東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいよ!
という方は第六十七話をお楽しみください。


東方繋華傷 第六十七話 三度

 様々なものが燃える焦げた匂いが鼻につく。そう思ったころには最後にいつ見たかは覚えていないが、また夢の中にいた。

 水の中を漂っていた私が向いていた方向にある人里の中で爆発が起こっている。衝撃波が起こった後に、真っ赤な炎が立ち上っていき、爆発で崩れた家から埃や砂塵が舞い上がっていく。

 数百メートル先での爆発だというのに、石や木片が私のいるところにまで飛んできていて、水に落ちると水面に波を立てる。

「はぁ…はぁ…」

 夢の中での私は息を切らしていて、水の中に漂ったまま息を整えるのかと思ったが、爆発があった方向とは別の方へと泳ぎ出した。

 岸までは二十メートルとちょっとだ。いる場所が小さい湖でよかった。川なら流れがあってろくに泳げなかったはずだ。

「っ!?」

 何かを感じたらしく、小さい手で水をかき分けて進んでいたが上を見上げた。

 誰が弾幕を撃っているのかはわからないが、球状の弾幕が雨のように降り注いでいる。急いで逃げようとするが後方で爆発が起こり、その爆風にあおられて岸まで一気に吹き飛ばされてしまう。

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 爆風によって空中でグルグルと体が回転し、上下が逆さに左右も前後も逆になってしまう。受け身なんて取れる体勢ではない私は地面に叩きつけられそうになる。だが、その寸前に木の葉っぱや枝にひっかがった。

 動いていた体の速度が減速し、その方向が横から縦へと切り替わる。細い木の枝では体を止めることができず、地面へと転がり落ちた。

「あぐっ!?」

 地面に落ちたことで体の至る場所を打ち、息を吸い込むことができなくなる。頭が混乱して無理に息を吸い込もうとするが、さっきから弾幕を撃ってきている奴らがこちらに進んできているのが見えた。

 のんきに息を吸っていたのでは、爆発する弾幕に巻き込まれてしまう。

「っ!」

 私が飛ばされた方向が木々の深い林で助かった。苦しくて頭がくらくらしているが、地面を蹴って幹の太い木の後ろに体を投げ出して隠れた。

 耳を塞いでいたが、頭のすぐ横で大太鼓を鳴らしているような爆音が塞いでいる鼓膜を叩き、衝撃波で飛ばされてきた石ころや砂を頭からかぶってしまう。

 むせ返りそうな土煙の匂いにせき込んでことで息を吸い込むことができたが、衝撃波でまだ頭が痛い。

 爆発で千切れた葉っぱがひらひらとたくさん舞い落ちてきているが、それでも葉っぱは生い茂っているため私の正確な位置をきちんと把握できていないらしい。通り過ぎてもなお林を爆破している。

「……っ…」

 体にこびり付いた砂を叩き落とし、私を爆破してきている連中とは別の方向へと走り出した。

 だが、この小さい手足ではいつも以上に異様に進む速度が遅く、ばてるのも早い。

「はぁ…はぁ…!」

 どこか宛があるのか、夢の中の私は迷うことなく走っていくが、もしかしたら宛がないため闇雲に走っているだけかもしれない。

 全力で走っていたのか息がすぐに上がり、走る速度がガクンと落ちる。それでも何分も走っていたが、本当に走れなくなってきたのか立ち止まりせき込んでしまう。

「…?」

 肩を大きく上下させて息を整えていたが、何かに気が付いたのか近くの木の後ろに隠れた。よく聞くと自分以外の荒い息遣いと悲鳴が聞こえてくる。

 気の後ろに隠れていると悲鳴と逃げている足音が段々と近づいてきて、私のいる場所のすぐ真横に二十歳もいかぬ女性が倒れ込んだ。

「っ!?」

 驚きで悲鳴を上げそうになったが、喉に舌が張り付いて声が出なかった。でも、それで助かったといえる。

 帰り血まみれで震えている女性の、恐怖に凍り付いた瞳と目が合った。何があったのかはわからないが、恐怖だけは私に伝搬した。

「来るな!やめろっ…!!」

 そう叫んでいた女性の足を誰かが容赦なく右手で掴んだが、それは私と同じような人間の手だった。親指の付け根に小さな古傷があった。

 もの凄い力で掴んでいるのか皮膚の色が変色し、木の枝が折れる音がしたと思うと普通なら考えられない方向へ足が折れ曲がる。

「あああああああああっ!!」

 痛みと恐怖で女性の返り血で汚れている顔が涙と鼻汁でぐしゃぐしゃになり、明らかに人間離れした力を見せた手は、女性のことを引っ張って行く。

 泣き叫んでいる女性の姿がすぐに木の陰になって見えなくなるが、絶叫だけが響いていて木々で反響してあらゆる方向から絶叫を聞いているようだ。

 そんな声をいつまでも聞いていたら頭がおかしくなりそうで、耳を塞ごうと手を動かそうとすると、骨が折れる音と肉が引き割かれる音が同時に耳に届いた。

 絶叫が嘘のように収まり、静寂だけが周りを包み込む。女性は空中で殺されたのか血が滴る音が嫌に響いている。

 妖怪の感覚は人間よりも鋭いため、気が付かれないように私は震える手で口を塞いで息を止めた。

「~~っ!!」

 ガタガタと震えている私には妖怪は気が付いていないのか、クスクスと笑い声を漏らすと、地面に女性を下ろしずるずると物を引きずる音を立てて遠ざかっていく。

 女性から流れ出た血の匂いが漂ってきて、その匂いに私は胃の中の物を吐き出しそうになった。

 だが、今は女性を殺した妖怪がまだ近くにいる。離れるまでは我慢しなければならない。私は口を押えて胃が変形して、体内の内容物を吐き出そうとするのを抑え込んだ。

 土を踏みしめる音と考えたくもないが、人間を引きずる音が聞こえなくなったところで、私は四つん這いになって地面に嘔吐した。

「うぶっ……っ…おええええっ!?」

 事前に食べ物を食べていなかったらしく、出て来たのは透明で粘着質な酸っぱい胃液だけが口の中からしたたり落ちていく。

 胃の収縮がしばらくしてから収まり、息が絶え絶えになっていたが吐いた場所から少しでも離れたくて、別の木の幹によりかかった。

「何で…こんな、ことが…?」

 自然と涙が溢れ、地面を見つめていた視界が涙でぼやけていく。泣いてしまうのも無理はない。声からして今よりも若い子供の時で、そんな子供が目の前で起こっていることに耐えられるはずがない。

 流れた涙を服の裾で拭っていると、いきなり声が聞こえて来た。

「何でって、それはあんたのせいじゃない?」

 私がパッと顔を上げると、懐かしくも憎くもある赤と白が主に使われている巫女服の女の子が、目の前に立っていた。

 そいつは、こんな状況だというのに、楽しそうに笑った。

 

 

 そこで夢は途切れてしまう。私はその先が知りたかった。自分が原因を作ってしまったことはもう知っている。だから、なぜというところが知りたかった。

 夢から現実へ意識が引き寄せられる感覚、目が覚めそうになる寸前にそれが止まった。しかし、意識だけははっきりしていて、どういうことだと考えていると見え覚えのない何もない空間に立っていた。

「ここは…?」

 周りを見回すと、後ろに紫が立っていて目が合った。夢にしてはリアルだなと思っていると彼女が話を始める。

「今、あなたの夢の中に能力でお邪魔させてもらってるわ」

 境界を操る程度の能力を持っている紫だからできることだろう。しかし、なんでまた夢の中なのだろうか。

「何で夢の中なんだ?」

「私のせいでもあるけど、あなた忘れたの?咲夜たちに掴まってあの手この手でいろいろやられたでしょう?」

 紫に言われるまで忘れてしまっていたというよりも、思い出したくなかったのだろうが、気を失う前のことを思い出した。

「ああ、そういやそうだったな…」

 気を失っていて周りの状況はわからないが、咲夜たちが情報をあまり吐いていない私をそう簡単に捨てるとも思えない。

 紫が私のことを起こさないようにしてくれているおかげで、起きた私が咲夜たちに会うのを避けさせてくれているのだろう。

「それで、どうしたんだ?」

「夢の中だと時間の流れが大きく違うし、できるだけ手短に話すわ」

 紫はそういうと続けて私の返事を聞かずに言った。

「連絡手段を作っておいたわ。あなたの居場所を常に把握できるわけではないから、バックの中にスキマの性質を持たせた物質を入れておいたわ」

「それを持ってたらなんだっていうんだ?」

 紫のしたいことがよくわからないため、その意図を聞いた。

「まあ、発信機付きの無線機みたいなものよ、基本的には貴方の居場所がある程度わかって、魔力を流せば会話ができる。そんな感じかしら」

 紫が情報を持ってくるのにわざわざ待たなくてもいいというのは、中々良いな。

「へえ、そりゃあ便利なものだな。でも、大丈夫なのか?それを奪われるなんてことがあったとして、スキマで繋がっているお前の位置を逆に特定される可能性は無いのか?」

 思いついた疑問を彼女に投げかけてみた。

「それなら心配ないわ」

 紫はそれしか言わないが、大方私以外の人間が触れればそのスキマの機能を失うように魔力が施されているのだろう。

 それなら紫の位置を特定されることは無いだろう。そう彼女と話していたが、少し気になることがある。

 私が紫にこの場所に連れてこられた時点と、そのまえでだいぶ長い間夢を見ていた。現実ではかなりの時間が経過しているのではないだろうか。

「そういえば、現実ではどれだけの時間が経過しているんだ?」

「私がここに来ようとしてる時点で一日が経過してたけど、侵入サウルまでに時間がかかったから一日半は経過してたと思うわ。こうやって話してるだけでもかなりの時間は経過してるだろうけどね」

「なあ、それって…もうそろそろ奴らが来るんじゃないか?」

 私がそう聞くと、彼女はため息をついてそうでしょうね、と呟いた。

「……。ああ、そうださっきは咲夜たちが来たから言えなかったが、霊夢たちには私の名前を教えないようにしてくれ」

「わかってる。そのつもりだったから」

 その言い方、やはり紫も危惧しているのだろう。この三度目になる奴らの襲来によって、異次元の連中が元々いた人物を殺して成り替わっているという可能性を。

 身内の一つ一つの言動や情報などから、敵が紛れ込んでいるのなら割出そうという考えらしい。

 敵もバカではないだろうから、かなり大変だろう。

 それより咲夜が近くにいてはこのまま眠り続けるしかない。私が動くには紫あたりに手伝ってもらうしかないだろう。そう提案しようとすると、紫は何かを感じ取ったのか眉をひそめた。

「どうしたんだ?」

「奴らが来たようね」

 実感がなかったが、時間の流れが遅いこの夢の中で本当に一日以上が経過しているらしい。

「あなたが今から起きるのに約三十分は時間が進む。だから今から起きてもらうわね。起きる頃には咲夜も連中のところに向かってるはずだから」

「わかった!紫は場所の特定を頼んだ!咲夜たちを援護するために私もそこに向かうぜ」

 そういうと紫の姿が消え、私も夢の中から現実へ向かい始めた。

 三十分の時間のロスは痛すぎる。全力で飛行すれば二十分で幻想郷のどこにでも向かうことができる。

 一分の時間も私は経過していないように感じるが、紫の言う通りおそらく三十分は時間が経過しているはずだ。

 目を開くとベットを仕切るカーテンは広げられておらず、周りからよく見えるようになっている。全身、特に左腕に疼痛を感じた。

「痛っ!?」

 何気なく動こうとした時に痛みを感じ、ポロッと声が漏れてしまう。近くに咲夜がいなかったとしても、永琳が警戒して鈴仙あたりを見張らせているかもしれない。

 だが、部屋の中には誰かの気配はしない。目だけ動かしてみるが見える範囲では誰も病室にはいない。

 体を起こして見るが、寝ていたときに見えなかった範囲にも人はいない。休憩中なのかは知らないが今のうちに永遠亭を出た方がいいだろう。

 病衣を脱ぎ捨て、ベットの隣に設置されている机の上に置かれている鞄を取り寄せた。中から魔女の服を取り出し、いつもと同じく着込んだ。

 治療の後でキチンと血をふき取ってもらえていたらしく、体から血の嫌な臭いはしない。鞄の中にあったものが無くなっているとかもなく、探すなどの手間はなさそうだ。

 瓶やミニ八卦炉もあるし、香林から貰った隠してある煙草もある。

「…良し」

 数分かけて病室から出る準備を完了させ、逃げようとした。

 まるでタイミングを計ったかのように異様な威圧感が私を包み込み、一ミリすら動けなくなってしまう。

「うそだろ…」

 20分もあれば幻想郷のどこにでも行けると思っていたが、まさかここに来るとは。

 座っていたベットから逃げ出そうとすると、薄暗い窓の外に赤い人影が揺らめいているのが見えた。

 白色の塗装がされている木の壁に大きな亀裂が入る。部屋側に亀裂が入った部分から盛り上がり、亀裂はさらに拡張していく。

 壁に入った亀裂で窓に今までにない圧力がかかり、砕け散った。

 そして、盛り上がった亀裂の入っている壁に、爆発系の弾幕が放たれたらしく爆発を起こした。

 爆発の炎が砕けた木片の奥に見え、その炎の膨張で生まれた衝撃波が木片をこちらにまで吹き飛ばしてくる。だが、それが私に飛んできている段階で当たることは無い。

 私も衝撃波で舞い上げられて後方に吹っ飛んでいるからだ。

 壁に背中を強打し、骨がゆがむ嫌な音が体の中を伝わって耳に届く。痛みに耐えることはできても立っていられず、ズルッと床に崩れ落ちてしまう。

 床に崩れた私に向かって、大小さまざまな木片が降り注いでくる。

「っ!」

 顔を手で隠して木片が目に入るのを防ぎ、爆発した壁の方を見ると大きな穴が開いていている。

 爆発で作られた大量の転がっている瓦礫を蹴飛ばしながら、博麗霊夢が部屋に入ってきた。

 そいつの左手には、私の右手にある古傷と似た傷がある。こっちにいる霊夢と顔がうり二つの異次元霊夢は口を歪めて笑う。

「捕まってるようだから助けに来てあげたわよぉ?」

 彼女は舌を唇に這わせ、クスクスと笑った。




次の投稿は一週間後ぐらいにできたらいいなと思います。(多分無理です)

期待しないでゆっくりと待っていただけたら幸いです。
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