薔薇の騎士   作:ヘイ!タクシー!

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ようやく! ここまでこれた!

このFGOパートもいよいよ最終局面に入りました! これ終わらせてアポクリ行くぜ!








最後の会話

「それではリィル。ちゃんと役目を果たしてきなさいね」

 

「………はい」

 

 ローズリィの返事を聞いたオルタはファヴニールの背に飛び移り、号令を掛ける。

 

 オルタ達を乗せたファヴニールが空高く飛び上がると、そのままオルレアンから遠く離れた街へと向かうために飛び去って行った。

 

 その光景を眺めながら宮殿に残るリィル。

 

 飛び去るファヴニールを見送った後、彼女はある方向へと目を向ける。

 

「そこにいるのですねランサー…………その挑発が本物であることを信じてますよ」

 

 そうポツリと呟くと、ローズリィは目線を向けた方向へと駆け出した。

 

 英霊という超人が出す速度は流石にドラゴン等には負けるも、街を飛び出してからその姿が見えなくなる事に僅かの時間も掛からない。

 

 ローズリィはオルレアン傍に流れる河を一足で飛び越えると、一面草木が茂る平野を走る。

 

 彼女が向かっているのは西に向かったオルタ達とは逆の東であった。その方向にはラ・シャリテが近くにある山脈だ。

 その最も高い山の頂上にて、ローズリィを誘き出そうとする魔力の流れが絶え間なく流れ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ____________________

 

 

「さて、そろそろだな」

 

「…………はい」

 

 山の頂上にて人の影が二つほど存在していた。

 一人は常人とは何か決定的に違う雰囲気を纏った美女。もう一人は人間味はあるが、汚すことを躊躇う程に清い雰囲気を纏った少女。

 

 スカサハとジャンヌだ。

 

 スカサハはそこら辺に転がる少し大きな岩石の上に腰掛けていて、ジャンヌはこれから頂上まで登って来るであろうローズリィを待つために目を閉じて立ち続けている。

 

 上昇気流で起こる凍てついた風は肌を刺し、届きそうな程近い曇天の空は今にも暴雨を降らせるかのようだ。

 

「聖女よ。わかっていると思うが、ここにいてもお前が得られるだろう事実は全くないかも知れない。無駄骨かもしれない。それでも、ここを離れないのだな」

 

「聖女はやめてください………………私は、例え無意味であったとしても、あの子に会って話をしなければなりません。それは私の義務であり、私が最も望むことの一つです。

 …………あの子の身に何が起こり、そして彼女が死ぬ間際に何を想ったのか…………それを知らずして私は何をすれば良いと言うのです」

 

「そうか…………決意は変わらんようだな」

 

 スカサハはジャンヌの顔を見て穏やかな表情を微かに見せた。

 

 そのスカサハが見せた表情は、ジャンヌの決して折れようとしない精神に対して微笑んだのか、それとも、かつての教え子をこんなにも想ってくれている親友が出来たことに対する微笑みだったのか。

 それは本人にしかわからない。

 

「ジャンヌ・ダルク。お前は、こと精神の強さに関しては英霊の中でもずば抜けて優れている」

 

「そ、そうでしょうか…………?」

 

「だが精神が強いということは忍耐力、つまり我慢強いということだ。

 そしてその耐えられるキャパシティを超えた時、お前の精神は崩壊する。座にいるお前本体にも多大な影響を及ぼすほどのな」

 

 スカサハは話した未来が必ず起こるとでも言っているかのように断言した。

 まるでその未来でも視たかのように話す彼女に、ジャンヌはスカサハを暫し凝視してしまう。

 

「驚きました…………貴女は()()()()()()()()()? だと言うのに、何故そのようにいられるのですか?」

 

「お前と同じさ聖女。いや、こう呼ぶと駄目だったな…………。ジャンヌ・ダルクよ。私は本来ならあり得ない存在だ。そして、お前もな…………それが答えだ」

 

「そう、ですか…………いえ、そうなのでしょうね………」

 

 ジャンヌはスカサハに笑みを向けると、彼女に背を向けて天を仰いだ。

 

 灰色の天候は薄まるどころかむしろ暗く深まっていく。

 

「嵐が来そうですね………」

 

 ジャンヌは覚悟を決めた顔付きでそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

「来たか」

 

 それは先程から少し経った後のことだ。

 スカサハがそう呟き、ジャンヌが真っ直ぐ正面を向いた直後。

 黒く不気味な鎧を身に纏った一人の騎士が二人の前に飛び出してきた。

 

 鎧を着ているとは思えないほど小さな着地の音が生じる。が、その音は現れた騎士、ローズリィの声によってかき消された。

 

「ジャンヌ…………」

 

「…………ようやく、貴女とゆっくりお話ができますね。リィル」

 

 驚いた表情で固まるリィルに、ジャンヌはこの時を待ち望んでいたとばかりに柔らかい微笑みを向ける。

 

 お話。そう告げるジャンヌにはやはり敵意は無く、後ろに控えているスカサハもまた敵が来たにも関わらず武器を構えない。

 二人の様子からローズリィは何かしら考察すると、悲しそうな表情になった。

 

「ジャンヌ…………もし私をそちら側に勧誘するための交渉に来たのなら、それは無意味ですよ。私は黒いジャンヌを裏切るつもりはありませんし、目的を果たすまで私は止まれない」

 

「ええ…………知っていますよリィル。貴女は私のことになると凄く頑固になりますから、よくわかっています」

 

 自分の考えが否定されたことに訝しむローズリィだが、ジャンヌはそんな彼女に気にした様子を見せず、ただ自分のお願いを話した。

 

「リィル。私が聞きたいのは貴女のことです…………私が貴女と離れた後に、何があったのですか? 貴女は最期の瞬間まで、何を想ったのですか? 教えてください、リィル」

 

「それは…………」

 

 懇願するようにジャンヌは尋ねる。

 

 その質問がローズリィに対してどれほど屈辱的かつ無神経な質問なのか、彼女も理解しているつもりだ。

 それでも、ジャンヌは問わなければならないと思ったが故に、彼女に尋ねた。

 

 

 彼女とて、とても辛いことがあった。女性にとっての尊厳を傷付けられた。信じ通してきた信念を否定された。

 

 ジャンヌにしても他人に明け透けと話すことなどできない。それが例え彼女の家族であろうとも、話したいとすら思えないだろう。

 

 だけど、ジャンヌにとってローズリィだけは違う。

 物心付いた時から一緒に苦楽を共にした。始まりから終わりまで。そこに後悔はあれど、ローズリィがいたからこそ満足した人生だったと、彼女は心の底から思っているのだ。

 

 だからこそ、ジャンヌは何があったのか聞きたかった。ローズリィに起こった悲劇の僅かでも共有することができれば。その苦痛を少しでも取り除いてあげることができれば。

 

 だから彼女は未だ話すことを渋っているローズリィに懇願する。

 

「人に言いふらしたい事でも無いのはわかっています。でも、それでもッ。苦しいことも悲しいことも、楽しいことも嬉しいことも! 全部一緒に分かち合ってきた! 貴女になら私は全てを差し出せる!

 …………それとも、そう思っているのは私だけだったのでしょうか、リィル?」

 

「ッッ………! それは、ズルいですジャンヌ…………そんな言い方されたら、私が断れるわけない」

 

 ジャンヌの言葉はローズリィにとって嬉しいことであり、同時に悲しいことでもあった。

 ジャンヌの言いたいことは嫌というほどわかる。ローズリィもジャンヌ相手に隠し事などしたくない。生前はする意味すらなかったのだから。

 

「ええ、私はズルいです。それでも私は貴女に起きた出来事が知りたい」

 

「……………………」

 

「お願いですリィル…………」

 

「……私は…………私は弱かっただけです」

 

 だけど、真実を告げることはローズリィには出来ない。それが彼女の願いの妨げになるから。

 

 だから、ローズリィは嘘を吐く。

 

「…………耐えられなかった痛みから、どうしようもない恐怖から、抗えることのできない現実から。逃げて、恨んで、憎んだ。

 ……………ジャンヌが考えている程、私は強くないです。貴方が受けた非道な行いの方が、きっと何倍も辛いはず…………」

 

「そんなはずない! 貴女は私が信じる最も素晴らしい騎士です! そんな貴女が容認出来ないほどの出来事が、どうしようもない事実が、そこにはあったはずです! 」

 

 見え透いた嘘。それはジャンヌが一番良く知っている。

 

 自分やローズリィが死ぬであろう覚悟はどちらもあった。その現実を容認する気はさらさら無かったとはいえ、だ。

 敵に捕まれば無事では済まないことも、辱しめと汚名を背負わされながら最期を迎えるだろうこともわかっていた。

 

 だからあの処刑場で最後に会えたことは幸運だとすらジャンヌは思っていた。

 なのに、何故あそこまでローズリィが動揺していたのか。

 

 それ相応の出来事が彼女に起こっていたからだ。

 

「私は聞いたんです! 貴女が最期に放ったその言葉を!! 人も、主も、世界も何もかもを、全部恨んで最後を迎えたことを!!」

 

「ッ……」

 

「弱かったから、逃げたから…………違うでしょう? 最後まで抵抗したから、貴女はあんなにも傷付いていたのでしょう!? そこまでの怒りを、恨みを抱いたのでしょう!?」

 

 ローズリィは胸の前でギュッと拳を握り締めた。

 いつまでも彼女を信じ続けるジャンヌの思いが、酷く彼女の心を苦しめる。

 

 嬉しくないわけない。非道な行いをしてきた自分を信じ、肯定してくれるジャンヌが愛しくて仕方がない。

 

 そして、そんな彼女に本当のことを言えない自分が、どうしようもなく憎い。

 

「…………ごめんね、ジャンヌ」

 

「なんで…………」

 

「…………何も知らなくていい。ジャンヌの平穏も、幸せも、私が全て成し遂げるから」

 

 それでも彼女はジャンヌを受け入れない。

 

 

 ローズリィがジャンヌに告げた瞬間、四方八方から異常な量の魔力が溢れだした。

 

 ジャンヌ達の周りに溢れ出たわけではない。

 フランス全土を規模にした間欠泉地帯のように、突如魔力の渦が特異点各地で次々と出現したのだ。

 

「な、なんですかこの魔力は!?」

 

「ジャンヌ・ダルクよ。悪いが問答は終いだ」

 

 その異常な事態にジャンヌが戸惑っていると、後ろで腰掛けていたスカサハが立ち上がり、彼女の前に出る。

 その姿は既に戦闘態勢に入っており、油断のない目付きでローズリィを見ていた。

 

「この現象はお前の宝具だな、リル」

 

「そうですランサー。計画は最終局面に入りました。宝具の発動により、私の復讐は完遂される。つまり貴女をこの場で止めればそれで終わりです」

 

 そう言ってローズリィもまた彼女の愛剣を鞘から引き抜いて構える。

 それはもう話し合いをする気は無いとばかりの態度だ。

 

 それが悲しくて、同時に納得のいっていなかったジャンヌは、再びローズリィに話し掛けようとする。

 だがそれは叶わず、逆にスカサハに説得されてしまった。

 

「待ってリィルーーーーー」

 

「ジャンヌ・ダルク、情勢を見極めろ。おぬしが戦わなければならないのは、こやつではないだろう?」

 

「…………わかっています。この現象を止めることも、もう一人の私とも会って話を付けなければならないことも、理解しています。ですが………」

 

 渋るジャンヌだったが、そんな彼女にスカサハは決定的な言葉を放った。

 

「なら助言だ、聖職者。そこにいけばお前は真実を知れるかもしれないぞ?」

 

 それはジャンヌの意思を変えるものだった。

 スカサハの一言にジャンヌは一瞬驚いた表情になるも、すぐに意味を理解する。

 

 だがそれを理解できなかったローズリィが、今度はスカサハに口を挟んだ。

 

「まて。それはどういう意味ですランサー。真実を知る…………? 馬鹿な。黒いジャンヌが知っているわけ…………」

 

「さて それはどうだろうなリル? 知りたければ実力で聞き出すんだな。

 …………行け、ジャンヌ・ダルク。私はこやつと決着をつけねばならん」

 

「…………わかりました。私とて、リィルと貴女の戦いに色を加えるつもりはありません。だから、悔いの無い戦いであることを望んでいます」

 

「ふっ。素直にリルに勝って欲しいと言っても良いのだぞ? …………ではな、ジャンヌ・ダルク。いつかまた再会することを願っているぞ」

 

「ええ…………それでは、また」

 

 ジャンヌはスカサハに別れを告げると、魔力が一番集まっている場所へと駆けていった。

 

それを見送った二人はどちらともなく目の前の相手に目を向ける。

山頂で吹き荒れる風が二人の間を流れる音だけが響く中、スカサハがポツリと疑問を溢した。

 

「お前に別れを告げないのは、無意識に信じ合っている証拠、と言うことか?」

 

「………当然です。生前は一度だけ失態を犯しましたが、もうそれはありません。私は常にジャンヌの最強の騎士ですので」

 

「……そうか」

 

 二人の会話はそれのみだった。互いに己の得物を相手に向ける。次の瞬間、二人の姿が消えた。

 

 二人がいた場所の中央で、甲高い金属の衝突音と衝撃波が山頂の地を揺らした。

 

 

 

 

 




残りあと、3、4話かな
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