東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。基本的に一週間程度の期間を開けて投稿をします。


それでもいいという方は第四十三話をお楽しみください。


東方繋華傷 第四十三話 新しい武器

 一人で行くとは言ったものの、奴らが出てきたらどうしようという不安が、霊夢と一緒にいる時にはなかったがまたフツフツとその感情が沸いてくる。

 よく見渡せる空だが、一人で全方向をカバーするのは不可能だ。どこかを見ているということはどこかを見ていないということで、見ていない方向から現れないかと不安ではあるが、三日は奴らが現れないと霊夢は言っていたので幾分かは楽ではある。

「…」

 高速で飛行して十数分で自宅にたどり着くと、鍵を閉めていない木のドアのドアノブを捻って引っ張ると扉は簡単に開き、木の擦れる特徴的な音が出ていつも聞いているはずなのに、少しびっくりしてしまった。

 中に入って扉を閉めると物で溢れている部屋が視界に映し出される。寝室に移動して、前日に着替えられたまま放置された服から血の匂いがし、それが部屋中を漂っている。

 血が茶色く変色している魔女の服を脱いでゴミ箱に放り込み、タンスの中から新しい服を取り出した。こういう時のためにいくつかスペアを用意して置いてよかった。

 それをベットの上に置き、つけている意味なんかあんまりない平べったい胸を覆っている下着のホックを外すために背中側に手を回して金具を外す。胸からブラジャーをとり、乾いて茶色くなっている血がこびりついているパンツもまとめてゴミ箱に放り込む。

 タンスの引き出しから新しい下着をいくつか取り出して、一つは自分で履いて残りはポーチの中に入れた。

 新品の魔女の服を着こんでマジックアイテムが入っている棚から爆発瓶や回復薬を取り出して、それもポーチの中に放り込む。さらに私が森などから拾ってきたいろいろな形をしていて価値があるかもわからない物をできるだけバックに詰め込み、準備は完了した。

 いつものように散らかった部屋の物を避けて外に出る。そして、霊夢のいる神社にではなく、私は別の方向に向けて魔力で体を浮き上がらせた。

 

 

 太陽の位置がだいぶ上がってきたことで、当たる光の量が増えてきてだいぶ暑さを感じるぐらいにまで気温が上がってきた。

 奴らとの戦いでどこかに吹き飛んでしまっていた帽子が無いせいで、頭がジリジリと焼かれている気分になり、黒い服が光エネルギーをよく吸収して余計に暑い。

 自宅から十数分かけて移動した先には、私の家程とは言わないが鬱蒼と生い茂った木々に囲まれた家が建っている。香霖堂だ。

 時間的にはもうすでに開店している頃だろう。してなくても入るがな。そう思って広く、多少は整備がされている庭に降り、木のドアを見ると立てかけられた木の古臭い表札には、オープンとかすれた文字で書かれている。

 もしやっていないのならクローズドとなっているはずだから、店はもう開店しているらしい。

 扉の鉄のドアノブを捻ると長い飛行で火照った手のひらにある熱が鉄に奪われ、ひんやりとしているように感じる。

 ドアノブを捻ったまま手前に引くと、木の軋む音とドアが開くことによってベルが鳴り、甲高い金属音がする。

「香林…いるか?」

 明るい場所に長いこと居て、そっちに目が慣れているせいで瞳に入る光の調節が間に合わず、香霖堂と呼ばれる店内に入ると、真っ暗で何も見えなくなってしまう。

「魔理沙、僕がいなかったとしても君は関係なく入るだろう?」

 だんだん目が慣れてくると、店内の奥の方に置いてあるカウンターの椅子に腰かけて本を読んでいた香林は、小さくため息をつくと読んでいたページに栞を挟んでカウンターの隅に本を置く。

「まあ、そうだがな」

「まったく、君たちのせいでおちおち店も出られないな…。それで、店に何の用だい?世間話をしに来たわけでも、僕の助言が必要なわけでもないだろう?…何か物が壊れたのかい?」

 香林は顔を上げたときに私の顔や目が以前と変わっていることで、少し眉をひそめるがそこには触れずに話を続ける。

 前回来た時と棚に置いている物が変わらないように見え、いろいろな商品が置かれているがすべての物を無視して、カウンターの前に立った私は首を横に振る。

「とあるマジックアイテムを買い取りたい」

「マジックアイテム?…それはいいけどお代はあるのかい?」

 香林がそう言うと思って、私はポーチのボタンを外して開き、中にしまっていたたくさんの鉄くずを机の上に置いた。

「こいつらと交換してくれ、価値があるかはわからないけどな」

 いろいろな形をしている鉄やよくわからない物質が組み込まれてできている物を見て、香林は興味深そうに手に取って眺めている。

 物の名前と用途がわかる程度の能力で調べて便利なものや、売ることができるものを調べているのだろう。

「…………。ふむ……、使い方はわからないけど結構面白い物があるじゃないか。これならある程度のものとなら交換することができそうだね」

 香林はそう言うとすべての物をカウンターの端に移動させて私を見る。

「それで、何と交換したいんだい?君が作れなくて欲しいものなんて、そんなにないと思うけど…これらと交換なら、この店にあるもので交換できない物の方が少ないよ」

「力を増幅させるマジックアイテムがほしい」

 私がそうはっきりと伝えると、香林はピクッと眉を上げた。

「魔力を扱う者ならとっくにわかっているはずだろう?魔力を短期間で劇的に底上げするのには倫理に反したり、寿命を減らしたり他人の命を必要とするものだとね」

 つまりは無いといいたいらしい。

 魔力力を底上げする方法は地道に上げる方法と、香林が言ったように倫理に反したものがある。

「ああ、わかってるが私が言いたいのは一時的に魔力力を疑似的に上げるマジックアイテムのことだぜ」

 魔力力の上昇には二つの種類があり、一時的に上昇するものと上がったら下がらない物とに分けられる。

 霊夢とさっきまでやっていた修業はこの上がったら下がらない物で、私が言いたいのは一時的に上昇する物のことだ。

 短期間で上昇し、すぐに下がるタイプでは魔力を練って威力を上昇させるわけだが、これは戦闘中によく使われる。

 ただし、魔力の練りが甘いと威力が上昇しなかったり、ほんの数秒しか上がらないというのが本当のところで、実戦では使えないことは無いが、いざという時にとっさにできないという欠点がある。

「残念だけど、そんなものはこの店にはおいてないよ」

「嘘をつく練習をしておくんだな、香林、…あるんだろう?」

 私が座ったまま黙っている香林に詰め寄ると、小さくため息をついてカウンターの一番下の引き出しから白く、たたまれている紙を取り出した。

「誰から聞いたんだい?」

「香林、お前自身が言ってたんだぜ?」

 酒をたくさん飲ませてベロンベロンに酔っぱらった香林から、無理やり聞き出したとは口が裂けても言えないが。

「そんなことを言った覚えはないけど…まあいいや」

 聞き出した方法なんて今さら重要ではないと、畳まれた白い紙を広げるとそこには長細くて十センチ程度の短い棒があり、初めは何なのかわからなかったが、よく見るとすぐにそれが何なのかわかった。

 煙管などの古いものではなく、この頃の外の世界から流れて来た先端に直接火をつける煙草だ。

「あることにはある。でも、これは試作段階で、使ったらどんな影響が体にあるのかまだわかってないんだ」

「それでもかまわない」

 私が言うが、香林は顔を横に振り、ダメだという。

「なんでだよ」

「言っただろう。まだどんな副作用があるかもわからないし、作用が強すぎるかもしれない。下手をすれば死ぬ可能性だってあり得る。そうなったら僕には責任を取れない。だから君には売ることはできない」

 香林は四本の細い煙草を紙で包むと、それを一番下の引き出しに戻してしまう。

「そうか、香林……お前は私のためを思って行っているのかもしれないが、そのうちこの幻想郷からお前の売っている物を買う人間がいなくなるぞ…お前だって例外じゃないかもしれないぜ?」

「それは、今回の異変に関係があることなのかい?…ドッペルゲンガーとかが出てたらしいけど、それに手こずってるのかい?」

 さっき文に幻想郷の住人に危ないと伝えてくれと頼んだばかりであるため、香林はまだ異次元霊夢たちの存在を知らないのだ。

「ドッペルゲンガーの方がまだよかったぜ」

「……」

 私の言葉の意味がどういうことを指しているのかを彼は考えているのか、何も言わずに押し黙る。

 まだ私に例の物を渡すことを渋っている香林に私は言った。

「すぐにわかると思うがもうすでに村人の死人だって出てるし、それに、あまり長くない時間戦って紅魔館のレミリアが先日殺された…この意味が分からないとは言わせないぜ」

「……………。……わかった………これで何が変わるかわからないが、譲るよ。…ただし条件がある」

 香林はレミリアと戦ったことは無いが、戦っている姿を見たことはある。あいつの実力を全く知らないというわけではない。そのレミリアが殺されたと知り、渋々で条件付きではあるが譲ってくれるらしい。

「なんだよ、条件って」

 私が聞くと香林は両手の肘を机の上について顔の前で手を組むと、少ししてから静かに言った。

「使いすぎないように、一回使ったら…二回目使う時には三日以上の間をあけてほしい」

「なぜだぜ?」

 私が聞くと香林は引き出しから取り出した煙草を机に置いて、その説明を始める。

「それを説明するためには、これについて話さないといけない…このたばこには本来の嗜好品の効果は無い。火をつけたりする点は同じだけど、これには僕の魔力が込めてあって火をつけると煙と一緒に魔力が舞い上がる。それを吸い込んで肺に魔力が含まれる煙を送り込む。それが肺の中で血管内に吸収されて全身に送り込まれ、体内にある魔理沙の魔力を刺激して活性化。それによって攻撃力を強化するというものだ。これが簡単な流れになる」

 香林はそこで言葉を切ると、煙草を見下げて続けて呟く。

「でも、活性化と言えば聞こえはいいけど実際のところは他人の魔力を体内に取り入れて傷をつけ、それを治すために魔力が体を強化する…だから体に悪くないわけがない。わかるね?…だから、連続で使うことは避けてほしい。…一番は使わないことだ」

「ああ、…まあ…そうではあるが…使うか使わないかは奴ら次第だな」

 私が能力上昇の煙草をくれと香林に差し出すと、紙に包まれている煙草を机の上に置き、私の方に移動させる。

「それと…言い忘れてたけど、口で咥える部分にあるフィルターは取らないようにね」

 畳まれている紙を広げて中身を見ると、四本の普通の煙草と見分けがつかないマジックアイテムが入っていることを確認する。試しに匂いを嗅いでみるが、香林が言っていた通り本来の嗜好品の効果は無いのか、煙草特有の独特な匂いはせず、紙を畳んで香林に聞いた。

「なんでだ?」

「その吸い口部分のフィルターは、煙草でいうところのニコチンやタールなんかを少し抑える役目を持っているのと同じで、僕の魔力を過剰に吸い込むことを押さえるためについているんだ。それと、攻撃力を高くするためにこのマジックアイテムの煙草を同時に複数本吸って、その吸った本数分攻撃力を上げるなんてこともできないから、気を付けて…まあ、そんなことをしようものなら…」

「それはわかってるぜ、他人の魔力は基本的に毒だ。それを一度に大量に摂取する真似はしないぜ」

 紙を小さく畳んで煙草を包み、ポーチの内ポケットの中に忍び込ませた。

「それを使わないで異変が解決できるように頑張ってくれ」

 香林はそう言って私が渡した使えるものなのか、使えないただのガラクタなのか見分けがつかない物をかき集めて、店の奥の部屋へと持っていく。

「ああ、せいぜい頑張るとするぜ」

 私はそれに答え、博麗神社に行くために歩き出した。店を出ようとした時に奥の部屋から戻ってきた香林に呼び止められる。

「なんだ?まだなんかあるのか?」

「いや、大したことじゃない。譲れるものがあるかわからないし、君がほしいものがこの店にあるのかはわからないけど、欲しいものがあったりしたら言ってくれ、できる限り用意するよ」

 いつもの私の雰囲気と今の私の雰囲気が違うのを香林は感じ、なんとなく今回の異変で私が何かしらの形で関わっているということを察したのだろう。

「……ああ、ありがとう…頼りにしてるぜ、香林」

 私が言うと、いいさと呟いて彼はカウンターに戻り、椅子に座って読みかけの本を開いて読書を再開する。

 私は扉を押し開けて日差しなどによって、上がってきた気温で湯気に似た揺らめく陽炎ができ始めた外に出た。

「…」

 私は魔力で体を浮き上がらせ、今度こそ霊夢のいる博麗神社へと向かった。

 




五日から一週間後に次を投稿します。
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