東方繋華傷   作:albtraum

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自由気ままに好き勝手にやっています。

それでもええで!
という方は第九十話をお楽しみください。

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東方繋華傷 第九十話 紅魔郷異変の始まり

 さて、どうするか。

「……」

 紅魔館の入り口から、三百メートルほど手前にある小さな林。

 深さが三十メートルはあり、長辺の長さが数百メートルはある大きな湖に、林の一部が面している。そこのすぐそばに生えている木に登った場所が紅魔館の入り口付近をよく見渡せる。

 太い木の枝に座り込み、葉っぱをずらすと赤いレンガで外壁を作られた大きな中世の館が姿を現す。

 魔法を発動し、光の屈折を利用して中を観察しようとするが、異次元パチュリーはいまだ健在らしい。屈折の魔法が紅魔館を取り囲む防御系の魔法に阻害され、かき消えた。

 紅魔館に張られている防御系の魔法は、あらゆる攻撃または監視などを防ぐ働きをしている、魔法を構築している魔力の性質からそれを読み取れた。

 魔力の性質は一部独立しており、張っている結界が消えないように異次元パチュリーが随時魔力を補給しているようなのだが、その補給をほぼ自動化しているらしく彼女に気が付かれることはないだろう。

 表示したとおり発動した魔法に対して、魔力の補給を自動化させることもできるのだが、それによって起こるメリットとデメリットを説明すると、自動化は結界を常に張った状態を保つことが出来る。魔力の補給し忘れで奇襲を仕掛けられたということが無くなるのだ。

 しかし、それにはデメリットがあり、自分の直接的な管理下に置いていないわけであるため、破壊まではいかない多少の外からの攻撃を受けたとしても、気が付くことはないのだ。

 自動化をしなければメリットとデメリットは自動化の真逆と言える。常に結界の魔力量を気にしなければならないが、どこからどう攻撃をされたということを攻撃された時点で気が付けるということだ。

 ということは、今回は魔力の補給は自動化されているということで、多少の行動なら見逃されるということとなる。

 しかしだ、これが理由で紅魔館から三百メートルもの距離を取る理由とはならない。ここからが本題なのだが、これだけの距離を開けているのは館の入り口に異次元美鈴が立っているからだ。

 魔力で目の前にレンズを作り出し、それに望遠鏡の性質を帯びさせると、反射などの現象が生じてレンズを通して見える景色がズームされる。

 真っ赤な長い髪、緑の帽子には黄色い星形の模様がある。寝ているのか瞼を閉じているだけなのか瞳の色はわからないが、高い鼻や小さな唇から顔立ちの良さが見てとれる。身長は私や霊夢よりも大きく、目の前に立たれれば見上げるほどの大きさだろう。

 いかにも体術で戦いそうな、動きやすい服を着ている。紅魔館の中は異次元パチュリーの魔法で見ることはできないが、見える範囲では敵は彼女しか見えない。

「……」

 それと、なぜ異次元美鈴から距離を取るのかだが、それは彼女の気を使う程度の能力だ。誰かに気を遣うなどではなく、生命のオーラというか、生物以外のあらゆる魔力の流れを彼女は感じ取ることが出来たりする。

 こっちの美鈴は、察知できる距離は二百メートルぐらいと聞いたことがある。異次元美鈴が同じ規格であると仮定して、保険を取って三百メートル離れたわけだ。

 視界に入った生物のオーラを見ることが出来るのか、範囲内に入った生物のオーラを感じることが出来るのかはわからないが、おそらく後者だ。

 以前、紅魔館に侵入しようとしたことがあるのだが、珍しく寝ておらず美鈴から見えない場所から侵入を試みたが、彼女はすぐに飛んできた。

 見える範囲しか気を見ることが出来ないのなら、こうはならないはずだ。その性質を利用すれば彼女をおびき寄せたりできるかもしれないが、彼女は門番であり誰かが近くにいるからと攻撃をすることもない。長距離からおびき出すことは難しいだろう。

 光の魔法で姿を見えなくさせても意味がない、私から行くしかなさそうだ。木の枝から降り、地面に着地すると身体強化を忘れていて、足が痺れた。

 望遠鏡の性質を含ませて維持していた魔力を消し、ズームしていた視界を元に戻して肉眼で存在を視認する。手先に魔力を集め、レーザーへと変換した。

 おびき出すことが出来ないのなら、こちらから近づいて彼女と交戦するしかないだろう。

 レーザーを手元に維持したまま紅魔館へと走り出し、おおよその感で異次元美鈴が察知できるギリギリ範囲外から彼女へ向けてレーザーを放った。

 これまでに何百発も放ってきた攻撃であり、二百メートル離れていたとしてもその軌道は目標に吸い込まれていく。

 気という名の魔力の流れを感じる異次元美鈴に、魔力の塊である弾幕の攻撃をすれば彼女のレーダーにひっかがらないわけがない。

 木の上で見ていた時よりも大きく見える異次元美鈴は、当たる直前に体を小さくひねり、頭部を貫くはずだったレーザーをかわす。

 軽いフットワークで避けられた。日ごろから避けたりなどの訓練をしているから、とっさの判断であれだけのスピードで移動している弾幕を避けられるだ。私も少しは見習って美鈴に訓練でもしてもらえばよかったぜ。

 異次元美鈴は知っての通り、接近戦を最も得意としている。近づかれれば赤子の手をひねるよりも簡単にやられてしまう。

 すでに次の射撃準備はできている。魔力を三つに分割し、それらをレーザーへ変換する。既に走り出している異次元美鈴に時間差をつけずに同時に掃射する。

 三本の軌跡はできるだけ重ならず、かつ、体を滑り込ませられない程度の幅しか開けずに異次元美鈴に当たるように設定している。

 だがこれが当たるとは思っていない。

 私の予想を裏切らず、異次元美鈴は飛んできているレーザーを全て素手でかき消した。弾幕ははじけると魔力の結晶を残して消えていく。

 美鈴の拳からは硬質化した魔力と耐久性能の強化を、体の方には身体強化の魔力が感じられる。

「なんて不利な戦いだぜ」

 これほどまでに戦いずらい相手もいないだろう。私にとって、このスタイルで戦う相手は天敵と言っていい。

 そりゃあ、接近戦で銃とナイフのどちらが強いかで言えば、当然ナイフだ。普通の人間でも、五メートル以内であれば銃を出そうとしている相手にナイフを突き立てることが出来る。

 それが武術の達人で、魔力が使える者ならばどれだけ離れていたとしても、五メートルの範囲内にいるのとそう変わらないだろう。

 その証拠に百メートルはあった彼女との差は、既に四分の一を切っている。私が何もしなければ、異次元美鈴なら一秒以内にこの距離を詰めてくる。

 このまま戦えば確実に追いつかれて、自分の射程の内側に入られる未来しか見えない。だが、何の対策もしなかったわけではない。

 少し前に咲夜から異次元咲夜とナイフで戦うためにと、ナイフの扱い方というのを頭の中に直接情報として貰った。その中に肉弾戦で戦うという情報もあった。今回はそれを使うしかないだろう。

 それが無ければ異次元美鈴に勝つことは不可能だ。ただでさえ戦闘能力が未知数のこちら側の人間なのだ、使わないわけにはいかない。

 異次元美鈴との距離が十メートルを切りった。至近距離でのレーザーの照射と共に、私は戦闘スタイルを射撃から接近へと切り替えた。

 身体能力を魔力で強化し、体を捻ってレーザーの軌道上から身体をずらしている異次元美鈴に向け、私は強化した拳を振り抜いた。

 

 

「っ!?」

 バサバサと草木を押しのけ、茶色い羽毛の生えた鷲が空に飛び立っていく。

 私があの鳥のそばを通ったからなのか、得物を見つけたからなのかはわからないが、すでにその体は豆粒ほどの大きさにしか見えない。

「驚かせないでよ…」

 どこに敵が潜んでいるのかがわからず、ずっと緊張しっぱなしで今も心臓が縮こまってしまったではないか。

「……本当にこの辺りにいるのか、疑いたくなってきた」

 文さんに魔女の恰好をした女性を探せと言われたが、なかなか大変だ。切断された腕から匂いはわかったが、辿るためにはまずは彼女が通った場所に行かなければならない。

 体臭の強さにもよるが、人間の匂いはそう長くは持たない。彼女が姿を消してからしばらくたった。どこかに籠って行動していなければほとんどの匂いが消えていることだろう。

 風で木々が揺れ葉っぱ同士が擦れて、ざわざわと音を発する。警戒は怠らないが、片腕を切断した手負いだからといって油断はできない。狩りの最後程注意しなければならないというのはよく知られた話だ。

「……」

 その場に立ち止まり、嗅覚に集中する。しかし、未だに魔女の匂いをかぎ分けられない。魔法の森に逃げ込んだという話があったからその場所を探しているのだが、既に移動してしまった後だろうか。

 でも、魔法の森はかなり広い。私たち鴉天狗がいる山を軽く超える広さがる。千里眼を駆使したとしても骨が折れる。

 はあっと小さくため息をついた。確かに誰かを探すのに特化した能力と嗅覚を持っているとは言え、この広大な森の中を一人で探せとは文さんも意地悪だ。

 まあ、捜せてかつ戦闘もできるのは私ぐらいであるため、仕方ないと言えば仕方ないのだが。文さんめ、霊夢さんの頼みなのだから、もう少し人手をよこしてくれてもいいだろうに。

 二時間は探してはいるのだが、捜索はまだ全体の三十パーセントも達していないだろう。切り上げるのはもう少し頑張ってからにするとしよう。

 少し移動してクンクンと匂いを嗅いでみるが、ここもはずれのようだ。地面なども確認してみるが、誰かがここ数か月以内に踏み込んだ形跡はない。

 魔法の森は湿度が高く、潤っていて誰かが通れば足跡となって残る。飛んでいたとしても草木の葉っぱが千切れているところなどはない。ここには本当に誰も来ていないようだ。

 痕跡を探してしばらくさまよっていると、前方方向から真新しい血の匂いが漂ってきた。腰に提げていた鞘から大太刀を引き抜いた。ただの太刀よりも長く作られた刀身が木々の間から刺してきている木漏れ日に反射してキラキラと輝く。

 盾を構え、前方方向ならどこから来ても攻撃を防げるように踏ん張る体制も整える。音を立てずにじりじりと血の匂いの方へ木を避けて近づいていくと、少しだけ開けた場所についた。

 かなり昔に木が倒れたらしく、それによってこの場所だけ開けた場所となっているのだ。暗い森の中でここだけ光が差し込んできていて、他と違って地面は乾いている。

 私が注目したのはその地面の一部分。そこには他の茶色とは違う、どす黒いこげ茶色の何かがこびりついている。液状の物が飛び散った跡のようだ。

 鉄臭い匂いはそこからする。ここで戦闘があったのだろうか。にしては死体もなければ戦った痕跡もない。あるのは血しぶき痕のみ。

 出血量から見れば大した怪我ではないだろうが、やはり攻撃を受けたというのに何もしなかったのというのは不自然だ。

 しゃがんで周りの匂いを嗅ぐと、さっき嗅いだ切断された腕と全く同じ匂いが血の香りに混じって鼻腔を刺激する。

「見つけた…」

 血の状態から詳しい時間はわからないが、三十分以上は経過していそうだ。飛び散っている血に触れてみると完全に乾いて酸化している。

 さて、彼女はここからどこに向かったか。匂いを辿っていくと、血が飛び散っている辺りで匂いは途絶えてしまっている。

 空を飛んだのかと考えたが、周りの木や葉っぱには彼女の匂いは残ってはいない。やはりその場所でぱったりと匂いが無くなっている。

 空から降りてきて匂いが消えている場所に、例の魔女が着地したわけではない。そうなれば一番古いのは着地した位置であり、匂いは一番弱いはずだ。

 そこから伸びている彼女が通って来た道の方が匂いが弱いということは、バックトラップをしたわけでもここに降り立ったわけでもないようだ。

 しかし、そうなると匂いが無くなっている理由が説明できない。水をまいた痕跡もないから私にわかることは匂いが途絶えているということだけだ。

 そうして頭を悩ませていると、魔女の匂いのほかにこの場所にもう一人誰かいたようで、知っている人物の匂いを捉えた。

「…この匂い……スキマ妖怪の匂い…?」

 黄色い髪に、薄紫の服をきた特徴的な傘をさしている女性が思い浮かんだ。スキマ妖怪の匂いは魔女と違ってこの場所にしかない。ピンポイントで現れたらしい。

 そして、魔女の匂いが途中で途絶えているのは、彼女がスキマ妖怪によって送り返されたからだろうか。戦闘になって魔女が出血したと。

 いや、それはない。敵である魔女を向こうに送り返したという話は聞いていない。そもそも送り返しているのであれば、その女性を探せと言うのも矛盾している。

 スキマ妖怪が単独で行動したということになるのだが、送り返した事実を霊夢さんにすら言っていないというのはどういうことだろうか。

 これが送り返していないのであれば、状況が変わって来る。なぜ出血しているのかはわからないが、これが騒ぎが収まるまで匿っているとかであるならばスキマ妖怪が向こうに手を貸しているということになる。

 匂いから争っている動きは感じられない。つまり、二人はここまで歩いてきて、魔女とスキマ妖怪はスキマに入って行ったということだ。

「…」

 これは、文さんには悪いが霊夢さんに急いで直接報告した方がよさそうだ。大太刀を鞘に納め、博麗神社に向かおうと振り返るといつの間にか接近していたのか、目の前に誰かが立っている。

「なっ!?」

 しまった。追跡に夢中になっていて周りへの警戒を忘れていた。不用意に大太刀を鞘に仕舞うのではなかった。

 そう後悔してもどうしようもない。今は相手よりもできるだけ早くこの刀を引き抜かなければならない。

 鞘に収まっている刀を抜き、敵めがけて刺突した。

 




十日後ぐらいになると思います。早ければもう少し早く投稿します。
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