それでもいいよ!
という方は第五十二話をお楽しみください!
鈍器で殴られるのと大差ない爆発の衝撃が頭に伝わり、意識がはっきりとしない。夢と現実の境界にいるようにぼんやりとした意識の中で民家の天井を見上げたまま私は倒れていた。
弾幕の爆発によって埃やチリなどが燃え、それ等の煤が顔にこびり付いているのか焦げた匂いがいつまでも鼻につく。もしかしたら私の顔が焦げているのかもしれない、そう思ったがそれにしては痛みが少なすぎるし、皮膚が焦げるほどの爆発の炎も発生していなかった。ということは、手加減されたということだろうか。
短い時間ではあるが時間をかけてようやく意識をはっきりさせた私は、倒れた状態から体を起き上がらせる。
爆発から身を守ろうととっさに手をガードに使ったが、特に指が無くなっているなどの問題はなさそうだ。
ぎゅっと手を握るが問題なく力を籠めることができ、私は立ち上がった。体を軽く動かしてみるが、頭から足の指先まで異常は無い。戦いは続行可能だ。
手先に魔力を溜め霊夢の援護に戻ろうとさっき出ようとしていた半壊した窓に向かおうとするが、家のいたるところから木の軋む嫌な音が聞こえてくる。
「………ん?」
嫌な予感がして上を見上げると、爆発には耐えたが自重に耐えられなくなった民家の屋根などが崩壊をはじめ、自分がいた位置の丁度真上に位置していた屋根の一部が崩れ落ちて数十キロはある柱が私に向かって落下してきた。
「ちょっ!?」
勢い良く振ってきた柱が床の板を突き破って地面に突き刺さる。前に飛びのいていたことで直撃することは避けられた。だが、今の柱が落ちたことに拍車をかけて民家の崩壊が加速していく。
早く出なければ屋根と地面に挟まれてサンドイッチにみたいになっちまう。足に魔力を籠め、少しでも早く走れるようにして走り出した。
今度は目の前に柱が落ちてくるがさっきよりも細い柱であり、それを叩き折ってそのまま走り続ける。軋む音が大きくなっていき、家を支えていた大黒柱が半ばからへし折れると支えを失った屋根が落下し始めた。小さい木片などは無視して屋根の重量で歪み、潰れ始めた窓から外へと飛びだした。
肩から地面を転がってジャンプの勢いを緩和させ、背中から足へと地面に触れている部分が移り変わり、足の筋力を使ってそのまま立ち上がると後方で民家が完全に潰れる音が聞こえてくる。
手先に魔力を溜め、霊夢の援護に戻ると金属同士をぶつけているのとあまり変わらない打撃音が何度も響き、そのたびに霊夢たちの周りにちびちってキラキラと綺麗な塵が周りを漂っている。
そこの中央で戦っている霊夢らの動きは、私が真似をしようとしたら手足が絡まってしまうだろうという動きと速度で動いている。二人の動きを見ていると次にどう動くのか予想ができなかったが、見る対象を霊夢一人だけに絞ると予想は容易くなった。
「霊夢、いつも通りに戦え!私が合わせるぜ!」
威力はだいぶ低くなるが速射をすることができる方式へと射撃を変え、異次元霊夢へと狙いを定める。
霊夢の戦う速度がいつも援護している時よりも早く、前進と後退、場所の入れ替えを繰り替えし、さらに左右にも動いていて一歩間違えれば霊夢にレーザーが当たることになる。
だが、私はこれでも霊夢とは十年の付き合いで、彼女とずっと一緒だったわけではないがそれでも一緒に修羅場を何度もかいくぐってきたし、死にそうになった経験も両手じゃあ数えきれない。それ故に霊夢の次にする攻撃は手に取るようにわかる。
レーザーを掌に溜め、霊夢の斜め上からの攻撃に対して私は異次元霊夢の足にレーザーを放つ。足にダメージを負えばのちの戦闘に支障が出る、異次元霊夢は足の位置をずらしてレーザーをかわしたが、足の位置をずらしたことで霊夢の攻撃に対して踏ん張りがきかずに体の体勢を崩す。
「ぐっ…!?」
異次元霊夢は霊夢に追撃させないつもりなのだろう。バランスを崩した普通なら考えられない体勢で針を投げつける。
上半身が後ろに傾いた状態だったというのに、異次元霊夢の投擲した針は霊夢の額へと一直線に飛んでいく。さすがは向こうで博麗の巫女をしていただけはある。
霊夢も少しだけ驚いた顔をしたすぐにその表情が消え、かわそうともせずに異次元霊夢へと突き進んでいく。
まあ、そうだろう。私が撃ち落とすからな。かわすなんて無駄な動きをしないのは当たり前だ。私が放ったレーザーは寸分の狂いもなく針のど真ん中を貫き、射線を大きくずらした。
霊夢に当たることなく飛んでいった針を見ることもなく彼女は走り、隙を見せている異次元霊夢の腹に二度お祓い棒を叩き込む。
「うぐっ!?」
異次元霊夢がうめいてさらに体勢を崩すがあの状況でも体を捻ってお祓い棒の攻撃をわずかに受け流していたらしく、倒れるほどではない。
私が今度は異次元霊夢の頭に向けてレーザーを放つと、レーザーを魔力で強化した右手の拳で打ち消された。破壊された魔力が霧散して消えていく。
私の攻撃は失敗したが、霊夢の攻撃までの時間稼ぎにはなった。霊夢が自分に向かってくるはずだった左手の拳を攻撃暖気に入る前に叩き落し、異次元霊夢の懐に潜り込む。
顔に一度、胸に二度、わき腹を打ち上げるように一度ずつお祓い棒を流れる動作で霊夢は打ち込んでいく。
「がぁぁっ!?」
さすがの異次元霊夢もすべての攻撃を受け流すことは無理だったらしく、わき腹に叩き込まれたお祓い棒によって後方にぶっ飛ばされた。
今までの敵ならここで勝負ありだっただろう。異次元霊夢はやはりその部類の奴ではなく、空中で立て直すと普通に地面に着地する。
有利に事が運んでいるのはいいことだが、何だろうかこの嫌な予感は…、今回は私たちが全力で力を合わせていて異次元霊夢も本気を出せないからだろうが、なんだか異次元霊夢の実力はこんなものではなかった気がするのだ。
ズザザッと地面についた異次元霊夢の足から二本の線が出来上がる。数十センチ後退したところでそれがようやく止まり、彼女は口の中で霊夢が殴ったことで出血したらしく血の混じった唾液を吐き捨て、殴られたわき腹を抑えて私たちを睨む。
「おいおい、睨むことは無いんじゃあないか?これが私たちの戦い方なんだぜ?お前だって自分が囮になっているうちに他の誰かを殺す作戦だったんだろう?私たちだってこれが作戦なんだ。今更2対1が卑怯だなんて言うつもりじゃあないよな?」
私がそう言うと異次元霊夢は口元を拭っていたが、口の端をニヤリと釣り上げて愉快そうに笑った。
「もちろんよぉ、卑怯だなんて言うつもりは全くないわぁ。だから、これも卑怯にはならないわよねぇ?」
異次元霊夢が手首に付けていた腕時計を見ると、上に向けて弾幕を一発だけ放つ。私たちは何が起こるのかと警戒をして構えるが、放たれた弾幕は数十メートル上空で音を立てて爆発する。
一見なんてことはないただの弾幕にしか見えないが、奴らは何をするかわからない。異次元霊夢を警戒するが特に目立った動きは無いように見える。攻撃が目的ではないということか?
「…」
周りの警戒も始めたころ、異次元咲夜がいた方向から物を破壊する音が聞こえ始める。他の連中を呼び寄せたということか。
私が思っていた通り、後方の早苗がいた方向からも壁などを破壊する音が聞こえてくる。私は霊夢に走り寄り、背中合わせに立って前方と後方を同時にカバーできるようにした。
数メートル先の民家の壁が突き破られ、白の巫女服と緑色の髪の毛が目に飛び込んできて、私は手先に魔力を集中させた。
後方からもさらに異次元咲夜が迫ってきているのか、壁を破壊する音がさっきよりも強く感じその破壊音が響いてきている。私は目の前に来ている異次元早苗に向けてレーザーを放とうとした。だが、木片に混じって見える異次元早苗の姿に違和感がある。
胸元にあったはずの古傷がない、彼女はこっちの世界の早苗だ。気が付くのが少し遅く、レーザーに変換していてあとは撃つだけという段階であり、そこから凝縮された魔力を元に戻すのはとても時間がかかる。私はレーザーを上空に向けて放つ。
危なかった。もう少し気が付くのが遅かったら早苗に向けてレーザーを放っていた。若干冷や汗をかいたが、こっちにまで吹っ飛んできた早苗を空中で受け止め、彼女が出て来た穴に向かって再度手先に溜めた魔力をレーザーに変換して放った。
姿は見えなかったが牽制程度の気持ちではなつと、異次元早苗の顔をスレスレで飛んでいき、当たることは無かったが奴に近づくとレーザーは勝手に魔力の塵となって消えていく。
「くそが…!」
もう一度異次元早苗に対してレーザーを放とうとするが、穴から出て来た早苗は私たちには攻撃することなく周りを回って異次元霊夢のそばに立つ。
「く…そ……っ!」
ボロボロの早苗は私の手を振りほどいて異次元早苗に向かって走って行こうとするが、奴らが何かをするつもりなのは明白で、振りほどかれないように早苗の手首をしっかりと掴む。
そうしているうちに前方の家から吹き飛ばされてきた咲夜を霊夢が受け止め、奴に向かって行こうとしているのを必死に抑えている。
「さてとぉ、それじゃあそろそろ時間だし帰るとするわぁ」
異次元霊夢は再度腕時計に目を落として時間を確認すると、私たちにそう言った。
「逃がすわけが、…ないでしょうが…!!」
擦り傷と銀ナイフの生傷だらけの咲夜が霊夢に抑えられていない方の手で銀ナイフを取り出し、私が脇の下に手を回して押さえつけている早苗は札やお祓い棒を構えていて、私と霊夢がいなければ奴らに飛び付いていることだろう。
だが行かせてはならない、なぜなら異次元霊夢の上空に飛ばした弾幕の合図で交戦していた異次元早苗と異次元咲夜は、相手を吹っ飛ばしてこちらにやってきた。そうするほどの余裕があったということだ。そんな奴らに今は突っ込ませちゃあならない。
「二人とも落ち着け、今行っても勝てないことぐらいわかるだろ!?」
私が二人に叫ぶが彼女らの耳には届いていないようだ。むしろ押さえつけている私たちにまで牙をむいてきそうな勢いだ。
奴らへの警戒も忘れずに異次元霊夢たちの方向を見ると、異次元霊夢が異次元咲夜に何かを呟く。すると、異次元咲夜の姿がふっと消え去った。
「っ!?」
時を止め手での移動をしたのだ。移動をしたというのならいったいどこに移動したんだ。周りを見ようとした私に霊夢の叫び声が聞こえてくる。
「…魔理沙!後ろ!!」
顔を横に傾けていた私の視界の端で何かが動く、異次元咲夜は押さえつけている早苗ごと私を後方からぶっ飛ばす。
とっさに早苗を掴んでいる手を緩めていたことで、早苗は私に少しだけ引っ張られるぐらいで吹っ飛ばされることは無かったようだ。
異次元咲夜は私を銀ナイフで切ったのではなく、思い切り蹴り飛ばしたらしく切られたとはまた違う痛みが私を襲ってくる。背骨が折れていないのが奇跡ではないかと思うほどに強い衝撃、意識が飛びそうになった。
「………っ!!!?」
叫び声などをあげれないほどで、いつもなら受け身を取るか魔力で体を浮き上がらせて体勢を立て直す余裕があったことだろう。だが後ろからの奇襲に違い攻撃でそれをすることができない。
前のめりになって霊夢たちと異次元霊夢たちの間に位置する当たりの地面に倒れ込んでしまう。起き上がろうとしても体が痙攣して思うように動いてくれない。
「っ……ああっ……!!?」
異次元霊夢たちがいる前方に意識が集中していて、後ろからという思いもよらない場所からの攻撃に防御する暇もなくモロに食らってしまった。
ようやく発せた言葉も意味を持つものではなく、背中からの攻撃だというのに胃などの内臓にもダメージが届いているらしく、胃から込みあがってきた血を我慢できずに吐き出すと、地面に真っ赤な液体が小さく飛び散る。
「ぐ…う……っ!」
背中の痛みが引かず、起き上がることもできない。後方から霊夢が私の名を叫んで走り寄ってこようとしているのを感じた。
私が吹き飛ばされたことで少しは冷静になったのか、異次元早苗たちに咲夜たちは突っ込んでいこうとはしない。
霊夢が私の近づいてきて私に触れようとすると、異次元霊夢が彼女に針を投擲し、近くに来れないように牽制をかける。
「魔理沙ぁ、さっき言ったわよねぇ?2対1でも卑怯だなんて言うなってぇ。ならぁ、これも卑怯にはならないわよねぇ?」
異次元霊夢がそう言うと小さく笑い、巫女服の内ポケットから何かを出してそれをつかおうとしている。
「何を…する……つもりだ…!」
出血が止まっていないのか、また血が胃の収縮によって押し出されて込みあがってくるがそれを抑え込み、地面に這いつくばっていた私はようやく立ち上がって異次元霊夢に言った。
「食らえばわかるわぁ…。楽しんでねぇ?」
小さく微笑んだ異次元霊夢は懐から取り出したスペルカードに魔力を流し込んでしまう。魔力を流す前なら破壊してスペルカードの発動を止められたが、少ない量でも流されてしまえば破壊した時点でスペルカードが発動してしまう。
「…くそ……!!」
立ち上がった私はすぐに異次元霊夢に向かって走る。魔力を流したスペルカードには流されている魔力とは違う魔力を流し、起動しているプログラムを不安定にさせて消滅させる方法がある。あることにはあるが、私がそれをする前に異次元霊夢は持っていたスペルカードを頭の上に掲げてしまう。
異次元霊夢がカードを握りつぶすと、そこを中心にして目に見える空振に似た衝撃波が発生する。そういう攻撃方法なのかと思ったが衝撃は無く、通り過ぎる。そして、異次元霊夢の頭の上にできたいくつかの光る球体が形成され、私に向かって飛んできた。魔力の強い凝縮が見られ、それらが持つ高エネルギーによって当たったら爆発するタイプの弾幕だ。
「っ!!」
手先に溜めていた魔力を分割し、光の球体を作り出してそれぞれから異次元霊夢が飛ばしてきた夢想封印によく似ている弾幕に向かってレーザーを放つ。
いくつかの球体を貫くとそれが爆発を起こし、周りの球体へと誘爆していき、私たちのところに到達した弾幕は無くなった。
「…?何を、したかったんだ…?」
奴が放ったスペルカードにしてはぬるすぎる。自分たちが帰るときに私たちを近寄らせないための弾幕だったのだろう。
爆発の影響で砂煙が舞い上がり、奴らの姿は確認できないがうっすらと薄くなり始めた砂煙の中で異次元霊夢の声が聞こえてくる。
「さあねぇ、まあぁ、死なないように頑張ってねぇ」
異次元霊夢はそう言うと異次元早苗と異次元咲夜を連れてどこかへと飛んでいく。何をしたかったのかは知らないが、奴らはまた来る。今のうちにダメージを与えなければ。
「霊夢!奴らを…」
追おう。そう言おうとした私の頭部へと強い衝撃が襲ってくる。首が千切れそうになるが、頭の動きに引っ張られるように体がついてきて辛うじて頭だけが飛んでいかずには済んだ。
地面に体のあらゆる場所をぶつけ、止まることができずにゴロゴロと転がっていく。敵がいなくなって完全に警戒していなかった方向からの攻撃に、どこからされて誰が攻撃をしたのか理解できなかった。
「がぁっ…!?…ああああああああああああっ!!?」
家の壁を何度も突き破り、何十メートルも転がってからようやく体に減速が感じられ、摩擦で体の進むスピードが下がり、完全に止まるために更に十数メートルの距離を転がった。
「ぐ…ぅ……っ…!!?」
殴られた側頭部から頭が割れそうで、手で頭を抱えて気を失わないようにうずくまったまま意識を保とうとするが、痛みが大きくなっていって意識が飛びそうだ。
「う…ぐぅ…っ……!?」
大量の魔力を頭に回し、残っているダメージに耐えられるように体をできる限り強化して意識を保った。
「…っくそ……!…なんだっていうんだ!?」
頭部の痛みが引き、頭痛のする頭を上げて自分が来た方向を見ると、誰が私を殴ったのかがすぐにわかった。
「……なん……で……?」
彼女の姿を見て私の頭の中は真っ白になって働かなくなってしまう。赤と白色の巫女服に、手に傷跡のないお祓い棒を握っている博麗霊夢が私に向かって得物を振り下ろしていたのだ。
五日から一週間後に次を投稿すると思います。
ようやく第二章の三分の一に行ったか行かないか、もう少し投稿ペースを上げたいですねぇ…