それでもいいよ!
という方は第六十三話をお楽しみください。
これから忙しくなるため、一話一話が短くなるかもしれないです。
そうなった場合、申し訳ございません。
治療を始めて十数分後、ようやく肩の出血が収まった。それはとてもよかったのだが、どうしようもないレベルのミスを犯し、問題に直面してしまっているところだ。
治療をするにあたって例の回復薬を薄めることもできないまま原液で使用したのだが、細胞の活性化が強くて体温が予想よりも上昇した。それが心地よい温かさで寝不足が合間って眠ってしまった。
なんとなく寒気がして目が覚めたとき、目を開けると私が入ってきた木の根の間を通して、早苗と目がった。
寝起きで判断が遅れ、立ち上がろうとした頃すでに早苗は魔力が凝縮したボール状の強力な弾幕を一発だけだが放っている。
じっくりと狙いをつけて放ったらしく、顔に当たる一歩手前で辛うじて体を覆っていた魔力に反応し、凝縮された魔力が一気に拡散した。
凝縮された魔力の膨張によって押し出された空気が衝撃波となって、木の内側にある土と私の全身を叩く。
「あぐっ!?」
爆破の破壊力に木の根と土は当然ながら耐えられるわけがなく、爆発の衝撃と私がぶつかったことにより、木の内側から外に吹き飛ばされた。
木の内側にいたから周りが暗く感じていたのかと思っていたが、外も変わらないぐらいの明るさで、私がどれだけの時間眠っていたのかがわかる。見つかるはずである。
それに雨が降っているときたもんだ。降り始めてから大分時間が経過しているのか、周辺には大きな水たまりができていて背中からその中に落ちた。
ばしゃりと水が跳ねて服が濡れてしまう。そこからさらに沁み込んできた雨水が下着にまで及んでしまい、冷たい。
弾幕を放つと同時に走り出していたらしく、倒れた私が起き上がろうとした時には早苗の陰が目の前に迫っていて、足首を掴まれた。
振り払おうと体を捻って回転させようとしたが、それよりも早く持ち上げられて見えている視界が反転する。
早苗を軸としてぶん回され、斧を振り下ろすように地面に叩きつけられた。泥水が跳ねて、顔やお腹付近を濡らす。
足から頭の先までに存在するあらゆる間接に遠心力の負荷がかかり、特に全体重を片足のみで支えなければならず、掴まれた足から痛みを感じる。
振り払おうとするならば体を捻るために反動をつけなければならず、そうしている間にまた早苗にぶん回されてしまう。ここは早苗に直接攻撃をしなければならない。
そう思っていたが今度は横方向に回されてしまった。早苗が足首を掴んでいた手を離したらしく、近くの木にめがけて投げ飛ばされた。
「がはっ!?」
背中を強打し、背中側からお腹側へその鈍痛がじわじわと伝わって来る。そのまま地面に体が自然と落ちようとした直後、早苗の拳が腹に叩き込まれた。
「かっ…!?…ぁぁ…っ!?」
体を魔力で覆って弾幕に対しては防御していたが、物理的な攻撃から守るために身体の強化をするつもりという段階だったため、早苗の強化された拳が腹部に抉り込んだ。
激痛に叫び声などは出なかった。パクパクと口を開けたり閉じたりしていた私の顔を彼女は掴むと、木の幹に押し付けた。
「あなたは向こうの世界の人間なのでしょう?私たちを襲う目的は何ですか?」
腹部の痛みで質問に答えられない私は彼女の腕を掴み、離させようともがけがもがくほど顔を掴んでいる手に力がこもっていって、力を抜いた。
「早く答えてください。喉を潰した覚えはありません」
腹部に当てていた手と顔を掴んでいた手を離すと、私の両肩を掴んできた。そのまま体を引き寄せられ、わき腹に早苗の膝蹴りが見舞われた。
「がぁっ…!?」
今回は身体の強化をしておいたおかげで、ダメージはさっきよりも軽く済んだ。しかし、それでも大きなダメージには変わりはない。
胃が収縮して内容物を吐き出そうとするが何も食べていなくてよかった。そうでなければここで胃の中身をぶちまけていたからな。
私は蹴りを受けて前かがみになっていたのを利用して、早苗の腰にタックルを食らわせたが、足腰に力を込めていたのか倒れるには至らない。
早苗は私の背中にお祓い棒を叩き込むと、体勢を崩したところで髪の毛を掴み、持ち上げながらお祓い棒を顔面に叩き込んでくる。
「うぐっ!!」
顔が傾き、体が投げ出されそうになるが何とか踏ん張り、身体を強化して早苗に向けて拳を振り抜く。
しかし、腕を下からかち上げられ軌道がずれた。全体重を乗せて殴りかかっていたことで、彼女に突っ込むことになり、隙だらけとなった胸にお祓い棒を叩き込まれた。
「かぁっ…!!」
早苗は近づいてくると私から見て後ろから前に足を払った。地面から足が離れ体がわずかな時間空中に浮かんだ。
そのうちにまた顔を掴まれると、地面に向かって勢いよく叩きつけられた。
頭がガンガンと痛み、頭を押さえようとするが早苗に手を弾かれてしまう。歯を食いしばって痛みに耐えようとしていると早苗が暇を与えずに語り掛けてくる。
「勢いあまって殺してしまう前に答えてください」
そう言われても困る。奴らの目的が私の何かだろうということはわかっているが、その理由がわからない。それを言ったところで信じられることは無いだろうし、知らないといってもそれを証明することはできない。
「…」
覗き込んできている早苗がしてきた質問をどう答えるか悩んでいると、彼女は私の体の上を跨いで立ち止まると、言った。
「まあ、それについてはどうでもいいです。…本題はここからです。目的があるということはそれに向かって行くためのプランがあるはず。これからどういう流れで誰を襲って行くのか。そして、向こうの世界にいる私の居場所をいいなさい」
早苗はお祓い棒を握りしめた。
「あなたが直接手を下したわけではありませんが、私は大切な人を奪われました。だから手段を択ばないことにしたので、言えないなどの理由があろうが知ったことではないので、悪しからず……早く言った方が楽になれますよ」
「ああ、そうかよ。一つ助言をしてやるとしたら、私情を挟まない方がいいぜ。弱みに付け込まれる」
「そんなことは聞いていませんよ…!」
早苗がお祓い棒を振り下ろそうとする直前に、魔力で強化された閃光瓶を早苗の前に素早く突き出した。それが何なのか把握していない彼女は私から飛びのいて離れた。
「ここでお前にボコボコにされるわけにはいかないし、お前とは戦いたくはない…だから逃げさせてもらうぜ」
早苗には疲弊されては困る。こんな意味のない戦いは今すぐに終わらせなければならい。
殴られている間に口内詠唱で何とか作っておいた魔法を、閃光瓶の表面に移して早苗に向かって投擲する。
回転して飛んでいく閃光瓶の表面に移しておいた魔法が、早苗にぶつかるよりも先に起動。魔力で描いた魔方陣が淡く光ると小さな爆発を起こし、瓶を砕く。
耳をつんざく爆音と、絵具をぶちまけたような白色の閃光が二人を包み込んだ。
五日から一週間後に次を投稿すると思います。
何かアドバイスがありましたら、気軽にいつでもどうぞ。