東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第五話をお楽しみください。


東方繋華傷 第五話 分業

 どんな戦争でも、始まりはとてもあっさりとしていて、くだらない理由から始まるのが大体だろう。

 そして、私たちの平和だった日常をまるで豆腐の様に握りつぶし、バットで殴ったガラスの様に粉々に破壊する。

 平和というのは、命綱をしていない素人がする綱渡りのようなもので、ほんの少しでもバランスを崩しただけで崩壊するほどに、脆くて形だけのものだ。

 

 

「あんた……こんなに強かったのかしら?」

 服のあちこちに隠し持っている針を数本取り出して右手に持ち、右側の視界が血で赤く染まっているため、それを少しでも軽減させようと服の袖で拭うが、すでに目に入ってしまっている血は取ることができず、視界は赤いままだ。

「…霊夢が弱くなったんじゃないの?」

 多少の傷は追っているが致命傷とは程遠い傷しか負っていない幽香は、汗一つかいておらず、肩に傘を担いでこちらに歩み寄ってくる。

「お祓い棒さえあれば、今すぐにでもコテンパンにしてあげるわよ……!!」

 お祓い棒を霊力の作用で呼び出すこともできるが、呼び出して取ろうとしているうちにやられるか撃ち落されるのが関の山であるため、私は右手に握っている針を霊力で強化し、傘で殴りかかってきた幽香の攻撃をかわしながら、同時に反撃をする。

 しゃがみ込みこんで幽香の傘を避け、胴体や腕に当たらぬように正確に狙いを定め、それらよりも高い位置、顔に向けて針を投擲する。

 私の霊力で強化された針が頭部に当たれば、いくら最強クラスの妖怪といえども致命傷は避けられず、致命傷にならずともしばらくの間は戦闘不能で行動を起こすことができなくなるはずだ。

 しかし、頭部に刺さると思われていた針は幽香の顔に当たると、抉りこむ前に動きを止めてしまう。

「…っ!?」

 幽香が飛んできた針にかみつき、針の動きを停止させたことで自分に刺さらないようにするとは、驚いた。私の霊力が込められている針は触れただけでも多少のダメージを負わせるため、そうやってとるやつがいるとは思ってもいなかった。

 しかし、驚いてばかりもいられない。この位置は非常に危なすぎるのだ、この位置は幽香の射程だ。

「くそっ…!」

 小さく罵りながら後ろに下がろうとした私に、幽香は唸るような音を立てながら傘を何度も振るう。直撃はしなかったが、傘が掠ったことで右腕が大きく跳ね上がり、肩が外れそうになるほどの痛みが神経を通じて脳に伝わってきた。

「ぐっ…!!」

 後方に宙返りをするようにジャンプしながら懐から札を取り出し、下にいる幽香に向けて札を投げつける。

 霊力操作によって空気の抵抗で失速せずに、札は普通ではありえないほどの速度で幽香に飛んでいく。

 幽香は傘を開いて札から身を守ろうとするが私の狙いは別にあり、すべての札は幽香に直接は当たらずに彼女を囲うようにして地面に張り付いていく。

「束」

 最後の一枚が地面に到達して、すべての札の配置が完了されると同時に簡易結界を起動し、霊力操作で作られた鎖が札から現れて幽香の腕や足を縛り付け、幽香を地面に縫い付ける。

 霊力操作で空中に浮かんだまま、その高度の維持をしながら、辛うじて今のところは損傷のない神社の方向に手を向けた。

「……来い」

 幽香が動き出す前に呼び出すため、魔理沙がよくやるように魔法の発動の様に私が呟くと、もしもの時のために電池のようにお祓い棒内に貯めておいてある霊力が私の呼びかけに反応し、私に向かってくる。

 外でお祓い棒を呼び出すと、お祓い棒は私に直線的に向かってくるため、その間にある障害物をなぎ倒しながらやって来ることを意味する。

「…はぁ」

 物を迂回するなどという便利な機能はついていないせいで、張り替えたばかりの真新しい障子やずっと使ってきたタンス、襖などを突き破ってきたお祓い棒を見て、頭を痛めつつも幽香の方向を見直す。

「あら、せっかく私を攻撃できるチャンスだったのに、そんなことに時間を使ってもよかったのかしら?」

 幽香はそう言って、自分に巻き付いている霊力の鎖を引きちぎる。

「あんたなら、その程度の簡易結界は簡単に壊せるし、縛られる段階で傘を振るだけで結界そのものを破壊できるでしょう?……捕まってたふりをしたって無駄よ」

 私が手に馴染んでいるお祓い棒を軽く振り、軽く息を吐いて気分を落ち着かせながら握りしめて、幽香に言うとバレた、と言いたげに肩をすくめる。

「まあ、いいわ」

 幽香から強い力を感じ始め、本番はこれからだと言いたげに私を見上げ、私がいる高さと同じぐらいの高さにまで浮き上がってきた。

「……」

 状況はいいとは言えない。さっきまでいた魔理沙は援護しようとしてくれたが、幽香に撃った弾幕以上の弾幕で撃ち返され、どこかに吹っ飛んで行ってしまっている。

「それと、霊夢」

「…なによ」

 私はぶっきらぼうに答え、また額から流れ始めてきた汗が混ざった血液を手の甲で拭う。

 夏のこの暑さのせいで少しの戦闘ですでに汗が止まらず、塩分を含んでいる汗が傷口に沁みてヒリヒリする。

「そろそろ私の相手だけをしている場合じゃなくなってくるわよ」

 幽香が言いながら私から視線を逸らし、鳥居や周りに生えている木々の隙間から村の方向を見た。

「…っ……まさか……!?」

 私もつられて村の方向を見ると、小さく砂煙が村から舞い上がり始めたと思うとそれが広がっていくのが見える。

 家が崩れていき、その中に火を使っている家庭があったのか、黒い煙が立ち上り始めているのがこの位置からも確認できる。

「あんた…!」

 私が睨み付けるが、幽香は特に気にした様子もなく表情もないまま呟く。

「…別に、異変なんだから怒ることでもないでしょう?どんな手を使ってでも自分のやりたいことを成し遂げる、そういうものじゃない?」

 私は幽香の発言にいらだち、歯噛みする。一人では確実に手が回らない。村に向かってもいいが、村で暴れているのがどんな奴かもわからないため、不用意に相手にする敵の数を増やしたくはない。

 村で暴れているのが萃香などの鬼の中でもトップクラスに位置する奴ならば特にだ。一人一人ならば相手にできないことはないが、二人同時はさすがに厳しすぎる。

 しかし、そうして幽香のことばかりを相手にしていれば村の人間が一人残らず殺されてしまう。

 私がどうするかプランを練っているとき、私のことを呼ぶ声が聞こえ始める。

「……霊夢!」

 少し苦しそうな声で幽香の後方、鳥居のあたりから誰かが私のことを呼んだ。聞きなれているその声の主は、さっき幽香のレーザーで撃ち抜かれて吹っ飛ばされた魔理沙で、時間をかけて戻ってきたらしい。

 だが、戻ってはこれたが、案の定、魔理沙自身は無傷では済まなかったのは目に見えていて、レーザーで撃ち抜かれた体のところどころから血を流して、魔女の服を少しずつ赤く染めている。

 吹っ飛ばされたとき、地面に打ち付けたのか、木の枝などでひっかいたのか。頭から血を流してはいるが重症ではなさそうだ。

「霊夢!…お前は幽香を頼む!私は村に行って暴れてるやつと戦う!…分業ってやつだ!」

 血まみれの魔理沙は持っている箒に足をかけると、よろけながらも空を飛んで村の方向に向かって行く。

「あら…魔理沙一人で大丈夫かしら?…あの子一人ですべて倒せるのかしら?」

 幽香は飛んでいく魔理沙のことを見ながら呟く。

「確かに魔理沙はあんまり強い方じゃないかもしれないけど、それでも大丈夫よ……ちょっとやそっとで死ぬようなやつではないわ」

 私は霊力を操作して、途中半端に治しておいていた左手を完璧に近い形で治癒させ、幽香に言った。

「…それに、あんたのレーザーをもろに体に浴びたのに生きてる。それがその証拠よ」

 私は遠ざかっていく魔理沙に向けていた眼を幽香に向けると、彼女も魔理沙から視線を外して私を見る。幽香を見ていて、私はなんだか彼女に違和感を感じた。

「私が起こした異変程度ならまあ、やり切れるでしょうね…。……まあいいわ…それよりもあなたは目先のことを気にした方がいいんじゃない?」

 幽香がこちらに傘を向け、その先端から極限まで凝縮されたレーザーを私の顔面に向けて放ってきた。

 




一週間後ぐらいに投稿します。リアルが忙しいのです。
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