マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第3話

「これは…」

 

「…」

 

 突如として窓を突き破り、両手に刀を持った男が目の前の光景を見て絶句していた。

 辺りは返り血で所々赤く染まり、まだ死体の処理も終っていない為肉片があちらこちらに散らばりスプラッターな光景となっていた。

 そしてその惨状の中心には誘拐された少女、そして異形の自分がいる。

 これを見て、果たして男はどう考えるだろうか

 

「これは…君がやったのか?」

 

 当然そう考えるだろう。

 誘拐された少女と同い年くらいとはいえ見た目が既に怪しい。

 そしてこの惨状を作り出したのは相手の考え通り京なのだからこの現状はとても拙いといえる。

 少女が一部始終を見ているため言い逃れも出来ない。

 どうするかと思案を巡らせる。

 ここは5階、そしてどうやったのか窓を突き破って現れるというありえない登場をした男に警戒感を抱いてしまう。

 先に倒した吸血鬼とは比較にならないとどこか警報が鳴っていた。

 

「答えてくれ」

 

 どこか嘘であって欲しいと改めて問われる。

 こんな子供がこんなことができるのかと

 

「…」

 

 無言で返す。

 それが答えになってしまっていても

 そして同時にここからどう逃れようか思案を巡らせていた。

 信用しないという訳ではないが面倒事なのは確かだ。

 ここは自分の植物が巡らされた城のようなもの、手はある。

 こちらの雰囲気を察したのか男は躊躇しながらも剣を構えようとする。

 だがそこに

 

「待ってください!」

 

 それを止めるように少女が叫びを上げた。

 その行為に驚いたように男は構えを止めた。

 しかし、こちらを絶えず注視しているのは警戒の現われからか

 

「大丈夫かいすずかちゃん?怪我はないか?」

 

「はい、大丈夫です。」

 

「これは…どうなってるのかわかるかい?」

 

 この惨状を苦そうに見つめ、何故こうなっているのかを少女に聞くのを心苦しそうにしながら聞く。

 

「えっと、あの子が…」

 

 そう言って少女、すずかがこちらに眼を向ける。

 これで自分がやったのがバレた。

 助けたのにあんまりではないかと理不尽ながらも心の中で愚痴る。

 

「あの子が助けてくれたんです。」

 

 そして同時に救いの手も差し伸べられる。

 相手から警戒心が消えていく。

 が、この騒動に確実に巻き込まれ面倒事を抱え込んだのは間違いなかった。

 

「そうか、ありがとう。」

 

 礼を言われるとは思わず少しだけ呆気に取られる。

 この惨状を作り出したのは自分なのにも関わらず、だ。

 そして、京が危惧していること

 

「少し話を聞きたいのだがいいだろうか?君が助けた彼女の屋敷に来て欲しい。」

 

 面倒事だ。

 アチラに行って戻ってこれるだろうか、恐らく戻れないだろう、何故か確信できた。

 悪いようにはされないだろう。

 自分は物語に介入したい、しなければならない、いつまでも日陰者ではいられない。

 その上で障害になるだろう事は避けたい。

 しかしどうするべきかと考える、逃げても逃げなくても面倒事だと本能が叫んでいた。

 

 誘いに乗れば京は人並みの生活に戻れる、だが介入によって別の世界に行くことしかないと決め付けていた京は自分の望むものを拒否していることに気づいていなかった。

 

「…」

 

 またも無言でそれに答える。

 そもそも話に乗る気は無い。

 例え拒否しようとも、そもそも断ることが不可能に感じる。

 

「あの…お礼もしたいですし一緒に来てもらえませんか…?」

 

 困ったようにこちらに誘いかけるすずか。

 しかし京には何の機微も浮かばない。

 

「話が聞きたいだけなん…っ!」

 

 男が再びこちらに誘いかけようとしたとき、男の足元から蔓が飛び出し素早く足に絡まり地面に縫い付ける。

 そして京は全力で後方に跳躍する。

 その間に男は手に持つ刀で器用に蔓を切り裂き拘束を解き、こちらに向かってくる。

 軽く牽制に体から飛び出した蔓の鞭を放ち窓を突き破って脱出を図る。

 流石に追いつけないだろうと笑みを浮かべる。

 油断、どうしようもない隙がここにきて出来てしまった。

 窓を突き破った瞬間、2つの影がこちらに襲い掛かってきているのを半瞬遅れで察知する。

 

「っ!?」

 

 だがもう遅い。

 ゴツと鈍い音が聞こえる。

 自分の脇腹に腕か食い込んでいた。

 あまりの衝撃に意識が飛びかける。

 引き剥がそうと腕を掴むがビクともしない、新たな襲撃者を見つめる。

 それはメイドだった、薄い紫色の短髪のメイド。

 

「ハ…っ」

 

 随分と可笑しな光景に場違いにも笑いが漏れかける。

 この時点でもう詰んでいるとどこか理解していた。

 そして、更に後頭部に強い衝撃が走る。

 

「ガッ…」

 

 短い叫びを上げて倒れこむ。

 その一瞬、微かに見たのは紫色の長髪の2人目のメイドだった。

 

「…ハハ」

 

 なんだこれは、と困惑を嗤って昏倒した。

 まだ他に視線を感じる、用意周到なことだ。

 どこからか男とすずかの悲鳴が聞こえる。

 そして傍にいるメイド2人の困惑した声も

 

 こうして京は、月村家に拘束されたのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 目を覚ますと洋風の豪華な部屋に寝かされていた。

 寝かされていたベットを懐かしそうに楽しむ。

 そういえばベットで寝たのは半年振りだったなと。

 半分現実逃避だ。

 現状について考えたくなかった。

 

「起きたようね」

 

 気が抜けていたのか傍に誰かことに気付かなかった京はハッと振り向く。

 そこにはすずかを大きくしたような美人が安心したように傍らの椅子に座っていた。

 傍には彼女を守るように先の男が控えている。

 

「初めまして、私は月村家当主月村忍です。先ほどはすみませんでした。そしてすずかを助けてくれてありがとう。」

 

「「申し訳ありません。」」

 

 2人のメイドがこちらに頭を下げていた。

 つまり2人のメイドは助けた少女の関係者であり、襲ったことも不可抗力だったということだろう。

 

「…」

 

 無言で辺りを見つめる。

 メイド2人と男、高町恭也、忍、そして助けたすずかの5人がこの部屋にいる。

 ここから早々に立ち去りたい。

 

「できれば話を聞きたいのだけど」

 

 話すことなどこちらには何も無い。

 すずかが見た事が実際の全てなのだ。

 

「その子が見た事が全てだ。」

 

 そう簡潔に述べる。

 冷たく突き放すように。

 こちらに話す意図がないと悟ったのか溜息をする忍。

 

「詳しく知りたいのよ。貴方が倒した襲撃者の情報が知りたい、そして貴方が何者なのかも」

 

 全て話すまでこのままだろう。

 

「俺が知っているのは、奴等の主犯格が吸血鬼とかいう大層な種族らしいことくらいですよ。」

 

 ビクッとすずか、忍が反応する。

 

「その吸血鬼はどこにもいなかったのだけど…?」

 

「さぁ…?」

 

 惚けるように答える。

 あたかも自分は知らないとでも言うように

 

「血でできた槍みたいのでやっつけたよね?」

 

「…」

 

 そこに全てを見ていたすずかが突っ込みを入れる。

 心の中で舌打ちをする。

 

「その血の槍について聞いても?」

 

「これ以上話すことはない。」

 

 これ以上話すことはないと突っぱねる。

 だがそれでも何か引き出そうとしている事が雰囲気で分かる。

 

「同じ吸血鬼として気になりますか?」

 

 苛立ちで少々毒を吐く。

 案の定驚いているようだ。

 周りの警戒が強くなる、地雷を踏んだかと少し後悔した。

 

「その通りよ、どうしてわかったの?」

 

「なんとなく血の臭いがします。」

 

 ただ知識から引っ張ってきただけであるが

 

「それを知ってあなたはどう思う?」

 

 真剣な顔で忍は問いかける。

 その真意を京は測りかねていた。

 

「どうでもいいです。いい加減帰してもらえますか?」

 

 答えられず、突き放す返答しか出来なかった。

 

「そういう訳にはいかないといったでしょう?悪いとは思うけど帰すことはできないわ」

 

驚きはしない、予想通りである。

どうしても帰す気はないようだ。

こちらからなにも情報が出ない以上こうなることは分かっていた。

 

「これ以上引き止めるなら無理にでも出て行かせてもらいます。」

 

警護3人が警戒をより強くする。

京は意識を上に向けた。

遥か先、空の向こう、雲を超え存在する道連れに

 

「なんであなたはそんなに…」

 

拒絶ばかりで取り付く島も無いことに忍はアプローチを変えようとする。

だがもう遅い。

京が短く命令する。

 

「やれ」

 

遥か上空で何かが放たれた。

風を切り、超高速で接近する。

目標は、この部屋だ。

すずかと忍は気付かない。

 

「っ!忍!!」

 

なにか危機感を感じたのか男が忍を抱え込み部屋の隅に移動する。

メイド2人もすずかを抱え移動していた。

京は上を見つめる、天井の向こう側を

そしてとてつもない破壊音と同時に部屋を貫き、ナニカが現れた。

 

「きゃぁ!何が…っ!?」

 

忍が突如現れたもの見て目を見開いた。

そこには10mを超える木が部屋に突き刺さっていたのだ。

さながら木のミサイルといったところだろうか。

音速並みのスピードで突き刺さった大樹の衝撃で部屋の天井は殆どが吹き飛ばされていた。

突然の出来事に京以外の5人は固まる。

京はそれを尻目にゆっくりとベットの上で立ち上がった。

空に視線を上げる。

視線の先、木のミサイルに続き、それを発射した張本人が現れる。

 

「「「!?」」」

 

異形、化け物、そう一言で表せられる風貌だった。

簡単に説明するのならば30mほどの全身を木で構成されたステルス機に鳥の足が生えたような怪物。

そしてギョロリと京の右目と同じく3つ目の複眼が顔の中心に付いている。

 

「テバサキ…」

 

よくやったとそっと撫でる。

正体は京が作り出した3体のアレトゥーサの1体、鳥を基にしたアレトゥーサだ。

媒体を鳥としているが戦闘機の飛行原理を元に成長をした為ほとんど鳥の原型を留めていない、木のミサイルが撃てるのもその為だ。

テバサキの足が京の立っているベットを鷲掴みにする。

そして飛び上がる。

 

「申し訳ないですがこれで失礼します。」

 

だいぶ家を破壊してしまったがすずかを助けた分でチャラにして欲しいと願う、悪いとは思っているのだ。

 

「待って!」

 

すずかが制止の声を掛ける。

焦りと困惑と何かが混ざった声だった。

 

「…」

 

それを一瞥し視線を戻した。

 

「いけ」

 

京の号令と同時にテバサキが飛び立ち瞬く間に見えなくなる。

 

「…ぁ…」

 

京が行った先をすずかは見つめていた。

他の4人も正気を取り戻したようにハッとなり慌しくなる。

 

「すずか?」

 

忍がずっと空を見つめているすずかに気付き声を掛ける。

 

「ううん、なんでもない」

 

なんでもないようにすずかは答えた。

ただその目はなにか決意したような光が灯っていた。




今回は能力の追加はありません、申し訳ない。
序盤から追加しすぎてもアレなので

直すところがありすぎて投稿に時間が掛かっております。
早く最終投稿の分までいきたいのですがちゃんとしておきたいので暫くお待ちください。
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