東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいよ!
という方は第五十九話をお楽しみください。


読みづらいなどがありましたら言ってください。できる限り読みやすいように頑張ってみます。


東方繋華傷 第五十九話 忘却

 妖々夢異変の時から大分時間が経って妖夢も剣術の腕を上げたと聞く、あの時と同じようにとはいかなくても、ある程度は戦うことはできるはずだ。

「こんなところでお前にやられるわけにはいかないんでな…。押し通らせてもらうぜ、妖夢」

 妖夢から一度距離を取り、全身に魔力を巡らせて強化を済ませる。特に目の動体視力を強化し、高速で動く刀を捉えるために斬撃に備えた。

「……」

 妖夢が構えている刀がどう動かされても、それに対処ができるように下半身に力を込めて、手先に魔力を送ると手のひらの辺りが淡く光り、こっちの準備は完了した。

「無視かよ…まあ、こんな挨拶の仕方からしても、もともと私とはしゃべる気もないって感じか…」

 妖夢はそれすらも返事をせずに無視すると私に動きを読ませないようにするためか、抜いていた刀を腰に提げている鞘に納めると、その状態で柄に手を添えて動きを止める。抜刀術だ。

 いや、これは私に刀の軌道を読ませなくする為じゃない。抜刀術はある意味では攻撃に特化してはいるが、自分から攻撃をする剣術ではないからだ。

 抜刀術は相手の行動を読み、一撃目を受け流して敵が二回目の攻撃をする前に自分が攻撃を行う。いわゆるカウンターというやつだ。

 私が戦闘体勢に入ったことで妖夢はどういった行動をし、どういった攻撃をして来るのか様子を見たいらしい。今までに何度も殺し合いではなかったが戦っていて、どうやって私が闘うのか知っているはずではあるが、足元をすくわれないようにするためだろう。だが、こちらの都合を考えれば好都合だ。

 抜刀術は原則として心を静めて攻撃を待たなければならない、それは攻撃をされるということが大前提であるということが言える。

 妖夢に対して攻撃をしなければ、抜刀術を行おうとしているうちは私が攻撃されるという心配はない。そのうちに距離を離して逃げることができる可能性もあるだろう。だが、思い出さなければならないのは、妖夢が一番初めに私に向けてやってきた攻撃についてだ。

 確か、私を見て初めに攻撃してきた方法は抜刀してから構えて切りかかる。ではなく、抜刀術での攻撃だった。彼女が本来の抜刀術の基本となる、待つという形でそれを使用しなければ、話は変わって来る。

 じりっと後ずさりをした私に向かって、彼女は地面の土を巻き上げることなく滑るように走り寄り、もう一度抜刀。足元を水平に薙ぎ払うのではなく、下から斜めに振り上げられる斬撃が繰り出される。

 左足の脛から右足の膝が両断される軌道であり、動きを止める気だ。どうやらどういう形であっても私を生け捕りにしろということらしい。生きてさえいればいいということは体にどれだけ損傷があっても、異次元の連中にとっては価値は変わらないということだ。

 私は地面を踏みしめて足に力を込めてジャンプし、地面すれすれからかち上げられた刀の刃を右足は躱すことができた。だが、右上がりに振られているため左足の方が高い位置にいなければならず、そこでわずかに遅れてしまったことで足を切り裂かれたり、両断されることは無かったが、靴の底を少しだけ削がれた。

 それが自分の体の肉じゃなかっただけましといったところか。かわすのがギリギリで冷や汗をかいたが、まだ戦いは始まったばかりだ。こんな攻撃を後何度かわせばいいんだか、一瞬でも気が抜けないな。

 今度は上へ勝ちあげた刀を下へと振り下ろす。当たれば頭には当たらないように右腕を肩から削ぎ落される。腕を失えばどう戦っても有利には戦えないが、私は右利きであるため利き腕を失えば一時的に戦闘能力の大幅な低下が予想される。

 地面に降りてから左側へと逃げたのでは遅すぎる。足から魔力を放出してそれを硬化させ足場を形成、そこに着地と同時にしゃがんで刀の到達までの時間稼ぎをしつつ、左側へと移動する。

 これでもだいぶ急いだ方だが、二の腕の辺りを浅くではあるが楼観剣で抉られてしまった。攻撃が思ったよりも速い、かわすのが精一杯で彼女に攻撃をし返す暇がない。

 やはり彼女に合わせて戦っていたのならばこちらの身が持たない。また、攻撃をしてきている彼女へ掌を向け、レーザーとして撃つのではなく魔力をそのまま放出した。ジェット機などと同じように魔力を噴射し、そこから推進力を得て距離を置く。

 彼女は魔力で刀の射程を少しだけ伸ばしているため、振り上げたり振り下ろしたりといった行為によって木の枝や葉っぱが切られ、妖夢から距離を取った私にまでパラパラと降って来る。

 落ちてくる木の枝を払いのけ、再度手のひらの中に魔力をため込んでいつでも放てるようにした。十メートルほどの距離を取ってはいるが、素早い妖夢に対してはこの距離は全く安全ではない。

 その証拠に私が払いのけた木の枝が地面に落ちて行くよりも早く、彼女は私の目の前にすでに走り寄ってきている。動き出すのは私が木の枝を払いのけた後だったというのに、その素早さに舌を巻かされる。

 だが、戦っていた中で少しだけ彼女の速さに目が慣れてきたのだろう。魔力をエネルギーへと変換し、突っ込んできている妖夢の眉間へ向けてそれをぶっ放す余裕がある。逆を言えばそれしか余裕はないということにもなるがな。

 彼女に命中すると思われたが、妖夢は手の中に隠し持っていた魔力が込められて、起動しているスペルカードをエネルギー弾へと投げ込んだ。スペルカードがエネルギー弾の形容しがたいエネルギーの四散音とともに砕けて破壊され、スペルカードが完全に起動した。

「断命剣『瞑想斬』」

 楼観剣の周りに妖夢の魔力が集まり、私がよく足場などに使っているような朧げなものではなく、高密度で硬く、切れ味のある本来の刀よりも一回りも二回りも大きなブレードが形成された。

「りゃあっ!!」

 魔力の刃でコーティングされている楼観剣が頭上から振り下ろされた。このままでは巻き割りのように頭の頭頂部から股間までを綺麗に一直線にぶった切られてしまう。このスペルカードは斬撃に特化しているスペルカードであり、それぐらいなら容易なはずだ。

「くっ…!」

 魔力で刀の大きさだけでなく長さも二倍で、後ろに下がったとしても全く同じ結末を迎えるだろう。ならば受け流すか、奴に近づくしかないだろう。例えば、刃のある部分よりも内側とか。

 魔力を高質化させたことでわずかだが楼観剣の重量が増え、それによって妖夢の刀を振る速度が少しだけ遅くなる。そのうちに走り出すために体を前のめりにすると、足の裏が横を向け、手でやったときと同じように魔力をそこから放出する。霊夢の速力とまではいかなくても、かなりの速度で彼女へと突っ込む。

 体を妖夢に対して右側へ少しだけ寄せ、伸ばした左手で妖夢の楼観剣を握っている手の甲を殴る。彼女らほどの腕力を出せるわけではないが、軌道の角度を変えるぐらいはできるはずだ。

 私が殴ったことで覆っている魔力で大剣と変わらないような大きさになっている刀が、まっすぐではなく斜めに振り下ろされ、軌道を変えることには成功した。

 だが、やはり魔力で強化したといっても普段は近接攻撃をせず、とっさで強化が上手くいっていない私の腕力では軌道をわずかに変えることが精々で、刃のない領域に入る直前で左肩に魔力のブレードが抉り込んだ。

「うぐっ!?」

 魔力で左肩を余計に強化しているとは言え、楼観剣はあっさりと肩へと到達してしまっている。もう少し妖夢が刀に力を籠めれば腕が肩ごと体から引き離される。体に刀が抉り込む不快感と、肉体を切られる鋭い痛みが同時に襲ってくるが、私は歯を食いしばって耐え、ブレードのない領域へと突き進んだ。

 組織を破壊されたことで血が滲み、左側から嫌な血の匂いが漂ってくるが、無理やり体を前方に投げ出したことで刃の内側にある妖夢の懐へと潜り込んだ。そして、右手に溜めていた魔力をエネルギー弾としてわき腹へと発射する。

 カードを使用した際の、スペルカード特有の型にはまった攻撃による体の硬直により、今の妖夢は隙だらけだ。魔力で体を覆っているらしく、それに触れるとエネルギー弾が火薬や爆弾の爆発とは違う、エネルギーの放出による爆発が起こる。そこから爆発のエネルギーだったものが運動エネルギーとなって彼女の体に移り、後方にぶっ飛んでいく。

「があっ!?」

 下から斜め上への物理的な運動エネルギーによって、妖夢の体が前方で宙を舞っている。さっきと同じ方法で魔力での加速をしつつ、彼女へと跳躍する。

 魔力を掌ではなく握った拳の前方へため込み、妖夢がやったように高密度で硬質化させ殴りかかるが、それを察知している妖夢は体の方向がいつもとは上下逆で、頭が地面の方向を向いて足が上を向いている状態だというのに、魔力で作った足場に空中で器用に着地した。

 魔力によって二倍以上の太さがある楼観剣を無理やり鞘に納めると、ブレードの役割をしていた魔力が剥がれて役割を失い、空中に結晶として霧散する。

 攻撃に合わせて抜刀術を使うつもりらしい。だが、抜刀術を使ったとしても私には当たりはしない。

 妖夢は私を生かして捉えなければならず、殺すことはできない。それは常に戦いにブレーキがかかっている状態で、手加減をして戦っているということだ。ということは、真剣勝負だというのに本気で戦えないということであり、刀を振る速度にも影響が出る。霊夢たちの攻撃に比べればそれは遅すぎる。

 殴りかかると彼女はそれを抜刀した刀で受け流し、そのまま切りかかってくる。だが、殴った手を引っ込めながらも私はもう片方の手を突き出し、こちらの拳の先にも集めておいた妖夢と同じ高密度の魔力で硬質化させたもので楼観剣に正面から打ち合わせた。

 ように見せた。正面から本当に打ち合ったのでは硬質化した魔力でも削られて、この肩の傷と同じように切りつけられてしまう。そこで、抜刀術と同じく、刀の攻撃を高質化した魔力の上を滑らせて受け流す。

 受け流したとしても切れ味のある楼観剣の刃によって削られている魔力が割れたガラス片のように飛び散った。だが、拳に痛みは無く、無傷で済んだ。

 そのうちに高質化した魔力をエネルギーに変換し、再度に渡って妖夢にエネルギー弾としてぶっ放した。

「ぐぅっ!?」

 今度は上から下への押し出すように働いた運動エネルギーによって、地面に背中を打ち付けて彼女は転がっていき、そのまま倒れ込んだ。だが気絶したわけではない。すぐに起き上がって楼観剣を構える。

「妖夢…お前は買い物帰りなわけであって、戦うためにここに来たわけじゃない…だろ?…だからロクなスペルカードも戦いの準備もできてない。…だから、今回はこのまま勝ったやつも負けた奴もいないってことにしないか?…私はお前とは戦いたくはない」

「……。なんなんですか?」

 私が予想していた返答とは違う答えが妖夢から帰って来る。その先で何というのか耳を傾けていると彼女は一拍の間をあけて言った。

「あなたは、何なんですか?」

「…、何が言いたい?どういう意味だ?」

 質問の意味が分からないが、妖夢はこの異変には今までは関与していなかったため、断片的な情報しか持ち合わせていない。だから、私が本当に向こうの世界の人間だったのかどうかを聞いているのだろうか。私がそう言うことなのかを聞こうとした時、彼女は言った。

「なんで、私の名前を知っているんですか?」

 それを聞いた途端に、私の頭の中は真っ白になった。

 




もしかしたら早まることもあるかもしれませんが、五日から一週間後に次を投稿すると思います。
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