私には見えなかったが何かを異次元霊夢にされたのだ。落下をし始めた霊夢の落ちる軌道と時間を予測し、走るスピードを速めた。
その私とは対照的に、銀ナイフを両手に出した咲夜は追撃を防ぐために異次元霊夢に向かって走り出した。
咲夜がどこからかスペルカードを取り出し、スペルカードに刻まれている回路と紙に魔力を流す。
強い魔力を流されたことで紙が耐え切れず、輝き始めたところで咲夜は走りながら銀ナイフの柄でカードを殴ると、ガラス割ったみたいに紙が砕け散る。
スペルカードは時間操作であったらしく、咲夜の動く速度が何倍にも早くなり、走っているだけだというのに風よりも速い。
「はぁっ!!」
咲夜が魔力で作り出した銀ナイフを高速移動を使って様々な方向から投げつけ、それと同時並行で手に持っている銀ナイフで切りかかる。
だが、異次元霊夢は余裕の笑みを崩さずにダンスを踊るようにして咲夜の斬撃と投擲された銀ナイフを弾き、すり抜けていく。
ひときわ大きい金属音。切りかかった咲夜が異次元霊夢のお祓い棒で今まで以上の力ではじき返されたらしく、体勢を大きく崩している。
異次元霊夢は咲夜に反撃することのできるタイミングで、彼女の両手に持っている銀ナイフに針を投げつけた。
三十センチほどの針が銀ナイフに寸分のずれもなく直撃し、金属音を響かせて銀ナイフを咲夜の手から離れさせ、刃を貫通した針が銀ナイフを地面に縫い付ける。
自分の時を速めたことでできる高速移動中の咲夜を物理的に捉えること自体が難しいというのに、異次元霊夢はあろうことか手に持っている銀ナイフを針で射抜いた。すさまじい動体視力だ。
咲夜は手に持ってた得物が無くなったことで、すぐさま素手による体術に切り替えようとしたが、どんなに頭の回転が速くても起こるタイムラグが生じ、異次元霊夢はその期を逃さずに咲夜に接近した。
そして、咲夜の目と鼻の先で朱色の舌をベェっと突き出した。この程度なのかと彼女を挑発しているのだ。
それもすぐに咲夜は察するが、冷静さをギリギリ保ちながらも自分に向けられたらぞっとするような形相で拳を握り、異次元霊夢に殴りかかる。
そのうちに私は霊夢が落ちる寸前で彼女と地面の間に滑り込み、落ちてくる彼女に飛び付いて受け止め、空中で一回転して地面に着地した。
「霊夢!大丈夫か!?」
霊夢の体を見ると体のいたるところに針が刺さっている。幸いにもどれも急所は外れている。いや、外してあるといったところなのだろう。
霊夢が避けたというのもあるだろうが、奴がわざと外したのだ。
疑問が浮かぶ、なぜわざわざ外したんだ。と、異次元霊夢ははじめに言った。私以外はどうでもいいと、殺すか殺さないかは奴の匙加減なのだ。だが、邪魔などで殺す理由はあっても殺さない理由は無い。
目的が私だというのに私を守っている霊夢たちを殺さずに戦っている。奪う命は最小限にという言葉は奴らにはないだろう。ということは、今は殺さなくてもいいということだろうか。
何のために異次元霊夢はダラダラと戦っているのだろうか。時間稼ぎだろうか。でなければ咲夜も早苗も、霊夢でさえ今頃は殺されていることだろう。
しかし、何のために時間を稼いでいるのだろうか。時間を稼ぐというのは自分以外の誰かが来るのを待っている状態か、誰かが何かをするのを待っている状態だ。それが意味しているのはこいつ以外にも誰かがいるということだ。
だが、こいつの初めの言葉から殺すことが前提で、この戦いも余興であって異次元霊夢にとっては遊びなだけかもしれない。
抱えている霊夢に落とした視線を上げて咲夜の方を見ると、スペルカードの効果が切れて等倍の速度で応戦しているが、体力も集中力も欠いている彼女がやれるのも時間の問題だろう。
異次元霊夢の攻撃に咲夜の右手に握られていた銀ナイフが弾き飛ばされた。銀ナイフは回転しながらこっちに飛んできて、私の近くを通って後方に飛んでいく。
当たりはしなかったが、鋭いものが空気を切りさく音が予想よりも近くでして驚いた。
「うぐぁぁっ…!?」
左手に持った銀ナイフで牽制して下がろうとした矢先に、異次元霊夢の攻撃でそれを叩き落され、丸腰になっている咲夜は異次元霊夢に掴まれて至近距離から大量の弾幕を浴びせかけられる。
「…魔理沙…!あいつの狙いはあんたみたいだし…私たちがこいつを抑え込むからそのうちに逃げなさい」
霊夢は体のあちこちに刺さっている針を引き抜かずに、震えてお祓い棒を持つことすらもつらそうな手で掴み、異次元霊夢に向かって行こうとしている。
「いや、逃げるのは霊夢、お前らだ」
奴の目的は私であり、私が逃げればそれを追おうと生かしておく理由もない霊夢たちを確実に殺すだろう。だから、私も戦わなければいけない。そう思っていたが私はそれを否定した。
「こいつが…こっちに来たのは私のせいだ…これは私の戦いなんだ」
私も、戦わないといけないではない。私が闘わなければいけないのだ。
五日後から一週間後に次を投稿します。