京は焦っていた。
チラッと予知で垣間見たのは
黒い城を舞台にエクスカリバーとエアを放つ2人のサーヴァント、それに対しなにやら黒くなっている自分と大勢の大軍を引き連れて3人のサーヴァントに突進しているライダーだった。
京の顔が青褪める。
わけがわからない。
最悪の展開、なにがどうなってセイバーとギルガメッシュとが組んでいるかは知らない、おそらくは自分が原因だろうが
予知の的中率は100%、つまりこのまま突入すれば乱戦が始まるのは必至、流石に多勢に無勢、エアに王の軍勢は勝てる余地はあるが負ける可能性の方がでかい。
嗚呼、拙いことになっている。
事の始まりははギルガメッシュに対して友の侮辱という挑発をしてしまった京が悪い。
また京は対ギルガメッシュ能力を思い出していない、このままでは今度こそ塵も残さず消されてしまうだろう。
ライダーの戦車に揺られながら考える。
要は自分がいなければあんな修羅場にはならないはずなのだ。
よし逃げよう。
京の決断は早かった、とても早かった。
幸いにしてやることはある、サーヴァントが聖杯問答に集まっている時なら裏から行動しても気付かれないかもしれない。
「…ライダー」
「…今更行けないなどと言うまい?」
「…」
読まれていたようだ、だがここで引くわけにはいかない。目の前に見えている地雷を、死亡フラグを踏むなどありえない。
「聖杯問答中に俺は裏から動く事がある。なに、時間はとらない、誰が相応しいか決まる頃には戻る」
実際は何かと理由を付けてボイコットの予定だ。
ウェイバーからも何とか言ってくれと目で頼む。
ウェイバーは眉間に皺を寄せ、お前だけ逃げるのかと非難している目を向けていたが京の必死の視線に耐えられ切れず折れた。
「ライダー、モンスターがこう言ってるんだ、こちらに必要なことなんだろ?」
京は黙って頷く。
「仕方ない…」
マスターの言葉にライダーも納得したのか開放してくれる。
京は戦車から飛び降り、髪の羽を広げて飛び立った。
「早めに戻れよ」
「了解だ」
適当に答え全力で離脱する。
開放された、いや、回避できたといった方がいいだろう。
「…よし!」
思わず拳を握り締め喜んでしまう。
とりあえずライダーにやる事があると言った手前、行動を起こさないわけにもいかない。
目的の場所に向かう。
「…」
魔力の気配を辿る。
…感じた。
途方もなく巨大な魔力、測り知ることができないほどの、しかし気配がかなり薄い、意識を集中して魔力を感じる方に意識を向ける。
「円蔵山…」
大聖杯を設置しているところだ。
そこから魔力の気配がする。霊脈があったはずだ。
京が取り込んだものは小聖杯、今回の聖杯戦争の賞品である。
物語であまり触れられていないもの、聖杯戦争を起こす本元である。
大聖杯がある限り戦争は続く。これがあり続ければ次の聖杯戦争が始り聖杯と縁の深い桜が再びマスターになる可能性は大きい。
円蔵山に向かって飛行する。
「…あった」
辿り着くは大空洞「龍洞」、大聖杯が配置されている場所、60年の時を掛けて霊脈からマナを吸い上げ、サーヴァント召還が可能になるとマスターを選び戦争を開始する回路。
ぱっと見るには大きなクレーターが広がる洞窟だ。
だが京にはわかる、見える。第3の目で見えるのは直系1kmにも及ぶクレーターに隙間なく埋め尽くされるように張り巡らされた魔術回路。
これを作った魔術師はどれだけ化け物なのだろうか、想像が全くつかない。
ゆっくりと歩いていく、クレーターの中心に
おそらくあるであろう、その魔術回路の元に
そして見つける。
「………」
無言のまま見つめる。
正常に稼働中の聖杯、悪意が滲み出ているのがわかる。
そして中心にいるのは1人の女性、アイリスフィールと瓜二つな人型。
まだ1人のサーヴァントしか入っていないせいでほとんど実体化していない。
「どうしたものか…」
一人嘆く、これを消す、力任せにぶち壊すことは可能だ。
しかし、これはサーヴァント召還とその永続的な召還の維持の魔力の大半を担っている。
つまり、ここで聖杯を壊してしまえば召還維持のバックアップがなくなることでマスター達はたちまち魔力不足に陥りサーヴァントは現界できなくなり、聖杯戦争は終る。自分も消える。
これでエントリーモードに帰れるというならライダーには悪いがぶち壊すのだがこれで英霊の座に引っ張られるようなら目も当てられない結果が待っている。
2度と帰れない、それだけは御免だ、永遠と世界の為に動くなど迷惑極まりない。
壊せない以上、浄化するか、取り込むかだ
京が取り込んでいるものは小聖杯、電話の子機のようなものだ、悪意に染まっているのは大聖杯の方、こちらにも流れ込んではきているが…
とりあえず全部やってみようと思う。
「イタダキマス」
幸いにして現在聖杯は実体化していない、故に一気に食すことができる。
「スゥー…」
吸い込む、まるで空気を吸い込むかのように
クレーターに縫い付けられている魔術回路、そして宙に浮いている未完成な聖杯、構成されている成分は全て霊子、ならば一瞬で取り込むことも可能だ。
「ゴチソウサマデシタ」
心臓に齧りつくよりは楽な作業だった。
「これで大丈夫…かな?」
少しばかり大聖杯の場所が変わっただけだ、問題はないはず、これ以降聖杯戦争など起こすつもりは全くない、これで危惧したことは起こらないだろう、後は戦闘で勝つのみだ。
腹に胃靠れのような鈍痛を覚える。
「笑止」
京の一言で鈍痛は止まった。
腹の中の聖杯に再構成を掛け、まっさらな状態に戻す。
純粋な力の塊に、願望機としての本来の姿に
これこそが本当の聖杯、まだ2割も中身がないが終わりに近づけば聖杯としての力を宿すだろう。
目的は達した。
警戒していたのが馬鹿みたいに感じるほど妨害もなにもなかった。
これで次の聖杯戦争は発生しない。
満足そうに京は一人笑う。
「さて…と」
次の問題はあちらだ。
ライダーの方を確認する。
自分がいないことで平常通りになっているはず
植物とリンクして確認する。
そこにいるのはライダー、セイバー、ギルガメッシュだった。
「よし…」
問題ない、セイバーが仇でも見るようにライダーを睨みつけている以外はなにも問題ない。
予想通りだ。
たぶん、予想通りだ。
聖杯問答が開始される。
ライダーが受肉の望みを告白し、ギルガメッシュがいつも通りの俺理論を展開し、セイバーが総スカンを食らう。
順調だ。
そこにアサシンが現れる。
「王ではないがお主らもこの聖杯戦争に参加する者、聖杯に掛けるものを掲げてみせよ」
ライダーが誘う。
そして
「…頂こう」
アサシンは酒が注がれた杯を受け取った。
「なん…だと…」
京が驚愕する。
予想外どころの話しではない。
なんでお前が混ざっていると突っ込みを入れたくなる。
「私の望みは…」
そんなものは聞きたくない。さっさと死んで欲しい。
アサシンの望みが語られる。
どうでもよかった、聞き流しながら京はそれを眺める事しか出来ない。
「そういえばお主には言ってなかったな、どうだ?余の配下にならんか?待遇は要相談だが…」
そこでアサシンを勧誘するライダー。
だが
「断る、私は聖杯が欲しい」
そう断言するアサシン。
「それに…」
辺りから大量のアサシンの面をつけた者達が一斉に襲い掛かる。
「我主からの命だ、ここで死んでもらう」
その動きはどこかぎこちなかった。
まるで何かに縛られているように
そしてそこからは物語通りの返り討ち。
アサシンが正面から闘って勝てることなどありえない話だ。
果たして仮面の下の表情はどんなものだったのだろうか
京はホッとする。
そしてアサシンの最後の一人が倒れた。
「言い残すことはあるか」
ライダーが剣を構え問う。
そこで殺しておくべきだった。
「主からお前に一つ伝言だそうだ」
そう言って
「モンスターのマスター、間桐桜はまだ無事か?」
そしてライダーに両断され、消えた。
静寂が辺りを包む。
「…」
それを見ていた京は息を呑んだ。
一体何の意図でここでバラしたというのか
そしてこれを命じていたのは言峰綺礼、今まで知っていてここで何故バラスのか、思惑が全く読めない。
アーチャー陣営が動かなかったということは綺礼は遠坂にも伝えていなかったのだろう。
何故、何故と思考が回るが仮説の1つも出てこない。
これでキャスター以外の全マスターに知られた形になる。
綺礼経由でバレていないと安心していたのにこれだ。
今までありえない数の宝具を持つ得体の知れないサーヴァントだったのだ、そのマスターがバレた。
アーチャー陣営などは娘だ、どのような存在かも把握しているだろう。
セイバー陣営もプロフィール作成をしているほどだ、情報は少なくとも存在については知っている。
実際、拙い状況だと思う。
特に切嗣にバレたのは拙い、アサシン張りに厄介だ。
いつ狙い撃たれるかわからない、戦闘での同行は細心の注意を払わなければならない。
「余計なことを…」
苛立つが爆弾発言を聞いているライダーはどこ吹く風だ。
「余の臣下は自分のマスターを守れないないほど弱くはないわ!」
自信たっぷりに誇るように言う。
お前が言うなとそれを眺めながら突っ込んだ。
守り通してみせるがそこは怒ってもらいたいところだ。
敵の情報を他の敵にばらすという方法、手としてはかなりありだがやられた自分としては溜まったものではない。
桜がマスターだと知って動く陣営はわかっているところで2つ、セイバー陣営とアーチャー陣営。
特にセイバー陣営は京がアイリスフィールから聖杯を奪い取ったことを知っている、こちらの弱点を突いてくるのは確実だろう。
「あぁ…畜生が…」
不安要素が出てきてしまった。
これからは行動を起こすにも各陣営の動きも気にしなければならない、漁夫の利など取られれば目も当てられない。
「帰ろう…」
今日は二転三転と話が転んでいく、勘弁願いたいものだ。
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拠点に戻る。
ライダーも少しすると戻っていき、取敢えずの行かなかったことへの平謝り
そしてこれからのことについて
これから事態は急展開するだろう。
サーヴァントの脱落者も増えていくことは間違いない。
もうこれからの展望も予想は出来ない。
自分は桜を守りきり自分も生還できるだろうか
(はは、最近は悩んでばかりだ)
これからについて考え、作戦などを考え、そして実行、忙しいものだ。
だがじきに終るだろう、戦いは2人目の脱落者の発生とともに佳境に入った。
予知も何故かジャミングが入ったように遠くの未来が見えない。
それは前の世界と同じこと
もうここに自分がいる時間は少ないということだ
物語は流れていく。
と聖杯問答が終りました。
にじファンから見ている方はかなり展開が違っているとわかっているかと思います。
ええ…あの方は蛇足なんてもんじゃなかった。
なので少し展開が変わっています。
次回!VSギルガメッシュ 主人公初めての全身全霊の戦いになります。
乞うご期待ください。