東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいよ!
という方は第七十二話をお楽しみください!

投稿が遅いので、まだ続いてたのか程度で見てやってください。

前回のあらすじ

咲夜が切られた


東方繋華傷 第七十二話 託す

 叫んでいた私の肩にボンッと重たい何かがぶつかり、咲夜の隣に転がり落ちた。重量のあるその物体は、今しがた無くなっていたと思っていた咲夜の下半身だった。

 上半身という名の蓋が無くなりぶつかった衝撃で、異次元咲夜に切り裂かれた断面から小腸と大腸が漏れ出し、地面についている手に血でヌルッとしている臓器が落ちて来た。

「ひっ…!?」

 反射的に咲夜の物だった臓器を振り払ってしまった。臓器が飛んでいき、血だまりの中に落ちると、水たまりに石を投げ込んだ時と同じように血が跳ねた。

「…ぐっ……く…そ…っ…!」

 吐き気を催しそうな状況の中で、放心していた私は無意識のうちにずっとメイド服を握りしめ続けていて、その服を着ている咲夜のうめき声に我に返った。

「………こんな……所…で……!」

 切断された身体からとどめなく溢れ出している血をできるだけ少なくするために血管を圧迫するが、他の血管や組織からも血は出ていて大動脈を押さえたとしてもそこらから漏れだしてしまい、あまり効果は無い。

 赤黒い血反吐をゴボッと吐いて、咲夜は恨めしそうに悔しそうに低く唸るような声で呟いた。

「咲夜…!すまない…!」

 彼女になんて言っていいのかわからない私は、がむしゃらに血管を圧迫し、目から段々と光が無くなっていく咲夜に謝り続けた。

「何で……あなたが、誤っ…て…いる……んですか…」

 血を吐き、息絶え絶えな咲夜がなんと言っているのか聞き取りづらいが、確かに彼女はそう呟いた。

 私はそれに答えたかったが、どういったとしてもそれは信じてもらうことはできないだろうし、気のきいたセリフなんてとっさに浮かんでこず、答えられずにいると咲夜は続けて言った。

「……今まで、あなた…に……酷いこ…とを……してきま…した……なのに、なぜ…助けたん…ですか?」

 咲夜の体に触れている手に感じている体温がどんどん低下していく。戦友が死んでしまう。死なせたくはないのに、どうにかすることもできず私はただ彼女が死んでいくのを黙ってみているしかない。

「……」

 口を開けば目に一杯に溜まっている涙がこぼれそうで、今度は違う理由で答えることができなかった。

 気づけば異次元咲夜の魔力も殺気も姿もなく、大量の奴の銀ナイフと妖精メイドの死体だけが残されている。

「そうですか……。こんなことを…頼める立場ではないことは重々承知ですが、……一つ、頼まれてくれませんか…?」

 せき込んでしまうのを必死に我慢している咲夜は、口の端から唾液と血がまじりあった体液を零しながらも、今にも意識を失いそうな虚ろな目で私の目を見た。

「……なんだ?」

 その一言を囁くのに、私は数秒間の時間を有した。そうやって気持ちを落ち着かせながら出ないとまともに返事を返すこともできなかった。でないと、今頃泣きじゃくって彼女の話を聞くどころではなかっただろう。

「あなたは……奴らの仲間ではない……それであってますよね…?…私の…代わりに、向こうの世界の私を殺してはくれませんか?」

 咲夜は私の返答を聞く前に、自分の近くに転がっている下半身の太ももに巻かれているベルトを片手で器用に剥がし、魔力での形状維持と形成を感じない二本の得物を取り出し、目の前に差し出してきた。

 私は息をのんだ。いつかは直面する問題で、先延ばしにしていた答えを彼女によって聞かれ、すぐに返答することはできない。

 残虐非道のくそ野郎だったとしても私は彼女を殺すことができるだろうか。人間を殺すということに、いざその状況に陥ったときに思っていたようにできるだろうか。直前で尻込みしてしまうんじゃあないだろうか。それに、私自身が罪の意識に耐えられるかだってわからない。

「……」

「そんな、事が…したくないの…なら……無理には…頼み…ません……ですが、今すぐに…決めてください」

 頭に血が回って行っていないのだろう。時折クラリと意識を失いそうになっているが、意識を失ったら最後だと彼女もわかっているのか、目を見開いて頑張って意識を保たせている。

 私に、奴らを人間を殺す覚悟はあるのだろうか。彼女の遺志を受け継がなければならないわけで、中途半端な気持ちで引き受けるわけにはいかないのだ。

 でも、そこまで考えてふと思った。私はどうするつもりだったのだろうかと、奴らは倒しただけならば必ずまたやって来る。しかも、一度倒されたことで同じ手段は二度も通用せず、慢心するのを止めてパワーアップして戻ってくるはずだ、

 倒すではこの異変に、奴らに勝つことはできない。そう、異次元の連中を殺さなければならないのだ。

「…」

 私が目を閉じたまま考えていたからだろう。引き受けないと咲夜は思ったらしく、銀ナイフを下げようとするが、異次元咲夜の得物が刺さっていた手からナイフを引き抜き帰り血だらけで銀ナイフを持ち上げるのが精一杯で震える咲夜の手を、私はしっかりと握った。

「任せろ」

 私がそう彼女言うと、魔力切れで今まで咲夜に感じられていなかった魔力を感じた。しかも、自然に体から生成されたにしては多すぎるほどの量だ。

「咲夜?」

「まさか…託すことになるとは思いませんでしたが………彼女を、任せました」

 半ば押し付けられた銀ナイフを受け取ると、私に武器を持たせた咲夜は糸の切れた操り人形と同じくこと切れた。

「……」

 咲夜が私に押し付けて来た銀ナイフを握りしめ、倒れ込んだ彼女を見るとさっきまでは辛うじて血が通ってはいたが、その血も大動脈を通って腹部の切断面から出て行ったらしい。

 青ざめていた皮膚の色が土気色へと変色していく。

「咲夜…」

 銀ナイフを肩から下げているポーチの中に詰め込み、膝をついて倒れ込んでいる咲夜を抱き上げた。

「すまない…」

 ぐったりとして動き、答えてくれることは無い咲夜の体はさっきまで生きていたとは思えないほどにまで冷たい。

 私は彼女に再度謝り、地面に横たわらせた。

 咲夜が目の前で致命傷を負わされて殺され、こんなに悲しくて泣きそうだというのに、死んだことがまだ信じられず実感がない。

 それでも、彼女は死んだのだ。と自分に現実を突きつけた。ずっと同じ場所に居続けるのはあまり状況的にいい方にはいかない。だから次の目的地へと移動しなければならない。

 紫の話では確か、早苗が異次元早苗との戦いを始めようとしていたと言っていたはずだ。少し時間が経ってしまっているが今からでもそこに向かおう。

 紫に連絡を付けようと連絡用のボールに手を伸ばそうとすると、咲夜の銀ナイフがポーチの中で暗闇でもわずかに輝きを放っているのが見えた。

 それに込められた魔力の量はすさまじく、マスタースパークを最大出力で何百発と撃っても余るほどの量はありそうだ。

 なら、込められている魔力は何かと調べようとするがそれは、それらは一つではないらしく様々な性質が重なり合ってどういったものがあるのかがよくわからない。

 でも、咲夜がそうやって魔力を込めて私に託したのだ。何かしらの意図はあったはずだ。

 とりあえず銀ナイフのことは置いといて、紫に連絡を取るためのゴルフボール台のボールを取り出した。私の魔力を流すと彼女の魔力に反応し、スキマが繋がった。

「紫、聞こえるか?」

『………魔理沙?大丈夫だった?』

「私はな……咲夜はダメだった。奴らに殺された」

 私がボールに向かってそう呟くと、返事の代わりに沈黙が帰って来る。スキマで繋げている以上は電波のようにタイムラグではないから、彼女は本当に何も言っていない。

『……。そう、わかったわ…とりあえずは貴方が生きていてよかった。…今すぐにその場所から離脱して』

「わかってるぜ。でも、早苗もどこかで戦ってるんだろ?殺される前にその場所を教えろ…そこに向かう」

 それを彼女に伝えるがしばらくの間返事が返ってこず、苛立ちを自分の中で感じ始めたころに紫の声が帰って来る。

『あなたは大丈夫なの?向こうの咲夜を相手にしたばかりなのでしょう?しばらくの間身を隠しなさい』

「私は大丈夫だって言ってるんだ。多少は傷を負ってはいるが戦えない傷じゃないぜ。それより早苗のいる場所を早く教えろよ、紫」

 咲夜が死んで、それを助けられなかった私は自分の弱さに腹が立っていて、彼女に対する言い方がきつくなってしまった。

 紫に苛立ちをぶつけるのは間違いだとは思ったが、ぶつけた苛立ちが咲夜関連でないことがすぐにわかった。

 こいつは早苗のことを戦力とみていないのだ。彼女のことを切り捨てたこいつに私はむかついた。

『わかった。そこから村を挟んで反対側にいるみたいよ』

 確かに、作戦を立てたとしても自分の復讐を第一に考えてその通りに動かなかったり、勝手な行動をする者がいたらいろいろとやりずらく、それが原因で損害が出る可能性だってあるだろう。

 紫は自分の作り出した幻想郷を守りたいだけであるのはわかっているが、早苗は友達だ。私は切り捨てることなんてできない。

「わかったぜ、とりあえず紫は霊夢の方に向こうの霊夢を近づかせないようにしておいてくれ」

 魔力をボールに流すのを止めて、一方的に紫との通信を切った。彼女は何かを言おうとしたが、内容がわからなくなってしまったな。

 まあいいや、大したことじゃあないだろう。私は早苗が要るであろう方角に向かって走り出した。

 

 

 やはり、私は間違ってなかったようだ。彼女なら信用できる。

 意識が無くなる前に彼女は私のことを抱きしめていたが、もし敵ならば死んでいるであろう人間にそんなことはしないだろう。

 私が闘っていた際に助けようとしたが殺されてしまった。だから、自分は霊夢達の敵ではないんだと意思表示をして、仲間になりたいのならこんな面倒なことはいちいちしないだろう。

 奴にやられたような傷をアリバイのために適当に作り、異次元咲夜と一緒に私を殺しに来ていたはずだ。

 だって周りには私たちがここで戦っているなんて見てもいないし、知ってもいないから誰にも見られていることもないだろうからだ。

 見られていないのなら私と異次元咲夜の戦いには参加せずに直接霊夢たちに会いに行くはずだろう。

 しかし、死にかけであと数分もしたら死ぬような私に彼女は最後まで付き添った。

 口実を作るためならそこまでしない、死ぬとわかった時点でそれ以上私の利用価値は無いからな。

 そう言った理由もあるが、それ以上に首を飛ばされかけたときや私を覗き込んできていたときのあの目、向こうの世界の人間にしては曇りのないまっすぐな目だった。

 そんな目をしている人物なんて、こっちの世界でさえも少ないぐらいだろう。だからそんな彼女になら私の復讐を託せると思った。

 

 十六夜咲夜の意識はゆっくりと曇っていき、体の機能が失われていくのを感じる前に、私という自我意識は消失した。

 




一週間後に投稿できたらいいな。


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