マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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As編にはじまります。


第12話

 目を覚ます。

 ここはどこだろうか、清潔感のある白い外装、棚には花が生けられている

 腕には点滴が刺さっている。

 

「あぁ…そうか」

 

 ここは病院かと思い至る。

 今までの事がフラッシュバックするように思い出された。

 左の腕を持ち上げる。

 それは異形へと変わっていた。

 質感は木の様であるがとても堅い、節々を動かすごとに軋むような音がなっている。

 

「益々化け物じみてきたな…」

 

 体を確認すると傷口が全て木で塞がれていた、所々に目の用なものやよくわからないもので塞がれている。

 顔の仮面も浸食が進み、右頬まで覆うようになってしまっていた。

 七ツノ魂の回復能力が追いつかず植物が暴走したのだろう。

 暴走、そう思い出して苦い顔をする。

 

「情けない…」

 

 最後の最後でやらかしてしまったことを深く反省する。

 あとで謝らなければいけない。

 そんなことを考えていると

 ガラッと音をたててドアが開いた。

 

「ん?」

 

「ぁ…」

 

 ドアを開けたすずかと目が合う。

 

「京くん!」

 

 すずかが抱きつこうとするが

 

「へぶっ」

 

 反射的に避けてしまい、かわいい叫びをあげてベットに一人ダイブした。

 

「あら、京様…そこは受け止めてこそというものですよ」

 

「心配したのですよ〜」

 

 後からノエルとファリンがやってきていた、付き添いだろう。

 

「よかった、無事だったんですね」

 

「無事なんてもんじゃなかったんですよ〜!」

 

 ファリンが何故か怒っている。

 

「えぇ、それはそれはこっぴどく大破しまして…中核が無事で幸いでした」

 

 あぁ、やっぱりと京は納得する。

 彼女達もオートマタだった。

 これで異常に気配が薄いことに合点がいく。

 まぁここにいるのだから大丈夫なのだろう。

 

「ぅ〜…」

 

 不満と怒りの呻き声を出してすずかが復活した。

 膨れっ面をしているが可愛いだけだ。

 

「ごめん」

 

 謝るがふてくされている。

 そこで左腕が軋みを上げるような音がした。

 

「おっと…」

 

 思わず左手で触れようとしてしまった。

 怪我はしないだろうが不気味なだけだろう。

 あまりに正確に動くので勘違いしそうになる

 

「ぁ…」

 

 膨れっ面面から一変申し訳なさそうな顔になるすずか。

 そんな顔しないで欲しいなと困ったように笑う。

 

「今の京様についてはお医者が聞きたがっていましたよ」

 

「そう…」

 

 それはここが病院だとわかった時点で半ば予想していたことだ。

 自分の異常性がバレた可能性は高い、病院なんてものに知られれば終わりだ。

 ここにはもういられない、使用可能になったエントリー・モードを使うことも考えなければならないかもしれない。

 

「そう深刻な顔をなさらずとも大丈夫です。士郎様の信頼できる方だそうで」

 

 京の考えを察したのかノエルがフォローを入れてくれる。

 そこで少し緊張が解けた。

 

「なら安心ですかね」

 

「ジ!!」

 

「お前もいたのか」

 

 ジバクがファリンの肩の上に乗っていた。

 随分とファリンと仲が良さそうにしている。

 

「えぇ、この物体は何でしょうか?」

 

 ノエルだけがそれを困惑気味に見つめていた。

 

「聖霊です」

 

「ジ!!」

 

 ジバクくんは偉そうにふんぞり返る。

 

「精霊って…妖精さんとかの?でも可愛くない…」

 

「聖霊です」

 

「ジ!!!」

 

 更にジバクくんはふんぞり返りファリンの肩から落下した。

 見なかったことにする。

 

「そ…そうなんだ…」

 

 少し悲しそうにジバクくんを見やり、溜息をついた。

 すずかのメルヘンな乙女心が木っ端微塵になった瞬間だった。

 そんなところに新たな来訪者が現れる。

 

「起きたと聞いて…」

 

 そこに白衣を来た女性がやってきた。

 士郎の言っていた信頼できる医師というやつだろうか

 

「こんにちわ京くん、医師の石田幸恵よ、担当は神経内科だけどね」

 

「どうも、お世話になってます」

 

 なにかと便宜を計らってくれたのかもしれないと頭を下げる。

 

「何にも治療してないんだけどね?勝手に直っちゃったし。寝かせていただけ、ただ大変だったのよ?貴方毎日朝になると体から草花出してるんだから」

 

「ハハハ…」

 

 乾いた笑いを浮かべながら心の中で謝る。

 これはしょうがない、言い訳をするならば自然現象という奴だ。

 そして石田医師は真剣な顔付きに変わる。

 

「貴方のことについて聞いてもいい?」

 

 こちらも真剣な顔になる。

 周りの温度が少し下がった気がした。

 

「ぁ…外すね…」

 

 すぐに外に出ようとしたすずか

 

「いや、居てくれていい」

 

「うん…」

 

 それを聞いて少しだけすずかが嬉しそうに頷いた。

 ここまでくれば話さなければならないだろう、

 多少、だが

 

「月村家全員と士郎さんと恭也さん呼んでください」

 

「了解いたしました」

 

 

 

 

 

 ノエルが全員に連絡し、夕方病室に関係者全員が集合した。

 まず初めに、と

 

「すみません、ご迷惑おかけしました」

 

 頭を下げる。

 最後の最後で迷惑を掛けたことに

 

「いや…謝る必要はないよ、君にここまでさせた私たちが悪い」

 

 そう笑って許す士郎。

 他の皆も頷いている。

 そう言う士郎、京はあくまで9歳なのだ1桁の子供に求めるものでは本来ない。

 そしてこれからが本題だ。

 

「俺のことでしたね」

 

 今まで黙っていたことを話す。

 

「自分の体のことは全部教えます。ただこの体になった理由だけは絶対に言えません、言うつもりがありません。これだけは全て俺の墓の中に持って行きます」

 

 これが京の最大の譲歩であり限界だ。

 

「理由は聞いても?」

 

「世の中には知っていい事と悪いことがあります。これは後者です。知らなければわからないなんて話ではありません。これは知ってはいけないことです。」

 

 この世界が創作物の派生として生まれた世界などと誰が言うものか、神が実際にいる?正気の沙汰とも思えない、たとえ信じてもらったとしてもこれは知るべきことではない。

 少なくとも京はそう思っている。

 

「あぁ…わかった」

 

 理解はしてくれたが納得はしていないようだった。

 だが京の雰囲気を見て渋々と頷いた。

 

「ではまず質問はありますか?」

 

「では私から…」

 

 自分のことを説明する。

 自分の中に根ざす植物、対吸血鬼の血、植物のような細胞に変化した体、左目に宿る写殺能力、サイキック能力、頭のエイリアン「ボウグ」、ラブリー眼帯について話しておいた。

 話さなくて良さそうなものはさり気なく黙っておく。

 

「なんだか漫画みたいだね」

 

 すずかの第一印象がそれだった。

 

「…」

 

 真実その通りだったりする。

 

「ねぇ、その眼帯つけたら大きくなるの…?」

 

「うん」

 

「ふ~ん」

 

 興味深そうに眺めるすずか

 ハート型じゃなくて本当によかったと心の中でホッとする。

 すずかの食い入るようにラブリー眼帯を見ている。

 

「付けるなよ?」

 

「わ…わかってるもん!」

 

 図星を突かれたような反応に笑い出しそうになってしまう。

 名残惜しそうだ。

 

「ふむ…だが柳生新陰流か…一度手合わせしたいものだ」

 

「まぁ…退院すれば別にかまいませんが」

 

「そうか、楽しみにしているよ」

 

「はは…」

 

 勘弁して欲しいなと口には出さず心の中で思う。

 既に人外である京の中で人外認定されている士郎とはあまり戦いたくなかったのであった。

 

 そうこうしているうちに話が終わる。

 話してみたが何てことはない、既に化け物としてより友人、2度も助けられた恩人として認識されているのだ。

 京も悩みが1つ消えたのかほっとする。

 これはもう、エントリー・モードを使うことはなさそうだと思った。

 介入が無駄になってしまったなと笑う。

 なのは達には本当に悪いことをしたが謝れない以上心の中で謝っておくしかできない。

 

「そういえば俺はいつ退院できるんですか?」

 

「3ヶ月眠っていたからね、筋力とかはその体のお陰でまったく衰えていないが安静にして2日くらいといったところかしら?」

 

 医師の言葉に目を見開いて驚く。

 

「3ヶ月!?」

 

 その期間に驚く京。

 実際無理もない話なのだ。

 鬼神化の反動で回復力などの制限がかかっている中、何度も被弾し、その上スターライトブレイカーも食らったのだ。

 そしてその後、弱点である対植物の毒を食らい、幾つかの内蔵が不全になり、全身に痛みが走る中、オートマタと吸血鬼の連戦、そして左腕が欠損する大怪我だ。

 すぐに動けるようになるほうがおかしい。

 

 そして3ヵ月後ということはAsが始まる時期だ。

 

「ま、いいか」

 

 今の自分にはどうでもいいことだ。

 あれだけ無印編を引っ掻き回した奴のいうことではないが

 

 とりあえずもう原作に介入する気はない、というかできない。

 Asは詰まるところ管理局VSヴォルケンリッターから協力しての闇の書封印だ。

 120%の確立で管理局とかかわる。そして自分は反論の余地無く犯罪者。

 もうコリゴリだ、あのスターライトブレイカーを食らうのは。

 

 話も終わり皆が帰っていく。

 それを送り出しながらこれからはどうしようかと思案した。

 まずは人間っぽく見えるような能力でも思い出してみようか

 月村家の護衛役にでも着けるようにお願いしてみるのもいいかもしれない。

 子供の身だ、のんびり考えるのも悪くないだろう。

 

 そして1日が終わる。

 

 

 これが京の受難の日々の始まりであるとは誰も知らなかった。




As編はじまりました。
能力バレは最大限にまで抑えたつもり、嫌う人も多いので

今回は出だしのため能力の追加はありません。
Asが終ることにはどこまで化け物になっているかご期待ください。
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