マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第34話

「ねぇねぇ、あの男の人見に行こうよ!」

 

 ミィフィが突然誘い出す。

 好奇心旺盛な何でも知りたがる彼女のことだ、乱闘していた男子生徒2人を瞬く間に鎮圧した1人の男子生徒のことが気になるだろう。

 

「確か彼は私達の列にいただろう、態々見に行かなくても待っていれば来るのではないか?」

 

 そういうのはナルキ、ミィフィと同じくメイシェンと同じ幼馴染であり、2人と違って警察官を志しているため武芸科に属している。

 武芸科とは武芸者を育成する機関である。

 武芸者とは剄脈と呼ばれる特殊な器官を持った人間だけがなれるもので戦闘に特化し、都市が汚染獣との遭遇を避けられないなどの災厄に見舞われると出動し、身を挺して都市を護る者達のことを指す。

 また都市間の戦争でも重要な存在である。戦争といっても武芸者同士の試合のようなもので都市の燃料とも言えるセルニウムと呼ばれる特殊な金属の鉱山を懸けて勝負が行われる、負ければ保有する鉱山は奪われ、無くなりでもすれば文字通り都市は「死ぬ」。

 その為、武芸者は都市にとっては欠かせないものであり、援助、優遇され、戦士としての品行方正さを求められるため武士然とした者たちが多い。

 

「彼は一般教養科の制服を着ていたな…、武芸科ではないのか?」

 

「いやいや、あれは武芸科の生徒でしょー、あんなに強くて一般教養なわけないって」

 

 ワイワイと賑やかなことだ。

 だが京も現場は見ていたがかなり異常な強さだった、瞬きもしないうちに鎮圧する腕前、とても1年生のできることではない。

 そこにガラガラと戸を引く音が聞こえ視線をやると例の男子生徒がいた。

 彼は武芸科の制服を着ている、そういうことなのだろう。

 

「ほら~、私の言ったとおり!」

 

 ない胸を反らす。

 

「どちらの制服も持っているのか、一般教養科の方が可愛いのに…」

 

 ナルキの興味はそちらなのか羨ましがる。

 メイシェンはいつもの人見知りが発動し2人の背後に隠れていた。

 

「ぁ、ごめんね。突然絡んじゃって、私はミィフィ・ロッテン、一般教養科よ」

 

「私はナルキ・ゲルニ、君と同じ武芸科だ、私達の後ろに隠れているのがメイシェン・トリンデン、彼女は一般教養科だ。」

 

「こ…こんにちわ…」

 

 おずおずと挨拶する。

 極度の人見知りが直らないとお菓子職人は遠いぞと思いながら京は眺めているのだった。

 

「私達3人とも幼馴染でね?交通都市ヨルテムの出身なんだ」

 

「ヨルテムか…、ここに来る途中に通ったよ。僕はレイフォン・アルセイフ、出身は槍殻都市グレンダンだ」

 

「なるほど、武芸の本場出身かぁ、さっきの強さもそこにあるのかな?」

 

 ミィフィは早速好奇心が剥き出し状態だ、遠慮というものを知らない。

 レイフォンという少年も若干戸惑っている。

 

「やめい」

 

「ふぎゃ!」

 

 ナルキがチョップでミィフィを黙らせる。

 

「なにすんのさー、ナッキ!」

 

「レイフォン君が戸惑っている、落ち着け」

 

「むぅ~」

 

 渋々と引き下がる。

 だがミィフィはめげない。

 

「じゃぁ、これからご飯食べに行かない?」

 

 そこでじっくりと話を聞くのだと目が語っている。

 

「そうだな、丁度昼時だ、どうだろう?」

 

「僕は…構わないけど」

 

 了承を得てガッツポーズのミィフィ、それに呆れたような目線のナルキ

 

「ごめんね、これからやらないといけないことがあるの」

 

 しかしそこで予想外のところで離脱者が出た。

 若干驚いた顔の2人

 

「あれ?何か用事あるの?」

 

「うん、アパートに荷物が届いてるはずだから」

 

 2人と違ってメイシェンはアパート、やるべきことは多いのだ。

 

「そういえば1人で遠いところのアパートなんだっけ?どうして?」

 

「ちょっと…1人暮らしが夢だったから…」

 

 かなりつらい言い訳である。

 メイシェンの性格について知り尽くしている2人が聞けば嘘と断じるだろう。

 

「「ふ~ん…」」

 

 2人の声がハモる。

 メイシェンは冷や汗をかきながら苦笑いをするだけである。

 

「じゃ…じゃぁまた後でね!」

 

 そして、逃げるように去っていくのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

『彼女達には俺のことを話してもいいんじゃないのか?』

 

 アパートに帰る途中、そう言い出したのは京だった。

 実際、京は本当に信じられる人物なら話しても良いとメイシェンに言ってある。

 だが話していないのはメイシェンの判断だった。

 

「別に信用してない…とか、そういうのじゃないの」

 

 ならどうして?と京は声には出さない。

 

「なんだか…嫌」

 

 自分でも気付かないほどの独占欲か、それとも今まで隠していたことに対する負い目で中々言い出せないか

 京は深く突っ込まない、今の自分は九十九神としてここにいるのだ。ならばその役割を全うするだけで構わない。

 そうこう考えているうちにあることを思い出す。

 

『…そうだ!』

 

 突然京が叫ぶ。

 突然の大声が至近距離から聞こえたメイシェンはビクッと反応する。

 

「どうしたの?」

 

『メイ、バイトの面接時間が近づいている』

 

「…ぁ」

 

 正直メイシェンがバイトというのは信じられない。

 ウェイトレスなども含まれるだろう、できるのか?と失礼ながらにも思ってしまう。

 人見知りと引っ込み思案の克服も兼ねているのだろうかとすら邪推してしまう。

 

『行ってきな、片付けと整理は俺がやっておく』

 

 すると瞬時に20cm程度の大きさからメイシェンと同い年程度の大きさまでに実体化する、勿論誰にも見られないように

 

「でも…」

 

 悪いよとそう目が言っている。

 

「何を今更…、俺はトリンデン家の家政夫だぞ」

 

 堂々と宣言するレベルのものではないがあながち間違ってはいない。

 今まで京がやってきたことは正しく家政夫のそれだった。

 料理すらメイシェンと並ぶ程度には作ることができる。

 それに京はこれからの生活をサポートすべく全てを取り仕切る予定だったのだ。

 これではもう執事である。

 

「そ…そう…、じゃぁ、お言葉に甘えるね」

 

「おう」

 

 ヒラヒラと手を振り見送る。

 

「さて…と」

 

 アパートに行き、荷物の整理、あとは食事も出るわけがないので作らなければならない、買出しにも行かなければと考えつつ帰路を辿る。

 すると途中で不思議な感覚を捉えた。

 

「うん?」

 

 辺りを見回すがそれらしいものはない。

 気配を探り、興味本位でそちらに向かう。

 どんどん歩いていく、気配のする方向は都市の地下から、そろそろ拙そうな気がするが気にしないことにした。

 すると目先には淡い青い光を発する少女型の精霊のようなものがいた。

 

「電子精霊…か」

 

 ゆっくりと近づく、あちらもこちらに気付いたようで近づいてくる。

 電子精霊、自律型移動都市の中核であり都市を動かしているものである。都市によって形が異なるのが特徴で詳しくは知られていない謎の存在でもある。

 この都市の精霊は少女型だったということだろう。

 

『こんにちは』

 

声が聞こえる。

 

「あぁ、こんにちわ」

 

 応える。

 すると電子精霊は驚いたように

 

『あれ?私の声が聞こえるの?』

 

「うん」

 

 肯定する。

 京の数ある能力の内の1つに高位精霊化というものがある、その能力の力の1つは「精霊の声を聞くことができる」である。種族は問わない。そのお陰だ。

 

『わぁ~!』

 

 無邪気にはしゃぐ精霊

 なんとも微笑ましい、少女型だけに性格もそのようになるのか

 

「俺も人とはだいぶ違うからね、京だ」

 

『私はツェルニ!』

 

 取りとめもない会話をする。

 ツェルニは話せるだけでうれしいのか話題に事欠かない。

 仲の良い少女がいる、など色々な話をする。

 

『ぁ…、そろそろ戻らないと』

 

 そこそこに長く話し込んでしまった。機関部の連中はツェルニを探すのに大忙しだろう。

 

「そっか、楽しかったよ」

 

 手を振り見送る。

 ツェルニは名残惜しそうだが

 

「なに、俺の主人は6年はここにいる予定だ。また会えるよ」

 

 それを聞いて嬉しそうに手を振り消えていった。

 中々有意義な時間だったと思う。

 時間も経ってしまった、急いで戻らなければ、そう思い駆け足でアパートに帰っていくのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 夕方になりメイシェンが帰ってくる。

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

 部屋は綺麗に整頓され、台所からはいい匂いがしてくる。

 

「そこまでしなくていいのに」

 

「いいんだよ、俺は学業なんてやることないんだから」

 

「なら…手伝う」

 

「うん」

 

 食事のメインはシチュー、サラダなどをメイシェンは手馴れた感じに作っていく。

 そういえばと、京は聞いた

 

「バイトの面接はどうだった?」

 

「うん、明日からだって」

 

「ウェイトレスとかもやるの?」

 

「…うん」

 

「正気か?」

 

「…それは酷いと思うの」

 

 プルプルと震えながら顔を真っ赤にして接客するのが目に浮かぶようだ。

 なかなかに可愛いだろうが本人には地獄だろう。

 

「俺も行こうかな…」

 

 悪戯をするかのようにニヤリと笑う。

 

「お願いだから止めて」

 

 既に真っ赤だ。

 これは行くしかないだろう、可愛い主人の為だ。

 

 あと1年以内には汚染物質の解析は完了する。

 そうなれば全都市の植物にリンクしキールとジバクくんを探すことができる。

 そして帰還方法を探す。

 帰還方法は原作介入、しかし京はこの世界の常識に近いことしか知らない。だから大きな争いや異常などを追っていくしか今のところ手がない。

 まだ本体が動けない以上、行動は先の話だ。

 いつかはメイとも別れる事があるだろう、少々心苦しいが

 

 食事が終わり次の朝も早いと就寝する。

 これから先なにか起こるだろう、そんな予感を京は感じていた。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 そして、朝

 メイシェンが目を覚ます。

 京は既に洗濯、朝食と全て準備が終っている。

 

「おは…」

 

 おはよう、そう言おうとしてメイシェンは止まった。

 窓には洗濯物などが干してある。

 そう全部、下着もなにも全て。

 

「…京、…あれは?」

 

 ブルブルと震える手で指を刺す。

 

「ん?洗濯したんだけど」

 

 何事もないように返す。

 京はなんとも思っていない、それが更にイラっとさせる。

 

「そうそう、流石にまだああいう下着はちょっと早くない?」

 

 その一言でメイシェンはキレた。

 京にとっては慣れ親しんだ兄弟や父親感覚で言ったつもりだったのだろう。

 しかし、メイシェンは京をそういった感覚で見ていない。

 メイシェンはピ〇クローターを取り出しダイヤルに手を掛ける。

 そこまできて京が焦った。

 

「ちょ…ちょっと待って!俺何かした!?」

 

 だが何もわかっていなかったようだ。

 メイシェンの顔は影でよく見えない。

 

「あの…まさか…、…電源切らないよ…ね?」

 

 判決、懲役1日。

 ピンクロー〇ーのダイヤルをオフにする。

 

「NOoooooooooooOOO!!」

 

 京はピンクローターに吸い込まれるように消えていった。

 九十九神は道具である。

 故に電源をオフにされるということは待機を意味し、強制的に依代に戻されてしまう。

 

「そこで反省するように」

 

 冷たく言い放つ。

 普段の引っ込み思案なメイシェンでは考え付かないような形相だ。

 実際、動けない1日というのは結構辛い。

 それだけの罪なのだ。

 しっかり反省してもらいたいものだとメイシェンは思った。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 翌日

 

「反省しましたか?」

 

「申し訳ありませんでした」

 

 電源を入れた瞬間に現れたのは土下座している京だった。

 

「次からは私に任せるように」

 

「はっ」

 

 これが反抗期か…

 

 京は全く理解できていなかった。

 

「これから出かけるよ」

 

「うん?どこに?」

 

「これから小隊の学内対抗試合があるんだって」

 

「へぇ?」

 

 学園都市では戦争を行わない、武芸大会と呼ばれる学園同士の戦いを行うのだ。それは交流試合という形での戦争、無論都市の命を掛けていることには変わりないが。

 そして学内対抗試合とは小隊と呼ばれる武芸科の中でも優秀な生徒で結成された精鋭部隊同士の対決でありそれによって優劣を決め、武芸大会の重要な点に置かれたり奨励金などが支給されたりと小隊にとっては重要な戦いである。

 一般公開もされるので一般生徒にとっては娯楽の1つと言えなくもない。

 

 そして向かう。

 

 着いた先は野戦グラウンドだった。

 

「もう~、遅いよ~!」

 

 ミィフィがこちらに気付き声を掛ける。

 

「ごめんね、遠くって…」

 

「折角のレイとんの晴れ舞台だよー?」

 

 レイとん…?

 

 あの少年のことだろうか、随分難儀な名前を付けられたものだと合掌する。

 今日は4試合、彼女らの目的の試合は3試合目だそうだ。

 正直言ってレイフォンのいる隊が一番強いのではないだろうか、それ程にあの時の動きは凄まじかった。自分でもMACHSPEEDを掛けてあそこに到達できるというレベルだろう、彼はそれを恐らく永続的に続けられる。

 そして2回戦目が終わり、やっと3回戦目が始まった。

 戦場に現れるのは大きな鉄鞭を持った金髪ショートカットの凛々しい少女ニーナ。彼女が隊長のようだ。、

 続いて白銀の髪、銀の瞳、色素の抜けたような白い肌の人形のように整った顔の少女フェリ。

 銃を持ち後ろでまとめた長髪の軽い感じの男、シャーニッド。

 そして先ほどまで考えていた剣を持つ少年、レイフォン。

 

 攻め手はどうやらレイフォン達らしい。

 勝利条件は敵陣にある旗を先に落すこと、または司令官の撃破。

 護り手の相手小隊は5人、人数において劣勢な分どう取り返すか。

 レイフォンとニーナが先行してゆき、シャーニッドが後方から狙い打とうとしている、フェリはサポート、つまり念威操者なのだろう。

 

 念威操者とは剄脈を持つ武芸者の中でも更に特殊で念威という力を発し、念動力のように周囲の物を意思で自由に操り、それを媒介に遠距離探査などをすることができる。その能力を得た代わりに戦闘においては一般人と変わらず完全なサポート向きである。

 

 レイフォンとニーナの先行、そして相手方が取ったのは5人全員での迎え撃ちだった。

 防御側の勝利条件は敵司令官の撃破、つまりニーナが倒れれば終わりだ。

 作戦としては上手いと思う、だが思った以上にレイフォンの動きが悪いように見える。

 錯覚だったか、いや、手を抜いているかやる気がないのだろう。

 苦戦しているように見える、これでは時間の問題だろう。

 そして、そのままレイフォンが相手の一太刀を受けようとして、突如消えた。

 1人また1人と倒されていく。

 何故今頃になって力を出したかはわからない。

 圧倒的、そしてあれでまだ本気ではない。

 そして1発の銃声が鳴り旗が打ち抜かれたことで試合は終了した。

 

 帰宅途中

 

『いや、中々に面白かったよ』

 

 こういうのは好きだ。

 

「うん、でもあんなに強いならすぐ倒せたんじゃないかな?」

 

 最もだ、戦闘素人の彼女でもわかるほどの急な逆転劇だった。

 

『何か理由があるんだろう、機会があれば聞いてみればいい』

 

「うん…」

 

 恐らくレイフォンを前に人見知りと引っ込み思案が発動し、しどろもどろになるだろうが

 そして、あとは京の献立は何にしようかそんなことを取りとめもなく話す。

 

 しかし、メイシェンと京は知らない、今までの穏やかな日々が今日で終ることを




次回、vs汚染獣 ある能力の真の力が解放されます。
乞うご期待ください。
当分は原作を沿った形になります。閉ざされている舞台の上に動けないので独自行動が取り辛い…
あるイベントからオリジナルを入れつつ終わりに向かわせます。
裏から動くのはあの2体

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