それでもええで!
という方は第九十八話をお楽しみください。
試しにセリフと文章の間に段落を入れて見ました。
しかし、慣れていないので書くのにかなりの時間を要してしまいました。
諸事情により、これからリアルで時間が無くなっていくので、段落を開けて書くことが出来なくなってしまうかもしれませんが、何卒ご容赦ください。
「……」
少しまずいな。
正直なところ、部屋に入るのは容易だった。十数人からなる部隊で見回り巡回していても、光の魔法を使うことで敵から見えないようにさせなければ、鍵の入手することはできる。
それに、壁にかかっている鍵の性質をもつ魔力を設置して、そこから光が出るようにすれば鍵が置いたままと河童たちを欺くこともできる。
扉の前に数人の河童が立っていたが、彼女たちには強力な光を浴びせた。生物は許容を超える光を見ると失神する。それを利用して私は音もなく沈黙させることが出来た。
鍵を使って三つの扉を開いて、中に入ったまではよかった。
縦幅、横幅、奥行が正確に3.5センチの正四面体がいくつか置いてあるのを発見するまではよかった。
それを掴んで持ち上げた瞬間。その正四面体が置かれている机にはセンサーがつけられていたようで、警報がガンガンなり始めた。
「なっ!?」
完全に失寧していた。これだけのオーバーテクノロジーで形の変わる物質というのを作り出せるのであれば、この程度の設備を作れないわけがない。
私が驚いているうちに、私のいる部屋に河童たちが雪崩れ込んできた。エネルギー弾を数十個に分割し、扉から入り込んできた河童たちにショットガンの散弾を浴びせかけた。
「ぎゃあああああっ!」
一つ一つの威力は低くても、束になれば相当なものとなる。一番初めに入り込んできた数人の河童を壁にたたきつけた。
前の奴を吹っ飛ばしたことでその後ろにいた河童も巻き込み、叩きつけられたそばから皮膚が潰れ、内容物が壁や床にまき散らされる。
濃厚な血の匂いが廊下から部屋へ流れ込んでくる。もう誰の血か、誰の肉か、誰の体かわからないほどにぐちゃぐちゃに死体が混ざり合っている。
両手に魔力を集中させて片方をレーザーに、もう片方をエネルギー弾に変換した。匂いと一緒に清潔だったこっちの部屋にまで血が及び始めるが、私は気にすることなくその血の海に向かって歩き始めた。
にとりがやばいという話は聞いたし、目的の物も取ったからさっさとおとまするとしよう。
廊下に顔を出してみると、数人の河童たちが銃を携えているが、誰からも戦意は感じられない。目の前で仲間をひき肉にされた惨状に腰を抜かしているのだ。
座り込んで呆然としてる彼女たちの前に姿を現しても、誰も銃口をこちらに向けようとすらしない。
目を壁のようにやると、へばりついた肉塊がずるりと落ちて血だまりに落ちた。血がはねて靴に飛び散るが、あとで水で落とすとしよう。
今は呆けているが、時間が経てば自分の中でも整理が付き、襲いかかってくることだろう。脅威となる前に始末しておく。
レーザーをいくつかに分割し、座り込んでいる四人の河童の頭を正確に撃ち抜いた。熱線に射抜かれたことで血は出ていないが、当たった部分から後頭部まで綺麗に穴が開いており、絶命しているのは一目で見分けられる。
光の魔法を駆使し、他の連中が集まってくる前にここを抜け出すとしよう。施設に入る前、基地の中に置いてあったいくつかの車の下に、とある魔力を仕掛けて置いた。
その魔力には九割ほど爆発の性質を含ませておいたが、残りの一割には受信機としての性質を含ませておいた。
河童たちが使う無線機のようなものだ。電波が発信されると、それを片方が受け取って会話ができる。
それと同じようなものだ。私から電波の性質を含む魔力を発信すると、それにのみ反応する受信機の性質を持っている魔力が受け取り、爆発を起こす。
陽動のためにやるが、状況を見極めなければ効果は薄くなる。爆破するのはもう少し後にしよう。
とりあえず施設から出ようと、基地の階段を駆け上がる。白いタイルに真っ赤な足跡が点々と続く。
河童たちも力を求めているようであるため、出ていきなり弾丸を頭にぶち込まれることは無いだろう。
でも、生きてさえいればいいとかだったら確実に撃たれるため、ゆっくりと周りを警戒して階段を上りきった。
階段の上で待ち伏せされることは無かったが、そこからまっすぐ行ったところには私が入って来たガラス張りの扉がある。
そこから見える外の状況は、もうすでに車と歩兵に包囲されており、殺せないという条件が無かったら、百十発の弾丸に体を撃ち抜かれていたことだろう。
「霧雨魔理沙!ここにいることはわかっているし、お前の見えないようにしている魔法の対策ももうできているぞ!」
嫌に準備がいいな。私が光の魔法を使って姿を見えないようにする情報を、彼女らはどこかで入手していたようだ。
何かセンサーのようなものを片手に持っている。あの機械は何だろうか。センサーとかなら電波とかの光の一種であるが、それを操っている私の対策をしていると言ったら、それ以外が使われているということだ。
ということは、もうここにいるのも見つかっていることだろう。身を屈めて彼女たちを観察していると、それを肯定するように銃口がどんどんこっちを向いていく。
仕方がない。ここは一度従ったふりをするとしよう。両手を上にあげ、階段を上って河童たちに姿をさらした。
「そのまま手を上げていろ。従わない場合は銃殺も許可されている!ただの肉塊になりたくなかったら、おとなしくしろ!」
強い言葉で脅してくるが、彼女らの目的はわかっている手足は撃てても頭や胴体を撃つことはできないだろう。
「ああ、わかったぜ」
私は魔力を例の電波へと変換し、波長を設置した受信機に合わせた。ドアを足でけり開けて外に出ると、ドアからでは見えていなかったが車は五両ほどが私を囲んでおり、歩兵はその倍はいる。
その中の一人が私に銃を向けたまま近づいてきて、手錠を私の腕にかけようとする。河童が右腕を掴むとそのまま背中側に捩じり上げられ、手錠をかけられる。
「うぐっ!」
これをされると抵抗することはできない。上げたままの左手も背中側に回された。その時点で私には戦闘能力がもうないと判断したのか、周りを囲んでいる河童たちから緊張の表情が消える。
私はそれを見逃さず、手錠をかけられる前に変換して置いた電波を発信した。全方向に放射状に広がっていくのは感じるが、微弱すぎて魔力自体は全く見えない。
本当に起爆してくれるか心配だったが、突如として私の正面に陣取っていた車が爆音とともに火に包み込まれた。周りの河童たちも爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされていく。
遠くのあちこちでも爆発が起こり、包囲していた河童たちがそっちに意識が向かう。私に手錠をかけようとしていた河童も、爆発に度肝を抜かれたのか作業の手が止まる。
そのうちに魔力をレーザーへと変換し、真後ろに立っている河童を撃ち抜いた。爆発と炎の光によってレーザーの光がかき消され、誰も私を拘束しようとしていた河童が倒れ込んだのに気が付いていない。
炎上し火だるまになっている車にコイルの性質を持たせた魔力を撒布し、それ自体を一つの巨大なコイルとした。
強力な電流を流し、磁力を発生させる。私は鉄製の物を所持していないため、引き寄せられることは無いが、弾丸や薬莢、ナイフなど鉄が使われている装備の多い河童たちは問答無用で引き寄せられ始める。
「うわあああああああああっ!?」
炎上している車に次々と河童が突っ込んで行くがそれでも止まらず、残りの四台の車両も強力な磁力に引き寄せられていく。その磁力によって形状を維持できず、やがては潰れ始めた。
車両の中にいた者は車体によって押しつぶされ、外にいた大部分は燃える車によって火だるまとなる。
残りの燃えずに潰れる車にくっ付いていた河童も、お腹側と背中側の装備に鉄板を仕込んでいたのだろう。
血を履いたりして苦しんでいる。身を守るためのそれらに肺を押しつぶされて死ぬとは、皮肉なことだ。
私は魔力で体を浮き上がらせ、堂々と飛んでこの場所から離れることにした。これだけ倒したが油断はできない。事前情報では、まだまだ敵はいるはずであり、親玉であるにとりの姿を見ていないからな。
私は基地の中を突っ切ろうとしたが、やはりそう簡単に逃してくれるわけもないだろう。河童から取ったもといいただいた無線機から声が聞こえる。
『霧雨魔理沙を捕まえる絶好のチャンスだ。逃がすな!』
ここまで人気者だと誰かに分けてやりたいぐらいだ。
連中の移動手段は徒歩か車ぐらいで、飛んで逃げる私の方が基地から離れる方が速い。飛ぶ速度を上げようとすると、妙な音が聞こえてくる。
強い風が通り過ぎていくような雑音だが、風にしては安定して音量も一定だ。それに、風にしては腹に響く振動のようなものも感じる。
私はどうやらニトリ達のオーバーテクノロジーを甘く見ていたようだ。そりゃああれだけの物が作れるんだ。こういうのも作れるよな。
私は連中に背を向け、全速力で森の中へと逃げ込んだ。後を追ってくるのは体中に鉄製の様々な装備を身に着け、背中の機械からジェットを噴射して飛んできている河童たちだ。
背中から魔力を放出してそれに似た形で逃げているが、姿勢を崩さないように気を使って飛んでいる分だけ速度が出ない。その辺りを機械に任せている分だけ向こうの方が速い。
「っち…」
後方から飛んできている河童は現在のところ四体。森に入ってから少し進む角度を変えて飛んでいるというのに、きちんと追ってきているところを見るとあいつらもセンサーを持ってきているようだ。
意識を彼女らに向けてみると、炎に似た性質を含んでいること気が付いた。しかし、それらしいものは見ることはできない。
「……?」
まだ距離はあるため、もう少しだけ魔力を探ることにする。どうせ近いうちに追いつかれてしまうだろうし、その時間を情報集めに使うとしよう。
彼女らの魔力は、生産された分だけどこかへと消えていってしまっている。集中して探ってみると、どうやら背中側の機械の中に消えていっているようだ。
あの魔力を機械の中に入れ、それに高い圧力をかけて噴き出して推進力を得ているようだ。炎の性質を含んでいるのは、熱によって魔力がかき消えないようにするため、耐性を与えている。
ここの河童たちも魔力の扱いが上手くないというのは、私たちの世界と変わらないらしい。そうでなければこんな機械は作らないはずだ。
魔力を霊夢たちが使う弾幕や私の使うレーザーなどのように、形として外に出すことのできない彼女たちは、魔力をガソリンとして機械を動かすという別の使い方を思いついたようだ。
そんな中、彼女たちが手に持っている銃を強化する魔力を感じた。詳しくは、弾丸を強化するための魔力だ。
敵の攻撃が来る。近くの木の裏に隠れようとした時、後方で赤い炎が小さく瞬いた。それとほとんど同時に爆発音と散弾が私の元に届く。
普通の散弾なら、当たれば木の皮を剥がすだとか地面を少し抉る程度だろう。魔力の強化によって樹皮を木の中心部ごと抉り取り、土を広範囲で捲り上げる。
「あっ…ぶねぇ…!!」
当たらなかったのは運が良かっただけだ。私が飛んだ方向と、奴らの狙いのズレとジェットによる高速移動の影響が重なったことで、射線がズレたのだ。
私が木の後ろに隠れて動きを止めたことで、高速で移動し続けるている河童たちが頭の上にある木々を通り過ぎていく。
通り過ぎた勢いで木の枝が大きく揺れ、葉っぱが千切れて降り注いでくる。髪に絡まる枝や葉っぱを手で振り落とし、青い光を背中から放出して飛んでいる河童たちの動きを見た。
奴らは二手に分かれて旋回し、二方向から攻撃をしてくるつもりらしい。通り過ぎて行ったときに見えたが、手に持っているのはあの形からして水平二連のダブルバレルではく、ポンプアクション式のショットガンらしい。
撃ったら弾を入れてを繰り返す水平二連よりも連射性に優れており、バレルも長くて命中精度が高い。
ゲームなどのせいで、ショットガンは十数メートルの距離でしか効果がないイメージが付いているが、本来の射程は百メートルはあるため油断しているとハチの巣にされるだろう。
魔力の強化もあって射程は百メートルを超えているはずだ、射線には気を付けなければならない。
連中が旋回して攻撃してくる前に、彼女らが来ようとしている方から逃げるように空を飛んだ。
この世界に来たのは久々で昔の面影というのをあまり思い出せないが、こっちの方向には、確か村があったはずだ。
村と呼ぶのにはかなり文化が進んでいるが、そんなことはどうでもいい。あそこでこいつらをまくとしよう。
森の方がこいつらをまくのには適しているように思えるかもしれないが、今回は違う。
森よりも町で戦う利点とは、移動する範囲を絞り込めることだ。森の木々は草木がある程度一定の高さで生えているため、移動には高さと横の移動はあまり考えなくてもいい。
しかし、町では家の高さや形が大体はそろっているとは言え、二階があったり、ベランダがあったり、屋根裏があることで出っ張っている物もある。そう言ったもので避ける方にも意識を向けさせ、奴らがする射撃の精度を下げるのだ。
第二の利点としては上を通り過ぎる時に街並みを見たが、大通りに面していない場所は思ったよりも不規則に家が建っているイメージがあり、そう言ったものも相手の集中を削ぐのに利用できるだろう。
それなら高度を取って、私を上から狙い撃つのではないかと思うがそれはない。散弾というのは基本的に貫通力ではなく面での攻撃であり、その性質上距離が離れれば離れるほど広く拡散していく。
殺すのではなく生け捕りにしたい彼女たちは、広がって飛んだ弾丸が余計なところに当たって私が死んでしまう、ということは避けたいはずだ。
撃ってから飛んでいく弾が目標に到達するラグもあり、そのうちにかわされる可能性を考えると大きく距離を離して撃ってくるというのは無いだろう。
次に、連中が高度を落として私と同じ高さで戦い始めた時のための対策だ。森の中であれば木々は生えているが、一本一本の大きさは大したことは無くザルに水を流し込んだ時のようにすいすい通って来るだろう。そうなると、相手がどの方向から来るのかを絞り込むことが難しくなる。
町であれば不規則だと言っても、家の配置などそこまでバラバラにはならず、一つ一つが大きいから来る方向をある程度予想しやすい利点がある。
逆に欠点としては私が逃げる方向も連中に予想されやすいということもあるが、この際は目をつぶろう。
あとは、怪我を負うリスクの低下だ。
木はさっき隠れた太い木が常に近くにあればいいが、無い場合もある。そうなると木からはみ出した部分を射撃された時に、怪我を負う可能性も出てくる。
町の壁ならば全身を隠すこともできなくはない。家には窓などもあるし、いざとなったらそこから入って弾丸を躱すこともできるだろう。
まあ、この状況では町で戦う方が私にとっては利点が多いということがわかっていただければ幸いだ。
でも、そこに行くまでに五百メートルはありそうだ。その間をどう凌ぐかも問題だが、それはそこまででもないだろう。
この四体のほかにも敵は追ってきているらしい、河童の基地の方向から小さい光がこっちに向かってきているのが見える。
大人数に囲まれる前に確固撃破していくとしよう。連中が射撃してくる前に木の後ろに回り込み、隠れた木の方に両手を差し出した。
その手から大量の魔力を放出した。その爆風に耐えることのできなかった大木は、地面の土ごと河童たちの方向へとぶっ飛んでいく。
比較的私に近い敵を狙ったことで、二人組の内一人を撃ち落とすことが出来た。こっちに進んでいるのと、こちらから飛ばしたことでぶつかれば装備を着ていてもただでは済まないだろう。
近い方が混乱しているうちに魔力を胸の前や背中などに放出し、それを硬質化させた。硬い鉄の性質を含ませ、アーマーの代わりとした。
これがあればある程度の射撃は止めることが出来るだろう。木を飛ばしていない二人組の方向から、弾丸を強化する魔力を感じる。
命中精度を少しでも低くさせるため、手先に魔力を集めた。その魔力にはスペルカードであるノンディクショナルレーザーの性質を含ませる。
ただの魔力がレーザーへと変わり、二人組の方向に魔力を含んだ五つの球体が円を描いて浮かびだす。
差し出した手の周りを、クルクルと回るその球体からレーザーが射撃される。
一発ではそこまでではないが、一定の速度で回転を続けているから規則性があるとはいえ、五つのレーザーが同時に発射されれば制圧力は格段に上昇する。
魔力を変換していたのに時間がかかったことで河童の射撃と被ったが、制圧効果がやはりあったらしく散弾はあらぬ方向へと飛んでいく。
今の内だ。ランダムに生える木々を躱しながら移動を始めると、ようやく森の切れ目に到達した。
村というよりも街は煙は相も変わらず上がっているが、特に何かの動きがあるわけではない。戦闘は行われていないのだろうか。爆発なんかが起きない程度の戦闘が行われているかもしれないがな。
だが、私にとって重要なのはそこではない。目を凝らしてみてみると一部屋根が剥がれていたり、壁が崩れているところが多くみられる。
私の思っていた通り、あそこで戦闘を行うことは可能だろう。まだ破壊されていない屋根や壊れた屋根がいい具合に高低差を出してくれている部分もある。
逃げるのであれば瓦礫だって使えないこともないし、あるものは使い方を選ばなければなんでも使える。
問題はそこに行きつけるかどうかだ。後方を睨み付けると、二十メートルほど後方を三人の河童が追ってきている。
銃身の下についているハンドガードを前後にスライドさせたらしく、銃の脇から空薬莢が排出される。
ダンっと腹に響く爆発音が三発響き、銃口から小さな炎と硝煙、散弾が私に向けて吐き出された。
「っ!!」
硬質化した魔力で全身をガードしているとは言え、あれだけの威力であれば貫通してくる可能性も低くはない。とっさに私は両手を顔の前に差し出していた。
射撃音に紛れたが鎧代わりにしていた魔力に散弾が直撃すると、金属音と衝撃が耳と体を刺激する。
当たったのは振り返っていた私の肩の辺りらしく、大きくバランスを崩されて墜落を始めた。
ただの散弾であれば撃ち落されるなんてことは無かっただろうが、鉄の性質を持つ魔力の上からでも腕が吹き飛んでしまいそうな衝撃に、どれほどの威力かわかる。
小さな球状の弾丸がいくつかめり込んだ魔力が、その使命を果たして剥がれ落ちていく。こういったものは、基本的に使い捨てであるのが使いづらいところだ。
「うおっ!」
どんっと地面に腰から転がり込んだ。身体を強化しているから怪我をすることは無いが、中々の衝撃に受け身を取るのを忘れてしまう。
全速力で飛んでいたのも重なり、靴で地面を踏みしめて止まることが出来ず、盛大に地面を転がってしまう。
転がって砂だらけになったとしても、転んでただで起きる私ではない。地面についた手から地面に向けて魔力の杭を打ち込む。
それには私が河童たちの基地で使った爆発と受信の魔力を入れ込む。さらにさっき私のアーマーに当たり、めり込んできていた散弾の性質を含ませた魔力をそこに大量に送り込んだ。
連中には散弾を撃たれる恐怖というのを、少しばかり味わってもらうとしよう。乾いた地面を蹴飛ばして、勢いをつけながら魔力で体を浮遊させる。
一度止まってしまったことで、ぐっと河童たちまでの距離を詰められてしまった。だが、彼女たちは私がそこで止まる予定だったのか、スピードを落としていたらしくそこまで縮まったわけではない。
だが、加速力については速度が出ている分だけ距離を詰められるから、ここからまたさらに相手との距離は縮まることだろう。
またショットガンのハンドガードを後ろに引いて、次の弾丸を薬室に送り込んだらしくガチャリと金属音がする。
さっきは聞こえてこなかったが、今度は河童たちの方を見ていなくても聞こえてきたことから距離が詰められている証拠だ。
また魔力で弾丸を強化しているらしい。相手が射撃しようとしてくるが、攻撃は私の番だ。仕掛けた魔力の電波に変換し、信号を発信する。
どこに仕掛けたかわかりづらかったが、連中が真上に到達した時点でそれを起爆させた。赤い炎を杭の内部に放出し、体積を何百倍にも膨れ上がらせて爆発を起こさせた。
爆風によって銃口が持ち上がり、狙いが逸れるが目的はそこではない。メインである散弾の魔力が、その上にいる河童たちに爆発の衝撃によって打ち上げられた。
「ぐぎゃっ!?」
三人のうち一体には当たらなかったが、残りの二人に魔力の弾丸を当てることはできた。一人は急所に当たったらしく、平衡を保つことが出来ずに地面に落下していく。
何の受け身も取らずに地面に叩きつけられたその衝撃で、未来感あふれる装備はぐにゃりと曲がり、壊れて残骸を地面にまき散らす。
武器も装備もそこまで耐久力は無いのか、ショットガンも半ばから半分にポッキリと折れてしまっている。
ただ落ちただけだというのに、自重で潰れるほどということは相当な重量なようだ。それを浮かせるとなると、かなりの魔力消費があることだろう。
このまま逃げ続ければ、やがて追えなくなる時間帯が来るだろう。そこまで遊んでいる時間はないからそれは却下だがな。
弾丸に当たったもう一人は手に直撃したらしく、持っていたショットガンを取り落とした。これで現時点での脅威は、弾丸が当たらなかった河童の持っているショットガンのみとなる。
「くそっ!」
一人やられたことで一発手に弾丸を貰っている河童が激高し、怒りを露わにする。魔力を消費してジェットを吹かし、一気にこっちに突っ込んできた。
ショットガン以外に武器を持っているわけではないだろうが、頭に血が上っているから使えないのだろう。
ショットガンを持っている方も仲間が射線に出て来たことで、銃を撃つことが出来ない。私にとっては好都合だ。
銃持ちの射線を近づいてきている河童で隠れつつ、街に向かい続ける。奴らが積んでいるジェットの凶悪な音がすぐそこまで迫っている。
「この野郎!殺してやる!」
肩越しに振り返ると怒りに満ちた河童が、手を伸ばせば届くという距離にまで迫ってきていた。
もう少し街までの距離を稼いでおきたかったが、ここは捕まっておくとしよう。少しだけ速度を緩めると河童は私に手を伸ばして掴みかかって来た。
「あいつの仇だ!」
あいつというのは、爆発で飛ばした散弾で撃ち落とした河童のことだろうか。背中から吹かしていたスラスターが不自然に途切れたり、何の受け身もない墜落の様子から死んだと考えたらしい。
「おいおい、いいのか?私を殺したら求めている力を手にれることが出来なくなるぜ?」
「そんなこと、知ったことか!」
「私を殺せば、死ぬのはあいつ一人では済まなくなるぜ?報復に河童は全員殺されることだろうよ」
私がそう言うと、頭に上っていた血が少しだけ引いたのか私を掴んでいる手が緩まった。今度は私が河童に手を伸ばして右肩当たりの装備を掴んだ。
私が何かをしようとしているのを察したらしく、掴んだ手を離させようとするがその前に魔力を背中から横方向へ放出した。
真後ろにしかジェットを放出していない彼女らは、正面方向には強いが横からの力には非常に弱い。
さっきまでは河童がマウントを取っている形になっていたが、それをしたことで河童がグルリと下側へと移動した。
振り落とされないために装備を掴んでいたが、私が掴んでいた辺りにはとあるものが括り付けてある。
手榴弾と呼ばれる爆発する投擲物だ。縦長のそのフォルムは、パイナップルのようにも見える。その上には私にはよくわからない部品が取り付けられており、そこには爆発させないためのピンが取り付けられている。
引き抜きやすいようにリング状になっているそれを掴み、横にスライドさせるとリングは棒にくくってあったらしく、細い鉄製の棒が引き抜けた。
本体の上に取り付けられている機械から、ピンで固定してあった部品がはじけ飛び、あと数秒もすればその手榴弾は爆発を起こすことだろう。
「なっ!?」
早く手榴弾を取らないと爆発に巻き込まれる河童は、急いで肩に取り付けられている手榴弾に手を伸ばそうとするが、それをさせる前に私は彼女へ向けてエネルギー弾を射撃した。
腹部でエネルギー弾が小さくはじける。全方向にエネルギーを放出するのではなく、一方向にのみ運動エネルギーを凝縮したものをまともに食らった河童は、地面に向かって一直線に落下する。
直前に手を離していなければ私も一緒になって落ちていたところだが、そんな間抜けなことはない。
高速で移動していたというのもあり、地面に長い線が十数メートルほど描かれた後、手榴弾は埃と砂煙を舞い上げ爆発を起こす。
火薬を使った爆発という物は炎が発生しない為、中々地味であるように見えるが近くにいて、その間に何もなければ即死するほど強力だ。
手榴弾は爆発ではなく、身を裂く破片が最も危険だ。肩についたままゼロ距離で爆発を受けたあの河童は、全身を切り裂かれて死亡したことは間違いないだろう。
残りは一人だったのだが、その後方に更に四つジェットの炎が煌めいているのが見えた。さらに四人の追加となりそうだ。
せっかく三人倒したというのに、さらに増えるとは思わなかった。しかし、朗報もあって、時間稼ぎのおかげで街に到達することが出来た。
ここで連中のことを全員殺すとしよう。こんな装備を着た奴らが、霊夢たちのところに行かれると困る。
なのだが、これだけの時間が経過してもニトリの姿が見えない。基地に行く前に河童が言っていた他とは違う装備と言っていたから、こいつらとも違うのだろう。
こいつらを倒すのでもかなり面倒だというのに、それ以上ときたものだ。こいつらをさっさと倒し、万全の態勢で向かい入れなければならない。
「こんなところにいて、大丈夫なのかしら?」
「…ええ…問題はないわ」
スキマを使って移動して来た紫は、鼻元を手袋を着けた手で押さえながら私に開口一番そう言ってくる。
大量の死体が転がっている部屋で、十分近く調べていたのだが、よくわからないことが多い。
「…紫はどう思う?」
「さあ。知らないわ」
本当に考えているのかと突っ込みたくなるが、あまり長いしたくないのだろうということを考慮して、今はいいだろう。
「…あいつが生きていた意味がよくわからない…」
「あいつって?」
私の呟きにひっかがることがあったのだろう。さっきまでのやる気のない感じとは違って、興味ありげに聞いてくる。
「…逃げたけど、咲夜たちが死んだところにいたあの魔女が別の部屋にいたのよね」
「紅魔館に…?どんな様子だった?」
「…その質問は私が疑問に思ってることにつながるんだけど、痣とかもあったし…ボロボロだったわ」
私が見たものを完璧に伝えることはできないが、最初に抱いた印象を彼女に伝えた。
「そう。それで、疑問に思ってるっていうのは…このウサギ達は殺されているのに、あの子だけが殺されてないのがわからないと」
私が思っていたことを紫が言ってくれた。説明する手間が省けて助かる。
「…ええ。ここよりは酷くないけど、この状況に似た部屋にいたのに彼女は生きてたから、それがなぜかわからなかったのよね」
詳しくはベットの上だけが似ている状況だったのだが、あの部屋に連れて行った方が速いだろう。
「そうね」
そう呟く紫の方を見て、私は少し驚いた。苛立ったような表情をしていたからだ。少し声をかけずらいが、彼女に話しかけた。
「…私は、永遠亭の人たちはもうやられてると思うけど、紫はどう思う?」
「どうしてそう思うのかしら?」
「…何となくだけど、ウサギたちは死んでから少し時間が経過してる。普通ならその状況でてゐは黙っていないと思う。気が短いてゐはおそらく永琳の言うことはきかないだろうし、永琳たちも戦いに出るはず……死体とかがないからわからないけど、このウサギたちはだいぶ長い間この場所に拘束されていたはず」
顔はかなりやつれていて腕も細いし、胸部は肋骨が少し浮き出ている。魔力で補ってはいるが回復手段は睡眠だけで、衛生状態の悪い場所ではきちんと寝れることなどないだろう。
始めに魔力に余裕はあっても、後はだんだんと余裕がなくなる。かなり長い間この場所に拘束されていなければ、ここまでの低栄養にはならないだろう。
「…こんなに痩せるまでの時間があったのに誰も助けに来なかったのか、助けに来たとしても殺されたのはかわからないけど…下っ端のウサギたちが殺されてるってことは、見せしめか用済みだからってことでしょう?」
「そうね……でも、ほかにもウサギが居て、それの見せしめのためっていう線は低いわね。これだけ痩せているのに抵抗なんてできない。となると用済みだからってことになるわ」
「…そうなると、今度は何に利用されていたのか…っていう新しい疑問が生まれるわね」
「ええ、永琳ができることと言えば薬を作ること…何の薬を作らせてたのかしらね」
そんなのこっちが知りたい。
「…はあ、わからないことだらけね…」
ろくな情報を得ることが出来ず、私は小さくため息を付いた。
部屋の中を見回すと、窓際に花瓶が置いてある。そこには血みどろの部屋に置いてあるのには不釣り合いといえる、かわいらしい花が花弁を開いている。
「…こんな世界でも、花は咲く物なのね」
この部屋で分かることはもうないだろう。二人で部屋を出て中よりは血生臭くない空気を吸っていると、曲がり角を走って鴉天狗が近づいてきた。
どうやら何か見つけたようだ。紫と一緒にそっちに向かうため、私は歩き始めた。
六月十四日に投稿しようと思ったのですが、諸事情により投稿できなくなりました。
二十一日の金曜日辺りに投稿すると思います。