東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっちゃってます。

それでもいいよ!
という心の広い方は第五十三話をお楽しみください!


東方繋華傷 第五十三話 裏切られる

 ブオンと空気を唸らせたお祓い棒が私の頭部を正面からぶん殴り、吹き飛ばした。できる限り体を強化していなければ今の一撃で気を失っていたことだろう。

 頭を地面に打ち、足を木にぶつけて通りすぎていく木の木片や枝で腕などをひっかき、肩を壁にぶつけて破壊していく。

 ズザザザザッ!!

 全身を砂だらけにし、何度も地面に体を打ち付けた。博麗神社から私たちは来たが、その方向からしたら別方向に吹っ飛ばされ、村に比較的近い位置にある魔法の森の入り口にある木を何本かなぎ倒し、それらの枝や葉っぱなどにひっかがったことで大きく減速、ようやく体が地面の上で静止した。

「あ…ぐ……っ…!?」

 なぜ?という言葉が頭の中から離れない。霊夢が私に攻撃するなんて、ありえない。と、しかしその考えはすぐに否定された。

 彼女は私に一緒に戦って生き残ろうと言ったが、初めから一緒に戦うつもりなどが無ければありえない話ではない。

 異次元霊夢たちが去ろうとした時にすぐに攻撃を加えてきた。そのタイミングの良さから霊夢が奴ら側に寝返っているという可能性が一番高そうだ。

 霊夢に、裏切られた。私の全身を精神も含めて負の感情、いわゆる絶望によって包み込まれる。一番信頼して、一番信用していた人間が自分を裏切り、何の迷いもなく敵意を向けて来たのだ。絶望せずにはいられないだろう。

 絶望以外に悲しみで涙が目に溢れてくることもなく、裏切られた怒りで戦おうとする意志も湧き上がることもなく、どうしようもなくなり笑いがこみ上げてくることもない。体を地面から起き上がらせて、殴ってきた彼女の方向を見ていた私は、ただただ放心した。

「かはっ…!」

 込み上げてきた血を吐き出してしまい、足元の地面が赤く染まる。そして遅れて頭部への痛みがやってきて、頭の中で鐘が鳴っているように頭痛を感じ始めた。

 血を吐いて下を向いていたが顔を上げると、影が一つ突っ込んでくるのが辛うじて視認できた。暗闇でその姿は捉えにくいが突っ込んできているのは咲夜だ。

 彼女の両手に持っている銀ナイフが村で起こっている火災の光に反射し、オレンジ色に輝いているように見えたが、放心からまだまだ十分に立ち直れていなかった私は、咲夜に通り過ぎざまにぶった切られた。

「あっ…!?…がぁ…!?」

 わき腹が切り裂かれると血が傷口からダラダラとあふれ出し始め、抉り込む鋭い一撃に私は放心状態から我に返る。

 切られたわき腹をとっさに右手で押さえると、そこから漏れだしそうになっていた内臓をギリギリで押し返すことができたが、押し込んだことで痛みが発生し、強い電気でも流されている感覚で痺れてわき腹周辺の筋肉が痙攣をする。何かをしゃべることに意識を向けたら確実に意識が無くなることが何となくわかり、意識を保つことだけに集中して私はうずくまって地面に額をこすりつける。

「か…っ…!?…ああぁ……あ…ぐ……っ…!!」

 体を丸めてピクピクと痙攣している私の後ろから咲夜の足音が近づいてくるのを、無意識のうちに呻いていた私の声の合間に聞こえてくる。

 そうだとしても、今の私にできることなどは無い。迎撃しなければならないと頭ではわかっていても、傷を掴んでいない方の手には自然と力がこもって地面を掻き毟っていて、それを離させることもできない。

 咲夜が私の髪の毛を乱暴につかむと、髪が千切れるのや抜けるのもお構いなしに自分と同じ目線の高さにまで引き上げられた。

「いづ…っ!」

 足が地面から五センチほど離れ、足がブラブラと宙で揺れる。咲夜の掴む手を引き離そうとするが、腹を抑えている私の右手の上から魔力で形成されている銀ナイフを突き刺してくる。

「あぐぅ…!?…う…ぁ…っ……!!?」

 叫んだ私の顔に握った拳を咲夜に叩き込まれてしまう。殴られたのと同時に髪から手を離したらしく、頭に与えられた衝撃で頭が後ろに傾き、視界が上向きとなって追撃の動作を見逃してかわすことができない。

 ゴキッ!!

 左肩の位置に咲夜の蹴りがかまされ、吹き飛ばされて数メートル先にある木に背中から衝突した。空中でもみくちゃになってぶっ飛ばされていたため、銀ナイフが刺さっている体の方向が地面の方を向いていて、身体が落ち始めてきたころに受け身を取ろうとした。

 しかし、空中では体の自由というものはあまりきかず、地面に落ちるとわき腹に刺さっていた銀ナイフが土に押されて少しだけ体の内部に抉り込んできた。

「が…ぁぁぁっ……!!?」

 皮膚や皮下脂肪を貫き、胃などの内臓にまで銀ナイフが達しているらしく、生暖かくて胃液などと混ざり合ったのか粘調度のある血がこみ上げてきて、何度目か忘れてしまったがまた血を吐き出した。

 口の中が血と胃液の味で満たされて行って気持ち悪い、左手の袖で口元にべっとりとついていた血をぬぐい取り、血で濡れている銀ナイフを右手に持っている咲夜に向き直る。

「…」

 彼女に警戒したまま立ち上がろうとした私の耳に、咲夜が歩いてくる音以外の音が聞こえてきた。

 森の木々で音が複雑に何度も反響して方向はわかりづらいが、近づいてくる者の足音と草木をかき分けてくる音に合わせて少し右方向から誰かがやって来る。草木の間から私の見間違え出なければ緑色の髪に、暗くて確証はないが霊夢とは違うお祓い棒を持っていた。きているのは早苗だ。

 咲夜と早苗が同時とは言わないが交互にに襲ってきている。今の私では彼女らに十分に対処をすることなどできるわけもない。異次元の連中とは違って多少なりとも協調性はある。それもかなわない要因の一つである。

 肩から下げているバックから片手で、瓶の中で残っている閃光瓶を取り出そうとするが、走ってきている早苗の方が断然早い。

 走ってきていた早苗が急に木の後ろに隠れて姿を私から見えなくする。だが、早苗がしたかったのは隠れることなどではなく、彼女は目の前にある木を手に持っているお祓い棒でぶん殴った。らしく、木の幹がこちら側に大きく湾曲すると、木から地中に巡らせられている根っこが衝撃で引きちぎられ、土などが大量にこびりついている木が私に向かってぶっ飛んでくる。

 掌に溜めていた魔力を使い、最大出力のレーザーで三十センチ以上はある、回転して飛んできている木の幹を両断した。

 自分で殴った方が火力が出るというのに、わざわざ木を飛ばしてきたこの攻撃は陽動だ。私が木の幹の処理をしているうちに一気に近づき、後ろか横かわからないが攻撃する算段だったのだろう。

 両断した木の傍らが他の木にぶつかると、殴られて飛んできたとはいえ結構な速度だったらしく、粉々に砕けて木片が私に降り注ぐ。

 まだ少しだけ早苗が到着するまでの時間があり、咲夜の方を見ると立ち止まっていて、彼女は早苗の攻撃を邪魔する気はないらしく、腕組をして早苗が攻撃し終わるのを待っている。これは好都合だ。

 降ってきている木片に紛れて早苗が横方向から突っ込んでくる。早苗に正面から向き合って彼女の攻撃に備えようと右手を出そうとするが、右手は腹に縫い付けられていて正面に手を突き出すことができない。

 いつもの感覚で右手からレーザーを出して迎撃しようとしていたことで左手に魔力を送り出すことが遅れてしまう。左手に魔力を集めてレーザーを撃つのではなく強化するのに魔力を使うが、中途半端な上程で早苗のお祓い棒を素手でギリギリではあるが受け止めた。

 お祓い棒を受け止めた手の甲から、木の枝を折る乾いた音が空気を伝って外耳や中耳を通って鼓膜に届き、鼓膜を震わせて神経に伝わり、それが特定の音として認識される。骨が折れたらしい。感覚的に左手の小指のあたりの骨だ。

「ぐっ…!」

 右手を使って早苗を引き離したいが、今無理に右手ごとわき腹に刺さっている銀ナイフを引き抜けば、出血をせき止めている蓋が無くなり出血多量で間違いなく私は死に至る。その時間を引き延ばすためにも右手をこの傷口から離すわけにはいかない。

 だとすると、腕が圧倒的に足りない。早苗が私の手を弾き飛ばし、大きな隙のできていた私の顔にお祓い棒が叩き込まれた。鼻腔内の粘膜部分にダメージが入ったらしく、匂いに血の香りが混じる。しかし、振り切った一撃にしては軽すぎる。

 目を動かして早苗を見ると、一撃目が弱かったのは、体の体勢を崩させるのが目的だったらしく、次の二撃目はおそらく強烈な攻撃であるはずで、それを受けたらこの二人から逃げるのがさらに難しくなる。

 私は体の体勢が崩れたまま接近してきた早苗に手を伸ばして突き飛ばし、攻撃のモーションに入っていた彼女の予想よりも離れたらしく、振られたお祓い棒をかすめる程度にダメージを抑えた。

「…っ……くそ…!」

 それでもわき腹に刺さっている銀ナイフのせいで体が思うように動かせない。早苗を突き飛ばしたはいいが、体勢を崩している体を支えられることなどできず、地面に尻餅をついてしまう。

 振ったお祓い棒が半ば空振りとなっている早苗の怒りに染まっている表情が、目が見えた。怖い。今まで仲の良かった人物に敵意を向けらえることがここまで怖いことだとは思わなかった。

 正直泣き出したいところではあるが、泣いていればすぐに掴まり奴らに引き渡されてしまうだろう。それだけは絶対に嫌だ。

 頑張って、頑張って、最後まで頑張りぬいても死んでしまったのならば仕方がない。でも、裏切られたからと言って何もしないうちから匙を投げて泣いて、殺されれば私が生きてきたこの二十年間は本当に意味のないものになってしまう。そうならないためには私は戦わなければならない。

 私が何かをしようとしていると咲夜と早苗は感じ取ったらしく、それぞれの得物を構えて一緒に襲いかかって来る。だが、彼女らよりも早く動き出したのは私の方で、目を閉じて顔を背けつつ魔力で強化した閃光瓶を地面に叩きつけた。

 




一週間後ぐらいに次を投稿します。

できるだけこちらでも気を付けているのですが、見落としてしまって誤字があった場合には申し訳ございません。
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