京がツェルニからいなくなった日から少し遡る。
槍殻都市グレンダンのある所、ある一室で一人の少女がいた。
目鼻立ちがクッキリとし亜麻色の髪と緑色の瞳、髪型は肩までかかるストレートヘア、要約すると美人だ。
名をリーリン・マーフェスという。
リーリンは暗くなった部屋でスタンドに明かりを灯し、手紙を綴っていく。
送る相手は遠くに飛ばされてしまったレイフォン・アルセイフに対してだ。
内容は極々普通の内容、元気にしていますか、こちらは元気です、こんなことがありました、あなたが健やかでありますように、至って普通だ。
スラスラと書いていく。
届くのには早くても1ヶ月掛かるだろう。数々の都市を経由して手紙を届ける。都市間との交流がない欠点をモロに受けている事情の一つだ。
それでも書いていく、常に送り続けるように、向こうにいる家族を心配させないように
すると肩に重みを感じた。
目を向けるとそこにはピンク色の丸い物体がそこにいる。
名前はジバクくん、数年来の付き合いだ。
「ジ! ジ!」
未だに何を言っているかわからないがニュアンス的なものはわかるようになった。
「はいはい、今行くわ」
夕食が出来たと言っているのだろう、多分、きっとそうだ。
リビングにいくと一匹の黒い鳥が器用に羽を使って料理をしている姿が見える。
初めて見ればそれはそれは異様な光景に見えるだろうがもう慣れた。
どう羽を使っているかはもう考えないようにしている。
「オウ、リーリン、ちょっと待ってな」
そう言われ、席に着く。
黒い鳥、キール、彼もまたジバクくんと共にここに来た家族の一人だ。
するとそこに1人の男が玄関から入ってきた。
壮年を控えながらその体は鍛え抜かれており、見るからに堅物そうな男だ。
名をデルク・サイハーデン、サイハーデン流の正統後継者、レイフォンの師匠でもある人だ。
「こんばんわ、父さん」
そして同時にレイフォンとリーリンの養父だ。
デルクはかつて孤児院を営んでいた。私たちはそこの出身、今はもう別の人の手に移ってしまったが今でも父と慕っている。
「チッ、きやがった」
「フン、畜生の作る料理を食べてもらえるだけありがたいと思え」
キールの悪態に悪態で返すデルク。
仲は悪そうだが実は意外と良い関係なのではないかとリーリンは思っている。
そして、2人と1匹と1体の奇妙な夕食が始まる。
もう慣れた風景だ。最近まではもっと大人数で食卓を囲っていたのだが
食事にがっつくジバクくんとキールに目を向けながら心の中で感謝する。
思えばもう7年前、彼らがここにやってきた時から騒がしくも楽しい日々だった。
そして、一時壊れかけようとした関係を修復してくれた恩人でもある。
それは1年程前の話。
レイフォンが闇試合、違法とされ武芸者として卑下される賭け試合に手を出している事が発覚した。
それも大衆の面前で
その時、レイフォンは最年少の天剣授受者として天剣を賭けた勝負をし、それに圧勝したところで倒された相手がバラしたのだ。
何故そんなものに手を出したのか、理由は簡単、お金が欲しかったからだ。
かつて疫病が家畜などを襲い、完全自給自足を保っていたグレンダンが崩壊しかけたことがあった。その時は餓死者も発生するものでレイフォンはそれをずっと覚えていたのだ。
孤児院の為にお金が欲しい。
だがそれは武芸者としてやってはならないことだった。そして何よりレイフォンは天剣授受者、武芸者の模範となるべき人だったからだ。それが違法なことに手を出したと知れればそれはもう大騒ぎだ。
結果はレイフォンの都市外追放、かなり甘い裁定だった。
そしてそれと同時にレイフォンと孤児院の子供たちとの間に亀裂が起きようとしていた。
同じ家族で、誇りだったレイフォンが違法なことをして天剣を剥奪された。それを聞いたときの子供たちの思いは如何様だったかは知れない。
レイフォンは独りぼっちになろうとしていた。
彼らの仲を取り持ったのがキール達であった。
取り繕うように孤児院の子供たちを説得、説教し、なんとかレイフォンの気持ちをわからせるに至る。
そしてとりあえずは
「みんなでレイフォンを叱ってやろう」
そういう結論で落ち着いたのだ。
後は仲良くやっている。
リーリンはあの時のキールの言葉が印象的だった。
「もっと上手くやればよかった。じゃなけりゃぁ誰かに相談すりゃよかった」
レイフォンのミスはグレンダンでは有名な天剣授受者でありながら確実にバレるであろう闇試合に手を出した考え無しの行動、そしてそれを誰にも相談しなかったこと。
闇試合に手を出したこと自体は全く触れもしなかった。それどころかもっと上手くやれと言っている様で、それまた不思議な感覚に囚われたものだ。
そしてあとは脳が筋肉で出来ていたレイフォンに気合でリーリンが勉強を教え込み、なんとかツェルニに合格して、そしてあちらに行ってしまった。
なんてことはない、ただレイフォンの頭を冷やしに送っただけのようなものだ。別のことでもしながら武芸以外でも考えてみろと
ただいつの間にか一般科から武芸科に移っていたときはもう笑うしかなかったが
そう、そんなこんなで彼らは恩人なのだ。
当てもなく放浪していた彼らを孤児院に招きいれたのはリーリン、それ以来家族としてここにいる。
明らかに異常な2人だが陽気でお人よしなキールとよくわからないジバクくんはすぐに子供たちに受け入れられた。
そう過去に思いを馳せていると
「どうするか決まったか?」
そうデルクに問われた。
「……まだ」
「そうか」
リーリンの答えにデルクはそう素っ気なさそうに答える。
デルクの問いとは、それはリーリンに渡してあるある物に起因する。
それは一本の錬金鋼、
その錬金鋼が意味するところはサイハーデンの技を全て修めた証、免許皆伝というやつだ。
もう皆はとっくにレイフォンを許している。だから追放され、自分の戒めとして刀を使わないレイフォンに許すという意味も含めて渡して欲しいと渡されたいたのだ。
問題は渡す方法、別に郵送でも構わないといわれている。だが何か違うだろう、そういうのは
だとしたら後は手渡し、だがグレンダンからツェルニは遠い。レイフォンが稼いだ金で学校に通っている以上、休学してレイフォンに渡しに行くというのもなにか決まりが悪い。
あぁ、またうじうじしている。
「行っちまえばいいのによぉ」
そうキールが言う。
キールのように思い切りがあればいいなとリーリンは思う。
「やっとこのしみったれた都市から出られると思うと涙が出てくるなぁ」
「って! 着いて来るつもり!?」
違う、自分本位なだけだ。
「アイツも迎えにこねぇし、俺らから探してやんねぇとなぁ」
キールの言うアイツ、聞こうとすると上手くはぐらかされるが友達のようなものなのだろう。
それまでずっとこの都市で待っていたようだが痺れを切らしていた。
リーリンに乗じて都市外に行くのはもはや決定事項、そんな感じだ。
「だからさっさと決めてくれよ」
リーリンの葛藤はなんだったのか、気にしてなどいないのだろう、そうに違いない。
だが、少しだけ、キールに押されてか決心がつきそうだった。
ふとデルクを見ると玄関を睨みつけるように見つめていた。
「父さん……?」
デルクが見つめるのはその先、何かの気配を感じ取るようにドアの先を見つめているようだった。
それをリーリンは何事かと見つめる。
「ここにいろ」
そう短く告げて、デルクが立ち上がった。
そしてゆっくりと外に出て行く。
玄関先からデルクの後を目で追う。そこにはデルクと一人の男が対峙していた。
「あれは……」
その男には見覚えが会った。
ガハルド・バレーン、かつてレイフォンと天剣を賭けて戦い、完敗、そして闇試合の関わりを暴露した男。
だがおかしい。
ガハルドはレイフォンとの一戦で大きなダメージを負い、剄脈に異常をきたして寝たきりはおろか意識があったことすら怪しかったというのに、何故動けてここにきているというのか
「ァァ、ァァァア」
「なるほど」
聞こえるのはガハルドから発せられる呻き声のような音、目には異様な光を宿し、早速人であるかどうかすら怪しかった。
デルクが納得したように呟く。
「人を辞めたか」
ガハルドはデルクの呟きに答えず、大きく息を吸い込み。
そして
―――咆……
「ジ!!!」
ガハルドの絶技がデルクを襲おうとしたその時、2人の間を割るようにジバクくんが現れた。
そして爆発、2人は爆風によって吹き飛ばされる。
ジバクくんはそのまま爆風に乗ってコロコロとリーリンの足元に転がった。
「助かった」
同じくデルクが扉まで下がり、ジバクくんに礼を言う。
ガハルドの放とうとした技、それをデルクは知っているようだった。
「リーリン逃げろ。あいつは拙い」
昔に退役したとはいえ未だ並みの武芸者よりは遥かに強いデルクがそう言っていた。
戦えば周りに気を配っていられないほど、そう言っている。
「行け……!」
デルクの渇が飛ぶと同時にリーリンは逃げた。
走って、走って、走って
そしてデルクが見えなくなると足を止めた。
心配だ。だけどリーリンは武芸者ではなくただの人間、無力な一般人なのだ。
だが妙な胸騒ぎがあった。
「……」
戻りたい。
そう何かが警報を鳴らしていた。
「オイ! 逃げんじゃないのか?」
それに付随するようについてきているようだったキールがそう言う。
そう、逃げるべきだ。戻って何が出来る。
だが心配だ。胸がざわつく。
またうじうじと悩むのか、また
レイフォンに合いたい。
心の中で浮かんだものはレイフォンの顔だった。
手を握り締め、反転し、再び来た道を戻る。
「まったく……」
そうキールは呆れるように言って
「できるかはわかんねぇけど、使ってみるか」
チャンスを与えた。
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デルクはガハルドと向かい合い、死闘を演じていた。
あの攻撃をさせないように、その隙を与えずに間髪いれずに切り結び続ける。
それをガハルドは野生じみた動きで避けていく。
そこにはかつて洗練されていた武芸者として、修めた技は、型は、見る影もなかった。
デルクは上手く立ち回ってはいた。
「むぅ……」
だがそこまでだ。
全盛の時とは比べるべくもなく衰えた体、そして得体の知れない相手の足止めは難しいといわざる得ない。
せめて一太刀でも浴びせ、動けなくするくらいはしておきたい。
体に鞭打って前に、前に、更に攻勢に出る。
「はぁぁぁああ!!」
刹那の間だけ決着をつけるべく、活剄によって体を活性化させ、無理矢理に体を動かす。
そして
「貰ったァ!」
捉えた。
ガハルドの動きを勘と経験、デルクの持てる力を総動員させて勝ちを手繰り寄せる。
デルクの持つ刀はガハルドの体を斜めに切り裂いた。
「ガぁぁアアア!?」
悲鳴を上げ崩れ落ちるガハルド。
終った。そう思った。
だが
「ぬ…グゥ……ッ!」
何かがデルクの肩を切り裂いた。
目を向ければ、そこにはガハルドはいなかった。ガハルドだったものがそこにいた。
背から生えた翼と体を覆う鱗、そして人とは思えない牙と爪。
そう、それはまるで
「汚染獣……」
汚染獣の様ではないか
飛び掛るガハルドだったもの。
万事休すだ。デルクはもう動けない。体を酷使しすぎた。
願わくばリーリンがもう安全な場所に逃げ込んでいますように
そう思い。
「キールロワイヤル!!」
デルクを守るように緑色の閃光がガハルドを覆い、吹き飛ばした。
見たくはなかった娘が見えた。
「この…っ、馬鹿娘が」
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「こりゃおったまげた。まさか撃てるとは」
キールが感嘆とした感じでそう言った。
キールロワイヤル、キールと合体することで放つ事ができるエネルギー砲撃だ。
装着するだけなら誰にでも出来る。
だがキールロワイヤルはその名の通り、シャンパンとカシスリキュールを混ぜてカクテルを作るように、使用者とキールのエネルギーを混ぜて放たなければならない。
リーリンはただの人間のはずだった。しかし、少々違った。
剄、そのエネルギーは誰でも持っている。それを扱うことの出来る剄脈があって初めて剄を使いこなせるのだ。
そしてリーリンは剄脈はない。だが剄のエネルギーだけは異常を通り越して規格外の量をその体内に宿していた。
「こりゃ何発でもいけるぜぇ!」
そういうキール。
今のリーリンは無力ではない。助ける力がある。
キールが装着された右手をガハルドに向けた。
「父さんに近寄らないで!」
再度炸裂するキールロワイヤル。
それはリーリンの膨大な剄をエネルギー源として特大の閃光を苦もなく放ち続ける。
その攻撃に流石に耐え切れなかったのかガハルドが逃げるように舞い上がり、その閃光から離脱した。
「父さん!!」
近寄って傷を確かめる。
深く肩を傷付けられただけだ。命に別状はないと判断できる。
少しホッとする。
しかし、ここは既に戦場だ。
「オイ! リーリン!!」
キールが叫びを上げる。
この状況で敵から目を離すなど論外、しかしリーリンはそんなことを知る良しもなかった。
既に再び迫っていたガハルドはリーリン達の目の前にいる。
デルクが抱えるようにリーリンを背に押しやり盾になろうとした。
だが意味はないだろう。その爪は2人諸共切り裂くに容易だ。
爪が迫る。
そこに
「もう少し見ていたかったんだけどなぁ」
そう少し詰まらなそうに言いながら一人の男が現れた。
同時にガハルドは最初からここにいなかったかのように遥か後方に吹き飛ばされていた。
「まったく…、何期かは知らないが面倒な変異を遂げてくれてもんだ」
ガハルドに取り付いていた汚染獣、老性体二期以上の化け物だったのだ。
二期以上はなにか特殊な能力を身に付ける。この汚染獣は人間に取り憑き、その血肉を吸い上げエネルギーとし、更に自らの傀儡として隠れ蓑とする変異を遂げていたということだろう。
「あなたは……」
リーリンはガハルドを吹き飛ばした男を知っていた。
いや、知らないものがいるはずがない。この都市に限ってはありえない。
なぜなら
「天剣授受者、サヴァリス・クォルラフィン・ルッケンス…様」
「や、また会ったね」
長い銀髪を後ろで結んだ優男、彼が12人しかいない天剣授受者の一人サヴァリス・クォルラフィン・ルッケンスだ。
少し前に向こうから接触し、リーリンと会っていた。
確か、リーリンの護衛任務だと
そうそれは
「餌に……しましたか?」
「いや、それは心外だね。なんだってホラ、君たちは無事だ」
顔に薄ら笑いを張り付かせたままサヴァリスは答える。
そういうサヴァリスにリーリンは確信した。
ずっと見ていたのだアイツは、助けに現れたタイミングだって今更過ぎて、そして絶妙だった。
「助かったよ、後はこちらが始末をつけるから」
そういうと遠くにいたガハルドが何かに引っ張られるように宙を舞った。
空には薄っすらとしか判別できないがもう1つの人影が見えたのだった。
そして、突然の凶事は幕を閉じる。
各々に様々な切っ掛けを残して
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「はぁ……」
リーリンは溜息を吐く、
何故こんなことになっているのだろうか
そう思い悩むが答えは一行に出る気配はない。
「どうしましたか? そう眉間に皺を寄せていると幸が寄ってきませんよ」
「その原因の一つが偉そうに言わないでください!」
リーリンは武芸者の如く、壁から壁に跳び移り、シェルターに向かっていた。
正確にはサヴァリスに担がれてシェルターに向かっていた。
何故こんなことになっているのか
ここはグレンダンではない、学園都市マイアスだ。
なんだかんだで決心が固まったリーリンは学校に休学届けを出すとツェルニに向かう放浪バスに乗り込んだ。
そこまではよかった。
学園都市マイアスを経由したところ、マイアスの都市警察が足止めをしたのだ。事件があったらしい、それによって事情聴取だなんだのと拘束され続け、レイフォンに渡すはずの錬金鋼さえも押収されてしまった。
そして、暇を持て余している所に汚染獣が襲来したといったところだ。
空を見上げれば鳥たちが群れを成して、一つの塊のように飛んでいる。
うん、中々に波乱万丈な旅になっている。少し涙が出てきそうだ。
サヴァリスが共にいるのはなにやら別の任務があるらしく、偶々一緒の放浪バスに居合わせただけ、らしい。
「着きました。ここにいればまだ安全ですかね」
一体何が起こっているというのか、汚染獣の襲撃、それだけではない。そう思えてならない。
汚染獣が襲ってくる以前にここでは厳戒態勢が引かれていた。
何かを捜しているように、リーリンたちはそれに巻き込まれたのだ。
「一体何が……」
そう独り言のように漏らす。
「まぁ、都市が足を止めていれば自明の理という奴でしょう」
「……ぇ?」
「お気づきになりませんでしたか? この都市、動いてないんですよ、一歩も」
ありえない。だが納得せざる得ない。
グレンダンとは違い、都市の汚染獣遭遇率は決して高いものではないのだ。
常に動いて回避行動を取っているのだから
だが足を止めていれば話は別だ。どうぞ襲ってくださいと言っているようなものだ。
都市の足を止める原因が発生した。そう考えるのが自然だろう。
そう思えば、この都市の緊迫した空気も納得できる。
「ジ! ジ!」
すると肩に乗っていたジバクくんが髪を引っ張り何かを主張していた。
「なに? どうしたの?」
ジバクくんが指差す方向には鳥の群れが見える。
そしてリーリンの目にはなにやら鳥の群れに向かって光が差しているのが見えていた。
ドクンと右目に痛みが走った。
「っ!」
目を押さえて蹲る。
「大丈夫ですか?」
サヴァリスがそう言うが聞こえない。
「オイ大丈夫か?」
キールも心配そうにするが今は問題ではない。
「あの光はなんでしょう?」
鳥の群れに向かって指を刺す。
何故か気になってしょうがない。
「ん? なんのことです?」
「見えねぇけど」
だが返答は見えないということだった。
何故? 今もハッキリとリーリンの目には光が捉えられているというのに
「ジ!!」
ジバクくんはひたすらに鳥の群れに向かって指を向けている。
そう、つまりそれは
「見えてる?」
「ジ!!!」
それは肯定だった。
リーリンでも未だにわからない不思議生物だ。見えていてもおかしくないのかもしれない。
わかったことはあの光が自分の目の錯覚ではないということ。
そしてこの胸騒ぎはガハルドが襲ってきたときと同じ感覚、ならば、やることは
「サヴァリスさん! すみません後よろしくお願いします!」
リーリンは鳥の群れのいる方向に走っていく。
「ちょっと……あなたの護衛も任務の一つなんだけどなぁ」
呆然としながらもそれをサヴァリスは見送っていた。
走っていくと鳥の群れに指していた光が消えた。
胸騒ぎが酷くなる。
更に足を早めながら進んでいく。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
息も絶え絶えになりながらも近くに寄る事ができた。
光が消えた鳥の群れは霧散するように散り散りになり、次々と地面に落ちていく。
ちょうどそこに自分の頭上に一匹の鳥が落ちてこようとしていた。
「わ…! わわわわ」
必死に取ろうとするが自信がない。
そこに一つの影が差した。
「お~っと、こんな感じでいいのか」
キールが器用に足でキャッチする。
キールから渡された小鳥は色合いが少しだけ特殊だった。
頭に冠のような黄色い羽毛があった。
「ジ! ジ! ジ!」
「……!」
なにやらジバクくんと小鳥は何か話しているようだった。その内容は全くわからない。
とりあえず、何があったのか探ってみるべきか、そう思った時だった。
「その電子精霊、渡してもらいましょうか」
そう言って声がする。
振り返るとそこには金髪の青年がいた。都市警察の服を着てここの生徒だという事がわかる。
そして同時に見覚えがあった。事情聴取と荷物を押収した奴だ。
相手方の事情とはいえ印象はすこぶる悪い。
そしてなにより
「でないと少々痛い目にあってもらうことになりますが?」
Tick Tack...
なにか得体の知れない。不快な空気を纏っているから
とても警察のするような気配ではないし、ああいう言動を取るとも思えない。
リーリンは鳥を抱くように胸に抱いた。
「嫌です!」
渾身の力でそう叫ぶ。
自分の直感に従って
「ならしょうがないですね」
気付くと周囲には狼の面を付けた者達がリーリンを囲むようにそこにいた。
「ならば力ずくだ」
一斉に飛び掛る。
Tick Tack...
時計の刻む音がする。
『ジャック・オ・ランタン 死のロウソク ジィニィの燃える尻尾……』
Tick Tack...
規則正しく音がする。
『スパンキーよッ! 集めた鬼火を貸しとくれッ!!』
懐中時計が真っ先に襲い掛かった2人の面の者達に絡まった。
一体何が
そしてそれを見るキールとジバクくんは笑っていた。
「オイ! おせぇぞ!!」
「ジ!!」
Tick Tack...
『迷いの時間! 爆発する二十一時の…!』
そしてここに
一人と一匹と一体の
遅い再会が成ったのだ。
『「
すみません、超難産でした。
レギオスって視点コロコロ変わりながら進むので主人公視点だけって難しいんですよね。
キアイで1話でキール達の軌跡をまとめてみました。影でやっていたことは追々ということで
この展開からどんどん原作から離れさせられればなぁと思っています。
ぁ、あと詰まっている時息抜きに「世界の戦奇譚」と言うのも新しく連載してたりします。
エロゲー能力縛りという誰得なものですが
よければそちらも見てみてください。