マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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ちょっとしたオリジナル編前編になります。


第10話

「いったいどうしたの!?」

 

 ボロボロになって帰って来た京を待っていたのはすずかだった。

 待っていてくれたのだろうか

 京の姿を見るなり血相を変えて詰め寄ってくる。

 

「……」

 

 京は答えない、答えられない。

 黙り込む京を見てすずかは寂しそうな顔をした。

 

「どうして…なにも教えてくれないの?」

 

「…」

 

 京は答えない。

 その表情はひたすらに無表情、何を考えているかわからなかった。

 すずかに話せない、話せる事が無い。

 すずかはこの2年間、京になにも問いはしなかった。いつか話してくれるとその時を待っていてくれた。

 京もそのことはわかっているし、感謝もしていた。

 そして今の京の有様を見てついに我慢が出来ず、すずかは京に問いを投げる。

 

「ねぇ…何か言ってよ…」

 

 それでも京は答えない。

 京の心の中は複雑な心境だった。

 だがそれを顔に出す資格は京には無い。

 故に無表情を貫き黙ってすずかを見やる。

 そして京はついに口を開いた。

 

「…ごめん」

 

 拒絶の言葉を

 

「…バカ!!」

 

 すずかは京に思いの丈を罵倒という形でぶつけた。

 京の顔がほんの一瞬だけ歪む。

 

「ぁ…」

 

 ハッと今自分が言ったことを思い返すすずか。

 そして目に涙を浮かべ走り去ってしまった。

 

 それを追いかけるわけでもなくただ京は呆然と立ち尽くしていた。

 ごちゃごちゃの思考がグルグルと頭の中を廻る。

 自分の顔に手を触れる。

 自分は今どんな顔をしているだろうか、あまりいいものではないだろう。

 

「…ちっ…」

 

 思わず舌打ちする。

 タイミングが悪い、本当に

 今からでも追いかけたほうがいい。

 何を言えば良いかはまだわからない。

 だが、とすずかの元に行こうとする。

 その時だった。

 

 ガラスを突き破る音が聞こえた。

 咄嗟に振り返る。

 2体の人型が窓を突き破って現れていた。

 

「!?」

 

 それを見て京は一瞬固まる。

 完璧な不意打ち。

 普段なら絶対に犯さないミス、体に残る凄まじいダメージとすずかの叫びからきた心の動揺によって起きたことだった。

 

 人型は近代的な装備を身に包んでいる。

 そして、右腕に持つ銃を京に向かって打ち出した。

 

「つぅっ!」

 

 辛うじて体が反応する。

 地面から天井、体から出た植物によってはたき落とされる。

 

「失せろ…」

 

 こんなことをしている暇は無い。

 自分が狙いか、だがもっと可能性が高い人物が先ほどまで自分と一緒にいたのだ。

 すずか、おそらくそっちが本命。

 ならばもう既に手が伸びているはずだ。早急に対処に向かわねばならない。

 

 京は悲鳴を上げる体に鞭を打ち人型に攻撃を加えようとする。

 強く踏み込み、高速で接近する。

 人型の銃口がこちらに向くがそんなものはいくらでも対処できる。

 そう思っていた。

 しかし、もう1体の銃から放たれる煙に触れるまでは。

 

 

「ガァァァァァアアアアアアアァァアアアアアアア!!!!!!!!??」

 

 

 そのまま煙を浴びた京は絶叫を上げる。

 そのまま倒れこみビクビクと痙攣した。

 

「ギ…ィ…ガ…ァァア」

 

 京にはこれが何かわかった。

 対植物用の猛毒。

 京の全身には植物の根が張り巡らされている、脳から心臓に指先にいたるまで、第2の神経の様なものだ、それが猛毒に侵された。

 用意周到だ、まるで自分のことを知っているかのよう。

 

 2体の人型はナイフを取り出し京に振り下ろす。

 しかし

 

「ジ!!」

 

 懐から現れたジバクくんが爆発しピンクの爆煙で姿を眩ます。

 

「…!」

 

 主の危険を察知しボウグが自立的に動き出す。

 髪が螺旋を描き、2人の人型を一瞬の内に串刺しにした。

 成す術もなく襲撃者は沈黙する。

 ボウグとジバクくんについてはなにも知らなかったのか呆気なく倒された。

 無残に串刺しにされた人型を見ると火花が散っている、オートマタのようだった。

 これなら例え油断していたとはいえすぐ傍にくるまで気配を感じなかったことも頷ける。

 

 京は全身の痛みを耐えながら京のいる階を抜け植物とリンクする。

 すずかが出て行った後に襲撃があったのだ、そういうことなのだろう。

周りを確認するが周辺にすずかはいない。

 

「クソッ」

 

 悪態をつく。

 完全に自分の失態だ、助けられた、未然に防ぐ事が出来た。

 今回の介入が重ならなければ、自分が一言声を掛けていれば、後悔が渦巻く。

 

 そこでポチから連絡が入る

 だがどこか弱弱しい。

 すずかを追って月村邸に着き救出しようとするもあの煙を食らったようだった。

 今は安全なところに避難しているようだ。

 どうやらすずかは月村邸にいるらしい、ということは姉の忍も捕まったということでノエルとファリンも負けてしまったのだろう。

 

「ちぃ…」

 

 体の状況を確認する。かなりマズイ状態だ。

 植物人間の能力はほぼ完全に停止、せいぜいアレトゥーサとの意思疎通程度だ。

 何もかもをキノコにする魔法はこの世界に来た時、車に撥ねられ潰れた内臓を植物で代用していた部分が毒で破壊された弊害で使用不可。

 スターライトブレイカーをモロに食らい、体を毒に犯された体では鬼神前鬼とラブリー眼帯は体が耐え切れない。

 サイキック能力は先の介入で撃ち尽くした、回復は翌日以降だろう。

 写殺はカメラがないためそもそも使えない。

 七ツノ魂は問題ないが毒に犯された体を無理やり動かすのに全ての力を使っている為にまともに使えない。

 ボウグはスターライトブレイカーを防いだせいで3分の2が機能停止に陥っており、最大で出せるドリルは10本が限界だ。

 残りで使えるものはブレングリード流血闘術、拘束する支配者、ジバクくんしかない。

 

 絶望的だ。

 今の自分では助けきれるかわからない。

 だが行動しないわけには行かないのだ。

 

「…」

 

 ふとある人物の顔を思い浮かべる。

 これしかない。

 京は体中に走る痛みに耐えながらある場所に向かって走り出すのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 京は走りながら顔を隠す、毒で脆くなった顔の右側の木を無理やり剥がし、乱暴に包帯を巻いていく。無理やり剥がしたせいで包帯が赤く滲んでいた。

 着いたのは翠屋の前、息もつかないままに中に入った。

 

「士郎さん…いませんか」

 

 店には幸い誰もいなかった。

 そこには片づけをしている士郎と桃子がいた。

 閉店間際の突然の来客に驚き、そのボロボロな姿にさらに驚く士郎と桃子。

 京のただならぬ雰囲気を察し士郎が問いかける。

 

「なにかあったのかい?」

 

「すずかが…」

 

 簡潔に話す。

 すずかが誘拐された、今は月村邸にいる、他の住人もどうなっているかわからないと

 そして京は士郎に懇願する。

 

「…助けて…ください。」

 

 かつて力になると言ってくれた。

 勿論今から頼むようなことではない。

 だが一人ではなんとかならないのはわかっている、助けを求めるしかない。

 頭を下げる。

 相手の規模がわからない、今はどんな手を使っても助ける方法を導き出さなければならない。

 

「あぁ、勿論だとも」

 

 士郎が笑う。

 

「力になりたいと言ったのだからね」

 

 その表情は歴戦の猛者を思わせるようだった。

 

「恭也にも連絡を入れよう」

 

 携帯で恭也に連絡する士郎、携帯越しからでもわかるほど焦っている恭也。

 携帯を閉じ、士郎は一瞬だけ桃子に目配せする。

 桃子は目を伏せるが笑って答える。

 

「いってらっしゃい」

 

「あぁ、行って来る。夜には戻るよ」

 

 少し出かけてくる、そんな軽い感じで士郎は桃子のさりげない激励に応えた。

 それは自信の表れなのだろう。

 頼もしいことだ。

 

「すぐ行くよ、車に乗りなさい」

 

「ありがとうございます…」

 

 そして敵と囚われたすずかがいるであろう月村邸に向かうのであった。




オリジナル編前編。
主人公の弱点は毒です。
そして急激な弱体化、それでも強いのには変わりはないですが
無双はたまにでいいですよね。
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