それでもいいよ!
という方は第六十八話をお楽しみください。
ケラケラと笑い、私に近づいてきていたが異次元霊夢はその歩みを止めた。
爆音で耳鳴りがしていて周りの音が聞こえていなかったが、閃光瓶などのように耳の鼓膜が破れそうになるほどの爆音ではないからか、すぐに耳の調子が戻ってくると異次元霊夢が歩みを止めた理由が把握できた。
ドカドカと木の床を蹴る音がたくさん聞こえている。今の爆音で誰かがこちらに向かってきている。
「お前…っ!」
こいつ、私を助けるに来ることでこっちの住人に異次元霊夢たちにとって助けに来られるほどの人物だと認識させ、敵じゃないと霊夢たちを言いくるめて味方にさせる可能性を潰してきた。
この状況。弁解の余地は無いだろうな。たまたまでは言い訳できない。
どこから来たのか知りはしないが、現れた異次元霊夢がたまたま迷いの竹林を見つけて、わざわざ迷いの竹林を抜けてきて。
そしてたまたま破壊した壁が私のいる病室で、眠っていた私の目がちょうどよく覚めていたと、たまたまにしてはできすぎだろう。
異次元霊夢が手を正面にかざした。その先にあるのは私ではなく、扉を向いている。誰かが開いてきたところを狙っているのだ。
球状に凝縮された魔力には爆発系の性質が感じられ、ドアに向かってきている人物たちを一網打尽にするつもりだ。
私が立ち上がろうとしていると鉄の扉が開け放たれ、ウサギの付け耳を頭部に付けていて赤い瞳の人物、鈴仙が飛び込んできた。
彼女には人間の波長が見える。人間というよりは生物だが。それのおかげで霊夢と変わらない顔つきの人物を見て普通なら敵と迷うところだが、波長の違いで全く人物だと一目で判断した。
指の形をピストルを模した形にし、それを手のひらを向けてきている異次元霊夢へと向けた。
魔力が凝縮するとその半分に硬質化の性質と形状変化とその維持が使われ、残りの半分は正面方向に対する速度が使われている。
私や霊夢達が使っている魔力の中に含まれている魔力のエネルギー的放出でダメージを与えるのではなく、硬質化した弾幕を高速でぶつける攻撃。一番わかりやすいのでは銃などと同じ原理での攻撃方法だ。
鈴仙と異次元霊夢が弾幕を撃ちあう前に、私は鈴仙に向かって飛び込んで突き飛ばした。鈴仙の指先から発射された弾丸の弾幕は大きく軌道をずらされ、天井を貫く。
「鈴仙危ない!!」
「なっ!?」
対して異次元霊夢の弾幕は鈴仙の胸に向かって進んでいたが、私が付き飛ばして軌道からずらしてやり、そのまま後方へと鈴仙に当たることなく進んでいく。
私が見えない位置から飛び付いたため驚いたらしいが、弾丸を放った手とは逆の手で握られていた拳で顔を殴られてしまう。
体勢が倒れかけているというのに、中々威力の高いその衝撃と威力に頭がクラリと来そうになったが、鈴仙のことを無理やり床に伏せさせその手は絶対に振りほどかれないようにした。
鈴仙が私の押さえている手を離させようとするが、後方で頭を殴られているのとそう変わらない轟音と衝撃が響いた。
「~~~~~~っ…ぁ………っ………ぁ…っ!?」
「………ぐっ…!?」
耳を塞いでいなかった私と鈴仙のうめき声が薄っすらと聞こえる。その彼女と目が合うと困惑が入り混じった瞳をしている。
やはり鈴仙と一緒にウサギたちも騒ぎを聞きつけて向かってきていたらしく、異次元霊夢の爆発系の弾幕で何人か怪我をしたらしく、濃い血の匂いが漂ってくる。
いや、この濃い血の匂いは怪我をした程度ではすまないレベルだ。確実に一人以上は死んでいるはずだ。
飛び散った破片で鈴仙に怪我がないことを確認するが、鈴仙は依然として戸惑いを隠せない目線を向けている。なぜ私を助けたのだと。
答えたとしてもどうせわからないだろうし、地面に押さえつけていた鈴仙を開放しようとした時に、肩を掴まれた。
しまった。倒れ込んでいる時間が長すぎた。
そう考えている頃には指が服越しに皮膚に食い込み、後ろにひき寄せられてそのまま投げ飛ばされた。かかとが何かにひっかがり、空中ででんぐり返しをした私はお腹から地面に落ちてしまう。
とっさに目を閉じてしまっていて見えなかったが水道管が爆発で破壊されたのか、顔のすぐ近くにあった腕で、受け身を取るために床に手を付くとピシャリと水が跳ねた。
いや違う、この異変で何度も嗅いできた水ではありえないほどの血の匂いが、異常なほどする。
目を開くと異次元霊夢の放った弾丸で、背中の肉が丸ごと抉れていて死んでいるウサギが倒れている。そこから流れ出て、できた血だまりに手を付いて倒れ込んだのだ。
「うっ…!」
ウサギの体は腰のあたりが抉れていて、体内の圧力で漏れ出した真っ赤な小腸と大腸。それに破れた横隔膜の奥に見える様々な臓器を直視してしまった。
胃が動くのが感じられ私は喉の奥を締めて、胃の内容物が食道を逆流するのを防いだ。
目を閉じて顔を背け、気持ちを落ち着かせようとするが脳裏にべったりと張り付いたウサギの死骸は、中々頭の中から消えていかない。
ようやく胃の動きが収まり始めようとしている私を置いて、鈴仙が立ち上がり異次元霊夢と対峙した。
服についている汚れを叩き落とし、顔を上げて異次元霊夢を睨み付けているが、彼女は目を閉じて深く息を吸い込んだ。
息を吐き出すと彼女は戦いへと意識を切り替えたらしく、恐ろしい形相で異次元霊夢を睨み付けるとファイティングポーズを取った。
身体強化の魔力が鈴仙と異次元霊夢の全身を覆い、強化された筋肉が皮膚の下で脈打っている。
異次元霊夢は不適というにはほど遠い、狂気の笑みを浮かべると霊夢に破壊されたはずのお祓い棒を握りしめて鈴仙に更に近づいていく。
そして、二人の距離が一メートルを切り、鈴仙の構えている手から三十センチ程度に接近したと同時に二人が動いた。
実際には異次元霊夢の方がコンマの差で早く動き出しているが、私の目には同時に動き出しているようにしか見えない。
異次元霊夢の唸るお祓い棒が鈴仙の頬をかすめ、鈴仙の拳は手で受け流されてしまっている。
お互いに大振りの攻撃ではなく小回りの利く攻撃だったのか、いる位置は変わらずに手を引いて殴る前と同じ体勢へと戻る。
今のやり取りで鈴仙は異次元霊夢の実力をなんとなく察したらしく、さっきよりも緊張して険しい顔つきで息を吐く。
異次元霊夢のお祓い棒が掠った額から、薄っすらと血が滲んでいて鼻の横を伝って血が落ちて行く。
今度は異次元霊夢だけが動き出し、お祓い棒を横から薙ぎ払うが動いてもいない鈴仙には掠りもしない。
鈴仙の能力など等に知っているだろうし、戦ったこともあるのか霊夢は特に驚いた様子もなくお祓い棒を構え直す。
狂気を操る程度の能力は波長を操る程度の能力とも言え、異次元霊夢と自分の距離感を操って攻撃が当たらないようにしたらしい。
鈴仙は殴りかかるにしては、不自然に手首を捻った状態で異次元霊夢に殴りかかる。
普通ならば少し体をずらす程度でかわせる攻撃を、異次元霊夢は大げさに体を傾けてかわした。
異次元霊夢は体のバランスを崩しかけるが、許容範囲内だったらしく更に殴りかかってきている鈴仙にお祓い棒を振り上げる。
おかしな体勢でされた攻撃で重症になるほどではないが、お祓い棒を胸に叩き込まれた鈴仙は私が寝ていたベットへと突っ込み、反対側に転げ落ちていく。
転げ落ちた鈴仙は左手で殴られた胸を押さえながら右手を銃の形にし、ベットの下から異次元霊夢の足に向けて弾丸の弾幕を放つ。
私のいる角度からならその行動が見えるが、異次元霊夢の頭の高さからは見えないはずなのに地面を蹴ってジャンプするとその弾丸をかわした。
たまたま攻撃するタイミングと被ったのかは知らないが、そうだとしたら運のいいやつだ。
物体が超高速で空気中を突っ切る音とそれが壁にぶつかり、穴をあける音がほぼ同時に耳に届く。
木の板から弾けた木片が地面に落ち始めようとしている頃には、異次元霊夢は天井に着地をしている。天井に使われている板を踏み込みでたたき蹴り、ベットの陰にいる鈴仙をベットごと叩き潰そうとした。
だが、鈴仙がベットから異次元霊夢までの距離感をいじくったらしく、異次元霊夢は途中半端な位置でお祓い棒を振るい、空を切る。
タイミングをずらされた異次元霊夢は魔力調節で体勢を整えるのと、足場の形成でベットに向けて跳躍し、ベットを踏みつぶした。
魔力強化されている人物からの踏み込みに木でできたベットが耐えられるはずもなく、本体を支えている四つの棒が折れるとベット全体が床へと落ちる。
掃除はしていて清潔ではあるが、布団が破れたらしくそこに入っている羽毛などがほこりなどの代わりに舞い上がる。
鈴仙が潰されてしまったと肝を冷やすが、彼女はそれよりも前にベットの下から飛び出していた。倒れている不利な状況を変えるために立ち上がり、右腕の羽織っているブレザーを突き破って出現していた仕込み刀を構えた。
異次元霊夢と位置が入れ替わる形で二人は対峙していたが、鈴仙は握りこぶしを作っていた右手の人差指と親指をまっすぐに伸ばし、銃の形を作る。
そして、それをこちらに向けてきた。私は銃口を向けられ、少しだけ体が委縮してしまう。戦っている状況などではなく、ただ普通にやられただけならば怖いことなど何もない。だが、彼女が放つ弾幕の威力は既にそこの壁で立証済みだ。
「どういう形かは知らないけど、この子はあんたらにとっては大事な存在だってことはわかった。少しでも動いたら頭をぶち抜くわよ」
手をあげたくなるが、動いてはいけない対象が私も入っているならば、その行動すらも撃たれかねないため、立ち上がる最中の四つん這いの状態で私は動くのをやめた。
「そぉ、やられるものならやってみたらぁ?」
異次元霊夢が鈴仙に余裕で挑戦的な笑みを向け、舌を突き出して挑発する。
鈴仙はこんなちゃちな挑発には乗らないだろう。だが、赤い瞳がわずかに細まり口元がいら立ちを隠しきれずに歪む。少し冷や汗が出た。
鈴仙の指先にはさっきと同様に、硬質化した魔力と前方方向に最高速度で飛ぶ性質を持つ魔力が集まり、異次元霊夢は体に魔力を巡らせて身体強化を施している。
足を肩幅に開いた異次元霊夢から、身体強化以外の魔力を感じた。それは本当に微弱で、戦いに手中している鈴仙は気が付いていないだろう。電波のような感じで性質的にはスイッチをオンにする、といった感じだ。
何のスイッチを入れるつもりだろうか。
そうしていると今度は別の魔力を感じた。下方向に向かう微弱な魔力だ。鈴仙や異次元霊夢から感じているのではない。彼女らがいる位置よりも、感じている魔力の座標は少しだけ高い。
天井を見上げてみると、そのタイミングで天井にくっ付いていた棒状の何かが込められていた下方向に向かう魔力に乗っ取って動き出し、その真下にいる鈴仙の肩や腕に突き刺さった。
「なぁっ!?」
降ってきた棒状の物は、霊夢もよく使う妖怪退治用の針だ。いつからそこにあったのか。
おそらく異次元霊夢がベットの下にいる鈴仙から弾幕の攻撃を受けた際、ジャンプして天井に着地していたがその時に天井に投げつけていたのだろう。
私は驚愕した。魔力にこんな使い方もあるのかということに。受容体としてあらかじめ魔力を設置し、消える前にそれに反応する魔力をぶつけて起動させるとは…。
鈴仙は予定していなかった別方向からの攻撃に、指先にあった弾幕をその場に維持できず私に向けて弾幕を放った。
しかし、腕などに突き刺さった妖怪退治用の針によって腕の筋肉が緊張し、指の向きが少しだけ横にずれた。
額の真ん中に標準を合わせていたが、その僅かなズレでさえ距離が離れれば大きなものとなる。
頬を弾丸が掠り、血とわずかな皮膚と肉片が飛び散る。掠った頬に弾丸の運動エネルギーが分散し、顔が頬の方に少しだけ傾いた。
しかしまずい。魔力の使い方だったり鈴仙に打たれたことばかり考えてもいられない。
異次元霊夢は体を強化して構えていた。そして、彼女は鈴仙から向けられていた注意を針へとほんの少しの時間向けさせた。
それだけの時間があれば、数メートルの距離移動できないはずがない。次にあるのは鈴仙への致命の一撃だろう。異次元霊夢は王手をかける気だ。
それはさせない。
どう動くか考えるよりも先に体が動いた。目の前にある内臓がこぼれているウサギの死体を、血で滑らないように気を付けて跨ぎ、走り出す。
同じく鈴仙へと向かっている異次元霊夢と目が合い、私は手先に魔力を集中させた。鈴仙は私が走り出しているのが見えたからか、弾幕を更に放ってきた。
太ももを弾幕が貫くが、骨には当たってはいない。まだ走れる。
貫かれた足で床を踏みしめると、耐え難い激痛が襲ってくる。体から力が抜けそうで、倒れ込みそうになるが歯を食いしばって走り続けた。
異次元霊夢の腕とお祓い棒に身体強化と硬質化の魔力が集中している。これを今の鈴仙が食らうのはまずい。だが、鈴仙のことを手で突き飛ばしているのでは、そのうちに殴られてしまう。
少々乱暴だが、異次元霊夢の攻撃を食らわせないようにするのには、プランを二つ用意した。
一つ目のプランAで上手く行ってほしいが、手先に溜めていたレーザーを異次元霊夢に向けて放つ。
しかし、それを読んでいた異次元霊夢は体をかがめてレーザーをかわす。これでは足止めにすらならない。
プランBだな。
「すまないが、少し痛いぞ鈴仙!」
撃たれた足で地面を踏ん張り、痛みをこらえて反対側の足を突き出す。三度私に弾幕を撃とうとしている鈴仙を蹴り飛ばした。
弱く突き飛ばしたとしても鈴仙の位置をずらせず、異次元霊夢の攻撃を受けてしまう恐れがある。強く蹴り飛ばしたが意外と強すぎたようで、彼女の顔が痛そうに歪む。
でも、蹴りの一撃で命を落とさずに済むのなら、安いものではないだろうか。異次元霊夢のお祓い棒が鈴仙の付け耳に当たると、中間部から千切れて飛んでいく。
異次元霊夢がそんなに近くにいたのかという表情をしている鈴仙から視界を外し、準備できている次の行動に移る。
「くらえ!」
異次元霊夢と対峙し手に溜めていた魔力を、レーザーとしてぶっ放す。激しい閃光とともに光が含まれた弾幕が彼女を貫く。
貫いたように見えただけだ。異次元霊夢は飛び込む形で射線上から体を出したのだ。やはり反応が速い。
異次元霊夢はレーザーを撃った私の横をすり抜けていくと、彼女の服や体から血の嫌な匂いが漂ってくる。
後ろに向かって拳を振り抜くが、異次元霊夢に簡単にはねのけられてしまう。体勢を立て直そうとする私よりもはるかに速い速度で腹にお祓い棒を叩き込まれ、体が後ろに吹っ飛んでしまう。
身体強化の魔力を施してはいたが、それに関してはまだまだ未熟な私はあまり相殺することができず、ほとんどのダメージが体に通る。
空中で立て直すことなどできるわけもなく、鈴仙がさっき突っ込んでいたベットの方向に飛んだ私は、床とそんなに高低差のないベットの上を転がり、壁に衝突した。
「がぁっ!」
ズルッと床に倒れ込んでしまうが、まだ戦いの最中で倒れていられる状況でない。
衝撃でひび割れしている壁に手を付いて立ち上がろうとしていると、異次元霊夢と交戦していた鈴仙が殴り飛ばされ、目の前に転がり込んできた。
「ぐぅっ…!?」
転がり込んできた鈴仙は十数秒の交戦でさえ体がボロボロで、頭から出血を起こしている。
素手で応戦しているのが原因か、手を中心に赤黒いあざが痛々しい。
立ち上がろうとしている鈴仙に向かって、異次元霊夢が床の木の板を叩き割って走り出そうとしている。
「鈴仙!逃げろ!」
異次元霊夢がベットを踏み台にして鈴仙に飛び込んでくる。
私の言葉を聞いていない鈴仙は右手だけ構えた。左手は折れているのか、だらりと腕が垂れている。
「くそっ…!」
異次元霊夢と打ち合いを始めた鈴仙の援護をしようと立ち上がるが、異次元霊夢の一撃と共に鈴仙の顔が不自然に私の方向を向いた。
そして、骨が外れる身の毛のよだつ音が聞こえた。
「……っ……!」
首の皮膚が異様にねじれ、真っ赤から真っ青に顔の色が変色していき、最終的には土気色へとなって行く。
「鈴…仙……」
私が動きのない彼女の肩に手を伸ばそうとすると、対照的に鈴仙の体が崩れ落ちていく。
アリスの家で人形を操らせてもらったことがあるが、その後に操るのを止めると人形はグラリと机に突っ伏した。
あれと全く同じく鈴仙の体は床に崩れ落ち、動かなくなった。
私が倒れている鈴仙から視線を外して顔を上げると、ニヤニヤと笑っている異次元霊夢がこちらを見ている。
「お前…よくも鈴仙を…!」
異次元霊夢は鈴仙の死体を踏みつけ、私の顔を掴んで壁に叩きつけてくる。
「だからぁ?それがどうしたっていうのかしらぁ!」
「このっ…!」
異次元霊夢にレーザーをぶっ放そうとするが、壁から引き離されそのまま割れている窓から蹴りだされた。
「ぐっ!?」
異次元霊夢が面白いほど飛ばされている私を空中で掴むと、そのまま急上昇を開始する。
「それじゃああとは頑張ってねぇ、魔理沙ぁ」
「待ちやがれ…!今、ここでぶっ倒してやる…!」
私がそう異次元霊夢に呟くと、彼女は口の端を吊り上げて笑う。
「今やっても結果はわかってて面白くもなんともないわぁ。だからまた今度の楽しみにしておくわぁ」
異次元霊夢は私を地面に向けて蹴り落とした。
「うあああああああああああああああああっ!!」
体の重心が定まらず、グルグル回転している私は空中で立て直すことをあきらめ、全身を魔力で強化した。
地面にぶつかる衝撃に備え、移動しながら落とされたため斜めに竹を数本叩き折り、地面に滑り込む。頭から突っ込むよりははるかにましな着地だ。
ズザッと地面との摩擦で減速し、上空を悠々と飛んでいる異次元霊夢に向けてレーザーをぶっ放す。
異次元霊夢はここからでもわかるほどに余裕でレーザーをかわすと、私に反撃することなく飛び去って行く。
何度か追いながらレーザーを放つが、箒でいつも飛んでいた私は速度があまり出ず、完全に異次元霊夢を射程外へ逃してしまう。
「…くそ…っ」
あの余裕そうな顔をいつか、吠え面に変えてやる。
無駄にいつまでも追っても意味がない。逃げられてしまったのなら別のことをするべきだ。私は気持ちを切り替える。
異次元霊夢がきているということは異次元咲夜たちも来ているということだ。咲夜が永遠亭にいなかったということは、そっちに向かったのだろう。
「紫!」
バックの中から見覚えのない黒いボールを取り出し、魔力を少しだけ通わせて声をかけた。少しの間、反応がなかったがすぐに返事が返って来る。
『魔理沙、大丈夫だったかしら?』
「大丈夫じゃあないぜ!向こうの霊夢が現れて鈴仙がやられた…。咲夜たちは今どこで戦ってるんだ?」
私は迷いの竹林から抜け出すために走り出し、紫の返答を待っているとすぐに声が聞こえてくる。
『村の近くよ。早苗の方も交戦を始めようとしてるみたいね…場所は直線距離で咲夜の方が近いわ』
「わかった。間に合うかどうかはわからんが、できるだけがんばってみるぜ」
ボールに送っていた魔力を切り、空を飛んで加速した。
加速する前に、疑問が浮かんだ。早苗も交戦を始めようとしている。三十分も経過しているのに、まだ戦いが始まっていなかった。
疑問はその先だ。異次元霊夢は永遠亭にいる私を連れ出しに来ていたが、なぜ、わざわざ遠い場所から永遠亭まで来たのだろうか。
場所がわからなかったということならば話は分かるが、異次元咲夜や異次元早苗は明らかにこちらの咲夜と早苗と戦いに来ている。
なのに、なぜ直接その場所に現れないのだろうか。いや、現れないのではなく、現れることができないのだろうか。
考えをそうやって広げようとしていたが、私は今の状況を思い出す。前回と前々回でこれでもかというほどにあの二人は異次元咲夜と異次元早苗にやられていた。そんな二人が今回勝てるかと言ったら、絶対に無理だ。
今は考えている暇はない。すぐに移動しなければならないのだ。
だが、その前に、私は永遠亭を振り返って、今は亡き鈴仙に呟いた。
「鈴仙……仇は、必ず取るぜ」
私は弱すぎる。
悔しい。私がもっと強ければ鈴仙は生き残ったかもしれない。
もっと、強くならないといけない。
次の投稿……
一週間後ぐらいに出せたらいいなと思います。