東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいよ!
という方は第七十五話をお楽しみください。


もし、なにかアドバイス等がございましたら気軽にどうぞ~。


投稿ペースがだいぶ遅くなってしまい申し訳ございません。


東方繋華傷 第七十五話 地獄へ?

 前頭部を地面に叩きつけられたことで皮膚が潰れて引き裂かれ、頭蓋が歪んで脳が揺さぶられる。魔力で攻撃の軽減をしてこれなのだ、魔力で体を覆って身体強化をかけていなければ頭部自体が潰れていたかもしれない。

「がぁ…ああああっ!?」

 失神しそうになるほどの痛みが頭の中へ流れ込み、痛みで意識が飛びかけた。それを繋ぎとめていられたのは運が良かっただけだ。

 地面に押し付けられているのを打開するため、魔力調節の全力の浮き上がりと自分の腕で起き上がる瞬発力を組み合わせ、霊夢の押し付けてきている力をほんのわずかな間だけ上回わらせた。

 土から体が離れて地面との摩擦が少なくなったところで、頭だけでなく体全体を捻って霊夢が掴んでいる手を振り払い、彼女の膝の裏を蹴りつける。

 ガクッと霊夢の体勢が崩れ、私はそのうちに床の上を落とした紙が長く滑るように、地面の上を魔力で滑走した。

 加速しようと魔力調節を行おうとした時、その進行方向上の丁度逃げられない位置に霊夢がよく使う札が後方から投げられた。

 十数枚の札全てに爆発の性質のみを感じる。しかし、それだけでは爆発しない。爆弾の破裂は電気信号だったり衝撃だったり、炎などで安定した状態から爆発を誘発される。

 札にも同じことが言えて、安定を崩すものが無ければ爆発は起こさないわけだ。

 そう思っていたが、その中の一枚に札と同じく後方から針が飛んでいって真ん中に突き刺さった。

 その妖怪退治用の針には札を起爆するための、安定している魔力のバランスを崩す性質が含まれている。

 後方から小さく聞こえて来た霊夢の指令と同時に針の魔力が弾頭などに使われている信管などと同じ働きをした。

 一枚が爆発すればそれによってバランスを崩された周りの札が連鎖的に安定性を失い、全ての札は私が真上にいる状態で青い炎を膨れ上がらせる。

 体を覆っていた魔力がはがされ、爆発を全身にまともに浴びせられた。高熱の爆風に肌を焼かれ、肺を潰されかけられた。

 札は頭側よりも足側に多く配置されていたらしく、足をすくわれて頭から地面に倒れ込みそうになった。

 だが、進行方向に加速しながら進む魔力の性質を霊夢がいる方向から感じ、両手を下へと向ける。

 反動が私自身に返ってくるようにエネルギー弾をぶっ放す。一番初めに手首、次に肘と衝撃を感じるが肩への物が一番強く、体重もかかっていることで余計に痛みを感じた。

 それでも落ちていた体が反動で十数センチ浮き上がり、そのまま落ちていたら当たっていた不自然に加速していく針が頭上を通っていく。やはり針を投擲していたか。

 エネルギー弾が地面の表面で爆発を起こすと、下に押しやられた土の圧力に耐えきれずに周りが割れ、空へ向かって吹きあがった。

 体を捩じりって霊夢の方向を向き直りながら地面へ着地。爆破の影響で吹き上げられた土が落ちてきているが、その間を縫って走ってきている霊夢がお祓い棒を薙ぎ払う。

 足がまだ着地の状態から戻り切っていない。逃げるための瞬発力をお祓い棒が当たるまでに集めることができない。

 受け止めるためにその方向へ腕を構えて魔力で強化を施すが、強化の度合いが高くないうちに薙ぎ払いが到達した。

 前腕の中間を盾にしたが、その上からでも肋骨を歪ませるほどの威力が腕に加えられ、手を体ごと後ろへ跳ね飛ばされてしまった。

「が……っ!?」

 飛ばされてしまうがただでやられるわけがない。霊夢が私を殴っているうちにこっちは彼女のことを掴ませてもらった。

 体の移動と共に霊夢を抱え込んで魔力調節で私の位置を地面側ではなく空側へ移動させ、彼女のことを突き飛ばして地面に押し付けた。

 だがその代わりに腹に蹴りをかまされ、来た道を逆戻りさせられてしまう。魔力調節が間に合わず、背中を打ち付けて転がってしまう。だが勢いを利用することですぐに起き上がれた。

 起き上がったはいいが土との摩擦があったとしても即座に止まることはできず、足と手をつくと三本の線が地面の上に出来上がる。

 中腰から立ち上がるとすぐ目の前に霊夢がいつも通りに迫ってきている。こうなるだろうと予想していた私は、腕に溜めていた魔力で腕力等を強化。

 握った右拳を霊夢に向けて振り抜いた。それに対して霊夢は身を右回転させて拳をかわす。

 そのまま左足を軸にして体を回転させ、右足の踵を私は顔へとぶちかまされた。

 正面からまともに食らってしまい、激痛が頬から後頭部に流れていくような感覚がする。痛みで反撃に速攻で移ることができなかったが、よろけながらも再度に渡って攻撃を仕掛ける。

 私よりも一回り大きい手のひらで拳を受け止められると、一気に引き寄せられて頭突きをされた。

 ガツンッと霊夢に頭蓋骨が陥没した。といっても違和感がないような酷い打撃音が皮膚から発せさせられ、額を押さえてうずくまってしまいそうな私の胸倉を彼女は乱暴に掴むと持ち上げられた。

「…よくも、二人を殺したわね…!!」

 殺気の籠った見開いた目つきで私を睨み、お祓い棒でわき腹を殴りつけられる。

「ぐぅ…っ…!……何を…勘違いしてんだ…!…私は殺してな―」

「…黙れ!」

 こちらの言葉を遮って霊夢は叫んだ。鼓膜がビリビリと震え、耳が痛くなる。だが、私だって引き下がるわけにはいかない。

「黙るのはそっちだ!お前がなんと言おうが、その事実は変わらないぜ!」

 霊夢の腕を掴んでそう叫び返した私に、問答無用で彼女は膝蹴りにプラスしてお祓い棒をお腹にぶちこんでくる。

「あ”っ…!?……かぁ……っ…!!」

 霊夢が手を離したことで、後ろによろけて下がって少し距離を取った。でも、その稼ぎも意味がないと自分でもわかるほどに立っていられず、膝をついた。

「…お前が直接殺してなかったとしても、その証拠もない。それに、奴らの仲間の時点で間接的に殺しているほかない!」

 怒りで彼女はこちらの話を耳に入れようともしない。彼女が走り出し、札を投擲してくると額や肩、胸や足に札が張り付いていく。

 それに含まれている魔力の性質は、札に触れた人間の神経に一時的に作用して行動不能に陥らせるものだ。

「封」

 彼女が呟いたその一言で四枚の札それぞれから神経の伝わりなどを阻害する魔力が放出され、体の自由がほんの数秒間だけ効かなくなる。

「…は……ぁぁっ…!?」

 顎を下からお祓い棒でかち上げられ、顔が空を見上げる。体ごと浮き上がって一秒にも満たない時間浮遊したのち、つま先が地面につくかつかないかぐらいで腹部に拳を叩き込まれた。

「かは…ぁっ…!?」

 体がくの字に曲がり、吹き飛ばされた。体の自由が利かないため、されるがまま地面を転がって止まった位置に力なく横たわる。

「げほっ…!」

 殴られた部分から血は出なかったが、内部の組織や臓器にはダメージが大きく入ったのと、霊夢が使用した札の影響で立ち上がろうにもうまく動いてくれない。

 そこからさらに数秒経過後にようやく体のしびれが解消された。それでも立ち上がることを許されず、霊夢のお祓い棒が仰向けになって起き上がろうとした私に向けて叩き込まれた。

「~~~~っ!!?」

 弾き飛ばされ、生えている木に肩を強打してしまう。関節が外れなかっただけましだが、私は森の中へと転がり込んだ。今いるこの場所がちょうど広い草原と森の中間地点らしい。

 せっかくここまで来たが、森の中を逃げることはできなさそうだ。この状況で逃げ切ることなどできるわけがない。

 ゆっくりと歩いてきている霊夢は、私から五メートル程の距離で歩みを止めた。お祓い棒を持っていない手には針が複数本握られている。

 私はとりあえず手先に魔力を集中させ、霊夢へと向けた。どういう動きをしても対応できるようにはしたが、彼女相手には役にも立たないだろう。

 いつでも撃てるようにトリガーに指がかかっている状態だが、霊夢は構えようともしない。私程度ならその必要もないということだろうか。

「…こっちばかり見てていいのかしら?」

 彼女はそう呟いた。意識を集中的に向けていたが、周りに意識を向けてみると鋭い斬撃性の魔力強化を感じた。

「!?」

 その魔力の性質を感じた方向へと私が顔を向けようとした直後、何かが伸ばした左腕の上を高速で通り過ぎていく。

 人型のそれは緑色の服を着ている。地面の上をズザッと砂煙を小さく上げて止まったそいつの右手には長い棒状の刀が握られていて、抜いていた刀を鞘へ納めた。

 白髪の髪の毛はおかっぱに切りそろえられ、彼女の近くにはボールに火をつけたような白色の霊魂が浮遊している。

「妖夢かよ…!」

 突然現れた魂魄妖夢にも対応できるように、私は別の場所へ陣取ろうとしたが、向けていた左手の手首から肘の中間あたりで血が溢れてきているのが見えた。

「……え…?」

 まるでその呟きを合図にしたように出血部分が腕を一周し、傷口が繋がったとたんにそこから先がズルリとずれて重力に従って落下した。

 手首の切断面から落ちたため、そこから漏れだしていた血によって地面に落ちるとべチャッと水気の強い音を漏らす。

 始めは状況が理解できなかった。だが、私の前腕が転がっている事実を脳に流れ込んできた痛みで思い知らされた。

「うっ……ああああああああああああああああああっ!?」

「うるさいわね」

 切断された腕を押さえて叫んだ私に、目の前まで一気に踏み込んできた霊夢が蹴りを放ってくる。その美しいと思えるほどの蹴りは胸に叩き込まれ、吹き飛ばされてしまう。

「か…ぁ……!?」

 肺から漏れた空気によって声が声帯から絞り出される。胸の前で爆発があったのとそう変わらない衝撃に、地面を転がることとなった。

「…二人を殺した罪、あんたの命で償ってもらうわ」

 お祓い棒を握りしめた霊夢が倒れ込んでいる私に向かって歩み、得物を持っている方とは逆の手で妖怪退治用の針をチラつかせている。

「だから、私じゃないって言ってんだぜ…!」

 胸を押さえていたが、前腕の切断面より心臓側を強く握りしめ直して出血を押さえ、彼女に言った。

「…あっそう」

 横に転がって起き上がり体勢を立て直そうとするが、その時すでに霊夢はお祓い棒を食らわせようと走り出している。後ろに後ずさりしていた私に上げた得物を一気に振り下ろして叩き込む。

 首が威力でへし折れて後方にぶっ飛ぶほどではあるが、その攻撃は当たるはずだった私をすり抜けて空振りで終わった。

「「!?」」

 二人が目を見開いて驚いているのが視界の中央と視界の端で見えた。それはそうだろう、あの博麗霊夢の攻撃が後ずさりをしている程度の人物にすら当たらなかったのだ。

 まあ、それは私が殴られた時に口内詠唱で使わないでとどめて置いた光の魔法を使ったからだ。

 光を屈折させ、二人から見えている私の位置を霊夢寄りにずらしてやった。歩くだったり、走るだったりしたら不自然に私の位置が横なんかにずれていったり、歩幅に対して進む距離がおかしいなどで成功はしなかったはずだ。

 でも、今回は殴られた時から位置関係をずらしていたため、彼女たちからしたら予想よりも私が飛ばなかった。その程度しか違和感はなかったはずだ。

 霊夢が当たると確信していた攻撃が外れて体勢を崩しているうちに、私は屈折の魔法を解除して森の中へと入り込んだ。

 森に入り、七歩目で木々の隙を縫って投擲された針が私の左足を貫いた。痛みでよろけて倒れそうになるが、右足で踏ん張って何とか耐えた。骨には当たらなかったらしく、歩行が不可能なほどではない。

 しかし、若干ではあるが歩幅とスピードが遅くなり、妖夢の接近を許してしまう。小さな足音が後方から近付いてきたため、感で横に飛びのくと私がさっきまでいた位置を鋭い刃が木々を切断しながら通り過ぎた。

 冷や汗が額からにじみ出てくるのを皮膚で感じる。魔力で出血を押さえて肩から下げているポーチに手を突っ込んだ。

 紫に連絡をするためではなく、特殊爆発瓶を取り出すためにだ。ショットガンなどで使われている散弾というのは聞いたことがあるだろう。

 ショットガンシェルと呼ばれるシェルの中には小さな球状の弾丸が複数仕込まれている。それが火薬の爆発によって通常よりも広範囲に弾丸をばらまくことができる。

 今やろうとしているのはそれだ。破裂した瓶の破片では形が歪で空気の抵抗を受けやすく、数メートル飛んだだけで失速してダメージにならなくなる。だが、球状でどこを向いても変わらない形をしていれば通常よりも飛距離が伸びるため、ダメージを与えやすくなる。

 しかし、欠点としては飛距離が高くなったことで投擲者にも弾丸が飛んでくる可能性があり、私としては今の状況ではこの攻撃力は必要ないためデメリットにしかならない。

 だが、普通の爆発瓶や閃光瓶ではだめだ。霊夢は閃光瓶を何度も受けていて私の投げ方次第では対策してくるのが目に見えている。

 爆発瓶はインパクトに欠ける。牽制にはなるだろうが、大した威力ではないことが知られてしまい、すぐに追われてしまう。

 瓶から弾丸が飛んでくるなんて彼女たちは夢にも思っていないはずだ。その不意を突きたい。

 瓶の蓋を引き抜き、彼女たちに致命傷を与えないが驚かせることができる距離に瓶を投げようとした。

 この瓶は通常の瓶よりも遠くに投げるということが前提であるため、蓋を開けてから数秒経過してから爆発する。

 森に入って来た妖夢と霊夢から絶妙に離れた位置に向けて、散弾型爆発瓶を投擲しようと振りかぶるが投げる直前でわき腹に何かがぶつかるのを感じた。

 わき腹に電気を流されたような衝撃を受ける。電気と違うところと言えば、体の筋肉が硬直するのではなく指令を受け付けず、筋肉が弛緩してグラリと倒れ込みそうになった。霊夢の札を受けたのだとようやく理解した。

「あぐっ!?」

 全身の筋肉が弛緩するということは散弾型爆発瓶を握っている手も例外ではない。私は蓋が開いている瓶を持っていられずに目の前に落としてしまった。瓶が地面に落ち、その表面に亀裂が入る。

 そのころにようやく魔力の障害から解放され、体に力を込められるようになり、私は急いで飛びのこうとするが、瓶の中身にある試薬が空気に触れてようやく発火を開始。それが連鎖して爆発を起こした。

 中にある散弾が爆風によって吹っ飛び、四方八方にまき散らされて近づいてきていた妖夢と私に襲いかかる。

 木の後ろに逃げ込もうとして跳躍した私の脇腹と切断された方の肩、首を掠り、両足の太ももと指先に風穴を開けた。

「あっ…!?…か…は…っ!?」

 妖夢は飛んできて自分に当たる散弾だけを楼観剣で真ん中から綺麗に真っ二つにして切り払うと、胃などの内臓を散弾が貫いたせいで血反吐を吐いている私に向けて鋭い刀を振り下ろしてくる。

「りゃああっ!」

 残っている手の甲に大量の魔力を集める。硬質化に特化させ、高密度の魔力によって石のように固くなっているのがわかるほどになったその半透明のガントレットで振り下ろされた刀を横からはじき返した。

 刃のない横方向から殴ったはずなのに、一秒にも満たないその触れ合っている時間で硬質化した魔力を削り切られ、腕へと到達されたらしく血が滲んでいる。

 でも、妖夢の軌道を変えることには成功し、彼女は体勢を崩しておっととよろけた。そのうちに前にも使った手だが、周辺に魔力をばらまいて土や岩に含まれている鉄分にコイルの性質を持たせた。

 そこに電気を流し、電磁石を作り出す。魔力から変換した強力な電流を流したことで、突発的に周りの鉄がカッとんでいくほどの磁力が発生する。

 妖夢は体勢を崩していたのも相まって、腰から提げているもう一本の刀と手に持っている刀が地面に向けて引き寄せられ、片膝をついた。

「うっ!?」

 刀が妖夢の手から離れればどこまでも切れそうな勢いで地面にめり込んでいく。離れた位置にいる霊夢も、その磁力によって持っていた針が妖夢の方向へ引き寄せられ、離さないように自分のもとでとどめている。

 離せば妖夢のもとに猛スピードで突っ込んでいくため、霊夢は針を放すことはできないだろう。少し卑怯な気もするが今はそんなことは言っていられない。

 ミニ八卦炉に使われているヒヒイロカネが引き寄せられているのと、足に散弾と針を食らっていて走りずらいが、今の隙に一気に距離を稼いだ。

 

 どこをどう走ったのか、何度追いつかれたのか。もう覚えていない。

 どれだけの時間走り回ったのかわからないがもはや全身が血まみれで、流れ出した血の量は魔力で血液を生産していなければとっくの昔にくたばっている状況だ。

 走る力もなくよたよたと歩いていたが、ついに限界を迎えた。霊夢たちがいまだに追ってきているが、足が前に出なくなってしまった。

 せめてもの抵抗で木の後ろに隠れたが、百数十メートル程度の距離まで二人が近づいてきているのを魔力の距離感で感じる。

「かはっ…!」

 胃から上がって来た血液を目の前の地面に吐き出し、木の幹に椅子に座る動作でよっかがる。

 また血が上がってきそうになるが、吐き出すのもなかなか苦しく、喉まで上がってこないように押しとどめた。

 それに集中していたせいで、いつの間にか霊夢か妖夢に回り込まれていたらしく、足音が背もたれにしている木ではない方向から聞こえてくる。

 やばい。頭の中ではそう思っているが、体はもう腕も上げられないほどに重い。

 それでも、私にここで殺されるという選択肢はないため、腕を上げようと力を込めた。地面から十数センチほど上がったところで、正面から来ている魔力の性質が霊夢や妖夢の物でないことに気が付いた。

 静かな土を踏みしめる音を立てて、霊夢達がいる方とは逆方向の木の後ろから現れたのは、先日会った聖白蓮だった。逃げているうちにいつの間にか妙蓮寺の近くに来てしまっていたのだろうか。

 事前に私は敵であるとして、文に頼んで顔写真などを配ったのだろう。

「…っ!あなたは…」

 聖は私の顔を見ると何かを放したりする間もなく攻撃体制に移行していく。全身を強力な身体強化で覆い、握りこぶしを作る。

「……。お前も…私を殺しに来たのか?」

 驚きようから彼女は単純にたまたま出くわしただけであるため、その言葉は適切ではない。しかし私は聖にそう呟いて見上げていた。

 ほんの数秒間だが、聖と目が合った。どうにかして逃げなければならなかったが、腕から血を流しすぎた私の意識は薄らぎ始める。

「…」

 顔を上げることすらも難しくなってきた私は、投げ出されている足を眺めた。霊夢たちが向かってくる音以外のゆっくりと歩み寄ってきている聖の足音が異様に大きく聞こえる。それもそのはず、あとは殺されるか生け捕りにされて殺されるかしか私の未来は無い。死刑を執行される直前、そんな気分だ。

 投げ出された足の間に聖の足が見える。ぼんやりした頭の中で生きたいと叫んでいる自分がいる。その気持ちなど知ったことじゃない現実は、何かをされる前に私は意識をなくした。

 

 それでも、死んだわけではない私は自分のいる位置がズレたことではっきりとはしないが、意識が少しだけ戻った。

 誰かに抱えられているのが、背中と膝の裏に回されている手の感触で分かる。どこかに運ばれるのだろう。

 眠気に似た意識の混濁で考えが統一できない。だけど、何とかして私はうっすらとだが目を開いた。

 私を抱えて立っているのは聖だ。これから霊夢に引き渡すつもりなのだろうか。

「離…せ……よ。……畜……生……」

 私はそう呟くが彼女は聞こえているのか、聞こえていないのかわからないがこちらには目もむけず歩き出そうとした。

 その時に、あの声が聞こえてくる。

「…聖じゃない。こんなところでどうしたの?」

 息は切れていないが、急いでいる様子の霊夢は早口に私を抱えている聖に言った。

「た…たま……を……通っ……だ…けよ」

 聖が何かを言うが、また意識が遠のき始めた私には何と言っているのかが途切れ途切れで理解できない。

 逃げ出したいが意識の遠のきに抗うことはできず、今度こそ私は深い眠りにつくように意識をなくした。

 

 次に起きることがあるかはわからないが、起きたらきっとその場所は地獄だろう。

 




次は、………十日後に投稿できたらいいなと思います。
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