それでもいいよ!
という方は第五十七話をお楽しみください。
最近忙しくて今回は中途半端になってしまいました。
「…っ」
体が痛い。その痛みによって無くなっていた意識が戻ってきた。そこで実感したことは自分がまだ生きているということだ。
目を薄っすらと開くと、ぼやけた視界でもカーテンの隙間から差し込んできている光が床を照らしているのが見え、それをまぶしく思うと同時に困惑した。なぜ、私は未だに自宅で倒れているのだと。
起き上がろうと体に意識を向けると、倒れる前と全く同じ体勢をしていて動かされた感じは無い。
「…」
ぼやけた視界の焦点が合わさって見えてきたのは、倒れる前と同じ光景でやはり場所が変わっていない。
「…どういうことだ…?」
私の居場所が変わらないということは、夜の間に霊夢たちは私の家に到着することができなかったということだ。
しかし、それはあり得ない。重傷を負っていた私を追わない理由も、彼女たちが私の家にたどり着けない理由もないからだ。
何がどうなっているのかさっぱりわからない。状況を整理するために体を起こそうとするが何時間もの間、動かしていなかった体の節々が痛む。机の上に置いてある置時計の時間を見ると、だいたい十時間が経過している。
これだけの時間の経過があったというのに捕まっていないということは、私は泳がされたということだろうか。連中が次に来るのが二日と半日後の予定だとして、私の引き渡しには余裕があって今は泳がしておこうということか。
いや、泳がせておくとかそういったものならば咲夜と早苗の追撃は無かっただろうし、私を殴ったときや切りつけてきたあの二人の表情、とてもじゃないが演技には見えなかった。裏切ったから申し訳ないとかそういったものでもない。異次元咲夜たちにぶつけるはずだった恨みをそのまま私にぶつけているといった感じだった。
なぜ私にぶつけているのかわからなくなるし、昨日はすべてが嘘で裏切ったというところまで考えたが、こうなるとそれも否定されたことになる。
私との関係を断つことで奴らに巻き込まれないようにした。と考えたがそれも違う。関係を断つのならばもっと効率のいい方法があるだろうし、そもそも、戦っているという中途半端なタイミングで関係を断つのは不自然だ。それに、戦った時点ですでに手遅れだ。
そうだったとしても、普通なら戦いが始まる前か後のはずで、何か違う気がする。そう考えているがどうしてもどこかで何かしらの矛盾が生じる。
私が気絶して目が覚めてからも自宅から運び出されていなかった時点で、それも大きな矛盾だ。もしかしたら、あの出血量では私が生き残ることができないと思ったから、追ってこなかったのだろうか。
いや違う。殺すことが目的ならば腹に刺さっていた銀ナイフは心臓か頭に刺さっていたはずだし、私を殺せば霊夢たちは異次元の連中の報復にあうだろう。それは避けたいはずであるため、おそらく殺すことはしないはずだ。自身は無いけど。
様々な矛盾があってそれを紐解きたいところだが、とりあえずはこの家からは離れなければならない。今まで来なかったとしても、これから霊夢たちがここに来ない保証はどこにもない。
起きたばかりで体に力が入りにくいが、腕で体を持ち上げてやると思ったよりも容易に起き上がることができた。倒れた場所が場所なだけに、床で長い時間寝ているのと変わらない状態で疲れているのだろう。
まあ、それはどうでもいいや。
昨日やろうとしてできなかったボロボロの服を脱ごうとしたが、地面を転がったり切られたりしたせいで糸がほつれて絡まったり穴が開いたりして脱ぎにくい。
無理やり引っ張って服を脱ごうとすると音を立てて裂けてしまった。やってしまったと私はため息をつく。
今着ていない魔女の服も含めてこれらは私が魔女であるということを象徴する衣類で、中々のお気に入りでもある。あとで縫い合わせるという手もあるが、あいにくだが私はそんなに裁縫が得意な方ではない。
数秒間考えたが裁縫で服を縫い合わせる時間も、裁縫道具を持ち運ぶだけのスペースなども鞄にはない。勿体ないが仕方がない、以前に破けたりした服と同様に捨てるとしよう。
無理やり魔女の服を脱ぐとさっきよりも派手な音を立てて脱根が裂けていき、どことどこが繋がっていたのかすらもわからなくなり、捨てるとは決めたが名残惜しくて酷くなければ治せるかと思っていたがやはり無理そうだ。
「はぁ…」
他の人が聞いたらその人のテンションまで下げるぐらい大きなため息をつき、手に持っていた魔女の服をゴミ箱の中に押し込んだ。でも、もうすでに入っていた服に押し返されてゴミ箱に入りきらなかった脱ぎ捨てたばかりの服が床に落ちた。
タンスまで移動をして扉の取っ手を引き開けると、蝶番が少し錆びてきていたのか耳障りな擦れる音がする。
香林に今まで来ていた服が小さくなってきたと相談をしたら同じデザインの物を用意してくれたが、まさかこんなに早く使うことになるとは思ってもいなかった。
真新しい魔女の服を三着分タンスの中から取り出し、そのうちの二着をできるだけ折り目のつかないように小さく畳み、鞄の隅に潜り込ませる。
しっかし、服を多めに貰っておいてよかった。これだけあれば異変を解決するのに足りるだろう。
下着もいくつか入れてあとは私が着替えればいいだけなのだが、肩や腹部などから流れ出ていた血に含まれている鉄に酸素が結びつき、茶褐色に変色している血痕が体のいたるところについていて、さすがにこのまま服は着たくない。このまま服を着たら着替えた意味が無くなってしまう。
本当ならシャワーを浴びてから着替えたいがそんな暇はない。仕方ないが濡れたタオルで体をふく程度はしてから服を着るとしよう。
体を拭くためのタオルを出すためにタンスの引き出しの中からバスタオルと、それよりも小さい長方形のタオルを取り出し、下着類もまとめて持ち運んで台所へと向かった。
ある程度のスペースが確保されている机の上にバスタオルと服を置き、小さいタオルだけを持ってシンクに向かい、蛇口のハンドルを捻る。
蛇口から冷たい水が流れ出し、その流水にタオルを浸して全体に水が行きわたったところで流水から離し、余分に含まれている水を捩じって絞り出した。それを広げて体についている茶色い血痕を拭い取る。
私の腕力は魔力で強化しなければ平均的な成人女性のそれを下回る、そのためタオルをきちんと絞ったつもりであったが、しっかりと水気を取ることができていなかったらしく、体にタオルを押し付けるとそこから絞り切れていない水が溢れ出し、重力に従って水滴は体を伝って床へと落ちて行く。
拭き始めは白色のタオルだったが、酸化した血痕を拭くたびに茶色く染まっていってしまっている。
銀ナイフなどの切り傷で裂けている下着も脱ぎ、胸や局部にもこびり付いている血を拭きとってから、机の上に置いておいた乾いたバスタオルで体についている水分を拭きとった。
シャワーを浴びたりするよりは綺麗にはならないが、あまり贅沢も言っていられない。バスタオルと同様に机の上に置いていた下着を身に着け、魔女の服を着る。鞄を肩にかけてここを出る準備を完了させる。
「…行くか……」
そう一人で呟くが、すぐにそれに対する疑問が浮かぶ。どこへ?という疑問だ。あてもなく動き出しても一人では遅かれ早かれやられてしまう。
もし、私のことを裏切っているのが霊夢たちだけなら、アリスが私に力を貸してくれる可能性は無くは無い。まあ、それは博麗の巫女だけでなく幻想郷自体を敵に回すといっても過言ではないため、極めて確率は低いだろう。
彼女が例え敵だったとしても、居場所を知られてしまうというデメリットはあるが、敵や味方、戦いに干渉をしない人物というのがわかる。そう言ったことからアリスのもとへ行くことにしよう。
「…」
できるだけ足跡を残さないために昨日自宅に帰って来た時と同じく、体を浮き上がらせて蹴り開けられて壊れているドアから外に出た。
五日から一週間後に次を投稿すると思います。
忙しくなければ早まることもあるかもしれません。