東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもいいよ!
という方は第七十八話をお楽しみください!


なにかアドバイス等がございましたらご気軽にどうぞ~


東方繋華傷 第七十八話 人間か?

「ふあぁ…」

 日が明けてから数時間。恐ろしいぐらいに眠いというのに、また私は女性の傍らに座って看病をしていた。

 たまらずに欠伸をしていると、隣に座って目を擦っていた水蜜と目が合った。魔力を使えて人間ではないとしても、ずっと起きていれば眠くもなるし疲れもする。

 前日というか寝る前の時間と合わせてから、もう看病の時間がすでに六時間を超えている。聖の奴、正直言って洒落になってないぞ。寝床を借りて飯が出る程度では割に合っていない。

 しかし、看病する者が私と水蜜ということで、安心はできる。私よりはましだが水蜜もあまり戦いは得意ではないからだ。聖が私たちを選んだということはおそらく戦うようなことがない。ということになり、安全ととれる。それでも警戒ぐらいはするがね。

 この部屋は妙蓮寺の中では一番奥にあって、かなり涼しくはあるが女性はじっとりと汗をかいている。それを頭に置いている濡れタオルとは別のタオルで拭った。

「しっかし、よく眠るなー。私もそのぐらい寝たい」

 ほとんど私がタオルの交換などをしているので水蜜は本当にやることがない。あぐらをかいていたが足を崩すとそのままゴロンと横に寝ころんだ。

「それには私も同意見だが、君も少しは手伝ってくれないか?私の負担ばかり大きくなっていっている気がする」

「だってナーズリンが全部やっちゃうからじゃないかー」

「君がやらないからやるんだよ…」

 私が嘆息して水蜜に視線を向けるが体勢を変えようとはしない。ほらな。

「いいじゃないかー。私がやったら雑すぎて起きちゃうかもしれない」

「それで起きるような怪我が低度で眠りの浅い人に、そもそも看病なんか必要ない」

 目元が汗で濡れていて、熱いのか苦しそうに呼吸をしている女性の汗を拭う。額に乗せていたタオルに手を伸ばすと、既にほんのりと温かくなってきている。

 切断された腕から病原菌が入ったのか、単純に痛みで熱が出ているのかは知らないがかなり発熱している。タオルの交換が速くて大変だな。

 額からタオルを取り、冷えた水の入った桶の中へと入れた。タオルを水の中から出して絞り、女性の額に乗せる。これも何十回目かわからないな。

「…………!」

 女性がかすれた声で何かを呟いている。起きたのかと思ったが、多分また悪い夢でも見ているのか傷が痛んででもいるのだろう。

 また、目元に汗が浮き上がって流れて行っている。そう思って手を伸ばそうとするが、定期的に流れているその汗は、汗腺から出たものではなく涙腺から分泌された涙だった。

「……泣いているのか?」

「んあ?どうした?」

 私が誰に言うでもなく呟くと、半分寝ぼけていて聞いていなかったのだろう。自分に話しかけられたと思った水蜜がそう聞き返してくる。

「いや、なんだか彼女が泣いてるようだったのでね」

 寝ている体勢から座り直した水蜜に言うと、彼女は身を乗り出して女性のことを覗き込んだ。

 ゆっくりではあるが少しずつ流れ出てまつ毛を濡らし、溢れ出ている涙が一定量溜まると目尻の方から伝って行く。

 会話がってあまり聞こえていなかったが、見ることに集中して会話が無くなると、静かな部屋では寝ている彼女のうわごとがよく聞こえた。

「…違…う……私…じゃ……ない………二人…を……殺し…てなんか……ない……!!」

 歯を食いしばり、目を瞑っている女性はギュッとかけられた布団を握りしめ、かすれて聞き取りずらい小さな小さな声でそう呟き続ける。

「………」

 水蜜はそれを聞くと疑いの目つきを女性へと向ける。本当は起きていて、自分が有利になるようなことを言い、良い方向へとことを運ぼうとしているのではないかと。

 正直に言ってそれは私も考えたため、彼女の汗ばんだ首元をタオルで拭きとって動脈の鼓動を感じることのできる位置に指を置いた。

「おい、君は起きているのか?」

 もしこれが聞こえていて、理解できていれば多少の鼓動の変化は感じることができるはず。相手が誤魔化して聞こえていないふりをしようとしても、魔力調節された心臓の鼓動は強さもリズムも変化するからだ。

 変化は無し。なら質問を変えてみよう。意外とこの程度では平常心を失わない可能性だってある。

「君が寝ている間に君をどうするか、ということに変更があったんだ。これから君を八つ裂きにして殺し、博麗の巫女に引き渡す」

 私がそう呟くと、水蜜も起きているかいないかを確認したかったのだろう。こっちに向けているわけではないのに寒気がするほどの殺気をいきなり出した。

 不意打ちで殺気を出したが、彼女は鼓動の変化どころか平常を保ったまま、うわごとを呟き続けている。これには矛盾がない。

 寝ている間、人間だけではないがすべての感覚が鈍感になる。起きていれば戦闘態勢に入るかもしくは心拍に乱れがあるだろうが、寝ている今は殺気を感じる取ることができないのだろう。

 呼吸によっても心臓の拍動する速度は変化する。交感神経と副交感神経が作用し、呼吸に合わせて心拍が速くなったり遅くなったりしている。いたって普通だ。普通に彼女は寝ている。

「寝てるね…」

「確かか?」

「うん、不自然に強くなったり弱くなったり、リズムが狂ったりもしていない。寝てるよ間違いない。もし起きてたとしても、こんなふうに調べられていたら少なからず緊張はするだろうからね」

 私がそう水蜜に言うと彼女は座っていた状態から、再度床に寝転がって上を見上げながら呟いた。

「こいつの存在がわからなくなってきたな」

「今言ったことかい?」

「ああ」

「まあ、それは彼女らは、殺してないってことかもしれないけどね。殺してはいない…でも、加担はしているみたいな」

「そうかもしれないなー」

 水蜜は特に興味なさそうに呟く。まあ、そうではないだろうな。

「なあ、村紗」

「なんだ?」

「包帯をしてからしばらく経つ、今は血が止まっていたとしても巻いたばかりの時には血は出ていたから包帯は血まみれだと思うんだ。だから、彼女が寝ているうちに交換しないか?」

 私がそう提案すると、水蜜は少し考え込むと起き上がる。

「別にいいけどほとんど手伝えないと思うよ?」

「それでも構わない。腕を持ち上げたりとかしてくれればいいよ」

 私は女性の腕を掴み、布団の上に引っ張り出した。包帯と布でグルグル巻きにされた左腕の巻き終わりの結び目を解き、逆の手順で包帯を外す。

 それの支障にならないように水蜜が腕を持ち上げる。一回りも二回りも大きかった女性の腕が細くなっていく。

「あれ…?」

「どうしたんだ?」

 何かあったのかと女性の方を水蜜は警戒を始めるが、彼女がおかしな光度をしたとかではない。巻かれた包帯に違和感があった。肘ぐらいまでしっかり巻いていた包帯が手側にすこし移動している気がしたのだ。

 まあ、寝ている間にほどけてしまったとかそういったものだろう。私はそう自分で解釈し、水蜜に何でもないということを伝えて包帯を剥がした。

「……え?」

 全て剥がし終えると今度は私ではなく水蜜がそう呟き、眉をひそめる。彼女の表情には誰が見てもわかるぐらいに困惑した様子だ。

 まあ、私も隣で同じような顔をしているがな。

「………これは……」

 私はそう呟くことしかできないほどに、驚いていた。

 

 

「もう、放っておけばいいんじゃないか?戦い始めてからもう十年にもなるだろ?あいつらは変わらなかった。人間よりも戦力は多いがそれでも少しずつの小競り合いでこっちの数も少なくなってきた。もう、干渉するのはやめないか?」

 私の古くからの戦友は、床に寝転がったままこちらを見ることなく、作戦を考えていた私に外を眺めながらそう呟いた。

「……。ここでやめたらそれこそ今までやってきて、死んでいった仲間たちが報われない。それに、あたしはあいつらがああなる前に戻ってほしいだけだ。誰も争わず、平和だった…あの頃にな……」

 昔を懐かしんで行った私に対し、戦友は体を起こすと近くに置いていた酒の入った器を拾い上げ、一口煽る。

「平和だった頃が嘘で、今が本当の奴らかもしれないが…十年だ。十年経っても戻らなかった。あいつらを何度も説得しようとしてきたが、全て無駄に終わった。それはこれからも変わらんだろう。奴らの考えを元に戻す前にお前の体が持たないぞ」

「わかってる。この十年間戦い詰めだったからな。でも、そうだとしても、あたしが戦いをやめる理由にはならない。……それに、博麗の巫女が力を付ければ今まで邪魔をしていたこっちに当然矛先が向く。戦い続けたあたしたちはもう最後まで戦うしかないんだよ一人になってもな」

 私が戦友に言うと、彼女はわかっている、私も最後まで付き合うさ。と言って器に酒を注ぐと私に差し出してくる。

「ありがとう。でも大丈夫だ」

 いつ戦闘になってもおかしくはないため、あたしは彼女が差し出してくれたお酒を飲まずに返した。

「…たまには休め、この数年間お前が休んでいるところを見たことがないんだが?」

「休む暇があったら休んでいるさ」

 私がそう返すと戦友は苛立ち気味にため息を漏らす。少しは自分の体を大事にしろということだろう。

 親指の付け根に小さな古傷のある右手で、戦友は器を傾けてそこに注いでいた酒を一気に飲み干した。

 

 

 時間が経過し、太陽の位置が真上辺りにまで来ると光が当たる面積が増え、朝よりも気温がグッと上がった。

 そのため、一番涼しいこの部屋でも暑いと感じるぐらいには室温が高くなり始めている。布団で寝ている女性からしたら布がかかっている分だけ私たちよりも暑いことだろう。

 女性は玉の汗を額からじっとりとかき、苦しそうに呼吸しているが起きる気配は全くない。

 そろそろお腹がすいてくる時間帯だが、朝食を食べてからあまり動いたりしていなかったからか、あまり空腹感を感じない。

 すでに調理が始まっているらしく薄っすらと料理のいい匂いがしてくる。作ってもらった手前食べないのも失礼になるだろうし、少しでもいいから食べるか。

 そう考えていると廊下の方向から誰かが歩いてくる足音が聞こえてくる。響子辺りがご飯をどうするか聞きに来たのだろうかと思ったが、そのリズムや音の加減が彼女とはまた違う。

 誰だろうかと女性の目尻から流れ落ちて行く涙をふき取って、思いふけっているとこの部屋の前で止まり、障子が開いた。

「ナーズリン。どうですか?」

「聖か…。これと言って何かあったわけではないな。あれから一度も起きてないしな」

 部屋に入って障子を閉めた聖が私の横に正座をする。どうかしたのかと彼女に聞くと聖は女性を見下ろしたまま答えた。

「いいえ、特に聞いた理由は無いです。話をしたのなら何を話したのかを聞きたかっただけですので」

「そうか」

 そこから約20分。居眠りをこいている水蜜も含めて聖と私は黙って、眉間にしわを寄せて唸っている女性の看病を続けた。

 温かくなったタオルを冷やすために取ろうとした時、女性が少しだけ目を開いて伸びてきている私の手を眺めた後、こちらに顔を傾けて見てくる。

「……ナーズリン」

 小さく、かすれていて聞き取りずらいが何やら私の名前を呼んだようだ。

「起きたか。調子の方はどうかな?」

「悪くは……ないんだが………水が…欲しいぜ……」

 何時間もぶっ通しで泣いたり汗をかいていて軽く脱水状態にもなっているのだろう。居眠りをこいている水蜜をたたき起こし、食堂まで水を取って来るように頼んだ。

 生あくびを堪えながら寝ぼけている水蜜は障子を開き、閉じるのを忘れたまま食堂の方へと歩いて行った。

 熱いと感じていたが、外の廊下の方が熱いらしく生暖かい空気が入り込んできたため、私よりも近い位置に座っていた聖が障子を閉めた。

「私たちはそろそろお昼なのですが、あなたも一緒にどうですか?」

 障子を閉めた聖は、額に乗っていた濡れタオルを取った女性にそう提案をする。

「ああ……。いただこうかな…。…腹が減ったぜ」

「わかりました。それではナーズリン。食堂でもう作り始まっているはずなので、彼女の分も作ってもらうように伝えてください。それと、持ってくるようにも」

 まったく、結局私も食堂に行く羽目になってしまったか、水蜜がいるときにこの会話をしておけばいくのは彼女一人で済んだのに。

「わかった」

 とりあえず私も水蜜同様に部屋から出た。廊下に入ったとたんに蒸し暑い空気に晒され、どっと汗腺から汗が噴き出てくる。

「暑いな」

 手を扇のようにパタパタと振り、涼しい風を自分に向かわせるが生ぬるい風しか来ず余計に汗が出てきそうだ。

 廊下を歩き、食堂につくとキッチンの方で水蜜がコップに水を汲んでこっちに向かおうとしているところだ。まな板を出して響子たちは野菜などを切っている。

「幽谷。ちょっといいかい?」

「どうしたの?ナーズリン。」

「いつもよりも少し多めに作ってくれないか?」

「わかったよー。女の人が起きたの?」

「ああ、そんなところだよ。…丁度彼女の好きなキノコもあるようだし、それで何かキノコ料理でも作ってくれ」

 調理場は火を使ったりするためかなり暑く、流れている汗を拭っている響子に言うと彼女はこちらを見て言った。

「一応病人だし、消化のいいものにしなくていいの?」

「どうなんだろうか。別に風邪をひいてるわけじゃないしな……どっちの方がいいのかわからないな…。まあ、胃腸が悪いわけでもないしキノコ料理でも大丈夫だよ」

 私も少し喉が渇いていたため棚に置いてあるガラスのコップを取り、シンクの水道で八文目ほどまで水を注いだ。

 辺縁に口をつけ、コップを傾けて少しひんやりしている水を飲んでいると野菜を切っている響子に声をかけられた。

「そう言えば、あの人がキノコ好きって何で知っているの?そんなに仲良くなったの?」

「……え?そんなこと言ったかい?」

 ほとんど空になったコップから口を離し、さっき自分の言ったことを思い出すと確かに私はそう響子に伝えている。

「あれ?言ってなかった?」

 私の考え込む時間が長かったらか、響子は野菜を刻む手を止めて首をかしげ、こっちを見てくる。

「いや、確かに言っている。多分誰かと間違ったんだと思うよ。結構暑いし少しボーっとしてたのかもしれない」

「あー、そういうことか~。あんまり暑いところにいると頭回らないもんね」

 コップを水で軽く洗い、布で水滴をふき取ってさっきまで置かれていた場所に戻して聖たちの部屋に戻ることにした。

 しかし、なぜ私は頭が回らなかったとはいえ、そんなことを言ったのだろうか。確かに暑さで少しボーっとはしていたが、知らず知らずのうちに言ってしまっているような内容でもないだろう。

 しかも、よくよく考えれば私の知り合いにキノコ好きな人間、妖怪はいない。だからこそ不思議だ。なぜあの女性がキノコ好きだなんて言葉が出て来たことに。

「まあ、いいか」

 たまたまだろうと結論を出し、私は部屋へと向かった。

 

 部屋に戻ると水蜜が女性の状態を抱えて起き上がらせ、もう片方の手で持ったコップを口元に持っていき、飲ませている。

 喉を鳴らして一息で八割ほどあったはずの水を飲み、ふうっと息を小さく吐く。水蜜は聖にコップを手渡すと女性を再度寝かせた。

「それで、君はいったい何者なんだ?人間なのか?」

 聖か水蜜が女性に何か質問を投げかける前に、私は寝かせられて息を付いた女性に問いかける。

「私は…普通の魔法使いで、人間だぜ」

「そうか、それじゃあ。少しやってもらいたいことがあるんだがいいかな?」

 私が何かしたか?と言いたげな表情をし、首をかしげている女性はとりあえずうんと首を縦に振ってうなずいた。

「少し、左手を見てもらいたいんだ」

 私がそう伝えると彼女の顔が曇る。そりゃあそうだ。切断されて腕が無くなっているのだ。その現実を受け止めたくはないのだろう。でも、

「いずれは受け止めなきゃならないんだ。それが速いか遅いか違いはそれだけ。どうせなら早い方がいいじゃないか?」

「そ、それはそうだが…」

 やはり、彼女は嫌そうに渋る。

「自分で見るのが嫌なのなら、私が手伝ってあげよう」

「ナーズリン。あまり無理はさせない方がいいのではないですか?」

 不安そうな顔をした聖が私に言ってくるが、それに返答することなく女性の左側へと回り込んだ。

「ナーズリン!」

 聖が怒鳴って来るが私はため息を付きつつ女性の傍らに腰を下ろす。

「……。ホントに彼女のことを助けたいのなら、あまり遅すぎても彼女のためにならない。いつまでもここにいれるわけでもないしな」

 聖に私が言うと彼女は押し黙った。初めのうちは欺けても、騙して隠し通すにも時間の経過が進むごとに難しくなる。あまり時間が経ちすぎると博麗の巫女がこの場所に来る可能性は高い。

「君は、人間なんだね?」

「ああ、妖怪に見えるか?」

 正直言って妖怪によっては人と見分けが付けられない奴もいるが、妖怪が持っている独特の雰囲気というのを彼女は持っていないため、人間ではあるだろう。あとは切断された腕の断面と構造的にもね。

「なら聞くが…」

 私は女性の布団の下に隠れていた左腕を出させて見える位置にまで腕を持ってこさせ、先ほど巻き直した巻き終わりの部分から包帯を解き始めた。

「どこの世界に切断された腕が再生する人間がいるんだ?」

 解き終った包帯の中から出て来たのは、昨日までは切断されて無くなっていたはずの手が何事もなかったかのように生えている左腕だった。

「な…!?…確かに…切断されたはずじゃ…!?」

 当の本人であるはずなのに、目を見開きこれ以上ないぐらいに自分の左手を見つめて絶句している。

「な…ナーズリンたちが腕をくっ付けてくれたんだろ?」

「いや、私たちは君の腕がどこにあるかわからなかったからな、止血して包帯を巻くことしかしていない」

 私がそう伝えると、女性は目を見開いたまま顔を青ざめさせる。彼女は自分が人間だと言ったがそれが嘘だったのか、本当に知らなかったのか。今回は反応を見るに後者だろう。しかし、自分が人間じゃなかったと知らずに生まれてくるものなど居るのだろうか。

「もし、切り落とされた腕をくっ付けたんだったらそんな…人間か?なんて聞かないと思わないかい?」

 青ざめている女性だけでなく、驚きで言葉を発することができていない聖をよそに、私はそう言った。

 

「…やっぱり変ね」

「何がですか?」

 前日女性を見失ってしまった場所で情報を探してみたが、なんだか変なのだ。妙蓮寺の水蜜が怪我をしたと言っていたが争った形跡がない。

「…争った跡が見当たらないのよ。地面が渇いて硬くなってたからかしら……でも、普通なら何かしらの痕跡ぐらいは残ってるものよね…」

「まあ、まったくないのはそれはそれでおかしいですよね…妙蓮寺に行ってみますか?」

 白髪でおかっぱ頭の魂魄妖夢は妙蓮寺の方向を見ながら私に提案をしてくる。それについては別に異論はない。状況的に聖辺りが連れていったかもしれない。近くにはぬえもいたし、まったく別の者に見せられた可能性もあるだろう。

「…さてと、行くとしましょうか……妙蓮寺に」

 もし連れて行ったとしたら、いったい何を考えているんだか、異次元の人間を助けるなんて。お祓い棒を握りしめ、私は妙蓮寺へ向かった。

 




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