東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいよ!
という方は第七十三話をお楽しみください!


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東方繋華傷 第七十三話 救えない

 紫の言っていた場所に最高スピードで飛行していたおかげでほんの数分で目的の場所まで付いた。

 しかし、戦っていた状況が数分前と言えども、殺し合いをしている状況ならば随分と大昔と言えるだろう。

 先日戦った花の化け物の体を構成していた岩石が、木々がない見晴らしのいい場所の乾いた土の上に大量に落ちている。

 それらの止まって動くことのないたくさんある岩石の中で、二つだけ動くものが見えた。早苗たちで間違いないだろう。

 2人の状況を見て戦えていたというのが本当なのか、元からそうなのかはわからないが、戦っているという状況ではない。攻撃側が一方的すぎる。

 異次元早苗の僅かなスキを見計らって弾幕を使用した攻撃を行うが、奴の三十センチ手前ですべて魔力の塵となって消え失せ、お祓い棒での物理的な攻撃も異次元早苗から数十センチ手前で不自然な減速をしてしまう。腐るほど見てきた光景だ。

 足元を爆破したり、奇跡を起こす程度の能力を発動させて攻撃するだったりと、様々な工夫を凝らして戦ってみたらしいが、すべて失敗に終わったようだ。

 爆発の跡だったり、スペルカードでの攻撃の跡だったりと地面に様々な痕跡が残っていて、それが窺えるが攻撃方法のネタももう尽きて来たようだ。

 苦し紛れに弾幕の攻撃などをしていたようだが、それすらもできないほどに攻め方が弱くなり、そこに付け込んでダメージを負わされていない異次元早苗の独壇場となっているのが見てわかる。

 異次元早苗の大振りの攻撃をお祓い棒を斜めにして受け流し、後ろに回って丸見えの後頭部を殴るために早苗は得物を振りかぶり、叩きつけようとするがやはりその三十センチ手前で減速をしてしまう。

 その減速してほぼ止まっているに等しい早苗のお祓い棒に、異次元早苗が得物を叩きつけて後方へとはじき返した。

 お祓い棒の強化と守りに使われた魔力同士がぶつかり合ってはじけると、火花のように魔力の塵が飛び散った。

 衝撃を利用して後方へと逃げようとするが、異次元早苗が手の中に作り出していた淡く光る魔力の細い縄を、早苗は首に素早く巻き付けられてしまう。

 縄に使われている魔力は形状維持に強化が施されていて、魔力の結合は硬い。お祓い棒などで直接攻撃でもしない限りは巻きつけられた縄を破壊することはできないだろう。

 奴は魔力のロープを早苗の首に巻き付けていたが、それをした後にすることなど誰だって予想はつく。

 異次元早苗はロープを巻き付けた後、破壊される前にお返しだといわんばかりに早苗の後ろに回り込むと背中を蹴りつけた。

 早苗の背中側に回り込めばそこは死角で、足で彼女を固定したまま手に持ったロープを引っ張って首を絞めることができる。

「かぁっ!?」

 首を絞められた早苗は巻き付いているロープを引き剥がすか破壊しようと掻き毟るが、魔力を次々と供給されているらしく、剥がされたそばから修復されて行っている。

 お祓い棒で異次元早苗を殴ろうとしても、真後ろにいてさらに足一本分の距離がある奴に向けての攻撃はまず当たらない。もし当たりそうだったとしても奇跡を使われているので当たることはまずないだろう。

 私は魔力を手のひらに溜めてレーザーへと変換し、異次元早苗の持っているロープに向けてぶっ放した。

 異次元早苗の体から一番離れている部分にレーザーが照射され、魔力の剥がされたロープが半ばから断ち切れる。

 異次元早苗の強力な軌跡の範囲が及ぶのはごく短い距離までしか届かないのはわかっているが、それが及ぶのは肉体からであって魔力のロープにまで効果が付与されているわけではないらしい。

 簡単に言うのなら今のように異次元早苗から一定の距離が離れていれば、たとえ奴が保持していようとも奇跡の力の対象にはなりえないということだ。

 それを知ることはできたが、早苗と異次元早苗が私の存在を認識した。早苗はいいとしても異次元早苗に知られてしまったのは少々痛い。

 そうこうしているうちに縄が断ち切られたことで早苗が解放され、反撃を開始しようとするが後ろを向いているところから振り向かなければならず、そのタイムロスでお祓い棒を背中と肩に叩き込まれた。

 肩の後に背中と無防備なところを段階的に攻撃を受け、顔を苦痛に歪ませている早苗が弾幕を放ったがすべてが魔力の塵へと姿を変えて散っていく。

「何度繰り返せば理解できるんですかあっ!?無駄なんですよ!」

 異次元早苗がバカにした笑みを浮かべて笑い、振り上げたお祓い棒を早苗に向けて何度も繰り返し食らわせた。

 二度か三度は受け流したが、どうやったら奴に攻撃を食らわせられるのかがわからないのだろう。無駄に反撃には出ようとはしていない。

 だが、それをずっと維持できるわけではない。奴だってそれの対策はするだろう。私がそう思っていると異次元早苗の大振りのフェイントにひっかがってしまい、反撃しようとしたところで顔に握った拳を叩き込まれてしまっている。

「がぁっ!?」

 完全に予想外だったのか、早苗は目を白黒させている。私は少しでも注意を引こうと近づきながらもレーザーを放つが、やはり奴の手前で消えてしまって注意を引くことすらできない。

 早苗を殴る際に握った拳の中に事前に用意していたスペルカードを忍び込ませていたらしく、高密度の魔力が奴の足元に集まっていくのを感じる。

 その魔力から感じる性質は前方方向の早苗へ向けて地面の上を進む魔力と、上方向に魔力を爆発させて照射する物の二つが存在している。

 この性質には見覚えがある。数日前に早苗から受けたスペルカードと同じものだ。つまり、次に起こるのは、

「開海『海が割れる日』」

 異次元早苗のいる場所から正確に三十センチ前に集まった魔力が発光。それが顔に拳をかまされてよろめいていた早苗の方向へと進みだし、移動し始めた魔力から上方向に向かって斬撃性の高い爆発が照射されていく。

 放射されている爆発は大気を揺るがすほどで近くにいると肌にピリピリと衝撃が伝わって来る。開海『海が割れる日』」の横幅は約二メートル、縦幅は十数メートルにまで達している。

 魔力を扱えるとはいえ、これをまともに食らえばただでは済まないはずだ。早苗は躱したり反撃したりできる状態ではない。このまま私が何もしなければ彼女は木っ端みじんに吹き飛ぶだろう。

 空中を飛んできていた私は浮遊を止めて、魔力でたった今完成したプログラムが魔力を流しても誤作動を起こさないことを確認した。

 プログラムを複数組み合わせた回路全体に高密度の魔力を流し込み、それらを起動させる。体が重力にのっとって落下し、空気の抵抗を受けはするが重力によってそれでも加速していく。

 ポーチの中に合ったミニ八卦炉を掴むとあとは撃つだけの段階に移っている回路に反応して、こちらも起動する。

 異次元早苗のスペルカードと早苗の間に位置調節しながら入り込み、魔力を噴射して地面に叩きつけられることなく着地。

 動かれるとかえって危ないためよろけながらも逃げようとしていた早苗の足を踏みつけ、ミニ八卦炉を異次元早苗とスペルカードの方向へ向けてマスタースパークを発動した。

「恋符『マスタースパーク』」

 ミニ八卦炉の中央にある黒と白の勾玉を合わせた模様の真上に直径が三センチ程度の光の球体が生成された。

 その小さな球体からは考えられないほどの太さのある超極太のレーザーが放たれ、異次元早苗のスペルカードとぶつかり合う。

 これだけのレーザーを撃つため、当然反動もあるが私が掴んでいるところ以外の辺縁から、冷却のためにミニ八卦炉内に取り込まれた空気が熱風として後方へ排出され、それが反動を和らげている。

 ミニ八卦炉全体と掴んでいる部分に冷却の魔法をかけているが、熱した鉄板に手を付けているように熱い。冷却が少し甘かったのか、ミニ八卦炉の威力が高すぎたのか。

 このまま押し切りたいがあの強力な奇跡の前では当たっていない確率の方が高いし目的は奴に当てることではないため、撃つのを止めようとしたが異次元早苗のスペルカードはまだ消し飛ばされずに残っていて拮抗している。

 気を抜けばこちらが消し飛ばされかねない。完全に打ち消せるように魔力をミニ八卦炉へと送り込む。

 ミニ八卦炉に使われている金属のヒヒイロカネが熱によって赤く変色し、加熱されている言ってるのがわかる。冷却の魔法も排熱も追いつかなくなってきたらしく、掴んでいる手から肉の焼ける音が聞こえてくる。

「ぐっ…あぁぁっ…!!」

 自分の体が焼ける激しい痛みに手が痺れる。私はきちんとミニ八卦炉を持てているのかと、視界の中で握っている手を見ても心配になって来るほどに感覚がなくなっていく。

 これ以上マスタースパークを撃つと後の戦いに支障をきたす。仕方なく魔力の供給を止めようとすると異次元早苗のスペルカードがギリギリで打ち消され、数キロ先の山の麓までレーザーが到達して木々や地面を薙ぎ払う。

 徐々にレーザーが細くなり始めたころ前々回の戦いのときと同じく異次元早苗はレーザーの中をかき分けて手を伸ばし、あろうことか魔力の塊であるレーザーの根元に触れてマスタースパークを打ち消した。

 驚きはした。でも予想の範囲内だ。

 腕を捩じって異次元早苗のミニ八卦炉を掴んでいる手を離させた。奴は別にミニ八卦炉を奪いたいわけではないらしく、すぐに手を離した。

 ミニ八卦炉が空気を取り込み、それが熱気となってブシューッと吐き出されているがポーチの中に投げ込みながら異次元早苗へ蹴りを放つ。

 私の足が不自然に減速し、明らかにこちらよりも遅く攻撃をしていた奴の蹴りが当たってしまう。

「がぁっ!?」

 肩に当たった足が服の上を滑って首を捉える。衝撃で頸椎が砕けないように魔力で体を強化していたが、それでも首の中を骨がのたうち回っているような感覚がする。

 後ろに倒れ込みそうな私に、今度は横からの衝撃を食らった。わき腹への攻撃で、肋骨が嫌な音を立てて軋んでいる。

「あっ……かぁっ…!?」

 異次元早苗は正面にいるため、早苗が攻撃してきたとすぐにわかる。まあ、当たり前か。この短時間で敵味方の区別をつけろという方が無理な話だ。私が介入したところで余計にわけがわからなくなっているのだ。

 敵同士が戦っているだけで彼女からしたら両方が敵と変わらないというわけなのだろう。

 数日前に岩石で体が作られていた花の化け物を霊夢と一緒に倒したが、そいつの体の一部が辺りに転がっていて、横に飛ばされた私はそのうちのデカい岩に背中を打ち付けてしまった。

「はぐっ!?」

 凹凸のある岩で、体を魔力で強化していても出っ張った部分に強くぶつかればいや応なしに痛みは感じる。

「っ………!!?」

 でも、今だけはそれを我慢しなければならない。魔力を手先に溜め、レーザーへと変換して異次元早苗へ向けた。

 奴が使っている奇跡の能力のからくりを解き明かさなければ、私たちが向かう先は咲夜と同じ場所となってしまう。連中の口ぶりから私はそう簡単には殺されないが、早苗は別だ。彼女まで殺されたらここに来た意味が無くなってしまう。

 異次元早苗が振り下ろされたお祓い棒を打ち返し、向かってきていたボロボロの早苗に手を伸ばすと顔を掴んで地面へと叩きつけた。

 レーザーはただ魔力を消費しただけで、全くの無意味で無駄に終わってしまう。

 そのうちに異次元早苗はお祓い棒を持った手を振りかぶりと、覆いかぶさっている相手に向けて振り下ろした。

 木の枝をへし折ったような乾いた音が早苗から聞こえてくる。手首の骨を折られたらしい彼女は悲鳴を上げる。

 異次元早苗はそれが楽しいようで、お祓い棒を赤黒く変色している早苗の皮膚から引き離すと、今度は全身を魔力で強化していく。

「くらぇ!」

 私はそれをさせないように、数歩先にある小さな岩石を身体強化を体に施しながら助走をつけて走り寄り、奴に向けて思いっきり蹴り飛ばした。

 かたい岩石を蹴ったことで小指をタンスにぶつけたように痛む。しかし、そのかいはあったようで直径が20センチ程度だった石が半分に砕け、その片方が異次元早苗へ弾幕みたいにカッとんでいく。

「ばかですねよね!何度やっても同じだというのがわからないですかあ!?」

 奴の顔の目の前で減速して止まった岩石が重力にひかれて落ち始めようとした時、異次元早苗がそれを掴み取って私へと投げ返してきた。

 蹴った時以上の速度で帰ってきた岩石を横に飛んでかわそうとするが、そうしなくてもいいほどには余裕があり、必要最低限の動きでかわそうとした。

 しかし、何かが変だ。岩石に魔力が込められているのだが、岩自体にではなくそのほんの少し後ろから魔力の存在を感じるのだ。それにその性質は爆発だ。

「っ!?」

 間に合うか間に合わないかなど関係ない。体の至る場所が痛んで悲鳴を上げるが無視し、その場所から飛びのいた。

 始めは最低限の動きでかわそうとしていたので切り替えるまでにラグがあり、岩石が到達する直前で動きだした。尖った部分が頬を浅く抉ったが、何とか避けることはでいた。

 飛びのいて螺旋状に回転して飛んできていた岩石を見ると、前からでは見えなかった霊夢が使う物とはまた違った札が張り付けてある。

 中に含まれている魔力が膨れ上がり、閃光を放って大爆発を起こした。砕けた岩石を食らうことは無かったが、爆発以外に結晶化する魔力が含まれていて、それが爆発で四方八方に飛び散って腕や足、顔など全身を切り裂いた。

 皮膚にいくつかの裂傷が出来上がり、爆風で吹っ飛ばされて地面に倒れ込み、遅れて滲んできた血が顔の表面を撫でる。

 これだけ食らってしまったと考えるべきか、この程度で済んだと喜ぶべきだろうか。まあ、腕の一本が吹き飛んだとかよりは万倍ましだ。

 まあ、それでも痛い。

「っ……ぐ……ぁぁっ……!」

 爆発などで掘り返されたらしい土の上にボタボタと血液が落ちて行く。じりじり痛む顔を押さえて立ち上がろうとすると異次元早苗が早苗のことを持ち上げ、前方へと突き飛ばした。

 再度異次元早苗が手に持っていた魔力を通したスペルカードを叩き割った。高密度の魔力が彼女の足に集中していく。

 一部は身体強化だが、残りは前回使っていたスペルカードと似たような上空方向に対する斬撃属性の爆発の性質と、前方だけでなく全方向に向かう魔力だ。

「開海『モーゼの奇跡』」

 異次元早苗のいる位置で爆発が起こったかと思うほどの破裂音がし、跳躍の衝撃で地面が数メートルの範囲で波打ってひっくり返っていく。

 始めは異次元早苗が跳躍したとは思えないほどの速度で視界の外へと移動され、どこへ行ったの変わらなかったが奴の荒々しい魔力を感じて上を見上げると、ジャンプした時と変わらないスピードで降下してきていた。

 その先には、早苗が倒れている。

 私は脊髄を冷凍されたかのような感覚に襲われ、鳥肌が立った。

 

 早苗が殺される。

 

 私は最大出力でレーザーを落下してきている異次元早苗にぶっ放したが、スペルカードと降下のエネルギーによってかき消された。

 早苗を突き飛ばすことや引き寄せてかわさせることなどが、離れすぎていてすることができない。

 畜生!くそったれ!!私はまた、友人が殺されるのを見ていることしかできなかった。

 逃げようとしていた早苗の胸へと急降下し、踏みつけると同時に足元に集中していた魔力が解放され、魔力特有の青白い爆発を起こした。

 




一週間後に投稿できたらいいな。(白目)
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