次の日のことだった。
「特殊な
「そしてその被験者で武芸科に転入…と」
「「ふ~ん」」
「…な…なによぅ…」
メイシェンは追い詰められていた。
何故か、それは武芸科に転入したことで制服が変わり、そのままいつもの教室に入ったからである。
そこにいるのはナルキとミィフィ、勿論武芸科の制服になっていることに驚かれ事情聴取を食らっている状況であった。
「ほ、本当なんだってば…」
必死に言い訳をするメイシェン、カリアンと京の考えた言い訳をスラスラと並び立てる。
「「へぇー」」
しかし、2人には全く通用しなかった。
メイシェンとは幼い頃からの付き合いである。挙動と言動からでもある程度は嘘と動揺は見抜ける。
そしてよくよく考えれば不自然な話なのだ。
特殊な
なにより初めて発動させたときにはミィフィがその場にいた。
2人から隠し通すのは無理な話だったのかもしれない。
「まぁ、言えないことならしょうがないと思うし?」
「うん、だけど…」
「それよりも…」
ずずいと2人はメイシェンに近寄る。
ちょっとした気迫にメイシェンはよろめいた。
「「まだ隠してることあるでしょう?」」
ギクリと肩を震わせる。
隠していること、勿論京のことだ。
ちなみに京はここにはいない。家で家事でもしていることだろう。
「な…なんのこと…かな?」
目を逸らしながらメイシェンは答える。
もうバレバレであったがそれでもと半ば自棄になりながら隠す。
ナルキは何かあるのかと少し心配して、ミィフィは面白事がありそうだと期待しつつメイシェンを弄ることを楽しんでいた。
どんどん近寄ってくる2人はメイシェンは一歩二歩と後ずさっていく。
そして…
「きゃっ」
机の脚に足を引っ掛け尻餅をついてしまった。
「痛たたたた……」
痛そうに摩る。
ふとメイシェンが見上げると2人の視線が自分にないことに気付いた。
「……?」
2人の視線をなぞる様に追っていく。
そこにあったものは…
ブブブブブブブ
メイシェンの相棒、ピンク〇ーターもとい京だった。
瞬間、メイシェンと2人の間の空気は氷点下にまで落ち込んだ。
「………………」
「「………………」」
なにをどう反応していいのか分からない、そんな感じだった。
そして動いたのは…
「ギャーーーーー!!!」
メイシェンだった。
目にも留まらぬスピードでおよそ乙女らしくない悲鳴を上げながらピン〇ローターを奪取する。
即座にポケットに収納する。
だが未だにブブブと振動が鳴り響きその存在を自己主張していた。
未だかつてないほどに真っ赤になるメイシェン。俯いた顔には涙すら浮かんでいた。
「ぁ…えと、えと」
突然の事に固まっていたミィフィだったが流石に拙いと感じたのが即座にフォローに入ろうとする。
ナルキは未だ石のように固まっている。
「えと、ちょっとビックリしちゃったけどメイシェン「も」持ってるんなんてねー!」
ミィフィが即席のフォローを並び立てる。
「最近の女の子だって持ってるよー!」
「そう…なの…?」
メイシェンの顔が少しだけ晴れてきていた。
流石自分とミィフィは心の中でガッツポーズを決める。
そしてここから畳み掛ける。
「そ、そうなのですよ。情報通のミィフィさんの情報ですよ?」
まいったかと言わんばかりにその慎ましい胸を張り上げる。
そして横目にお前も何か言えとナルキを睨みつけた。
「わ…わかった…!」
キリッとした顔でナルキ頷く、その顔は女性でも惚れ惚れするような笑顔だった。
だがミィフィは気付かなかった。未だナルキが混乱の最中にいるということを
ナルキがしゃがみメイシェンの肩を持つ。
メイシェンはナルキを見つめた。
そして
「そう…あれだ…」
そして
「そう…」
そして…
「やっぱりその…気持ちいいものなのか…?」
止めを刺した。
ナルキは頬を赤く染め、言ってはならないことを言ってのけた。
少々潔癖症であるナルキではちょっとした錯乱状態にあったのだ。
ミィフィもあまりの事態に口を開けたまま固まる。そして同時に自分のフォローが無意味になったことを悟ったのだった。
メイシェンに影が差す。
それは何かを諦めたようで、恥ずかしさを遥かに通り過ぎたようで、怒りも少々含んでいた。
ゆっくりと立ち上がる。
隠れた前髪でメイシェンの表情はどんなものかわからなかった。
「そんなの…」
ブルブルと肩を震わす。
ナルキは「はて?」と首をかしげた。
「そんなの…」
メイシェンと2人に流れる空気が一変、氷点下から急上昇していた。
ミィフィが終ったと目を覆う。
そして
「そんなの知らないもん!!バカーーーーーーーーー!!!!!」
メイシェンが教室全体に響き渡る叫びを上げると同時に全力疾走で教室から出て行った。
その時の教室は整然となる。
「あ…あれ?」
ナルキは未だ何が起こったのかわからないといった顔で首をかしげた。
そして背後に気配を感じる。
ポンと肩に手を置かれる。
ナルキはそっと振り向いた。
そこには
「ナッキ…」
どうしようもない怒りを露にしたミィフィがいた。
「何してくれちゃってるのよもぉぉぉぉぉおおおお!!!」
再び絶叫が教室を満たしたのだった。
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
「だから悪かったと…」
「ほんとよもー」
放課後、ナルキとミィフィの2人はメイシェンの家に向かっていた。
勿論、謝るためである。
半ば事故でようなものあったのは双方の知るところだがギクシャクとした関係にさせたくない為、さっさと関係修復を図りたいミィフィの考えであった。
ナルキも落ち着きを取り戻し少し反省していた。
「にしても結構距離あるねぇ」
「なんで態々アパートなんて…」
どんどん歩いていく。
何故メイシェンがアパート暮らしを選んだのかは定かではない。
学園から寮までかなりの距離がある。それに一人暮らしではなにかと不便なはずだ。一人暮らしが夢だとは言っていたがやはり嘘くさいものを2人は感じていた。
「ねぇ、なんでメイっちはアパート暮らしを選んだんだろうね?」
「私にもわからん、ただそれなりな理由があったんだろう」
2人にも理由は分からなかった。
今向かおうとしているアパートに全ての元凶がいることを2人は知らない。
そして、アパートの前に着く。
日が暮れ始めていた。
「いくよ…ナッキ…」
「うむ…」
妙な緊張感を持ってアパートに入っていく。
ゆっくりと入りメイシェンの部屋を探す。
「あった…ミィ、ここだ」
ナルキがそれを見つける。
扉の向こう側からはトントンと料理をしているのか生活音が聞こえていた。
ミィフィは確信する。
メイシェンは部屋に、いる。
「いくよ…」
ドアノブに手を掛ける。
ナルキはそれを黙って頷きそれに答えた。
ノックなどしない。そのまま怒涛の勢いで部屋に押し入り、勢いでメイシェンが混乱しているうちに全てを終らせる。
その後は久しぶりに3人で語り明かすのもいいかもしれない。
ミィフィはほくそ笑んだ。
大丈夫だ、自分の計画に穴はあまり無い。
ドアノブを捻り思い切り引く。
そして
「おかえり~」
メイシェンではない誰かの声が聞こえた。
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「おかえり~」
京がメイシェンが帰ってきたのかと声を掛ける。
バイトに行っている筈なのに帰りが早いなと京は思った。
「ぁ…あれ?」
そして聞いたことのある声が聞こえた。
玄関に向かい、そっと顔を出す。
そこにいたのは京もよく知る人物、ナルキとミィフィであった。
気付かずに普通に声を掛けてしまった。7年も平和な生活に慣れてしまっていたのか気が抜けて気配などにも気を全く配っていなかったのが原因だった。
京は即座に状況を確認する。
今自分はここにいてミィフィ達に見られてしまった。そしてここはメイシェンの部屋だ。
終った。
策を巡らせる余地もなく詰んでいた。
できればメイシェンから話すことが望ましかったのだがもうどうしようもない。
「あ…あの…」
誰とも知らない人間の部屋に踏み入ってしまったと勘違いしたのか戸惑いをみせる2人。
そして京は
「どちら様かな?」
シラを切った。
これ以上ない笑顔で
とりあえず、メイシェンがいないところでバレるのは決まりが悪い。せめてもの時間稼ぎというやつだ。
「すみません…間違えました」
「いいよ、気をつけてね」
ヒラヒラと手を振りながら送り返す。
京は見えないところでよくやった俺と手を握り締めた。
しかし
「あれ…これは…」
玄関に立てかけてあった写真にミィフィが目を向けた。
そこに写っているものは言わずもがな、トリンデン一家だった。
ミィフィがバッと振り向く。
「ここ、メイシェンの部屋ですか」
「はは、なんのことやら」
先ほどの笑顔と寸分たがわない表情で京は答える。
額からは一筋の冷や汗が流れていた。
ずんずんとこちらに向かってくるミィフィ、彼女から漂う雰囲気は先ほどの遠慮がちなものは消え去っていた。
「ミィ、やはりここはメイシェンの部屋だ」
ナルキが改めて確認したのか玄関に入ってくる。
「はは…」
一瞬でもいなくなってくれれば即座にピンクローター内に逃げ込み、後はメイシェン任せにしようと思っていただけに今の状態は非常に拙かった。
メイシェンも秘密は明かさずにいた。それなりに理由はあったはずだし、当事者だとしてもメイシェン以外の口からそれを伝えるのは気が引ける。
そして今から行われる追求は必至だろう。
「ここ、メイシェンの部屋ですか?」
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
適当な言葉を並び立てジリジリと後退する京。
もはやミィフィとナルキは確信を持って京と対峙していた。
「あなたは…誰ですか?」
メイシェンの部屋にいる微妙に怪しい男、あのメイシェンに入学したてで彼氏が出来るとは考えにくいだけに不審に思われている。
「さて…それは…」
そして京は
「メイシェンに聞いてくれっ」
逃走を図った。
跳び上がり天井に足場に更に跳ぶ。能力が使用不可とはいえ多少の運動能力は備えている。
目指すは玄関、逃げ切り、あとはメイシェンが帰ってくるまで姿を眩ます。後はメイシェンに任せる。
だがそうはいかない。
「ナッキ!」
「承知!」
スルスルと音が聞こえる。
「っ!?」
京が気付いたときには全身が縄で縛られていた。
ズドンと何も出来ずに床に落下する。
「ヌグ…」
「流石ナッキ、直伝の捕縛術」
「まぁ、こんなものだ」
未だ素人といえど武芸者相手では今の京には分が悪かったのかそのまま封殺される。
もう悪足掻きも無意味だろう。
「はぁ…」
溜息を一つ。
いきなり妙な展開になってしまったと
「なんで逃げようとしたかは知りませんが…」
「ちょっと事情を聞きたいです」
目の前にはしてやったりという2人。
ちょっと強引が過ぎるのではないかと思うが親友の部屋に不審な男がいれば是非もないかと諦める。
「いや…、俺の口から言うことは何もないよ」
肩をすくめて立ち上がる。
「これ解いてくれないかな」
「また逃げるでしょう?」
「いや、もう逃げないよ。それにほら、料理の途中なんだ」
京が顔を向け促すその先にはグツグツと煮立った料理があった。
代わりに作ってくれるのかと目で問い掛ける。
「わかりました…」
ナルキが渋々といった感じに縄を解く。
「さて…、おもてなししましょうか」
腕を捲り再び料理につく。
「あの…」
「ストップ」
口を開こうとしたミィフィにストップを掛ける。
「このことはメイの口から、ね」
それ以降はあまり関係ないことを聞かれたりなどしてメイシェンが帰ってくるまで過ごすのだった。
そして時は過ぎ
「ただいま」
「「「おかえり」」」
メイシェンが帰宅すると同時に固まった。
「…ぇ?」
「ごめん、バレた」
京が申し訳なさそうにそう告げる。
それを聞いたメイシェンはキョトンとし、溜息を吐いた。
「すまない…」
「いいよ、別に」
それほどショックでもなさそうにメイシェンは答える。
その顔はどこか清々しいものだった。
「そろそろだと、思ってたし」
「……」
すまなそうにする京を苦笑いで見つめ、メイシェンは2人と向き合った。
そしてメイシェンが全てを話す。
「ごめんね、ちょっと黙っていた事があるんだ」
今まであったこと、京との出会いから武芸科の転入と小隊入りまで、何も隠さず全てを話す。
それを2人は黙って2人聞いていた。
「荒唐無稽な話だとは思うが…」
「これ見ちゃうとねぇ…」
九十九神としての力と合体の力を見せれば認めないわけにはいかなかった。
ピンクローター持ち汚名もこれで晴らす事が出来た。
「もっと早く話してくれれば…」
よかったのにとナルキは少し寂しそうに問おうとする。
「まぁまぁ」
そこにミィフィが止めに入る。
そしてニヤリと笑った。
「なんとなくわかるよ、メイっちの気持ち」
メイシェンが少し赤くなる。
ナルキは訳が分からないといった感じだった。
ミィフィは新しい弄りネタが出来たと喜んでいる。
「それじゃぁ、お暇させてもらおうかな」
そしてしばらく経った後ミィフィが立ち上がる。
「ぁ、ちょっと待ってくれ」
そこに今まであまり喋らなかった京が声を掛けた。
「どうしたんですか?」
「ちょっとお願いがあってね」
京が話し出す。
「メイシェンが第17小隊に入ったのは知っての通りなのだけど」
「あぁ!もしかして次の学内対抗試合にメイっち出るとか?」
「そうなんだよ、だから応援をお願いしたいと思ってね」
「そういうことなら任せて!」
ドンと胸を張り答えた。
「水臭いな、そういうことは教えてくれないと」
「だって…」
恥ずかしいじゃないかという気持ちはメイシェン以外の全員がすぐに察した。
皆一様に肩をすくめる。
それを見てメイシェンは頬を膨らませた。
そして忙しない一日が終わりを告げたのだった。
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
そして数日後。
「あわわわ…」
学内対抗試合当日、メイシェンは見事に上がり捲っていた。
緊張でガクガクと震えている。
他のメンバーは慣れたようなもので各々が次の自分達の試合に向けて調整をしていた。
「そう固くなってると真っ先にやれれちまうぜ?」
シャーニッドがメイシェンに声を掛ける。
「は…はぃ…」
こりゃダメだとニーナに肩をすくませ合図を送る。
溜息を吐きニーナはメイシェンに近づく。
「お前は強い、そう固くなるな。出せる実力も出せなくなるぞ」
渇を入れているつもりだがあまりメイシェンには効果がない。
「まぁまぁ、試合が始まれば緊張も解れるんじゃない?」
「そう…だな」
不安な面持ちでニーナはメイシェンを見るが大丈夫だろうと視線を外した。
そして試合が始まるブザーが鳴る。
「いくぞ!!」
ニーナが号令を掛けるとともに入場していく。
一足遅れてメイシェンもそれに続いた。
まだ緊張が抜けていない、これでは同調率もかなり拙いものとなるだろう。
『大丈夫…?』
今まで黙っていた京もメイシェンに声を掛ける。
「だ、大丈夫」
大丈夫ではなさそうだ。
するとそこに
「「メイっちー!!」」
大声で声が掛かる。
メイシェンがその声を聞き振り向くとそこには親友の2人。
「「ガンバレー!!」」
その時、メイシェンから固さが消えた。
京もありがとうと2人に心の中で礼を言う。
メイシャンも手を上げてそれに応えた。
そして各々が指定の位置に着く。
手に持つ錬金鋼を武器に変え、臨戦態勢を取る。
メイシェンも京を装備する。
「京、ラブリー眼帯を…」
『俺は思った…』
メイシェンの言葉を無視して京が言葉を紡ぐ。
『二代目柳生十兵衛、あれは確かに強い。並みの武芸者なら互角にやりあえるだろう』
身体能力と戦闘感は並みではない。
だが
『あの戦い方はダメだ。肉を切らせて骨を断つ、そんな戦い方をしている』
レイフォンとの戦闘の最中、京はそれを見ながら何度冷や汗を流した事か
一歩間違えば大怪我をするような戦い方、戦闘をしておいて怪我を怖がるなど笑止千万だと思われるだろうが京は出来るだけそういったことは起きて欲しくない。
『それにあのメイシェンは怖い』
どちらかといえばこちらが本心だった。
『だがそれがなければメイはただの普通の女の子だ、まともに戦闘はできない』
戦闘経験もきわめて薄いメイシェンでは武芸科の中でも精鋭揃いの小隊メンバー相手では危険だ。
「京?…京ってば!!」
京は聞いていない、一人語りはまだ続く。
『だから俺は考えた』
京の出せる武装はほぼ使えないといってもいい、だからその中でも使える能力を考え出した。
『相手は武芸者の中でも精鋭揃い、並みの攻撃など通らないだろう』
だから
『見せてやろう、人体の破壊方法を』
人の形をしている、ならば理に適った破壊方法で潰して見せよう。
『武芸者の持つ強力な錬金鋼、いいだろう。一切を寄せ付けない鋼の体を』
傷一つ負わせる気はない。鉄壁の防御力を与えよう。
『卓越された剄技、笑止、人外の身体能力の前には無力』
小細工など通用しない力を、圧倒的な力を
『ハハハ!!見るがいい、これが俺の答えだ!!』
「ちょっと京!京!!!?」
何故か京のテンションは振り切れていた。
メイシェンの呼びかけにも一切聞こえていたない。
『いくぞメイ!』
「だからちょっと待っててば!!」
「
…発動」
―――――――――――――――リリカル トカレフ
次回vs敵小隊メンバー
できるだけメイシェンに詰め込む能力のジャンルは決まっています。
わかる人にはわかるかな…?
この回まではにじファンで見ていただけていたかと思います。
次回からようやく再開といった感じでしょうか
お待たせいたしました、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
これからの更新は1日~2日毎を予定しております。