行事にひと段落が付いたので、おそらく投稿のペースは上がっていくかと思います。
なので、気が向いたら見てやってください。
注意事項
自由気ままに好き勝手にやっています。
それでもええで!
という方は第八十六話をお楽しみください!
異次元チルノを中心に、辺りの気温が冬でもここまで下がらないというレベルの温度までガクンと下がっていく。
パキパキッと空気中に存在する水分が高速で凍結していく音。上の葉っぱや枝からはツララが出来上がっていき、地面からは針のように氷が急速で成長していく。
それらが巨大化と合体を繰り返し、異次元チルノと私の間に分厚い壁を作り出す。幾度か行った銀ナイフでの攻撃によって負傷した彼女の時間稼ぎだ。
魔力で冷気のダメージを軽くしているとは言え、指先が少々悴んできている。時間をかけて壁を破壊している暇はない。
空中に魔力を撒布。それらに咲夜の銀ナイフの性質を持たせ、得物を作り出した。それらには更に前方方向へ高速で飛んでいく魔力を含ませている。
「行け」
私の命令と同時に氷の壁に十数本の銀ナイフがランダムに突き刺さっていき、亀裂を生み出していく。
耐久性能がガクンと落ちた氷の壁面へ向け、魔力を凝縮したエネルギー弾をぶっ放す。私は弾幕を放ちつつも走り出し、破壊と同時に突撃できるように銀ナイフの準備を整える。
エネルギー弾が壁面に着弾、ソフトボール代の弾幕は前方方向へはじけ、エネルギーを放出すると銀ナイフの周りで留まっていた亀裂がより大きく広がり、粉々に砕け散った。
寒さで肌がピリピリと痛む。両手に持った銀ナイフを魔力で強化し、氷の壁の向こう側へと一気に飛び込んだ。
その先にいた異次元チルノは武器を作り出していたらしい。それだけでなく刀であれば、その刃の長さの分だけ切れ味を考えて形成しなければならないのだが、彼女は先端部分のみを気を付ければよい槍を作り出したようだ。あれなら短い時間で切れ味の良い物を形成できる。
霊夢や咲夜たちの戦い方を見ていた私からすれば、彼女の太刀筋はめちゃくちゃだ。かわすことなど容易である。
槍の刺突攻撃をしゃがんで避けた。伸びきった異次元チルノの手首を掴み、二の腕へ当たるように銀ナイフを振り上げた。
掴んでいる銀ナイフから伝わって来る、気分が悪くなる肉と骨を切断する感触。今回得物を離してしまうことは無く。絶叫している異次元チルノを蹴り飛ばした。
ダラダラと切断された腕から赤黒い血が流れている。後ろに下がった距離の分だけ鉄臭い赤い線が出来上がる。
空中に咲夜の銀ナイフの性質を持った魔力を複数配置、それらを銀ナイフへと変換し、切断された腕を押さえて出血を少なくしようとしている異次元チルノへ射撃。
高速で飛来する銀ナイフを異次元チルノはダメージからか、よろけて避けることが出来ずにいくつか体に突き刺さる。
「がっ…!?」
膝をついて倒れ込みそうになっている異次元チルノへ、再度銀ナイフを叩き込もうとするが、後方から聞こえてくる破裂音にすぐさま振り返った。
異次元大妖精は異次元チルノの様子からもう一度瞬間移動して、さらに私の後方へ移動する余裕もなかったらしい。
そのまま突っ込んできた異次元大妖精は片手に鋭く光る得物を持っている。まだ中に含まれている魔力が途切れていなかったらしく、投擲していた銀ナイフを武器として使ったようだ。
それをでたらめなフォームで振り下ろしてくるのだが、彼女へ向けて進んでいた私は銀ナイフの内側へと入り込み、腕を掴んで当たる直前に受け止める。
腕を捻り上げ、大きく隙を見せているわき腹へ銀ナイフを抉り込ませた。十数センチはある刃物の切れ味を強化していたおかげで肉体には驚くほど簡単に入り込む。
ピンクと赤色の軌跡を体に刻み付けつつ切り進み、背骨を削って背中側まで一気に切り抜いた。
「あがっ…ぁぁっ…!?」
苦悶の表情へと変わっていく異次元大妖精が逃げる前に、異次元チルノの方へと蹴り飛ばす。
血の線を残し、すぐ近くに倒れ込んだ異次元大妖精へ異次元チルノが手を伸ばそうとしている。
「くっ……大…ちゃん…!!」
げほっと血を吐いて倒れ込んでいる異次元大妖精も、異次元チルノの方へと手を伸ばそうとしている。
『あの二人は逃げようとしているようですね。』
銀ナイフにこびり付いている血を、軽く振って払っていた私に咲夜が話しかけてくる。確かに異次元大妖精の能力ならば簡単に逃げることが出来るだろう。
そう考えていると咲夜が話を続けていく。頭の中で咲夜の声が響いてくるということはそこで魔力を通して繋がっているということだ。いちいち口に出して話さなくても、意識が繋がっている最中ならば考えることは伝わるということだろう。
『何をしてるんですか?』
(何って、なんだぜ?)
『早く止めを刺してください』
「へ…?」
彼女が何を言っているのかわからなくなり、口から声が漏れてしまう。その私へ咲夜は淡々と言ってくる。
『え?ではありません。なぜ早く止めを刺さないんですか?また来られたら面倒です』
(い…いや……そうなんだが……)
『なにを怖気ついているんですか。私を手伝うと言った時点でこっちの私を殺すことになるんです。ただ遅いか早いかだけです。本番で怖気つかれても困るので、早くしてください。』
「…っ……」
血が付着している銀ナイフを見下ろした後、異次元大妖精達の方へ視線を移した。
「ぐうっ……チルノちゃん…」
倒れ込んでいる二人は地面を這いつくばって近づこうとしている。血がダラダラと零れていて普通の人間ならもうすでに死んでいることだろう。
『妖精ですし、死んでも生き返りますが、殺しておけば生き返って来るまでの時間が延長されることでしょうし、早く殺してください。十六夜咲夜を殺そうとしているときに邪魔されたらたまったものではないので』
(わ……わかってる…ぜ……)
咲夜から銀ナイフを受け取ったときにこうなるとわかっていたはずだ。でも、いざその状況になると生き物を殺すという現実に、握っている得物が小刻みに震えた。
そっちへ歩き出そうとするが足も震えてしまう。二人の伸ばしている手は後十数センチにまで近づいている。
「……」
手を伸ばしている異次元チルノの横に立つと、ゆっくりと血がこびりついている顔を傾けてこちらを見る。
「…っ……くそ……」
こっちを睨んでくる異次元チルノに対して、私は赤い得物を逆手に持ち替えた。震える銀ナイフを突き刺すためにしゃがみ、振りかぶった。
「…っ…チルノ……ちゃん……!!」
切羽詰まった異次元大妖精は切り口から血液とピンク色の内臓を零しているが、そんなことは気にもせず異次元チルノの方へ行こうとしている。
あとは振り下ろすだけ、あとは振り下ろすだけなのに、体が動いてくれない。
命に差はないと思うが、それでも夏に血を吸いに来たカを叩き潰すのと、この妖精を切り殺すのとでは訳が違う。
自分と同じ人間の姿をしているからそういう感情が沸いているということはわかる。だがしかし、それでも殺すということに抵抗があった。
「っ……」
息が荒くなり、刺される側ではないというのに恐怖を感じている。でも、咲夜が言っていることも間違ってはいない。彼女の目標以外にも私は戦うことになるだろう。そこで生かしておくわけにはいかない奴と出会うこともあるはずだ。
だから、私は異次元チルノたちを殺さなければならない。
「うああああああああああああああああああああっ!!」
振り下ろした私は叫びながら銀ナイフを異次元チルノへと叩きつけた。恐怖で見開かれた彼女の瞳。それと私と同じように異次元大妖精の絶叫が響き渡った。
その中で得物から発せられた音は、肉や骨を切り裂いていくものではなく。甲高い骨よりも固い物とぶつかった金属音だった。
異次元チルノや異次元大妖精は目を見開いたまま固まっている。うち片方はなぜ自分が生きているのかがわからない様子だ。
私が握っていた銀ナイフは異次元チルノの頬を掠り、地面に転がっていた石を叩き割り、半分ほどまでナイフは土にめり込んでいる。
「はぁ……はぁ……はぁ…」
先の戦闘ではあまり息は上がっていなかったのだが、ただ銀ナイフを振り下ろすという行動をするだけで息が切れている。
『………』
彼女は何かを言いたげにため息を付いている。わかっている言いたいことはわかっているが、それでも生き物を殺すという恐怖に勝てない。
銀ナイフを地面から引き抜こうとした私に向け、異次元チルノが口角を吊り上げて笑いかけてくる。
「…?」
なぜこの状況で笑っていられるのだ。と思った私に異次元チルノは勝ち誇った自信満々の声で叫んだ。
「ばーーーーーか!!殺せるときに殺せない甘ちゃんはここでは死ぬんだよ!!」
『後ろです!』
咲夜の叫びが頭の中をこだます。振り返った私の腹部へ下から突き上げる拳が叩きつけられた。
異次元チルノは目の前にいて、異次元だ妖精も視界の中にいる。となればさらに別の第三者が参戦してきたことになる。
振り返った私に見えたのは深い緑色の髪に中性的な顔立ちの女性。頭に生えている二本の触角が無ければ異次元リグルだとはわからなかったかもしれない。
「かっ……!?…あがっ……!?」
ビキッと固い物に亀裂が入る音が体内に反響し、骨を伝って耳まで届く。肋骨に亀裂が入ったか、または折れた。
そう頭の中で情報をまとめる前に私の体が上方へ持ち上がり、大きくなった異次元リグルからしたら非常に蹴りやすい高さだろう。
全身を強化していたとはいえ、ここまで簡単に骨が折れてしまうとは思ってもいなかった。しかし、魔力で痛覚を遮断して痛みを遮り、薙ぎ払う異次元リグルの蹴りを銀ナイフで受け止めた。
もちろんだが、それは当たればただでは済まない威力を誇っている。だが、所詮は肉体を強化した物であり、私が銀ナイフの当て方を間違えなければ容易に足を切断できるはずだ。
両手でガードしていた銀ナイフがぶつかり合った赤い火花ではなく、魔力が同士がぶつかり合った青い火花だ。
それと一緒に真っ赤な鮮血が散り、腕や体が飛び散ってしまう。それに視界が塞がれてしまうが、足首から下が切断された異次元リグルの方がダメージが大きそうだ。
「なぁっ…!?」
足首から先が無くなったことで、先ほどまでとは違う重心にバランスを崩したようだ。魔力で体を持ち上げ、両手に持っている銀ナイフを異次元リグルへ投げつけた。
まだ銀ナイフの勝手がわからず、一本は異次元リグルの肩へ当てることが出来た。だがもう一本は刃ではなく柄の方が当たって地面へと落ちてしまう。
周りに魔力を配置。咲夜の銀ナイフの性質を含ませ、空中に武器を生成した。残る魔力は強化と前方へ向かうもの。
チャンスがあればそれを物にしていかなければ勝つことはできない。異次元チルノが言ったこれについては反論することが出来ない。
配置して置いた複数の銀ナイフを異次元リグルと異次元チルノ、異次元大妖精へと叩き込んだ。三人の顔が歪み、苦痛に叫んだ。
これで彼女らが追ってくることはしばらくは無いだし、そのうちに三人から離れることにしよう。
一応銀ナイフを魔力で作っておいていたのだがその必要もなさそうで、安定した魔力を不安定にさせることで得物を魔力の結晶として消した。それと、魔力で遮断していた痛覚を解除した。
「ぐうっ……あぐっ…!」
今まで遮断していた断続的な痛みが呼吸をするたびに襲ってきて、普通の呼吸というものが出来なくなってしまい、魔力で肋骨の修復を促進させた。
「っ…く……あ…!」
堪らず近くの木に手を付き、倒れ込まないように体を支えた。呼吸を落ち着かせようとしているのだがドッと冷や汗が額から滲んでいるのがわかる。
ここを襲われたらひとたまりもないのだが、異次元チルノたちの方を見ると既に姿はなく、血だまりだけが渇いた地面に残っている。
私の目的はこっちの博麗神社にあるから早く向かいたいのだが、肋骨のヒビが治ってからにしよう。そのまま木によりかかって座り込んだ。
呼吸をすると痛みが肋骨から広がって来る。
「……」
痛い。肋骨だけでなく、体の節々まで痛くなってきた。魔力で痛みを和らげて骨の痛みが引いてきたことで、他の部分の痛みを認識できるようになってきたのだろう。
『まったく、なぜ刺さなかったのですか。その調子では私の目的を果たすことが出来ないのではないですか?』
すまないな。私が頭の中でそうぽつりと呟くと、数秒の後に彼女から返答が返って来る。
『すまないではありません。妖精だからよかったものの、あれらが博麗の巫女だったり、こっちの私だったらどうするつもりなんですか。貴方に死んでもらっては私が困ります』
(そうだったな。次からは気を付けることにするぜ。)
半分呆れた咲夜の声は私が謝ったことで一応は納得したのか、そこから聞こえることは無かった。
視界の上方に見える髪の色がいつの間にか銀髪から金髪へと戻っている。あのまま戻らなかったらどうしようかと思ったが、その心配はなさそうだ。
「…………」
咲夜たちのように霊夢を殺されてから、殺す覚悟が決まったのでは遅すぎる。というように理論的にはわかっている。しかし、殺人という倫理に反した行動に感情が無意識のうちにブレーキをかけてしまっている。
『そのブレーキは、いつかあなたを殺すでしょう』
私の考え事を咲夜は聞いていたのだろう。割り込んできてそう言ってた。
「………盗み聞きなんて、趣味が悪いぜ…」
『もう聞く気もないのでご安心を』
「口の減らない奴だぜ」
血の匂いはいいものだ。始めて嗅いだ時もそうだったのだが、私の気持ちを高ぶらせる。
血の味はいいものだ。初めて口に含んだ時もその独特な香りと混ざって、舌の上で踊る血液の味が私の気持ちを高揚させた。
血の感触はいいものだ。初めて肌で触れた時、その感触に全身が喜んで気分が上気させた覚えがある。
それは今でも変わらない。
だからこうして死体から溢れている生暖かい血液を服を脱いで露わにした上半身に塗り付け、溢れる液体を啜る。
むせ返る鉄の匂いや味、血液のヌルついた感触に私は興奮していた。呼吸が荒くなり、体の奥底が熱くなっていく。
服を完全に脱ぎ捨て、ベットリと血液の付着している指先を下半身に這わせた。足の指先から脛、太ももへと順々に血液を付けた。
自分の性癖には困ったものだが、死んだ者の血でこれをするほどに興奮することを私は知らない。特に、自分で殺した相手の血など堪らない。
局部へとゆっくりと指をあてがった。皮膚に血をつけていた時とは比べ物にならない快感が全身を襲い、私はそれに身を任せた。
脱ぎ捨てていた返り血まみれの服を身に着ける。血は体にこびり付いたままであるため向こうに帰ったら洗うとしよう。
自分の役目はまだ終わっていない。もぎ取った生首を拾い上げ、自分の方を向かせると虚ろな彼女の瞳は虚空を見つめている。
被り物をさせたままだと運びずらい。被り物を剥ぎ取り、床に投げ捨てた。サラサラなピンク色の髪の毛があらわになり、ヒュウっと通り抜けていく風に靡く。
首の角度が変わったことで彼女の唇から血液がだらりと垂れた。頬を撫で、その血を舌で舐めとった。
まだ時間はあるし、もう少しだけ楽しんでから帰るとしよう。彼女の口をこじ開け、唇を重ねて舌を潜り込ませて口内に残る血の味を再度に渡って楽しんだ。
次の投稿は一週間後とかになると思います。
早ければそれよりも早く投稿すると思います。