東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第四十話をお楽しみください。


東方繋華傷 第四十話 休む②

 

 体を洗い終えた私と霊夢は2人で湯船につかる。二人が一緒に入ったため、風呂窯の高さギリギリまで溜めていた大量のお湯が流れてしまう。でも霊夢は気にもせずに熱い風呂に入ってくつろいでいる。

「…昨日は、いろいろあって疲れたわね……」

 風呂に入ってから、水面に起こった波紋が収まり始めたころに霊夢がぐだーっとくつろいでいる状態で、天井を見上げて言った。

「……そうだな………」

 今日のほとんどは寝ていたので、私的には昨日ではなく今日のように思え、今日のことを思い出す。

 幽香との戦い、異次元霊夢たちとの戦い、みんなが怪我をし、私も自分の顔を吹っ飛ばした。レミリアが死に、紅魔館にいるパチュリーたちも怪我をした。

「私がもっと早くに奴らの存在がチラついているっていうことに気が付いていたら、レミリアたちは死なずに済んだのかな?」

 私は膝を抱えて頭を下げてわずかだか波打った水面を見下ろし、天井を見上げている霊夢に聞くと、彼女は少しの間をあけて言った。

「…さあね、でもあの時点では私たちは最近幻想入りした奴が魔理沙に逆恨みをして、恨みを晴らすために異変を起こしていると思ってた……だから、別世界の奴が来るなんて思いもしなかったし、あの手際の良さ……魔理沙が思い出していたってレミリアがどうなっていたかは分からないわ」

「……」

 霊夢は膝と手を風呂の床面に付けて風呂の中を移動して私の後ろに回り込むと、背中側から手を伸ばして私を引き寄せて抱きしめた。

「…いくら頑張っても、どれだけ強くても、世界一頭のいい人間でも、見えない者を倒すことはできないわ……魔理沙も当然私も含めてね…」

 霊夢は一度そこで言葉を切ると、数秒間考えてから再度話し出した。

「…本当に咲夜やパチュリー、美鈴、フラン、小悪魔、だれよりもレミリアに悪いと思うなら……しゃんとしなさい。魔理沙」

「ああ……、わかってるぜ……」

 忘れろとは言わない。戦いが始まっていてそれで誰かが死んだからと言って、いつまでも悲しんでいるわけにはいかない。奴らは待ってはくれない。

 悲しみや辛さ、自分の不甲斐なさ、怒り、それらをすべて飲み込んで自分の糧にしなければならないのだ。

 しばらくそうしていると、本格的にのぼせてきてしまったため、立ち上がろうとすると先に立っていた霊夢が私を引っ張って立たせてくれる。

「…少し長くつかりすぎたわね」

 霊夢がのぼせてぼうっとしている私に呟き、早々に風呂場から出ることにした。彼女が支えてくれていたことで密着していて、お湯が無くなってよく彼女の体温を感じることができたが、彼女は私から離れてしまい。温もりが消えてしまう。

 霊夢に続いて浴槽を出ようとすると足元がおぼつかなく、よろけてしまうが彼女が私の手を掴んで支えてくれた。

「あ、ありがと」

「…別に礼を言われるほどのことはしてないわよ」

 霊夢はしっかり私の手を握って引き、浴槽を出て脱衣所に向かう。脱衣所に入ると彼女に渡されていたバスタオルを手に取り、髪を拭いた。

 顔についている水滴を拭うために顔をうずくめるといつも霊夢からしているいい匂いがバスタオルからもしている。

 顔の次は首や肩などを拭いていき、背中なども拭き残しがないようにタオルで水滴を拭い、霊夢から借りた下着を身に着ける。胸につける下着はブカブカでサイズが合わなかった的な意味で借りなかったので、パンツだけを履いた。

前もって茶の間で渡されていた寝間着に着替えると、一足先に着替え終わった霊夢が脱衣所の一角にある洗面台に行き、コップと歯ブラシを取り出す。

「あ…、なあ霊夢…予備の歯ブラシとかあるか?」

 いきなり泊まることが決まったため、いろいろな準備ができていなかったが、歯ブラシもその一つだ。

「…あるわよ」

 霊夢は新品の歯ブラシを他の歯磨き粉など、いろいろな用具の入っている場所から取り出して私に差し出した。

「センキューだぜ」

 袋に入っている歯ブラシから取り出し、チューブから歯磨き粉をブラシの部分に付けていた霊夢に歯磨き粉をつけてもらう。

 それを口に入れて歯を磨くと、ミントのスースーする香りと絡みが口の中に広がっていく。

 昔は歯磨きはすればするほどいいといわれていたが、柑橘系の酸などが含まれているものを食べた後は磨きすぎるのもよくないという話を聞いたということを思い出しながら鏡を見て歯を磨く。

 歯を全体的に磨き終えた霊夢はコップに水を溜めてそれを口に含み、口の中をうがいをしてシンクの中に吐き出した。

 それを数回行って口の中に歯磨き粉がない状態にして、コップをゆすぐと霊夢はそれを私に渡す。

 水道のハンドルを捻り、蛇口から出て来た冷水をコップに並々にため、歯ブラシを口から出してコップの水を口に含む。

 水を歯磨き中に出て来た泡と一緒にシンクに吐き出す。それを何度か繰り返してから私も歯を磨きおえ、歯ブラシとコップを水でよく洗い、水を切った歯ブラシをいつものようにコップに立てかけて置いた。

 二人で脱衣所を出るとのぼせていたせいで異常に涼しく感じる。茶の間に移動をすると壁に立てかけてある時計はまだ八時を指していて、寝る時間にしては速すぎるが、これからはあいつらと戦うことになる。寝れるうちに寝ておいた方がいいだろう。

 寝室に移動すると、霊夢が押し入れをかけてそこに収納されている布団を二つ取り出し、机を横にどかして部屋の中心に二枚敷き、夏用の薄いかけ毛布と枕を置いていつでも寝れるようにした。

 霊夢が布団に潜り込み、私もそれに続いて布団に潜り込むと、霊夢は机に置かれていたマッチで火をつけて蚊取り線香を焚いた。蚊取り線香から独特の匂いと煙が漂ってきて、きちんと焚かれているのだとわかる。

「…寝ましょうか」

 霊夢はマッチの火を息を吹きかけて消し、布団に潜り込むと電球の光を消すために垂れ下がっているひもを引いた。カチッと音が鳴ると電球の光が消え、障子から薄っすらと入って来る月明かり以外の光が無くなった。

「お休みだぜ」

「…ええ、お休み」

 枕に頭を置き、目を閉じる。しかし、疲れているとは言えそう簡単に眠れることができない。

「……」

 しばらく霊夢の静かな息遣いが聞こえていたが、すぐに安定した深い吐息へと変わる。彼女の方を見るとやはり眠りについたらしい。今日はもしかしたらずっと私の看病をしていたのだろう。疲れていても仕方がない。

 しかし、寝ようにも今日の出来事が頭をよぎって行ってしまい。戦闘中などのことを思い出し、緊張で眠ることができない。

 そして、さらに左目の麻酔が切れてきているらしく、ズキ…ズキ…と小さくはあるが痛みが生じ始めている。

「…っ……」

 目を閉じて無理やり眠ろうとするが、余計にいろいろなことを思い出してしまったり、左目の痛みが強くなっていき、無いはずの眼球をいじくりまわされているような激痛を感じた。

「…あ……っ……う…っ………ぐ……っ!」

 今回は古傷というわけではないが、傷が痛むとかそう言った話はよく聞き、私自身も片手に傷を負っていてそういう痛みはあったが、こんなに痛いのは初めてだ。永琳が今日は眠れないから覚悟して置けと言っていた意味がようやく分かった。

 永琳から目の痛み止めを貰っていたことを思い出し、すぐ近くに置いてあるバックから、薬の入ったプラスチックの容器を取り出す。

 容器の蓋を捻って開け、中にある円形の白い薬を一つ取り出して水もなしに口に放り込み、無理やり飲み下した。

「……っ……」

 容器の蓋を閉めてバックに放り込み、ごろりと転がって枕に顔をうずくめ、目を押さえて痛みを抑え込もうとするが、むしろ痛みが強くなっていっているようにも感じる。飲み薬はそれの効果があるまで時間がある。効果が現れるまでは痛みに耐えるしかなさそうだ。

「…っ……う………っ……く……う……っ!!」

 あまりの痛みに涙が出てきてしまう。のぼせたとかではなく、目と目廻りの痛みに全身から嫌な脂汗が出てきてくるのが、汗で服が皮膚に張り付く感じからなんとなく想像できた。

 そして、しばらくすると予想通りにお風呂で体を洗ったのが無駄になってしまうほどに脂汗をかいてしまっていた。だが、もうそんなことを気にしている余裕など、私には残ってはいなかった。

 痛みには波があり、その波が回数を増すとそれに比例して左目の痛みもどんどん強くなっていく。

「……う………ぁ……っ……く……っ……!」

 自然と口から声が漏れてしまいそうになるが、口を押えて声が霊夢に聞こえないように押し殺す。

 なぜか戦闘をしてきた時と変わらないほどに息が切れ、荒く息を吐く。

「……く……ぅ……う………っ………ぐ……っ……う…っ…!」

 目と口を押えて霊夢が起きないように息を殺していたが、予想以上に声が漏れてしまっていたらしく、霊夢の寝ていた布団がもぞもぞと動いて擦れる音が聞こえてくる。

「…大…丈夫天?……魔理沙」

「…っ………ああ…何でもない…」

 霊夢の声に若干だが驚かせられたが、左目の痛みに耐えながらもなんとか彼女に返答することはできた。

「…やせ我慢しないの、魔理沙」

 私のうめき声が聞こえていたのか、寝ぼけている霊夢は少し呂律が回っていないが、痛みに耐えている私にも聞き取れるぐらいはっきりというと、自分の布団から出て私の布団に潜り込んでくる。

「霊夢…!?」

 驚いて霊夢の方を見た私の頭を彼女は掴むと優しく抱き寄せた。背の高さや、彼女と私の位置関係によって私は霊夢の豊満な胸に顔が埋まってしまう。

 抜け出そうにも霊夢は寝ぼけているくせにがっちりと私の頭を抱きしめていて、離してくれそうにない。

 お風呂で少し触れたときにもかなり柔らかく感じたが、その胸の柔らかさは服の上からでも十分に感じられる。

 温かい。霊夢に抱きしめられていると彼女の体の温かさと柔らかさが寝間着の薄い布越しに感じられて、さらに私を抱きしめることによって彼女の胸が変形して、顔を包み込む感触が心地いい。

 彼女のぬくもりや、安定している心臓の拍動する音、霊夢の柔らかさなどが不思議と私の目の痛みを和らげていく。それに、霊夢が近くにいてくれるだけで気分がとても落ち着いた。緊張状態でマラソン直後のように心臓が鼓動していたが、今はだいぶ収まってきた。

 霊夢はまだ起きているのか、抱きしめている私の頭を優しく撫でてくれる。そのしぐさがまるで子供をあやす母親のようだったが、さっきまで眠れなかったのがうそのように、私は眠気に襲われる。

 霊夢がそうしてくれたおかげなのか、薬を飲んだおかげなのかわからないが、多少の痛みはあってもさっきよりは何倍もましで、だいぶ痛みが和らいでいるおかげで浅くはあるものの、眠りにつくことができた。

 




次は五日後から一週間後に投稿します。

日常パートはもう少し続きます。
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