それでもいいよ!
という方は第五十一話をお楽しみください!
真っ白でわずかに光を放っていた一発の弾幕が瞬き爆発した。魔力を放出して相殺をしようとしたがこちらの出力が爆風の破壊力を下回り、予想以上に強い爆風に後方に吹き飛ばされた。
「うぁっ…!!?」
爆風の衝撃と火災で木の柱や壁が炭化し、壊れやすくなっていてそこを早苗と一緒に突き破り、外へと飛びだす。
足を爆風ですくわれたが今回は立っていた状態からであったため、空中で体のバランスを魔力などを使って立て直し、その状態を保って地面に着地した。
異次元早苗が追撃でこっちに突っ込んでくる前にそちら側にレーザーを放とうとすると左側から飛んできた棒状の物が頭にぶつかってくる。
攻撃かと体がこわばるが攻撃にしては威力がなさすぎる。それにその棒状の物からよくわからない液体が飛びだし、顔がそれで濡れてしまう。
顔を拭おうとした私はその液体のついた部分から、むっとむせ返る血の匂いが匂ってくるのに気が付いた。異次元早苗にレーザーを撃つのも忘れ、頭にぶつかってきて落ちて行く物を手を出して受け止めると、それは真っ白で血の気のない人間の左腕だった。
「うわあああぁぁぁっ!!?」
驚いて手に持っていた腕を落としてしまう。二の腕のあたりまでしかない腕の断面は刃物で切断されたというよりは、質量のある武器で殴られて衝撃に耐えきれずに千切れたか腕を掴まれて無理やり引きちぎられた。そんな傷だ。
つまり、これは咲夜と異次元咲夜の腕ではない。ナイフの切り裂いた断面ならばもっと綺麗だ。異次元霊夢かそいつと戦っている霊夢たちの中の誰かである。霊夢の腕ではないかと心配になるがその腕は彼女にしては手が大きく指の形も違う。何より少し筋肉質で妹紅の腕である可能性が最も高い。
「早苗、一度霊夢たちと合流しよう」
「お断りします。行くなら一人でお願いします」
私がそう提案するが早苗は考える仕草も様子も見せずにきっぱりと断る。そうしていると異次元早苗は私たちが通ってきた半壊した家の中に入ってきたらしく、ぱちぱちと焼けて乾いた木がはじける音に紛れて一定の間隔で木が軋む音が聞こえてくる。確実に奴の足音だ。
「だめだ、奇跡を起こす程度の能力で奴にダメージは与えられない。今向かって行っても絶対に負ける。だから今は退け、勝ちに急げば仇の前にお前が死ぬことになるぜ?」
顔にこびり付いてた妹紅の鮮血を拭い、肩から下げていたバックから閃光瓶とは違う瓶を取り出して、蓋の取っ手を掴んで瓶本体には触れずに異次元早苗がいるだろう民家の中に投げ入れる形で腕を振ると、瓶の蓋が取れて本体だけが飛んでいく。
気圧の高低で真空状態にある瓶内部に空気が流れ込み、中身の物質に反応して閃光瓶の時にはなかった大爆発が民家の中で起こる。
弾幕の爆発にはギリギリで耐えることができてはいたが、爆発は二回目とあって爆発瓶の爆発には耐えることができず、一部の壁と大黒柱を吹き飛ばしたらしく爆風が内側からわずかに家を膨れ上がらせると、屋根を支えるだけの支柱がなかったらしくそのままぐしゃりと潰れた。
これで少しは時間が稼げるはずだ。
「今のうちに行くぞ!」
私が走り始めようとするが崩れ落ちた家から早苗は離れようとはしない。
「私のことは放っておいてください。私は私でやるので」
「早苗、仇を取るのが大切なのはわからんでもないぜ。でも、確実に仇を取りたいのならば回り道をしろ。…勝ちを急げば、私たちが負ける!…だから今は退け、わかるな?」
立っている早苗の胸倉を掴んでそういうと彼女は恨めしそうな顔をして崩れた家の方を見ると、一部の屋根が破壊され始めた。
「…」
「それに、霊夢ならこいつに有効な攻撃手段を思いつくかもしれないぜ?正直なところ、私はお手上げな状態だからな…。…でも……さっきは強く言ったが、何か策があるのなら私の余計なお世話だったな」
いつまでも動き出さない早苗にそう告げて、掴んでいた彼女の胸倉を離して私は妹紅の腕が飛んできた方向に向かって走り出した。早苗はその場で異次元早苗が出てくるのを待っているのを見ると何か策がある、らしい。本当のところはわからないがな。
妹紅と霊夢は協力をして戦っていた、どちらかに会えれば必然的にもう片方にも会えるだろう。
家の壁であまり見通しがきかない。跳躍して屋根の上へと飛びあがり、正確な霊夢の位置を確認した。
屋根の上から見える前方に見える人影は2人で霊夢と異次元霊夢が向き合い、お祓い棒と針を撃ちあっているが妹紅の姿がない。私が異次元早苗の相手をしているうちにどこかに吹き飛ばされたのだろう。心配ではあるが不死身だし、彼女自身も弱いわけではないから大丈夫だろう。
私は見える範囲にいて戦っている霊夢に全集中力を傾け、援護にかかる。動いて戦う彼女らに合わせて自分の最も得意な距離間を保つ。
霊夢が踏み込み、異次元霊夢にお祓い棒を打ち込む。異次元霊夢はそれをはじき返して反撃へと移っていく。どちらも今のところは互角に戦っているように見えるが、異次元霊夢だけに限らないが、奴らはまだ隠し玉を持っている。そんな風に見える。
霊夢が後ろへと下がって異次元霊夢の攻撃に備えようとしているが、彼女の動きを読んだ私がレーザーを放つと、それが霊夢の足と足の間をすり抜けて異次元霊夢の踏み込んでいた右足を貫いた。
惜しい。足を貫いたように見えたが異次元霊夢が足を横にずらし、自身も横に移動していたらしく、目標から十センチ程度離れた場所をレーザーが通過する。
昼だったらレーザーの光は見えにくく、今の射撃は当たらなかったかもしれないが周りで燃えている炎と違う色ということもあってそれがよく目立つ。踏み込んでいる最中だというのにレーザーをかわした。本当に厄介な相手だ。
不意打ちだったと思うがこれはマイナスなことだけではない。さっきは押されていたが私が霊夢と合流したことで異次元霊夢の攻撃する手が弱まる。
それがあらわすのは下手に大振りで攻撃すれば私に貫かれるか、そうでなくてもレーザーをかわした隙で霊夢に攻撃を受けるから、下手に攻撃ができない。
そして、攻撃をすればやられると察知して攻撃の手を緩めたということは、私と霊夢が手を組んで戦うことが奴にとっては脅威と認識されたということに他ならない。
私と霊夢が脅威と異次元霊夢に察知されて奴が警戒を始めたということは初めは私たちの様子を見るはずだろう。全力で行っても防御に徹している異次元霊夢にダメージを負わせるのは難しいだろう。
ならば、こちらも異次元霊夢の様子を見てどういった戦法で来るのを見極めてその都度に対策していくのがいいだろう。だが、時間自体はあまりなさそうだ。後方の私が崩した家の屋根が粉々に破壊され、異次元早苗がその下から飛び出した。
前方にいる霊夢たちを跨いで数十メートル先で咲夜が異次元咲夜と交戦中だが、様子を見るにあまり好ましくない状況そうだ。接近戦はあまりやってはいないがそれでも咲夜の戦い方を見ていると冷や冷やする。あれではいつまで戦い続けられるかわからない。
両手に魔力を溜め、後ろと前方で戦っている異次元早苗と異次元咲夜に狙いを同時に定め、前後に向けている両手から凝縮させた魔力をレーザーに変換し、射撃した。
咲夜と早苗にレーザーが当たっていないことだけを確認し、異次元早苗と異次元咲夜にどう当たってどのように対処されたのか、などは見ずに私は屋根から屋根へ飛び移り、すぐに手のひらに溜めていた魔力を変換して射撃を行う。霊夢の首筋をスレスレで飛んでいったレーザーが屋根から斜めの角度となり、異次元霊夢の胸元に向かう。
霊夢に合わせた攻撃に異次元霊夢は右手に持っていた針をレーザーに向けて投擲、拳を握った左手で霊夢が振り下ろしたお祓い棒を殴る。
魔力の込められた針がレーザーを撃ち消し、拳が霊夢のお祓い棒をはじき返す。霊夢に小さな隙が生まれるが異次元霊夢はそれ以上の攻撃をしようとはしない。すでに第二射の準備が整っていた私に撃たれるとわかっていたからだ。
「鬱陶しいわねぇ…!!」
異次元霊夢が新たに出した針を私に投擲してくるが、霊夢が奴の腕を上から叩いてくれたおかげで私に直撃するはずだった針の軌道が下向きに少しずれる。
ほんの少しの角度ずれても距離が離れれば大幅なずれとなる。足元の屋根に突き刺さった針に込められた魔力が作用し、魔力が放出されてそこから爆発が起こる。手榴弾などのように破片でダメージを負わせるなどの類ではなかったが、爆発により肺が爆風で圧迫されて息が詰まる。
呼吸をすることがほんのわずかな時間できず、それに意識が向いてしまったことで足元に大きな穴ができていることに気が付かず、そのまま家の中へと滑り落ちてしまう。
「うわぁっ!?」
たった数メートルの高さから床に落ちただけだというのに、予想していなかったことが重なって床に打ち付けた肩が思っていたよりも痛い。
それでも痛がっている暇もなく、肩が痛むのも無視して爆発の余波で割れて、妹紅の炎に当てられたのか若干溶けたガラスがある窓から飛びだそうとした。
だが目の前に映し出された景色は、戦っている霊夢と異次元霊夢たちや燃えている家などではなく、絵具で塗りつぶしたような白が視界いっぱいに広がっている。
「…え…?」
幻覚でも見ているのかと思ったが違う、視界の本当の端っこには窓を乗り越えようとしていたときの内壁の塗装が見えている。目の前にあるのは、弾幕だ。
そう分かったとき、目の前の十数センチ程度の大きさがあった弾幕が十分の一以下の大きさに収縮して大爆発を起こした。
五日から一週間後に次を投稿すると思います。
読みづらかったら申し訳ないです。