「任務なんでね。消えてもらうよ」
サヴァリス・クォルラフィン・ルッケンスは歓喜していた。
目の前に見た事が無い強者がいたのだから
頭からは羊のような角、額にある3つ目の目、右目の複眼、異形の左腕、流石に見掛け倒しではないだろう。化け物なら化け物らしい強さがあるはずだ。
戦ってみたい。
ただただそれだけの思いだった。
「天剣授受者…」
目の前の化け物が自分の名乗りの中の単語に反応したようだった。
「おや、あなたのような人でも知っていますか、グレンダン以外ではあまり知名度は無かったと思いますが…」
実際、天剣授受者は知名度が低い。グレンダンの中だけなら守護者と崇められるほどの名声があるが都市から出てしまえばちょっと強いだけの武芸者なんて認識だ。
「丁度良い、聞きたい事が…」
「いえ、それには及びませんよ」
相手からは未だに敵意や戦闘の意思を感じられない。
気持ち悪い目からは興味の色が含まれていた。
じれったい。
「この方の護衛が自分の任務の一つでして、あなたに連れ去られる前に排除しなけばならないのですよ」
だから
「これから死ぬ奴に教えることなんて何も無いでしょう?」
サヴァリスから殺気が溢れるように漏れ出す。
口実としては適当だがまぁ妥当だろう。
アレを庇い立てする人間がいるとも思えない。
化け物の目が細まった。
「待ってください! 彼は助けてくれただけで…!」
そうリーリンが抗議した。
そんな事は知っている。
リーリンが傷つくような事があるまで臨戦態勢で見ていたのだ。
狼面衆、初代ルッケンスが戦ったことがあると伝記に書いてあったがまさか本当にいるとは、ただの伝説かと思っていた。
そしてそれを苦もなく駆逐するあの化け物を
興味が沸いた。
戦ってみたい。
その為に一時的に都市警察に押収されていた天剣も奪還してきたのだ。
必死に訴えかけるリーリンの首筋にトスと軽く手刀を入れる。
それはとてつもない速さで、目視できないほどに早かった。
糸の切れた人形のようにリーリンは倒れこむ。
それを支え、自分の足元に寝かせる。
「……護衛対象じゃなかったのか?」
いぶかしむようにする怪物を前に冷めた目でサヴァリスは答えた。
「いえ、巻き込まれたりでもすれば困るじゃないですか、それに…」
邪魔でしょう?
その言葉は誰にも聞こえなかった。
さぁ、始めようか
「レストレーション」
サヴァリスが復元言語を唱えると腰にある錬金鋼は設定された姿を取り戻すように復元されていく。
それは白銀の手甲だった。
手から肘までを覆い隠すように白銀の錬金鋼が包み、それには金色の意匠がされ、それが唯の錬金鋼ではないと物語っているように存在感を放っていた。
12ある天剣の1つ、天剣クォルラフィン。
天剣とは重量・密度・硬度・粘度・形状・伝導率、全てにおいて各々の特化した錬金鋼を凌ぎ、どれだけ剄を流し込もうと壊れず、使用者に妥協無く相応しい調整を施せる最高の錬金鋼である。
それを持つ、サヴァリスもまた最高の武芸者である。
「往きますよ…!」
サヴァリスがそう言った瞬間、その場から消えたようにいなくなる。
それほどに身体能力、運動能力が異常なのだ。
そして
「へぇ…」
化け物、京もまた異常なのだ。
サヴァリスから繰り出された右のストレートは京の異形の左腕によってガードされていた。
サヴァリスはさも嬉しそうに口を吊り上げる。
「お前…、何がしたい?」
ギリギリとサヴァリスと京の腕が火花を散らす中、京はまだこの展開についていけていなかった。
「なに、戦ってくれればいいんですよ…!」
「そうかい、つまり…!」
京が思い切り左腕を振り上げるとサヴァリスの右腕も弾かれた。
同時に京の蹴りがサヴァリスを襲うがそれを後方に跳躍することで回避する。
「戦闘狂ってことか!」
逃がさないと京は左腕を振るう。
左腕からは黒い蔓が伸び、鞭となってサヴァリスを襲った。
それをあしらう様にサヴァリスは手甲で弾き、遠巻きに着地する。
その気になってくれたようだ。
「クク」
思わず笑みが漏れる。
サヴァリスはツェルニで発見された廃貴族の回収の任を女王から受けていた。同時にリーリンの護衛も仰せつかっていたのだ。そしてリーリンの命は絶対だとも言われていた。
折角都市外から出たのにまるで自由がない。あわゆくばツェルニにいるレイフォンと一戦交えられればとも思っていた。要は、サヴァリスはレイフォンと戦いたいが為に任務を受けて都市外に出たのだ。
サヴァリスの興味は自己の鍛錬の結果どこまで強くなれたのか、戦闘を楽しむことしか興味が無い。
そしてその目的と出会う前に絶好の相手と出会ってしまった。
巡り合わせという奴か、運がいい、感謝しなければならない。
「キール! リーリン頼んだぞ!」
「オウ!」
京がそう言うと臨戦態勢なのか構える。
それに一瞬、サヴァリスは違和感を覚えた。
しかし、それを熟考している時間は無い。
サヴァリスは活剄を巡らせる。五感を強化し、身体能力を大幅に活性化させる。それは天剣授受者としての規格外の剄を以って通常ではありえないほどの強化が成される。
同時に京とサヴァリスはその場から消えた。
しかし、2人には見えている。
交差するようにサヴァリスの右手と京の右手が擦れ違う。
サヴァリスのほうが一瞬速い。
「グ…っ」
サヴァリスの右が京の脇腹を抉る。
だが京はそれを構いもせず繰り出す右がサヴァリスを殴打し、吹き飛ばした。
どういうことだろうか、とサヴァリスは吹き飛ばされながらも思う。
宙に一回転し、着地、京を見つめる。
「無駄だ」
抉り、血が出ていた京の脇腹は赤い糸状の何かがそれを縫い付けるように傷口から現れ、それを塞いでしまった。それは何事も無かったように血の痕しか残っていなかった。
なるほどと、サヴァリスは納得する。
あれはわざと食らったのか、あの再生力なら自身の傷が負うのを無視してこちらに攻撃する事ができる。
口の中で血の味を感じながらサヴァリスは京を見つめる。
さて、さて、さて
どうしようか、どう倒すべきか
相手が剄を持っていないのは先ほどのやり取りでわかった。つまり、アレは活剄無しの素の身体能力で自分に追いついているということになる。そしてあの再生能力だ。
流石化け物、といったところだろうか
これはもしかして、アレは自分より、強くないだろうか
「…面白い」
そう呟くとサヴァリスは行動を開始した。
今度は一直線に突っ込むのではなく、攪乱するように京の周りを不規則に移動する。
京は動かない。
そのままサヴァリスは京の背後に回り、踵落としを京の頭上に叩きつけようとした。
しかし、それは阻まれる。
まるで読んでいたのかのように京の髪が素早く変化し、受け止める。そして振り返り、その両手に持つ二丁拳銃を構える。
照準はサヴァリスを正確に捉えていた。
サヴァリスはもう一方の足で京を蹴ると距離を取るように自ら離れる。
同時に京が無数の弾丸をサヴァリスに向かって放った。
「こんなものではないでしょう!」
それを手甲で器用に弾く、こんな豆鉄砲が多少強くなった程度では余裕を持って捌ける。
こんなもので自分はやられはしない。
「…そうだな」
どこからか声がすると京の姿はそこには無く、サヴァリスの側面に肉薄するように京が拳を構えていた。
「っ!」
避けられない。
ならばガードするまで
―――金剛剄
「SLOW&ZOOM」
瞬間、京の拳がまるでアップになったような錯覚を覚える。
同時に自身にくる凄まじい衝撃、一瞬意識が飛びそうになった。
「ガハッ」
互いに勢いを殺しきれず、弾かれるように吹き飛ぶ。
骨に少々罅が入ったようだ。
まだ相手の手持ちを把握できない、捉えきれない。
サヴァリスは天剣授受者である。天剣授受者は常に一人で戦うことを求められ、孤独に戦うことを強いられる。それほどに強いから、圧倒的な武威を見せ付けなければならないからだ。
万の汚染獣に一人突っ込んだこともあった。1週間不眠不休で戦ったこともあった。特殊な能力を持つ老成体と戦ったこともかなりある。
数え切れないほどの経験と絶え間ない鍛錬、そして13歳で天剣に選ばれるほどの天賦の才に裏打ちされた実力はそう簡単に破られるものではない。
サヴァリスは相対する京をその目で見つめながら分析する。
倒す手段があるはずだ。なにもアレが完全な存在であるとは思わない。穴がどこかしらにあるはずだ。
まずはそれを知るために多少の血は覚悟しなければならない。
「面白くなってきましたね」
サヴァリスが経験した殆どの戦いは圧倒的強者たる己が雑魚を駆逐するというだけのものだった。
だから自分の限界を出せるこの戦いは願っても無いものだ。
心身ともに充実した感覚、活剄が更に更に未だかつて無いほどにサヴァリスの体を強化していく、今なら風の微妙な違いさえ感じ取れる。
何かを踏みしめる音を微かに捉えた。
先に動いたのは京だ。
それに合わせる様にサヴァリスも動いた。
―――風蛇
衝剄を曲げる外力系衝剄化錬変化
剄の気配は武芸者しか捕らえられない。ならば死角から襲う衝剄はどう防ぐだろう。
それを京は見えているかのように方向転換し、当たるべきはずの場所には大きなクレーターが発生する。
やはり、読まれている。先読み、先の先程度までは読まれていると考えていいだろう。
ならばやることは1つだ。
―――暴槍撃
地面に腕を突き刺し、槍のように変化した地面を京の真下に発生させる。
それを即座に横にステップすることで京は避けた。
その動きに合わせ、衝剄を数発放ちながらサヴァリスは接近。
だがそれはわかっていたとでも言うように京は二丁拳銃を構えていた。
あぁ、わかっている。その程度までなら読んでくるだろう。
向かう銃弾を急所に当たる場所だけを弾き、それ以外を無視した。
当然無視した弾はサヴァリスの体に穴を開けていくが気にしない。
「っ」
初めて京の眉が顰められた。
「どうしましたか!」
目まぐるしく変わる攻撃に、一々先読みしながらそれに対応した行動を頭の中で判断し、行動に移すことを可能にさせるほど上手く動くことは出来はしない。
要は、絶え間なく攻撃すればあの先読みは阻止できる。
そして接近したサヴァリスは構えられた二丁拳銃を弾き飛ばし、京にその豪打を浴びせる。
「ちぃっ」
「オマケですよ!」
―――風烈剄
豪打を浴びせ、宙に舞う京に間髪入れずに蹴り足から真空の刃に化錬変化させた剄弾を放つ。
10の真空の刃が京を襲う。
それを京は両手を十字にクロスさせ防御した。
「く…ぅ…!」
全ての刃が京にヒットし、体から血飛沫が飛び出す。
まだ終わらせない。
地面を蹴り、未だ宙に浮いた京に追撃を掛けようとするが
「サイコボマー!」
京が爆発し、サヴァリスも追撃を掛けることは出来ずに後方に下がった。
手応えはあった。
やりようによっては京にダメージを負わせることは難しくない。
だが問題は
「効いたよ…」
ダメージを入れてもすぐに再生されることだ。
京の全身の傷が瞬く間に塞がっていく。
なるほど、またわかった事があった。
傷の再生箇所とそのスピードが違っている。
打撲によって潰された箇所より斬り傷の方が直りが早い、繋ぎ合わせるだけならあの糸のような蟲は特に使われないということだろう。つまり、アレに有効なのは斬撃では無く打撃だ。
そして体の先端部分の再生はやや遅い、そしてやけに速い再生箇所が何箇所か見受けられる。
あの赤い糸のような蟲、そして再生箇所によって現れる蟲の数が違うこと。自然に再生するだけなら疑問にも思わなかったが自然回復とは違った回復方法、汚染獣にもああいう類の奴がいた。つまり何かしらあの回復力にはタネがある。
それが解ければアレに初めて癒えない傷を負わせる事ができるのだ。
「刃もて、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー」
京が右手を前に突き出し、唱えると無数の赤る短剣がサヴァリスに殺到する。
遠距離は若干不利だ。こちらから近づかなければならない。
近づけば勝機はある。
だが近接は京にも分がある。
「クロックアップ・MACHSPEED」
回避しようとしたサヴァリスの背後に刃が届くより早く、京が回りこんでいた。
気付けないほどに早かった。
決めに掛かってきている。
そう瞬時に判断した。
「ブレングリード流血闘術111式
背後のから巨大な血の槍がそして目の前には無数の赤い短剣が迫っている。
―――気縮爆
外力系衝剄化錬変化、空気の圧縮により爆発を起こさせる剄技だ。
それによって食らえばそれで終わりであろう血の槍をギリギリで回避する。しかし、赤い短剣はどうにもする事ができない。
手甲でガードするが全身は守りきれず、体のあちこちに突き刺さった。
「っ! こっちは即座に回復なんて無理なんですがねぇ!」
「知らないよ」
―――――――ゴッドリール技が奥義が一つ
「ゴッドインパクト!」
黄金に光りだした右腕を地面に叩きつけると衝撃波が発生し、サヴァリスを吹き飛ばす。
「くぅっ」
完全に終わりにしようとしてきている。
まだまだ、こんな楽しい戦いは終わらせたくない。
京は更に巨大な棺桶を取り出したかと思うとそこからバルカンが現れ、サヴァリスを蜂の巣にしようと乱射した。
「これならどうだっ!」
オマケだとマイクロミサイルが4発放たれ着弾し、大爆発を起こす。
だがまだだ、まだまだだ。
天剣授受者は全世界の武芸者の中でも最強、来るべき戦いの為に存在する精鋭なのだから
「まだ…まだ終わらないっ!!」
煙の中からサヴァリスが現れる。
体のそこかしこが血塗れだが目は全く死んでいなかった。
予想外の展開に京が動くのが遅れる。
―――剛力徹破・突
「ちぃっ!?」
「らぁぁあ!!」
拳打の威力を最大限にまで高めた最高の突きの一撃。
それはガードしようとした京の左腕を砕き、京の胸に大穴を空けた。
「カ…ハッ…!」
そして更に京を攻略する一手をサヴァリスは打つ。
―――咆剄殺
「かぁぁあ!!」
口から放った震動波により分子の結合を破壊する剄技、ルッケンスの秘奥だ。
それを至近距離で食らい、京の全身から血飛沫が舞う。
やったか、そう思ってしまった。
ギロリと京の左目がサヴァリスを捉える。
怖気が走ったがもう遅い。
カシャッ
どこからかシャッターを押すような音が聞こえた。
そして
「ガァァァア!?」
サヴァリスの全身が大爆発を起こした。
爆煙が辺りを舞う。
そして煙が晴れるとそこに立っていたのは
「……」
「……」
2人の人影があった。
京とサヴァリスである。
「なぜ…わかった…?」
全身から血を噴出しながら京が問いかける。
左目から血を流し、閉じていた。
京の血仙蟲の再生が止まっていた。何とかギリギリ致命傷の胸の大穴を塞いだところで尽きてしまったようだ。
「勘…ですかね」
全身から煙を上げながらサヴァリスが答える。
実際は戦闘考察によって導き出された予想のようなものだ。
二の腕、太腿、胸部中央、腹、その特定箇所が再生がやけに早かった。もしかすればその箇所に弱点のようなものがあるのではないかという漠然としたものだった。
そして咆剄殺による内外の全身破壊によって再生の機能が止まったということは当たりなのだろう。
事実、そうだった。
京の持つ血仙蟲は体内で培養されるわけではない。血仙基と呼ばれる血仙蟲を生み出す機関が体の6箇所に出来ているのだ。そしてそれを同時に破壊されようものなら血仙蟲の製造は止まる。結果京の胸の穴と深い傷を治す程度で血仙蟲が打ち止めとなってしまっていた。
「これからってとこですかね」
やっとダメージを与えられるところまで来た。
これからが本番のようなものだ。
体に大口径の弾丸を数発くらい、短剣を食らい、そして全身が大爆発して体全体が焼けている。
とてもじゃないが動ける状態ではなかった。
だが武芸者は剄脈があれば生けていける、まだ、動くことに支障は無い。
こんな楽しい戦闘を終わらせて溜まるか
それに付け入る隙も見つけたのだ。
さぁ始めようじゃないか
そこに乱入者が現れる。
「---! ---!」
それは先ほどまで狼面衆と共にいた都市警察の人間だった。
邪魔臭い、さっさと消えてもらおう。
だが京はそう思っていなかったようだった。
「よぉ…、丁度いいところにきてくれてうれしいよ」
Tick Tack... Tick Tack...
「ちょっと力貸してくれ」
京がその男の後頭部をつかむとブツブツと呟きだ出した。
ドドドと何かが駆けてくる音がする。
それは馬の駆ける足音のようで
「…! …! …!」
何が起こっているのかと恐怖ので錯乱状態に陥りながら男は震えた。
同時に男の手首に電子時計が現れる。
それは0時から早送りするように進みだし、止まった。
指し示す時間は
13時、存在しない時間
「『
瞬間、男の胸を突き破って黒い馬に跨り、全身を黒い鎧に身を包んだ1人の王が現れる。
名はヘルラ王、時間に縛られ、永遠の時を駆ける王である。
「ヘルラ王よ! 頼む! 「時の剣」を我に!」
『我が永劫の時の欠片、受け取るがいい』
ヘルラ王が差し出したのは2本の短針と長針を模した剣。
それを右手に構え、口でもう一本を咥える。
「はは、これはこれは、もう驚きませんが一体何なんですかね…」
全く不可思議だ。
そしてまた面倒なことにまだ相手の手札は切れていないらしい。
一体いくつそんな能力を持っているというのか、面倒なことだ。
だがその数多の能力に穴がある。
「さぁ、始めようか」
二振りの剣を構え、京が構える。
やはり、そうだ。
自分の予測が更に正確であると確信が持てるようになる。
動いたのは京だ。
「行く道を照らせ! 午前7時の「
空中に浮かぶ青い鬼火が現れ、京を照らし出す。
その光は京を更に集中させているようだった。
こちらも動く。
振り下ろされる剣とサヴァリスの手甲がぶつかり合う。
「午後11の「
地面から巨大な鉄の腕が現れる。
それを察し、サヴァリスは跳躍し、避けようとした。
京の口が吊り上る。
「午後5時の「
京の右腕の時計から爬虫類のような腕が現れ、跳躍するサヴァリスの足を掴む。
さらに京は続ける。
「午後6時の「
突き出される右足から不気味な緑色の顔が現れ、サヴァリスの足の肉を一部持ち去った。
そして
「午後7時の「
『オメェーの血は何色ダァーーーーーッ!!』
更なる追撃、赤い帽子に手が生えた妖精が現れる。
両手荷物は錆びた包丁、サヴァリスを切り刻みつつ、地面に叩き落す。
最後と京は更なる攻撃に移る。
「午後8時の「
『泥灰岩の採取場には近づくな、生首のトミーに連れてかれるぞ』
「タイム・ショック・コンボ!」
サヴァリスの落ちた場所に血の池が発生し、そこから生首に血だらけの男が姿を現し、サヴァリスの両足を掴んで引きずり込もうとしていた。
午後5時から8時までの連続召喚によるコンボである。
―――蛇流
「ぐっ!?」
そして驚きの声をあげたのは京だった。
何かに引っ張られるようにサヴァリスの沈む池に落ちる。
化錬剄の糸が胸に大穴を空けられた時に付けられていたのだ。
―――気縮爆
そして京と足を引っ張る男共々巻き込んで吹き飛ばす。
「ちっ」
「やっぱり…」
防御が全く出来ていない。
京が始め構えたときからずっと違和感があった。
相手は戦闘において素人に近い、ただ身体能力が異常すぎるだけだ。
本来なら捌けるだろう能力を有していながらのガード、甘い部分が見受けられる。それに何より普通の攻撃は早く重いだけで動きそのものは素人そのもの、本来の適した型のような物で食らっていればサヴァリスは恐らくもう既に沈んでいる。
しかし、特殊な攻撃、技を放つ時だけ、流れるような隙の無い動作をする。
ツギハギ、サヴァリスが感じた印象はそれだった。
とって付けたような洗練された技とそれに付随しない素人のような動き、明らかにおかしい。
そしてそれこそが付け入る隙になる。
「そろそろ…、いきますか」
最悪なことに先の攻撃でもう殆ど動けない。
次の攻勢に全てを掛ける。
もう観察、考察をする必要は無い。
あとはあの奇襲のように襲い掛かる新しい能力に気を張って対応すれば問題は無い。
―――剛昇弾
「午前10時の「
サヴァリスの手甲から巨大な剄弾が、京の右腕から大きな黒い犬が口を開けて襲い掛かる。
ぶつかり合い、互いに四散。
―――剛力徹破・突
「復活の俺のショベル!!」
砕けた左腕から巨大なショベルが生え、サヴァリスに振り下ろされる。
それにサヴァリスは最大の突きを放ち、それを止めた。
面白い、あぁなんて楽しいのだろう。
まだ自分は強くなれる、そう感じられる。そして自らの全力を今ここで出せているのだ。
それほど嬉しいことはない。
さぁ、止めてみろ、これが俺の一手だ。
―――千人衝
ルッケンスの秘奥、活剄衝剄混合変化・千人衝、残像を無数に起こすほどの同時攻撃だ。
見えるだけでも50は残像が見える。
「
無数の手は正確にサヴァリスの攻撃を捉え、防御していく。
だがサヴァリスの狙い通りだ。
まず京に攻撃させてはいけない。手の内が全く読めないほどの攻撃方法を持っていればいずれ奇襲を食らい畳み掛けられるだろう。
防御に徹しさせればよい。自分は攻撃をくらっても死なない、心のどこかにそんな自信という縛りがある。それは防御を僅かに緩慢にさせる。そして防御に回った京のできることは防御と奇襲のように能力を発動させ、反撃に出る以外に存在しない。
そんな隙は与えない。
尚も増え続ける残像、そして千手がそれを捉えられなくなったとき、サヴァリスに勝機が訪れる。
「六道灼熱伐殺眼!!」
京の右目から熱戦が放たれ、残像の半分が消える。
だがサヴァリスを捉えることは出来なかった。
何故ならもう
「っ!?」
「終わり、ですよ」
千手を掻い潜り、京の懐に入り込んでいたのだから
―――剛力徹破・咬牙
外側からの衝剄と徹し剄による内外同時破壊。
サヴァリスの最大に練られた剄の一撃は京の胸を再び貫いた。
それは粉砕するよう京の体の細胞をズタズタにする。
「グ…ガァァァァア!!」
「いや、中々に楽しかったですよ」
サヴァリスもまた満身創痍、運が良かったといったところだろう。
しかし、サヴァリスはまだ京を舐めていた。
「っ!」
「ォィ…おい、まだ…マダだ」
京の生命力を、そして負けず嫌いなことを
京の体を突き破り、大量の植物がサヴァリスを雁字搦めに縛り付ける。
そして京が大きく口を開いた。
「食…ら…エェェェエエ!!」
そして、口から最大量の煙を吐き出したのだった。
勝敗は、どちらか
VS京 でした。
凄まじく長い戦闘になってしまいました…、なんだか申し訳ない。
相手にしたらどんなもんかなと考えつつ、倒し方を考えていました。
書きながら主人公チート臭いなぁとしみじみ思いましたね…
サヴァリスさんに主人公補正入っている気がしますがお気になさらず。
書きたいところも書ききったのでこれからどんどん展開させようと思います