マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第43話

「……」

 

「ねぇ…京…?」

 

 メイシェンの呼びかけに京は答えない、いや、聞こえていなかった。

 一人塞ぎこみ、どこか遠くを見つめているような目で固まっている。

 最近、京は考え事に耽っている事が多い。それ自体は特に珍しいことではない。しかし、どうにもメイシェンには嫌な胸騒ぎが起こっていた。

 

「…イグナシス…塵…?」

 

 ポツリポツリと独り言を漏らす。

 あそこで会った黄金の雄山羊が吐いた言葉、それを聞いてから京の様子はおかしくなっていた。

 そして何かを焦がれるように待っている。

 

「ねぇ…」

 

 未だに反応しないパートナーを見つめながらメイシェンはどうしてこうなったのかと思いかえす。

 その原因を

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

『面倒であります』

 

「これも仕事なんだから」

 

 京の愚痴をメイシェンが諌める。

 荒廃した大地を3台のランドローラーが走っていた。

 ニーナが運転するランドローラーに取り付けられたサイドカーに乗り込み、進行方向にあるものを視認する。

 視線の先にあるもの、それはツェルニとは違うもう1つの都市だった。

 

「これはまた…」

 

 シャーニッドが都市に目を向け、感慨深そうに声を漏らす。

 それはそうだろう、目の前の都市は「死んでいた」のだから

 所々から煙が漏れ、崩れている。傍目からでも分かるその都市の壊れ様、その無残さには誰もが息を呑むものだった。

 今回、カリアンから任務としてツェルニの保有する唯一のセルニウム鉱山の近くで発見した廃都市の調査を命令されていた。

 調査を命令されたのもその壊れ様が汚染獣の襲撃と見受けられていたからだった。汚染獣に襲撃され、追い立てられるように逃げて、燃料が無くなり、本来自分のものでない鉱山に手を出すまでに飢えて、その手前で力尽きた。そう判断されている。

 近くに汚染獣は確認されていないがまだ廃都市内に汚染獣がいるとも限らない。安全の確認、そしてもしまだ生きている人間がいれば保護が任務である。

 そして外に出るために必要な防護服はあまり数が多くなかった。選ばれたのは隊長のゴルネオが負傷した為に代わりとなった第14小隊と第17小隊だった。

 そうしていると都市の足元まで着く。

 都市には植物の蔓が張り巡らされており、この都市が死んだのは随分と年月が立っていることを物語っていた。

 

「さて」

 

 外部への進入経路が閉じられていることを確認し、仕方なくワイヤーで外延部までよじ登ることとなる。

 よじ登り、外延部へと移動、やっと都市への侵入を果たす。

 

「よし、ニーナ、これからは俺達の隊とは別行動だ。予定通り各施設を調べて周る」

 

「わかりました」

 

 第14小隊の隊長、シン・カイハーンがニーナに声を掛け、各自調査に赴く。

 レイフォンとフェリ、メイシェンとニーナとシャーニッド、その2組に分かれていた。

 汚染獣がいないことはフェリの念威によって確認済みである。

 進みながら、時折声を響かせ生存者を探す。

 だが望み薄だろう。まだ都市に張り巡らせた汚染物質を都市内に進入させないためのエアフィルターは生きているのでまだ生活は可能だったろうが都市のあちこちには夥しい量の血痕が残っていた。都市内で激しい戦闘のやり取りがあったのは容易に想像できる。

 

「ひどい…」

 

 メイシェンがその光景を見ながらポツリと漏らす。

 京もそれには同感であるがそれとは別に気になる事があった。

 

『メイ、死体がない』

 

「ぁっ」

 

 あれだけ血痕があって、死体の1つもないのはおかしい。仮に汚染獣が1人残らず食べつくしたとしても腕一つくらいは転がっているものだろう。

 隣のニーナもそのことに気付き、いぶかしんでいる様だった。

 

「誰かが埋めた? ならそれをやったものはどこに…」

 

「まぁ考えてもしゃーないだろ。さっさと調査終らせようぜ」

 

 廃都市の調査、結果はもう見えていた。

 1つの都市が汚染獣によって襲われ、ツェルニの持つ鉱山の近くで息絶えた。汚染獣はもうそこにはいなく、生存者もいない。そこには何の特殊性もなく、予想通りという結果が待っているだろう。

 

「あの時、守れてなかったらツェルニもこうなっていたのですかね」

 

 おそらく広場だってであろう場所、そこには腐臭が漂い、不快感が押し寄せる。

 

「だろうな…」

 

 その光景を忌々しそうに見つめながらニーナは地面を蹴った。

 そして暫くの時が経つ。

 結局、特に収穫はなかった。

 都市中を探し、結局見つかったのは血痕だけの惨状と死体がないという事実だけ、胸糞悪いものが残っただけだった。

 そして暗くなる前に集合場所に行き、一先ずの休憩を取ることになる。

 

「良かったです。電気と食料が生きていて」

 

「だね。携帯食料じゃ味気なかったし」

 

 レイフォンと並び、料理を作っていく。

 幸いにしてイモ類などの食料は生きており、レイフォンが孤児院育ちだという事もあり料理ができたことも幸いして順調に料理は進んでいった。

 

「いいなぁ…、家庭的な子って」

 

 メイシェンの後姿を見ながらシャーニッドがそう言葉を零す。

 同じくそれを見つめていた女子2名がビクリと肩を震わせていたのは誰も見ていなかった。

 

「わ…私も手伝うぞ」

 

「…やります」

 

「あんまり無理すんなよ」

 

 突如立ち上がった2人にシャーニッドが皮肉を投げかけるが2人の睨みつけによって黙らされる。シャーニッドはしょうがないなと両手を挙げ降参のポーズを取るのだった。

 

「美味けりゃなんでもいいけどよ」

 

 そうして2人が加わったことによって何故か料理が難航し、予想外にも時間が掛かってしまうことになる。

 だが先の惨状を見てきた第17小隊の面々にとって良い息抜きにもなったのであった。

 

「…やっとできました」

 

「うん…」

 

 少し精神的に疲れた感のあるメイシェンとレイフォンを尻目に各々が料理を口に運んでいく。

 満足そうに口に運ぶシャーニッドとどこか感慨深そうに料理をつついているフェリとニーナ。

 

「にしてもこの防護服いいなぁ、ちょっと厚着してるくらいで動きやすい」

 

「ですね、一撃食らったら終わりな以上、防御を追及する必要もありませんし」

 

 シャーニッドが話題を振るとレイフォンが答える。

 レイフォンが老性体と戦うときに動きやすい防護服をということで考案された機能面を追及された防護服だった。

 黒塗りの軽装、そんな感じだ。汚染獣の一撃が致命的な以上、避けることを考えなければならない為防御面はそこまでよくない。だが小隊メンバーには好評な様子だった。

 だが少しメイシェンが俯く。

 

「ちょっと胸が苦しいです…」

 

「ほぅ…」

 

 メイシェンの零した言葉を聞き逃さす、シャーニッドの目が光る。

 フェリは忌々しそうに自分とメイシェンの胸を交互に見つめた。レイフォンは特に反応せずキョトンとしている。

 

「バカモン」

 

「いってぇ」

 

 ニーナが軽く肘鉄をシャーニッドにかまし黙らせる。

 そしてすかさず話題を摩り替えた。

 

「これなら合宿も安泰だな」

 

「あん? そんなのすんの?」

 

 ニーナの宣言にシャーニッドがめんどくさそうに眉を顰める。

 

「でも学校は…?」

 

「うむ、セルニウム補給中は学校は休校となる。約1週間といったところだろう。その間に全体の強化を図ろうと思ってな」

 

「それで料理をする人が必要だったと」

 

「あぁ、流石にメンバーでもあるメイシェン1人に任せるのは気がひけていたのだがレイフォンもできるなら問題はないだろう」

 

 既に計画はニーナの中で練りあがっているのだろう。スラスラと今後の予定を並び立てて行く。

 いつの間にそんな予定を立てていたのかとニーナ以外の一同は若干呆れが混じった目で見つめているのだった。

 

「特にメイシェンには頑張ってもらわないとな」

 

「へっ!? わ、私ですか」

 

 藪から棒に指名されたことでメイシェンが驚きが混じった声で声をあげる。

 

「あぁ、このメンバーの中で一番伸び白があるのはお前だ。事実1ヶ月ほどで隊長とやりあえるほどに成長している。いや、使いこなし始めているのか、それに学ばなければならないことも多いだろう」

 

「はい…」

 

 それはゴルネオとの対戦のことだろう。

 最終的に互角の戦いを繰り広げたわけではあるが結局のところは新たな能力による奇襲が成功しただけという話、今までの修練ではゴルネオに抵抗はできても対処するまでには至らなかった。

 まだまだ足りない。そう痛感するほかなかった。

 

「レイフォンには済まないが、私達を指導してもらいたい」

 

「構いませんよ」

 

 圧倒的武威を誇るレイフォンに教えを請う。まだまだ第17小隊のメンバーは学ぶべきことは多かった。

 それをレイフォンは快諾する。

 食事が終わり、各々が就寝するために割り振られた部屋に入っていこうとする、その時だった。

 

「『っ!?』」

 

 京とフェリ、2人が何かの反応を掴んだ。

 

「生体反応を確認しました。正体不明、人でも家畜でもありません」

 

『メイ、何かいる。気をつけろ。普通じゃない』

 

 2人とも感じた先に何がいるのかいまいち判別がつかなかった。

 フェリは生体反応があったというだけ、京はどこか見知ったことのある者の気配に似たものを感じ取っていた。

 辺りに緊迫した空気が張り詰める。

 

「隊長、先行します」

 

「分かった。すぐに行く」

 

 一同は頷き、レイフォンが先にいくとその場からいなくなった。

 

「いくぞ!」

 

 フェリの誘導によって移動する。

 目指すは都市中央部、そこに何らかの生き物がいるのだろう。

 汚染獣ではない。人でもない。動物でもない。ではなんだというのか

 

「京、なんだかわかる?」

 

『いや、何か引っかかっているんだが…』

 

 感じたものと似たような感覚をどこかで感じていたはずだった。

 だがどうにも思い当たる節がない。

 そして見えてくる。

 いるであろう場所から黄金の光が漏れていた。

 そこのいたのは一体の黄金の雄山羊、3mはあろうかという巨体と大きな枝のような角、全身が黄金に発光し、神々しさに似た何かを感じられる。

 レイフォンは剣を構えたまま雄山羊の前で硬直していた。

 

「おい! どうするよ」

 

 シャーニッドが錬金鋼から狙撃銃の形をとらせ、ニーナに呼びかける。銃口は既に雄山羊に狙いを定められていた。合図があればいつでもいける。そう言っている。

 状況が判断できない。

 戦闘しているわではなさそうだ。だが互いに微動だにしなかった。

 それはそうだろう。おそらくレイフォンは動かないのではなく、動けない。

 遠目からでも感じられる黄金の雄山羊の威圧、下手をすればあの老生体の敵意よりも上かもしれない。それをあの至近距離で受けている。

 

『……』

 

 それを京はメイシェンの目を借りて見つめていた。

 

「構わん! 撃て!」

 

 ニーナの号令と同時にシャーニッドが弾丸を雄山羊に打ち込む。

 それは雄山羊の額に吸い込まれるように命中し、消えた。

 

「ふっ!」

 

 銃声によって緊迫が解けたレイフォンがすかさず雄山羊に切りかかる。

 続いて左右から回り込んでいたニーナとメイシェンが攻撃をするが、それもまた通り過ぎるようにすり抜けた。

 

『こいつ…実体がない』

 

 思念体のような存在か、幽霊のようなものか

 京はこれを間近に見て相手がなんであるか当りがついた。

 おそらくは電子精霊、この都市の電子精霊は雄山羊の形をしていたのだろう。感じている気配がかつてツェルニに会ったものとどこか似通っていた。

 だがおかしい。

 不明な点がいくつもある。まず何故都市が死んでいて電子精霊が生きているのか、そして何故こんなにも強く、禍々しい気配を発散しているのか

 

「無駄だ」

 

 それは口を開き、先の攻撃が無意味であると語った。

 

「我、道具なり、狂い怒れる魂。我を使役するものなければ我は無為、故にその刃、我を傷付けること叶わず」

 

 雄山羊の独白、それは一体誰に投げかけているものなのか

 

「お前は何だ…!」

 

 ニーナが目の前の雄山羊に向かって問いかける。

 その顔にはなにか戸惑いを含んだものが見受けられた。

 

「我、かつてこの領域を守護したもの。だがその願いは叶わず、狂おしい憎しみで染まるのみ。故に我は新生し、我が目的を成すために我を使役せしめんものを求める者也。我を手に取れ、さすれば我が魂、イグナシスの塵を駆逐する刃となろう」

 

 要領を得ない雄山羊の言葉。

 

『はは…』

 

 その言葉を聞き、京が嗤った。

 

『これは巡りがいいのか…、それとも…』

 

「京…?」

 

 様子が変わった京を疑問に感じメイシェンが声を掛けるがそれは黙殺される。

 雄山羊は黙って一人づつ目を向ける。

 

「お前は違う」

 

 シャーニッドに目を向け、そう語る。

 

「お前も、違う」

 

 レイフォンも眼中にないと言うようにすぐに目を逸らす。

 

「お前は…、その持つ魂が許さないだろう」

 

 メイシェンに目を向け、そう語る。

 そして最後に

 

「お前は、我を使役し足りえるか」

 

 ニーナに目を向き、今までに無い答えを出して、突如として襲い掛かった。

 突如襲い掛かる雄山羊に反応が遅れる。

 

「隊長っ!」

 

 覆いかぶさるように襲い掛かった雄山羊をレイフォンはニーナを抱き上げ、その場を離脱することで回避した。

 だが状況は芳しくは無い。

 相手に攻撃が通らないのだ。打つ手が無いに等しい。

 

「邪魔をするか」

 

 抑揚の無い声で、しかし怒りを含んだ声で雄山羊が吼えた。

 

「ちっ」

 

 シャーニッドが舌打ちしながらも二丁拳銃に変化させた錬金鋼を無駄と知りつつも雄山羊に当てていく。だがそれはすり抜け、その先の壁に銃創を作っただけだった。

 雄山羊はこちらを見向きもせずにニーナをひたすらに追っていた。幽霊のように消えたと思えばレイフォンとニーナを背後から襲いかかる。それをなんとかレイフォンは直感で捌いていく。

 メイシェンも懸命に拳や足を振るい、確実に雄山羊に当てていくがやはりそれも無意味だった。

 万事休す、そう思われたがそれを打破したのは意外な人物だった。

 

『メイ、ごめん』

 

「えっ」

 

 メイが着地したと同時に装備化が解けた。

 

「京…?」

 

 呼びかけに反応しない。

 なぜならば懐のピンクローターがその場所に無く、そこに京がいないことを示していたのだから

 そして目を向ければ雄山羊は再びニーナに迫り、反応が一瞬遅れたレイフォンが目を見開いた瞬間だった。

 

「よぉ…」

 

 雄山羊が弾かれるように吹き飛ばされた。

 逃がさないと黒い何かが現れ、雄山羊を拘束する。

 月明かりが辺りを照らした。

 そこには長く伸びた髪が雄山羊を拘束し、締め上げている京の姿があった。

 

「また訳わかんねぇのが…」

 

 シャーニッドが再び銃を向けようとするが

 

「先輩! 待ってください!」

 

 メイシェンの必死の制止によって止まる。

 

『彼は大丈夫です』

 

 フェリもすかさずフォローを入れる。

 シャーニッドが頭をかき、訳が分からないと言っているようだった。レイフォンとニーナも目の前の謎の乱入者に目を向けている。

 京と雄山羊は今だ向かい合ったままだ。

 

「教えて欲しいんだけどな、色々と、知ってること全部」

 

「……」

 

「イグナシスって何だ? お前は何だ? 答えろ」

 

 京は内心、この偶然に感謝していた。

 何か重要なことを、この世界について詳しく知っているものがアチラ側からやってきた。そして何やら意味深な名前も聞いている。

 是非ここで引き出せるだけ引き出したい。それによって得られる情報は最上のものだろう。

 ギリギリと京の髪が雄山羊を締め付ける。

 明けの明星、精神体に干渉できる能力、京が持つ非実体に対抗できる数少ない能力の1つだ。

 

「邪魔をするな」

 

 それが雄山羊の返答だった。

 答えに窮しているわけではない。情報を流すのを躊躇っているわけでもない。こちらを全く相手にしていないだけであった。ただ目的の為に脇目も振らない。

 それを冷めた目で京は見つめる。

 

「だったら…」

 

 多少痛めつけてもこちらに気を向けさせてやろう。

 悪いことにそう時間が無い。視界がぼやけ、膝が笑い始めている。

 速攻でけりをつける。少なくとも動けないまでにはなってもらう。

 京は紡いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「星方武侠アウトロースターよりジーン・スターウインド、古式銃キャスター  …発動」

 

 

 

 

 

 

 

 手に現れたのは古びた大型の銃、古式銃キャスター、オートマチックとリボルバーを足したような構造とおかしなものだった。

 そして京が取り出したのは『1』の刻印が施された弾丸、キャスターに装填し、雄山羊に向ける。

 だが目の前の雄山羊は微動だにせず、ニーナに注意を向けていた。

 拘束は解けていない、逃れられはしない。

 

「……」

 

 引き金を引く。

 瞬間、青白い巨大な閃光が雄山羊に向かって襲い掛かった。

 古式銃キャスター、失われた西洋魔術の武器、様々な魔法を弾丸に封じ込め、それを放つ銃だ。魑魅魍魎とも戦えるこの弾丸は非実体にも有効だ。

 青白い光が消えるとそこには何も無かった。

 

『ロストしました』

 

「ちっ…」

 

 逃げられた。

 もう手が出せないと判断したのか、違う目的を発見したのか、少なくとも取り逃した形になる。

 折角の情報源がと落胆を隠せない。

 口から一筋の血が流れた。

 そこにレイフォンに抱かれたニーナが近くに着地する。

 

「もういい!」

 

「ぁ、はい」

 

 若干赤くなったニーナがレイフォンから降りる。

 そして向かい合うように京と対峙した。

 京は一瞬メイシェンに目を向け、そのまま消えた。

 

「なっ!」

 

「まーた消えちまった」

 

 突然の非常事態も終わり、再び夜の静寂が辺りを満たした。

 

「あれは一体…」

 

 ニーナがポツリと漏らす。

 

「まぁ、少なくとも…」

 

 シャーニッドがメイシェンに目を向ける。

 それにメイシェンが顔を逸らした。

 

「一方は知ってる奴がいるみたいだからな」

 

 そう言って口を吊り上げて笑ったのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

「ねぇ…」

 

 メイシェンは京に語りかける。

 何か隠し事をしているのはずっと前からわかっていた。

 だが聞けない、いなくなってしまいそうな気がしたから

 黄金の雄山羊に京が手を出し、京の存在が小隊にバレたことは別に良いと思っている。近い内に話す予定であったし、あの状況は京がいなければ拙いことになっていたとメイシェンにもわかる。

 しょうがないことだった。そう割り切った。

 そして京の事は合宿の初日に話すことになった。色々と込み入ったことになりそうだったからだ。

 そこでやっと京が顔を上げる。

 

「ぁ…ごめん」

 

 すまなそうな顔をして少しだけ笑った。

 

「知ってる? 今日は京が初めて家に来た日なんだよ」

 

「そう…だったかな。いや、そうだったね」

 

 京が覚えていてくれたことに少し安心する。

 そしてコトンとメイシェンは小さな小包を出した。

 

「はい、プレゼント」

 

 キョトンとした顔をする京、今まで特に祝ったわけでもなかったので何故と思っていることだろう。

 静かに箱が開けられるとそこには洒落た銀色の時計があった。

 

 Tick Tack...

 

音がする。規則正しく音がする。

 

「なんとなく、お祝いしたことなかったから」

 

 それはメイシェンが前から思っていて、結構前から思っていたことであった。

 その為にバイトしていたというのもある。

 

「ごめん、なにも用意してなかった…」

 

 今度こそ本当に済まなそうな顔をして京がガクリと落ち込んだ。

 それを見て少しはいつもの調子に戻ったかなとメイシェンは願った。

 そしてガバリと顔を振り上げ、京が立ち上がる。

 

「それなら料理は任せろ、豪勢なもの作る」

 

「うん」

 

 京はプレゼントされた腕時計を右手につけて、材料を買いに家を飛び出す。

 いつもに京に戻ったことに安堵しながらメイシェンは京を送り出す。

 

 Tick Tack...

 

 規則正しい音が京の右腕から鳴り響いていた。




詰まってきました1~2日毎更新はどこにorz
そろそろ第1部が終りそうです。
まぁ第3部まであるんですけどね…へへへ…

最後の時計はある能力に必須なものです、それは追々ということで

原作名:星方武侠アウトロースター
ジャンル:アニメ
使用者:ジーン・スターウインド
能力:古式銃キャスター
失われた西洋魔術の武器、様々な魔法を弾丸に封じ込め、それを放つ。
1~13番までの弾丸が存在し、4・9・13番の弾丸は特に強力な威力を秘めている。

と星方武侠アウトロースターでした。
かなり昔の深夜アニメ、深夜のアニメを流行らせ始めた作品の1つ。
話の展開もよくできており、熱い部分も多くあります。今でも余裕で通用するレベル。
作者はOPが大好きです。
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