東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています

それでもいいよ!
という方は第八十一話をお楽しみください。


今回は少し短めです。


異次元へ
東方繋華傷 第八十一話 こちらから


「奴らの空間を見つけた…今度はこっちから攻め込める」

 紫がそう提案してくれるが、その案に対して私はすぐにうんとうなづくことはできなかった。

「…でも、奴らの目的もわかってないのに向こうに攻め込むのは得策とは言えないんじゃないかしら?」

 紫が奴らの空間を見つけてくれたとは言え、人数の少ない私たちが向かっても十分に戦えるかわからない。もう少し手を貸してくれる人たちを集めなければならない。

 敵の人数が多ければそれだけ押し切られやすいということとなり、私たちに味方に付いてくれる奴らが向こうにいるとも限らない状況において、無鉄砲に突っ込むのは自殺行為に等しい。

「まあ、そうね。とりあえずは人数を増やしましょうか。咲夜たちが死んだとなれば今まで不戦を決め込んでた連中も手を貸す可能性があるし」

 咲夜の強さは幻想郷ではかなり上の方で、知らない者はいないだろう。そんな人間が殺され、さらにそいつらが自分たちに攻撃してくる可能性も捨てきれないのだ、協力しない方がその代償を高く払うこととなる。それがわかっているなら協力はしてくるはずだろう。

「…それは文に頼んで協力を仰ぐとして…今はあの魔女を追うとしましょう。咲夜と早苗の仇よ」

 私が痕跡を探すために妙蓮寺の裏手に回ろうとするが、紫が進行方向に割り込んできて道を塞いだ。

「…邪魔なんだけど?」

「霊夢、少しは頭を冷やして冷静になりなさい。貴方はよくわかってるでしょう?深追いは禁物よ」

「…この前の異変では深追いしなかったから鬼人正邪に逃げられたじゃない。後々面倒にならないようにできれば今のうちに始末しておきたいのだけれど?」

 私はそう言って紫の制止をはね除け、女性のことを追おうとするが彼女はやはり私のことを進ませようとはしない。

「いい?私が向こうに行ったことで向こうの霊夢たちでなく、向こうにいる他の勢力の奴らにまでおそらくここの存在を知られたわ」

「…だから何?」

「だから何じゃないわよ。向こうで同士討ちしてくれるならそれでいいけど、隠す必要もないと判断されてスキマを開けられたままにされたらどうするつもり?」

 紫の言いたいことがようやく分かった。異次元霊夢たちは他の勢力に知られないようにするために数日おきにこの世界に来ていた。

 だが、ばれてしまって私たちと他の勢力を同時に相手にするのなら異次元霊夢たち以外の奴もこっちに来れるように差し向け、三つ巴の状態に持ち込む可能性は少なくない。いつそうなるのかもわからないため、一人の人間に固執して労力を割くわけにはいかないのだ。

「…それでも……」

「あなたの仇を討ちたいという気持ちはわかるわ…」

 私が賛成するか決めかねていると、彼女は持っていた傘を閉じてこちらを見ている聖たちの方を横目に再度言った。

「世界と仇を天秤にかけて仇が勝るのなら行ったらいいわ。好きにしなさい。………でも聞くけど、あなたの使命は何?その時の感情に身を任せて自分の欲を満たすことかしら?」

 世界と仇を天秤にかけて、か。そんなのかけることができるはずがない。私が何も言えずにいると紫は続けて巫女の使命について説いてくる。

「…わかってるわよ……。…私だって、自分の代で幻想郷を終わらせるつもりはないわ」

「結構。奴らがいつ来てもいいように力を温存して置きなさい」

 私は小さく頷き、聖たちに一言謝ってから帰ることにした。敵を追っていたとはいえ柱を一本へし折り、数度に渡って爆破したわけだし。

「ええ」

 私が小さく返答し、聖たちに向かおうとすると紫がまだ悔しそうにしている妖夢に声をかけた。

「あなたは納得していなさそうね」

「はい…。友人を殺された身としてはこのまま引き下がりたくはありません」

「まあ、そうでしょうね。でも、遅かれ早かれ奴らと戦ってるならそのうち会えるわよ。」

 紫は刀の柄をギュッと握りしめている妖夢に対してなだめるように優しくつぶやく。

「本当に会えるんですか?どこかで勝手に殺されてしまっては困ります。二人を殺した奴は絶対に私たちが倒します」

「大丈夫よ。霊夢にこれだけ追われて逃げ切れる奴がそこらで勝手に死ぬとは思えないわ」

 まあ、そうだろう。逃げ足の速さもだが、純粋に咲夜たちを殺せるような奴がそう簡単に死ぬものか。

「……でも、本当に彼女が二人を殺したのかしらね?」

 私がそう考えているとき、紫は最後に意味ありげなことを一言呟いた。

「…それってどういう…」

 歩き出していた私は、紫を問いただそうと振り返ると既にスキマが閉じたところで、空中にあった亀裂は消えてなくなった。

 

 

「本当によかったの?」

 私が先ほど妙蓮寺の下から救出した魔理沙にそう尋ねると、彼女は何が?と一言呟いた。

「自分に濡れ衣を着せてよかったのかって聞いてるのよ、あまり自分にばかりヘイトを向けすぎると身が持たないわよ」

 妙蓮寺内で霊夢たちに光を見せて目をくらませたあの時、近くにいたぬえに魔理沙は自分が脅して騙していたということにしろと話していた。

 聖たちからしたら疑いが晴れ、私としても異次元の奴らに脅されたという名目で彼女らを戦いに参加させられるためいいことしかないが、魔理沙からしたらそういう危険な奴だと判断され、霊夢達ではない他の奴らに追われかねない。

「ああ、そんなことか…私なら大丈夫だぜ。紫からしたら聖たちを取り込めない方が痛手だろう?」

 まあ、それはそうなんだが、彼女を見てるとなんだか危なっかしくて仕方がない。目隠しをして綱渡りでもしているようでこっちがハラハラする。

「まあ、いいわ。……そう言えばなんで聖は貴方のことを匿ったりなんかしたのかしら?」

「知らん、なんか話してみたかったとか言ってたぜ」

「そう…。聖も危ないことするわね。……ああ、それと……」

 霊夢達にした説明と同様のことを魔理沙に言うと、彼女は呟いた。

「じゃあ、向こうに行けるってことか?」

「行くの?」

「ああ、私が行けば霊夢達だけじゃなくて他の奴らも動くだろうから、同士討ちを狙えるはずだぜ」

 彼女は妙蓮寺に何か忘れ物をしていないかバックをひっくり返して中身の確認を行っている。

「そ、行くのならそれでいいけど、いつ行くの?」

「勿論、今すぐに行くに決まってるぜ」

 装備の確認が終わったのか魔理沙は取り出した瓶や服などを綺麗にポーチの中へ詰め込み、肩から下げて立ち上がった。

 迷いなく返答をしているが、この子は大丈夫なのだろうか。話を聞いただけだが十年前にここに来た際は血だらけだったというじゃないか、本当に向こうに行けるのだろうか。

「それじゃあ、つなげるわよ」

「ああ、頼むぜ」

 ええ、と私は返答を返して境界を操る程度の能力を使用し、奴らの世界へとスキマを繋げた。初めに空中に黒い線が縦に一メートル程度の大きさで現れると、次に瞳を開くようにしてそれが左右に開いた。

「つなげたわよ」

 私が横に立っていた魔理沙にそう言って彼女のことを見ると、さっきまでの落ち着いた雰囲気が一変して、呼吸が荒くなっているのに気が付いた。

 心なしか顔も引きつり、顔色も悪いし瞳孔が開いていて緊張しているのがパッと見てわかる。やはり無理だったか、幼少期のトラウマというのは落ちない錆びのように心の奥底に根ずく。

「ちょ…ちょっと待ってくれ…!」

 ゆっくり呼吸をして気分を落ち着けようとしているが魔理沙は額から冷や汗を流し、涙を瞳に一杯に溜めている。小動物のようにガタガタ震えている彼女を眺め、私は冷静にやはりなと心の中で呟いた。

 早めに行くかどうかを提案しておいてよかった。出なければここぞという時に行けず、作戦が失敗するということにもなっていただろうからだ。

「いけるの?いけないの?」

 多分、向こうの世界に行くことは無理だろうが一応魔理沙に聞くだけ聞いてみたが、私の声が聞こえていないのか返事を返す余裕もないのかは知らないが、返答が返ってくることは無い。

 今は無理そうだな。スキマを閉じようとするが、苦しそうに胸を押さえてうずくまっている魔理沙が掠れ、震えている声で何かを呟いた。

「大…丈夫天…だから、…今から……向こうに……行く…から……!」

 震える足で地面を踏みしめ、ゆっくりと立ち上がった魔理沙は気分が悪いのか口元を押さえている。なんとかヨタヨタとスキマの前まで歩くが向こうに行ったところで何もできやしないだろう。

 異次元霊夢を倒して霊夢たちの消されている記憶を取り戻すと言っていたが、こんな状態では記憶を取り戻す以前の問題だ、こんなのに何ができるというのか。

 そう思っていると魔理沙の体がひときわ大きくびくりと震える。どうしたのかと声をかけようとするが、彼女が震えた声で私に言った。

「ゆ、紫…!スキマを……閉じて…くれ…!……早く…!!」

「魔理沙?」

 トラウマでスキマの中へと入れないにしてはなんだか様子が変だ。話を聞こうと彼女の肩を掴んで振り返らせようとすると、見えてしまった。スキマの中から伸びてきた手が魔理沙の服をがっしりと掴んでいるのが。

「ひっ…!!?」

 魔理沙の顔に恐怖がよぎったと思たら、すでに彼女はスキマの中へと引きずり込まれていた。あんな精神状態の子が生きていけるはずもない。急いで私も行かなければならない。

 スキマの中へと飛び込もうとした私の顔や服に、生暖かく真っ赤な鮮血が飛び散った。そして、耳にスキマを通して届いたのは魔理沙の絶叫だ。

「魔理沙…!」

 血を見たときは焦ったが、霧状に飛んできた血は大した量ではない。場所にもよるだろうがそこまでの重傷を負ったわけではないはずだ。半分は自分の期待だが、私はスキマの中へと飛び込んだ。

 




次は、かなり先になると思います。
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