それでもええで!
という方は第七十七話をお楽しみください。
申し訳ございませんが次もこれぐらいか、これ以上の投稿ペースになると思います。
前回のあらすじ
聖が怒られた。
聖が魔法使いの女性を匿った訳、それを聞くと皆は驚きを通して呆れていたがご主人が絶句したのちに怒り心頭になり、ものすごい剣幕で聖に詰め寄っている。
「どういうことですか!?そんな不確定要素しかない理由でこの寺の存続を揺るがすことをしたんですか!?」
「すみません。反省はしているんですよ?」
ご主人が怒りだしてから約十分が経過しているが、さっきからこの調子だ。ご主人があそこまで感情をあらわにするなんて相当なことだ。
「ご主人、その話はあとでゆっくりと聖としてください。進みませんし…とりあえず話を元に戻しましょう」
私がゆっくりの部分を強調して宥めるがまだ納得のいっていないご主人は、ぶつぶつと呟きながらもとりあえずは聖から離れてさっきまでいた位置に座った。
聖がありがとうございますと頭を下げてくる。頭を下げるんじゃあない、私が助けたみたいでご主人から怒られる可能性があるじゃないか。てゆうか君はこの後にたっぷりと説教タイムがあるんだからな?
「とりあえず、名前は置いておくとして、まだ聞きたいことがあったんじゃないのかい?」
私がそう聖に言うと、彼女は咳払いをして女性との会話に戻ろうとする。
「それじゃあ、改めて聞きたいことがあるのですが……って、寝てしまってますね」
ご主人が聖と喧嘩をしているうちにどうやら寝てしまったようだ。せっかく話の軌道を修正したがもともと彼女は酷く衰弱していたようだし仕方がない。この短い時間だけでも起きていられたのが凄いぐらいだ。
「なら起こせばいいんじゃないですか」
私の横に座っているぬえがそう言って立ち上がろうとするが、水蜜が手を掴んでそれを止めさせた。
「寝かせといた方がいいんじゃないか?寝ぼけてる時よりもはっきりと起きてる時の方が話もスムーズに進むだろうし」
彼女にしてはいい案を出してくれる。そろそろ眠りたい私はその意見に関しては別に文句はないが、他の面々はそうではないらしい。
「まあ、そうね。こんな状態の人から話を聞いても信用できる情報は得られないだろうからね」
一輪もそう言って水蜜の案に賛成をしてくるが、それに対してご主人が反論を返してくる。
「それは相手が嘘をつかないということが前提としてあるから言えること、この子が嘘を突くような奴なら信用できる情報以前の問題とならない?」
そこを突かれると痛い、ご主人の言った通りであるからだ。情報の信用度は話す人間次第であり、向こうから来ている敵とあればそもそも信用することができないということだ。
「…そうですね。でも、彼女は大丈夫ですよ」
聖はそう言うと、ご主人はその理由について返答を求める。
「なぜですか聖。また感だとかそう言った理由で言ってるんじゃあないですよね?」
「勿論。…さっきの会話で彼女の正直さがわかります。もし、私たちを騙すつもりでここに乗り込んできたのなら、とっくに名前なんて言ってますよ。偽名でもなんでも使ってね…。それに、なぜかと聞かれてた時に彼女は返答に困っていましたが、そこも疑問が残ります。こういう人よりも、送り込むならもっと口が達者な人物を送って来ると思いませんか?」
確かに、言われてみればそうかもしれない。
「でも、そう言ったところを狙って送られた可能性だってあるかもしれません」
ご主人はそう切り替えて聖に言うが、彼女はすでにその返答に対しても答えを用意していたのか、すぐに言った。
「いや、そうだとするならば4日前から既にここに訪れていたと思います。霊夢の話ではこの女性は4日前からこっちにいるそうです。違和感がありませんか?4日前からいるのにこちらには全く干渉してこなかったんですよ?」
まあ、そうだな。その話は博麗の巫女から聞いたと言っているし、確かなものだろう。途中で目的を変えた可能性だってあるかもしれないが、そもそも四日前にこの女性を置いていくこと自体がよくわからない。
捕まって情報を吐かないように、使い捨てならば殺されているはずだ。例え、何とか三日間を生き延びたとしても、再度来た異次元の連中にな。
それにその程度の人物であるならば、聖たちの手を借りたとはいえ博麗の巫女から重傷を負いながらも逃げられるはずがない。そして何よりも十六夜咲夜と守矢早苗を殺せる人物を使い捨てにするわけがない。
まあ、理由はほかにもあるがね。
2人の言い争いは止まることなく続いていたが、不意に聖は言った。
「そんなに私のことを信用できませんか?」
ずるいな。そんなことを言われてご主人がイエスと言えるわけがない。
上下関係もそうだが、聖の人を見抜く才はぬえがいい証拠なのだ。
水蜜やぬえを初めとして聖が彼女らをどこからか連れて来たらしいが、少し前にぬえは一度異変を起こした。その時点でぬえは妙蓮寺を追い出されていてもおかしくはなかったはずだ。しかし、彼女は追い出されなかった。
ぬえは出ていく気だったらしいが、聖がそれを引き留めた。その理由は私たちも納得しているが、彼女がそういう人物だったからだ。
そういったこともあって、ご主人はこれ以上聖に何かを言うことができないようだが、わかりましたよと一応はうなづいた。
さてと、話も終わったようだし、帰って寝るとしよう。時計の短針は午前四時を指していて、障子越しに辺りが薄っすらと明るくなってきているのが見える。生活のリズムが崩れてしまいそうだな。
腰を上げると聖が私に声をかけてくる。
「ナーズリン。一度休んだのちにまた看病をお願いしてもよろしいですか?」
「……。ええぇ…別に構わないけどさ…」
「ありがとうございます。どこか一室を使ってもいいのでよろしくお願いします。じゃあ、それまでは一輪とぬえが看病をお願いします」
聖がそう言うと、一輪が眠たそうではあるが普通に返事を返し、不満そうな顔をしているぬえがうなづいた。
とても、最高に面倒だが頼まれてしまった以上は一度家に帰ってから妙蓮寺に来るのは少々面倒だな。聖の言葉に甘えて一室を借りるとしよう。
「それじゃあ、休ませてもらうよ」
私は皆にそう伝え、誰も使っていない部屋があったはずなのでそこに向かった。
靴が乾いた地面の上を踏みしめると、その小さな音が木々を反響してあらゆる方向から歩いているような音が聞こえる。
薄暗いというのもあるが、だいぶ前から魔法使いの姿をしていた女性の足跡が消えていて、足取りがつかめなくなっていた。
魔力を弾幕として出し、薄っすらと光っているその明かりで周りを照らすが、やはり自分と妖夢の足跡以外見つからない。
「いったいどこに向かったんだか…。どう思います?」
一応は周りを警戒してということで、鞘に収まった刀に手を添えている妖夢が地面を見下ろしながら私に言ってくる。
「さあね。木の葉っぱにも血痕は残ってなかったし飛んで逃げたにしては、あれだけの出血なのに証拠が残らなさすぎる。傷口を焼いたのか、どうにかして塞いだのかしら。それもと、他の第三者から手助けでもされたのかしら」
この辺りの土は乾いてはいるが、足跡が付かないほど硬いというわけではない。手で拾い上げてみると簡単に固まった土がほぐれてバラバラになる。
「でも、奴らは既に帰っていますし、あいつを助ける異次元の連中なんていないですよ」
「それはわからないわ。私たちが気が付かないうちに誰かに成りすまして入り込まれている可能性は否定できない。そうなったら私たちに見分けるすべはないわ」
「確かに言えてますね。……怖いなぁ…」
妖夢がそう呟くが確かにそうだ。正直に言って今ここにいる妖夢だって敵の可能性は否定できないのだから。彼女からしたら私もだが、でも私は絶対に違うという証拠がある。奴の左手には古い傷があったのだ。
まあ、私たちだけしか知らないことを軽く聞いてもらえればそれに対して答え、こっちの世界の人間だと証明することもできる。
「……。霊夢さん」
一度見失ったところまで戻ろうとしていた私に黙って周りを見ていた妖夢が声をかけてきた。
「何かしら?」
「…本当に、あの人間に咲夜とか早苗はやられてしまったんですか?いまだに信じられません」
確かに短い時間ではあるがあの魔法使いと交戦した。よくわからない魔法のようなもので私の攻撃を外させたこともあるが、二人を殺せる実力があったといわれたらそうでもないように感じる。
「…はぁ……」
私は無意識のうちに大きなため息を付いていた。信用していた戦友がこの短時間で二人も殺された。それによって少なからず精神にダメージは入っていたからだろう。
咲夜は死体を直接見たわけではない。でも、早苗の頭が吹き飛んだ死体を見せられれば嫌でも死んだことを受け入れるしかない。
女性を追っていた時までは怒りで我を忘れていたが、追跡が長引いていて興奮気味だった精神が落ち着いてきて、その現実を思い出してしまった。
「大丈夫ですか?」
彼女がいつも通りとはいかないが、不安そうぐらいでいられるのは、死体をまだ見ていないからだろう。
「…ごめんなさい。大丈夫よ。……とりあえず見失う前から探して見ましょう。私たちが見落としているのかもしれない」
「でも、足跡はこの方向に向かっていたじゃないですか。だから途中で空を飛んだのか、隠れているんじゃあないですか?」
「いや、それは無いわ。足跡が消えてからしばらく探したけど情報一つない。一人の人間が短時間で何の証拠も残さずにいなくなれるものかしら?前回は川がったからそこを境にして撒かれてたけど、今回はそう言ったのは無いから空を飛んで逃げた可能性は低いわ。どちらかと言えば隠れてる可能性の方が高いけど、それも私は違うと思うわ」
「じゃあなんですか?第三者が関与したってことですか?」
それはわからない。まだ文の情報が行きわたっていない可能性もあり、こっちの世界の誰かが助けた可能性だってある。
「さあね、あの魔法使いが異次元の人間だと知らなかった奴が助けちゃった可能性はあるわね……。まあ、…人によっては知ってて連れて行った可能性もなくは無いけど」
「そんなことないと思いますけどね」
「私もそう願うわよ。とりあえず見失ったところまで戻りましょう。もしかしたらバックトラックでもやられたかもしれないわ」
バックトラックとは今来た道の足跡にそっくりそのまま足をのせて後ろに戻り、別の方向に飛んで逃げるという方法だ。
これでも見つからなかったらお手上げだ。さっき仲間が襲われた聖辺りにどの方向に逃げたか聞きだすしかないだろう。
「例え魔力を使える人間だとしても、これだけの出血で逃げることなんでできるわけがないですよ」
足跡とおびただしい量の血が点々と続いているのを見て、妖夢はそう言うがそれで死ぬのなら苦労はしない。
「あれで死ぬのなら、前回の追跡で捕まえているわよ」
それを黙って後戻りしながら私は自分に苛立っていた。二人の仇を討つことができなかったことができなかったというのもある。でもそれではない。
二人が殺されたことは本当に悲しく、あの女性は絶対に許すことができない。しかし、その怒りや悲しみと同じぐらい、あの女性を殺さなくてよかったとなぜかほっとしている自分がいるのだ。
なぜ私はほっとしているのだ。二人を殺されたんだぞ。
私は2人が殺されたということを思い出し闘志に火をつけた。次に会ったら確実にこの手で殺す。
次もかなり遅くなると思います。